IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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今日はエイプリルフールですね。皆さん誰かに嘘を吐きましたか?


第16話 天羽飛鳥、取引をする

「ちょっと取引、しませんか?」

 

 そう言い放った天羽飛鳥に、スコール・ミューゼルは目を細めた。

 

 スコールは飛鳥の事を知っていた。それにはもちろん理由が有る。

 

 今年の夏に急きょ決まった、新たな日本代表候補生へのISコアの引き渡し作業。その情報を掴んだ亡国機業(ファントム・タスク)は、そのISコアを奪取する作戦を計画した。

 

 自由にできるコアはいくらあっても良い。その為重要度の高い作戦であった。しかし計画を練るに当たって、難易度はそれほど高くないことが判明。同時期にイギリスの第三世代機奪取の計画も迫っていた為、投入人数は最小限のたった3人ではあったが、成功するだろうと思っていた。

 

 だが結果は失敗。送り込んだ3人の内2人が捕まり、もう1人は行方不明。作戦失敗の原因こそ――

 

「天羽飛鳥、といったかしら。」

 

「あ、知ってたんだ。」

 

「えぇ、貴女の専用機に使うコアを奪うのに失敗したって報告が上がってからね。」

 

 一言で言えば優秀な子であった。家庭の事情でIS学園に入学するまで代表候補生になっていなかったが、そのIS適正はS。ドイツ軍人の第三世代専用機に乗った代表候補生を訓練機で圧倒し、2対2で行われた学園別トーナメントにおいても中国とイギリスの第三世代専用機に乗った代表候補生のペアを自身のペア共々訓練機で1度も被弾せずに撃破。事故によってトーナメントは中止になったが、その試合を見ていた防衛大臣によってスカウトされ日本代表候補生に抜擢。そしてすぐに専用機を貰うことが決定。

 

 報告書には他にもいろいろと書いてあったが、スコールが注目したのはその中に有った『IS学園生徒会長に勝利』という情報だった。

 

 IS学園生徒会長――即ちロシア国家代表、更識楯無。駆る専用機はロシアの第三世代IS【モスクワの深い霧(グストーイ・トゥマン・モスクヴェ)】を元に組み上げた【ミステリアス・レイディ(霧纏の淑女)】。アクア・ナノマシンを用いるトリッキーな戦法を得意とする。

 

 スコールは機体の相性も有って楯無に負けることはない。だが楯無のIS乗りとしての技量を侮りはしない。確かに国家代表としての実力を持っているからだ。

 

 その彼女に勝ったと言うなら、それは天羽飛鳥の実力をそのまま証明することに繋がる。

 

「本当のIS学園最強、だったわね。」

 

「どうかなぁ?IS学園には私が負けそうな子もいるから、まだ最強は名乗れないよ。」

 

「へぇ、それは誰?」

 

「教えない。言ったらちょっかいかけるでしょ?でもまぁ、このままだと私もフルセイバーを使わないといけなくなる、とは言って置こうかな。」

 

「教えてくれないのね、残念。」

 

 会話の中で出た『フルセイバー』という単語。それを専用換装装備(オートクチュール)の類だと考えながら、スコールは室内に持って帰ろうとしていた酒をテーブルに置いた。

 

「どうしてここが分かったの?」

 

「衛星とか色々使ってずっと見てただけだよ。あの子の帰還ルートは問題なかったから、安心してまた使うといい。」

 

「そう言われてまた使える訳ないじゃない。」

 

 衛星を使ったというが、恐らく非正規。ハッキングによって情報を得たのだろう。正規の使用なら亡国機業(ファントム・タスク)はその情報を入手して既にここを引き上げているからだ。

 

「それで、取引だったかしら。一体何がお望み?」

 

 言いながらスコールは自身の専用機【ゴールデン・ドーン】をいつでも展開出来るように意識を向ける。意識を向けるだけで機体を展開しないのは位置が悪いからだ。飛鳥の真後ろ、大きなガラスによって区切られた先には今日の作戦中にISを失ったオータムが眠っている。今行動を起こせば、彼女を巻き込んでしまうのだ。

 

 援軍を呼ぶことは叶わない。妨害電波でも出しているのか通信が出来ず、それをモノともしないIS同士のコア・ネットワークを用いた通信は実働部隊の一員であるエムの持つイギリス製第三世代【サイレント・ゼフィルス】にのみこの場合は有効だ。だがそのエムのISは調整のため技術部に預けられている。そんな状態では通信を入れても応答出来ないだろう。

 

 行動は起こせず、援軍も呼べない。ならば相手の提案に興味を示しながら時間を稼ぐのが一番だ。だからスコールは飛鳥の誘いにわざわざ乗った。

 

 それを知ってか知らずか、飛鳥は話をしようとするスコールに口を開いた。

 

「今月末にあるキャノンボール・ファスト、あれに手を出すのは止めて。」

 

「……。」

 

 9月27日、IS学園は市の特別イベントとして開催されるキャノンボール・ファストというISの高速バトルレースに参加することになっている。

 

 スコールはそこにちょっかいをかける気だった。理由はいろいろあるが、最大の理由は唯一の第四世代機である【紅椿】の性能を探ることだ。

 

 問題は()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。計画書も書いていないし、メモに書いたこともない。スコール以外誰も知らない筈のことを飛鳥は言ったのだ。

 

「……なぜ、キャノンボール・ファストを襲うと思ったの?」

 

「紅椿の習熟。」

 

「!」

 

「終わるの待ってるんでしょ?7月の初めに貰って、キャノンボール・ファストは大体3ヶ月経った頃になる。それだけあればある程度の性能は引き出せるようになってると考えて、丁度良く予定されてるキャノンボール・ファストでIS学園の敷地から出てくるのに被せて襲撃を計画してる。」

 

 飛鳥の言うキャノンボール・ファストを狙っての襲撃理由は、まさにその通りであった。

 

 第四世代機の習熟を待っての襲撃。丁度よく市で開催されるイベントに参加するIS学園。そんなの襲撃するしかないだろう。リスクとリターンを考えても、それが一番良いとスコールは考えていた。

 

亡国機業(ファントム・タスク)としては、第四世代の性能は知っておきたい。でも習熟してない状態だと大したことが分からない。()()()()()()()()()()。視点を変えればすぐに分かることだよ。」

 

「そうね、その通りだわ。」

 

 飛鳥の言葉にスコールは納得した。確かにその通りなのだ。視点を変えれば分かること。

 

「(ダメね、思ったより酔ってるのかしら。こんなことにも気付かないなんて……。)」

 

「もう一度言うけど、キャノンボール・ファストに手を出すのは止めて。客として観戦しにくるのはいいから。」

 

「あら、優しいのね?」

 

「問題を起こさない客なら歓迎するよ。チケットは要る?」

 

 飛鳥はケータイを取り出して揺らして見せる。IS学園の生徒に配布されるキャノンボール・ファストの特別指定席のチケットはデータであり、1人1つまでしか渡せない。飛鳥は家族を誘うにしても両親のどちらか片方になるために使用していない。

 

「自前の物があるから遠慮するわ。……ねぇ、貴女はどうしてここまでするの?」

 

 チケットを断ったスコールは、「そっか」と口にしてケータイを仕舞う飛鳥に問いかけた。

 

「テロリストのアジトにわざわざ乗り込んでまで、何故?」

 

「来年からは私が生徒会長になるからね。生徒会長なら生徒を守らないとでしょ?」

 

「あら、ならここで私を捕まえる気がないのは何でかしら?」

 

 スコールの言葉に飛鳥は笑って答えた。

 

「私、試合は好きだけど争いは嫌いなの。対話で済むならそうするよ。」

 

「甘いわねぇ、火種を放置するなんて。消さなきゃ大火事になるかもしれないのに。」

 

「今キャノンボール・ファストの火種は吹き消したでしょ。それより先の火種は私にはまだ分からない。その都度消していくつもりだから──」

 

 言いながらスコールへと近付き、横を通り過ぎてバルコニーの手すりに夜景を背にして腰かけた飛鳥は

 

「──これからもよろしく。敵にならないでね、亡国機業(ファントム・タスク)。」

 

 そう言ってそのまま後ろに体を傾け、落ちていった。

 

 スコールが手すりの下を見た時には、そこには緑色の粒子が漂っているだけだった。

 

「……はぁ、直接乗り込んで計画を言い当てられたんじゃ、キャノンボール・ファストに乱入するのは無理ね。また計画を練らないと……。」

 

 その粒子が消えていくのを眺め、スコールはため息を吐きながらキャノンボール・ファスト襲撃を諦めた。あそこまで言い当てられておいて襲撃をしたら、返り討ちに合うとしか思えない。

 

「これはもう自棄酒ね。あーあ、このお酒もっとゆっくり飲みたかったのに……。」

 

 テーブルに置いたお酒をグラスに注ぎ、スコールはグイッとそれを飲み干した。

 

 

 

 

『場所さえ分かればクアンタの量子ジャンプで移動できるの便利。』

 

『このゲーム何で衛星のハッキングがミニゲームで出来るの……?』

 

『一枚絵とか無いのに変な所にだけ力入れてるから他のISのゲームと違って売れ行き良くないんだよこのゲーム。プレイヤーはミニゲームしに来てるんじゃないっての。』

 

『でもよくやってるよね。』

 

『バトルだけは面白いからねぇ。二次移行(セカンド・シフト)とかないけど。』

 

 

 

 

「お帰りー。」

 

「ただいま。」

 

 IS学園の寮の自室。葉加瀬なのはは突如出現した緑色の粒子のゲートから現れた天羽飛鳥を、普段の様に迎え入れた。

 

「どうだった?」

 

「『お前の計画はお見通しだぞ』って言ったら流石に実行は出来ないって考えたよ。見には来るだろうけど。」

 

「そっか、ならキャノンボール・ファストでフルセイバーは使えないね。」

 

「そもそも使わせてくれないでしょ、クアンタの能力がバレかねないからって。私も出来るなら使いたくないけどさ……。」

 

 『フルセイバー』。それはダブルオークアンタをたった1機で世界すべてと相手取れるモノへと変貌させる専用換装装備(オートクチュール)。新たに搭載される【GNソードⅣフルセイバー】、背部に装着されるコーン型スラスターによって、通常のダブルオークアンタを優に凌駕する性能を発揮するその装備を使わないのにはいくつか訳がある。

 

 まず第一にその圧倒的性能故に争いの火種を生みかねないこと。今世界中で開発が進んでいる第三世代や、展開装甲による全状況に対応できる万能さを手に入れた第四世代などとは比較にならない性能を発揮するフルセイバーは、露呈するだけで争いを生んでしまう。

 

 第二に、フルセイバーの使用を飛鳥が嫌うこと。無双ゲーでもないのに強さのインフレし過ぎだとか、やれること多すぎて疲れるだとか色々な理由があるが、兎も角フルセイバーを使う時は余程の時だと自分で決めている。

 

 そして第三に、フルセイバーを使用した場合に起こる『何故常用しないのか』という疑問から、ダブルオークアンタの能力が露呈しかねないこと。飛鳥が嫌がるというだけで理由としては足りるし、火種となりかねないために封印しているというのも十分な理由ではある。

 だが、一部の人間――それこそ篠ノ之束や織斑千冬なんかには、それだけではないと思われる。ダブルオークアンタがフルセイバーを使用しない本当の理由を考える。そして十中八九思い至るのだ、『ダブルオークアンタは素の状態でなければ能力が使えない』と。だから常用しないのだと。

 

「でもセシリアがこのままいったら多分フルセイバー使わないと勝てなくなってくるよ。」

 

「何かバグってない?大丈夫?」

 

 

 

 

『ゲームの中でさえバグ扱いなのか。』(困惑)

 

『実際バグってるよね。何か明らかに強さおかしいもん。』

 

『ステータスオールSの明日香が乗ったダブルオースカイと引き分ける強化セシリアが更に強化されてる状態だからなぁ……。』

 

 

 

 

「ブルー・ティアーズ!」

 

 踊るレーザービット4つが火を噴く。曲がりくねるレーザーが目標を穿とうと飛翔する。

 

「ソードビット!」

 

 そのレーザーを6つの刃が斬り裂き、レーザービットへと肉薄して刃ではない方が叩き付けられる。

 

「脳量子波を途切れさせない!撃つ瞬間だけ動きを止めて、それ以外はずっと移動!じゃないと落ちるよ!」

 

「っ、はい!」

 

 第三アリーナの一角でセシリア・オルコットと天羽飛鳥のビットがぶつかり合う。

 

 セシリアのビット習熟のための特訓。それはセシリアがなのはにブルー・ティアーズの調整をして貰った頃から行われていたが、最近は特に熱が入っている。学園祭の日の夜に遭遇した、祖国イギリスから奪われたBT2号機【サイレント・ゼフィルス】を取り逃がしたのを気にしてのことだ。

 

「セシリア、終わるよ。」

 

「いえ、まだ!」

 

「脳量子波が乱れてる。水分取りながら休憩、返事は?」

 

「……分かりましたわ。」

 

 地上へと降り、ISを解除してPICでふわりと地面に着地する。

 

偏光制御射撃(フレキシブル)は安定して来たけど、ビット操作との両立はまだまだだね。単純に練度が足りない感じかな。」

 

「はい……。」

 

 脳量子波を扱える様になったブルー・ティアーズによって、セシリアは本来の技量を発揮できるようになった。だが単純に脳量子波を扱う練度が足りず、どうしても付け焼刃の様な動きが多くなってしまう。

 

「脳量子波は扱えてるし、このまま練習しかないね。IS適正も上がるし、頑張ろうか。」

 

「IS適正が上がるんですの!?」

 

「上がるよ、このまま行けばだけど。」

 

「脳量子波はそんなことも出来るんですのね……!」

 

 沈んでいた表情が輝き、目に見えてやる気が上がった。

 

「脳量子波だけじゃダメだよ。ちゃんとコアと話さなきゃ。」

 

「コアと?」

 

 飛鳥の言葉にセシリアは首を傾げた。

 

「そう。脳量子波を使ってISコアと対話することで、コアに私たちをもっと知って貰う。そうすることでIS適正は上がる。私は元々Sだったけど、なのははそれでBからSにIS適正が上がってるよ。」

 

「……。」

 

 飛鳥の説明を聞いたセシリアは驚いた顔で黙った。

 

「どうしたの?」

 

「なのはさんのIS適正ってSだったんですのね……。」

 

「本人にセンスが無いから近接も射撃もダメダメだけど、普通なら代表候補生なんだよ、なのはは。」




 感想にて『キャラメイクと本編でなのはのIS適正違うけどどういうこと?』というお問い合わせを頂いたため、この場で説明させていただきます。

 今回説明したように、なのは本来のIS適正はキャラメイク時のBです。しかしガチャでクアンタを引いたことでゲーム内の処理でプレイヤーキャラが純粋種になった結果脳量子波が扱えるようになり、その脳量子波でISコアと対話することでコアに自分を知って貰い、それによってIS適正を上昇させる、ということをしています。大雑把に『純粋種になるとIS適正Sがおまけで着いてくる』と考えて貰って構いません。

 本来はもっと早く説明すべきことでした。この場を借りて謝罪いたします。








エイプリルフール恒例嘘予告

「ここは……?」

 ダブルオークアンタの量子ジャンプを使った天羽飛鳥。しかし、そこは自分の知っている場所とは違っていた。

「あれが侵入者か?」

「待って、あの緑色の光って……!」

「GN粒子……!」

「それにあの顔……。」

「……私?」

 やって来たのは見慣れたものと良く似た、けれど少し成長した姿をした友人たちと、自分とは違う機体に乗った自分。

「名前、教えてくれる?」

「天羽飛鳥。この機体はGNT-0000、ダブルオークアンタ。」

「私は天羽明日香。この機体はGN-0000DVR/S、ガンダムダブルオースカイ」

「ダブルオークアンタ……ダブルオースカイと同系列の機体なのか?」

「おかしいでしょ!ダブルオースカイは明日香が1から全部自分で作ったのよ!情報は何1つ公開されてないのに、同系列の機体何て作れる筈ないわ!」

「鈴さんの仰る通りですわ、一夏さん。明日香さんが他人に機体を作るとは思えませんし、恐らくコピーした機体。そう見るべきですわ。」

 天羽飛鳥を前に話す一夏、鈴、セシリアを余所に、2人のアスカは話し出す。

「ダブルオークアンタ……量子の名を持つツインドライヴの機体。どうして存在するの……?GNドライヴはダブルオースカイの2つしかないのに……。」

「ダブルオースカイ……空の名を持つツインドライヴの機体。それが貴女の選んだ道?」

 2人の視線が交差する。互いに武器を持ち、構えた。

「どうしてここに来たのかは分からない。でも大体の事情は分かった。戦おうか、天羽明日香。その機体の力、空を飛びたいっていう夢を、私に見せて。」

「どうしてそのことを……!?」

「貴女は何にでも才能があった。でも1人だった。私は戦いにしか才能がなかった。でも親友がいた。その違いが、この差なんだろうね。」

「もっと分かりやすく喋ってよ!」

「──私は天羽飛鳥、平行世界の貴女だよ、天羽明日香。」

 言うなり、飛鳥は明日香に一直線に飛翔した。







はい、嘘予告です。今日そう言えばエイプリルフールだなと11時頃に気付き30分で書いたためクオリティーはお察し。本当ならクアンタムバーストしたりトランザムインフィニティを登場させたかったのですが、30分では書けなかった……。
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