IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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タイトル間違えてました……


第17話 織斑一夏、天羽飛鳥についてを聞く

「あれ、そう言えば天羽さんって高機動パッケージあるのか?そもそも機体って完成したのか?」

 

 始まりは織斑一夏のふと零した疑問だった。

 

 いつもの専用機持ちたちでテーブルを囲み、夕食を食べている時に口から出たそれは、高速バトルレース『キャノンボール・ファスト』を控えた代表候補生たちの興味を引くには十分だった。

 

「機体は出来たって聞いたわよ。」

 

 まず口を開いたのは凰鈴音だった。ここに集まっている専用機持ちの中で唯一2組である鈴は、教室が隣であることもあって3組の話が耳に入りやすい。ましてダメージレベルC目前であった自分を助けてくれた恩人にして、その後の学年別トーナメントでセシリア・オルコット共々負けた相手のことだったため、聞き流さずに記憶していた。

 

「トーナメントでタッグを組んでた葉加瀬さんが作ってたんだよね?」

 

 そう言ったのはシャルロット・デュノア。第三世代開発が遅れているとはいえ大手のIS企業であるデュノア社の娘として、そう言った開発の情報には敏感だった。

 

「あの人の専用機か。どういった物なんだ?」

 

 そう聞いたのはラウラ・ボーデヴィッヒ。かつて自分を訓練機で完封した人物の専用機、となれば気になるだろう。当時は戦いの邪魔をされた苛立ちと訓練機が相手と言う慢心から越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)を使わないまま負けたが、次はそんなことはせず本気で戦いたいらしい。……のだが、なぜか出会うことが出来ないまま二学期を迎えてしまい、ラウラ自身も一夏と一緒に居ようと行動しているためその機会は未だに作られていない。

 

「わたくしのブルー・ティアーズと同じ、ビットを操る機体ですわ。」

 

 それに答えたのはセシリア・オルコット。葉加瀬なのはの紹介でビット操作を教えて貰っているセシリアは、ここにいる専用機持ちたちの中で一番天羽飛鳥と親しかったりする。

 

「ビットを?それはイギリスの技術ではなかったのか?」

 

 そう疑問符を浮かべたのは篠ノ之箒。代表候補生ではない箒は他人の専用機にもさして興味がないため、飛鳥にもそれほど関心を示していないのだが、それでもビットを操るというのが気になった。

 

 箒の言う通り、ビットはイギリスの第三世代技術である。正確に言えばイギリスが主導で開発している技術だ。箒の専用機【紅椿】も全身に備えている第四世代技術【展開装甲】、その背部を切り離してビットとしての運用ができるが、紅椿の展開装甲は大体何でも出来るため例外である。

 

「確かにビットは我がイギリスの技術ですが、飛鳥さんの機体はなのはさんが一から作った物。ビットを持っていても何ら不思議はありませんわ。」

 

「そういやセシリア、アイツにビットを弄って貰ったとか言ってたわね。」

 

 学年別トーナメントでなのはにガトリング砲でハチの巣にされたことを思い出し鈴が顔をしかめる。動きからして飛鳥と違いそれほど強くない素人であることが分かっていた相手に落とされただけに悔しい思いをしたものだ。

 

「えぇ!ビットの動かしやすさが段違いですし、何よりエネルギー効率が37%も向上致しましたわ!」

 

「ほう?光学兵器ばかりで燃費が悪い機体でそれだけエネルギー効率を向上させるとは、良い腕をしているな。」

 

「37%ってスゲーな、俺の【白式】も弄ってくれないかな。」

 

 セシリアの話を聞いたラウラは賞賛し、一夏は羨ましがった。ブルー・ティアーズは光学兵器を搭載している上に常用しているレーザービットが4機もあるため、この場にある専用機の中で紅椿と白式に次ぐ燃費の悪さなのだが、それでもエネルギー効率を37%も向上させればその効果は目に見えて現れる。単純に戦闘可能時間が延びるだけでも十分だが、ブルー・ティアーズの場合は攻撃時のエネルギー効率も良くなっているため、攻撃性能も向上していると言っても過言ではない。

 

「どうでしょう?わたくしの場合はブルー・ティアーズがなのはさんの興味を引いたので見て貰えましたが……。」

 

 白式は性能こそ第三世代の中でもトップクラスだが、武装は雪片弐型1振りと多機能武装腕【雪羅】のみ。後付装備(イコライザ)はないため拡張性もなく、背部の大型スラスターは性能こそ良いがエネルギーをバカ食いする何とも判断に困る代物であるし、誇れる点はせいぜい単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)の零落白夜ぐらいだ。唯一の男性操縦者の専用機という唯一無二のトレンドがあるが、それが興味を引くだろうか。

 

 考える一同だったが、シャルロットの言葉でそれは終わった。

 

「そもそも、今の時期は見て貰えないんじゃないかな?天羽さんの機体をキャノンボール・ファスト仕様に調整するので忙しいだろうから。」

 

「そうだよなぁ。そう何個も弄ってられないよな。」

 

 そもそも3組の人間なので、一夏たちは完全な敵である。わざわざ敵を強くすることをするわけないと、せめてキャノンボール・ファストが終わってから頼みにいこうと一夏は決めた。

 

 

 

 

『白式弄る?』

 

『無駄に難易度高いミニゲームを好き好んでやる訳ないじゃん。』

 

『だよねー。何か臨海学校じゃ難易度低かったけど、普通の白式じゃミニゲームの難易度無駄に高いしクリアしても効果薄いしで利点が何もないし。』

 

『何より1回やると一夏がウザくなる。』

 

『何回もキャラの所に来るからね。』

 

 

 

 

「結局、天羽さんって高機動パッケージってあるのか?」

 

「どうなんだ、セシリア?お前が一番天羽とは親しいだろう、何かしらないのか?」

 

「高機動用かは分かりませんが、オートクチュールはあると言っていましたわ。」

 

 詳しく聞いた訳ではないが、セシリアは飛鳥の専用機に専用換装装備(オートクチュール)があるというのは聞いていた。勿論フルセイバーの事であるが、それをセシリアは知らない。

 

「へぇ、どんな名前かは分かる?オートクチュールなら名前からある程度どういう装備か分かると思うんだけど。」

 

「それが、わたくしにはまだ早いと言って教えてくれませんの。」

 

「『まだ早い』?」

 

「含みのある言い方だな。」

 

「このまま行けば使うことになるとも言っていましたから、単にわたくしの実力不足が原因ですわ。」

 

 セシリアのブルー・ティアーズは脳量子波に対応したためその本領を発揮することが出来るようになったが、今まで抑圧されていた実力を発揮できるようになっただけで実力が上がった訳ではないし、機体スペックが特別良くなった訳でもない。

 

 脳量子波によってグネグネ動くビット操作と偏光制御射撃(フレキシブル)による曲がるレーザー攻撃が出来るようになって間違いなく戦闘力は上がったが、飛鳥にしてみればまだまだ実力不足。日頃の練習で腕は着実に上がっているためそう遠くない内にその日は来るだろうが、今はまだ飛鳥がそれを持ち出すことはない。

 

「え、あの動きで実力不足なの?」

 

 今のセシリアの実力を知っているのはなのはによる改造の直後に模擬戦を行ったシャルロットだけだ。最近の放課後に行われる一夏の特訓ではスターライトmk-Ⅲによる円状制御飛翔(サークル・ロンド)瞬時加速(イグニッション・ブースト)の切り替え実演のみを行っているため、ビットを見せる場面がめっきりなかったためだ。

 

 一夏の特訓であるため偏光制御射撃(フレキシブル)で当てられる場面でも当てずにいるため、実際に体験したシャルロット以外ここに居る人間はセシリアの実力を誤解していることになる。

 

「えぇ、いつもブルー・ティアーズの攻撃はすべて切り払われ、そのままレーザービットが叩き落されますわ。」

 

「アレを切るの!?」

 

「まぁ、飛鳥さんのビットすべてがソードビット――切断能力を持った武器だからこそ可能なことなのですが。」

 

 シャルロットは思った。『あの偏向射撃(フレキシブル)を正確に切るソードビットって何それ?』と。

 

「そのソードビットという物はそれほど良い武器なのか?」

 

 ソードと聞いて箒がセシリアに質問した。

 

「有効射程こそソードの名の通り短いですが、速度も機動性もブルー・ティアーズ以上。尚且つビットすべてがヒートソードなのか溶断するので、材質に関係なく攻撃が可能。飛鳥さんの技術も相まって、とても強力な武装ですわね。」

 

「セシリアがそんなに言うってことは、それだけ凄いってことだよな。」

 

 実際、GNソードビットの弱点はソード故の有効射程の短さだけで、それ以外は既存のビットすべてを凌駕する性能を持っている。しかもセシリアはまだ知らないが、GNソードビットには単純なビットとしての使い方以外にも色々な役目があり、手持ち武器のGNソードⅤよりも重要な武器のため、飛鳥も落とされない様にビットを操る時は本気で気を配っているのも厄介さを増している要因だったりする。

 

「厄介なのは、飛鳥さんが高速戦闘中だとしてもそのソードビットを操ることが出来ることですわ。」

 

「何?ビットがそれだけの速度を持っているのか?」

 

「らしいですわ。」

 

 

「キャノンボール・ファスト、優勝最有力は飛鳥さんでしょう。」

 

 

 

 

『さぁやって参りました9月27日、キャノンボール・ファスト。』

 

『今大会は専用機の数が多いため訓練機部門と専用機部門に分かれています。勿論私は専用機部門、なのはは訓練機部門となっています。』

 

『結局フルセイバーなしだけど、負けそうになったからってトランザムは使わないでね。圧勝しちゃうんだから。』

 

『了解!』

 

 

 

 

 二年生のレースが行われる中、次にレースを行う専用機部門に参加する一夏、箒、セシリア、鈴、ラウラ、シャルロット、飛鳥の7人はピットに集まっていた。

 

「天羽さん、今日は負けないからな。」

 

「私も負ける気はありません。ここらで1回は公式の結果を出さないと、私が色仕掛けで防衛大臣を篭絡して代表候補生になったとかいう根も葉もない噂がまた流れてしまいますから。」

 

「え、そんな噂があったのか?」

 

「はい。まぁすぐに鎮圧しましたけど。」

 

「(何したんだろう……。)」

 

 一夏は聞かないことにした。

 

「そういえば、天羽さんの専用機ってキャノンボール・ファスト用に何かしたのか?スラスターを増設したとか、パッケージをインストールしたとか。」

 

「いえ、特には。」

 

「え?」

 

 スラスターも増設しない、パッケージも使わないノーマルの機体で高速バトルレースに参加って。

 

「心配はいりません。圧勝しないためですから。」

 

「圧勝って。」

 

「フルセイバーを使えば()()()()()()()()()()ですし、何より素の状態が一番ですから。」

 

 その言葉の意味を、一夏はすぐに思い知ることになる。




 次回、キャノンボール・ファスト

「トランザムは使うなって言ったでしょ!?」
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