IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第19話 天羽飛鳥、ドジる

『はい、皆さんおはこんばんちは。いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』

 

『フガッ!フンガー!』

 

『こっちでフガフガ言ってるのが相方の葉加瀬なのはです。』

『被告、葉加瀬なのはは卑劣にも友をゲーム内で実際には食べられもしないパフェ1つで売り払った罪で拘束されました。』

『トランザム使うなと言っておきながらGNソードⅡブラスターをセシリアに横流ししてトランザム使わざるを得ない状況を作るとか明らかにスパイ行為。よって片手間にくすぐりの刑に処します。』

 

『ンガー!!?』

 

 

 

 

「飛鳥さん!()()は何ですの!?」

 

 1位でゴールした天羽飛鳥から遅れること数十秒。セシリア・オルコットはゴールするとともに先に地面に降り立っていた飛鳥に詰め寄った。

 

「ナンノコトカナー。」

 

 既にISを解除しISスーツ姿の飛鳥は、同じくISスーツ姿となったセシリアから棒読みの言葉と共に顔を背けた。

 

「とぼけるのは無しですわ!【トランザム】とは一体何ですの!?」

 

「私の口じゃ言えないナー。」

 

「(なら脳量子波で言って下さいな!)」

 

「(コイツ直接脳内に……!)」

 

 未だに頭上のコースでレースが行われている中、飛鳥から渡された3倍に薄められたスポーツドリンクを受け取ったセシリアは脳量子波による会話を続けた。

 

「(トランザム、見たところによると機体性能を大幅に上昇させる特殊システムの様ですが、身体に負担などはありませんの?)」

 

「(ないよ。ISの操縦者保護とか色々使ってるからね。VTシステムはその辺使ってないし使う気も無かったから操縦者を使い潰すけど、トランザムでそんなことにはならない。)」

 

 機体の各部に取り付けられたGN粒子を貯蔵するGNコンデンサーから高濃度圧縮粒子を解放し、機体性能を引き上げる【トランザムシステム】。GN粒子の特性の1つである慣性制御能力を用いて操縦者の保護をしており、VTシステムの様に操縦者を傷付ける事が無いのが特徴だ。それこそ操縦者保護に使っているGN粒子さえも速度に当てるとかしない限りパイロットは傷付かない。

 

「(ならなぜ出し惜しみを?リスクがあったから使わなかったのではないのですか?)」

 

「(亡国機業(ファントム・タスク)の実働部隊のトップが見てたから。出来る限り性能を晒さないでやりたかったんだけど、セシリアがブラスターなんて持ってくるから無理だったよ。)」

 

「(亡国機業(ファントム・タスク)!?何処ですの!)」

 

 バッ!と観客席に視線を向けるセシリアに、飛鳥は脳量子波で言った。

 

「(今は居ないよ、会長に見つかって帰ったから。だからトランザムを使う踏ん切りが着いた。映像とか写真で後から見られるのと直で見られるのとじゃ与える情報量は違うからね。)」

 

「(なるほど、それで……。)」

 

 直に見られなければ良い。記録は全て葉加瀬なのはが消す。記憶にさえ残らなければ良かった。

 

 だから更識楯無がスコール・ミューゼルを見つけ、スコールもそれを察知して帰ったのを見て飛鳥はトランザムを使う決心をした。

 

 というのは他人に言うそれっぽいウソで、実のところスコールに見られてもいいやの精神でトランザムを使った。スコールが居ないのを確認したのはゴールしてからである。

 

 ソードビットを全て他にあてていたせいでセシリアのブラスターによる9つの偏向射撃(フレキシブル)に対応し切れず、1発でも攻撃を受ければレースに負ける状況。いっそソードビットで皆バラバラに切り裂いてセシリアとの一騎打ちに持ち込んでしまえば楽勝だったのだが、それは果たしてレースなのかという考えが過ぎ去ったために出来ず、結局悩んだ末にトランザムの使用に踏み切ったのだ。

 

「(思ってたよりセシリアの変革早いし、正月より先にフルセイバーのお披露目があるかも。)」

 

「(飛鳥さんを本気にさせられたと喜ぶべきか、全力を出されていないことを嘆くべきか……わたくしにもっと力があれば、飛鳥さんも全力で答えてくれる筈ですのに……。)」

 

「どりゃぁっ!!」

 

「くっ、足りんか!!」

 

 言葉なく行われていた2人の会話は、デッドヒートの末ゴールに突っ込んだ凰鈴音とラウラ・ボーデヴィッヒによって打ち切られた。

 

「流石レース仕様、3位に滑り込んだ。」

 

「キャノンボール・ファストのために作られただけのことはありますわね。」

 

 鈴とラウラから少し遅れてシャルロット・デュノア、篠ノ之箒、最後に織斑一夏がゴールする。

 

「紅椿は高性能だけど、やっぱり【絢爛舞踏】が使えないと厳しかったかな。最後にものをいうのは結局技量だし、その点でいえば妥当な結果だね。」

 

「箒さんの単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)をご存じでしたの?」

 

「なのはがね。束さんが作った半永久機関だからって気にしてた。すぐに興味無くしてたけど。」

 

「なぜですの?」

 

「ずっとスイッチを押し続けてないと停止するから、だって。」

 

 【絢爛舞踏】。数少ない単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)の中でも最上級と言っていい性能を持つ、エネルギーの倍化能力。ISはどれだけ高性能でもエネルギーが尽きてしまえばただの木偶の坊だが、絢爛舞踏さえあればエネルギーが尽きる心配をする必要がなくなる。機体出力の最高値を常に出すことができる夢の能力。

 

 理論上半永久機関足り得るそれに同じく半永久機関を制作したなのはは興味を持ったが、あくまでも単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)である絢爛舞踏はそのスイッチを操縦者――篠ノ之箒に委ねている。そのため使えないならとことん使えない。そんな気分屋な半永久機関に構う気はさらさら起きず、なのはは興味を無くした。

 

「性能はいいけど半永久機関としては欠陥品。その癖機体として纏まってるからシュヴァルツェア・レーゲンみたいな改善案を考える気にもならない。面白くないって言ってたよ。」

 

「最新鋭の第四世代機に凄いことを言いますわね、なのはさん……。」

 

 

 

 

『あひぃ……。』

 

『ふぅ……さて、キャノンボール・ファストは1位私、2位セシリア、3位鈴、4位ラウラ、5位シャル、6位箒、7位一夏となりました。セシリアが2位なこと以外並びは順当です。』

『はい、このキャノンボール・ファストは大体の順位が決まってます。大体鈴、ラウラ、セシリア、シャル、箒、一夏の並びですね。装備や本人の力量とかが関係するので、プレイヤーが何かしらの行動を起こした場合はこの限りではありません。今回のセシリアがその例ですね。』

『……ソードビット無しとは言えトランザム使わないとやられてたって強くない?いや撃墜させるだけならトランザム抜きで出来るんですけど、それにしてもバグってない?純粋種ってバケモノなの?』おまいう

 

 

 

 

 注目の演目であった1年生専用機部門も無事に終わり、その後も何事もなくレースが行われた。

 

 最終演目の3年生によるエキシビション・レースも大盛況。キャノンボール・ファストは今年のIS学園のイベントで初めて事件が起こらずにその全演目を終えた。

 

「くそー、勝てなかったなー。」

 

 キャノンボール・ファスト終了後の織斑家。予定通りに行われた織斑一夏誕生日会の場で一夏は悔しがっていた。

 

「天羽さんのソードビットで全然前に出れなかったし、無くなったと思ったら今度は箒が狙ってくるし。」

 

 GNソードビットAによる影抜きを受け一度スピードを落としてしまった隙に箒に抜かれ、そのまま抜けずに7位。スペックだけなら第三世代でも指折りの白式で最下位という結果は、勝負となれば勝ちたいという欲求のある一夏には普通に悔しかった。

 

「そもそもいくら速度特化の大型スラスターがあるとはいえ、素人のセッティングで勝てる方がおかしいのよ。ふつーよふつー。」

 

 悔しがる一夏に鈴はそういう。代表候補生として国で勉強をしてきた鈴たちと違って、一夏のISに対しての知識は増えこそしたが未だに素人レベル。そんな人間が行ったセッティングでレースに勝つ方が、代表候補生たちの実力を疑問視されてしまう。

 

「そうですわよ一夏さん。最後に物をいうのは技量だと飛鳥さんも言っておりましたし、むしろ引き離されずゴールしたことを誇るべきですわ。」

 

「そういうセシリアも大分僕たちを引き離してゴールしてたよね。1人だけソードビットがついてなかったけど、天羽さんとの一騎打ちはどうだったの?」

 

 すかさず一夏を励ましにかかったセシリアだが、シャルロットの乱入によって近付くことが妨害される。それに気を悪くすることなくセシリアはシャルロットの言葉に返答した。

 

「完敗ですわね。本気は引き出せましたが全力には程遠いですし、その本気もレースで勝つために仕方なく出したもの。試合であれば片手間に切り刻まれて終わりですわ。ソードビットが1つでもあれば偏向射撃(フレキシブル)も全て切り払われていたでしょうし。」

 

「そうだセシリア!アンタいつの間に偏向射撃(フレキシブル)なんて出来るようになったのよ!」

 

「えっ、2学期が始まってすぐですけれど。」

 

「大分前じゃない!何で見せてくれなかったのよ!」

 

「機会がありませんでしたから……。」

 

「結構あったでしょうが!」

 

 「うがー!」と吠える鈴に「えぇ?」と困惑気味のセシリア。放課後に結構一緒にいたのに一度も偏向射撃(フレキシブル)を見せて貰えなかったのが寂しい鈴の気持ちを、未だに変革し切っていないセシリアに察することはできず、騒がしく一夏の誕生日は過ぎていった。

 

 

 

 

『そういえば飛鳥。』

 

『ん、なに?』

 

『これ7巻のタッグマッチってやるの?あれキャノンボール・ファストが襲撃されたからやることになったって読み返したらあったんだけど。』

 

『………………。』

 

『あれないと簪ちゃんとかすごい面倒なことになると思うんだけど。』

 

『………………。』

 

『戦闘以外ならボクで代用できるけど……どうするの?』

 

『副会長権限で開催する!!』

 

『今回のドジである。』




タッグマッチ開催の理由とか忘れてる訳ないじゃない(震え声)
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