IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第23話 篠ノ之箒、輝く

「飛鳥ちゃんやイージスコンビとは決勝まで戦わないけど、それでも他が弱いかと言われたらそうじゃないわ。」

 

 生徒会長・更識楯無は試合を行うアリーナのピットで、パートナーとなった篠ノ之箒と作戦会議をしていた。

 

「クラスメイトだから知ってるでしょうけど、第一試合で戦うシャルロットちゃんは第二世代機とは思えないぐらい巧いし、ラウラちゃんにはAICがある。向こうに主導権を握らせると簡単に負けるわ。」

 

 シャルロット・デュノア。IS学園に居る専用機持ちで唯一第二世代に乗っているが、そのテクニックは第二世代に不相応の凄まじい物を持っている。特に高速切替(ラピッド・スイッチ)が得意であり、苦手な武器もなくあらゆる状況、あらゆる距離で高いパフォーマンスを発揮できる。

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツの特殊部隊『シュヴァルツェア・ハーゼ』、通称黒ウサギ隊の隊長を務める軍人。軍人として実戦的な訓練を多く積んできたからか立ち回りが巧く、また武装も全距離で攻撃が出来るバランスのいい物を取り揃えており、何より第三世代技術のAICによる停止結界が強力。

 

 共通するのは、相手を選ばない単純な技量の高さ。それがシャルロット&ラウラペアの強味である。

 

「瞬間的にでも2対1の状況になったら厳しい戦いよ。だから、出来る限り2対2を維持。それか1対1の状況に持ち込むのが理想ね。」

 

「1対1、ですか。」

 

「そうなった時は箒ちゃんはシャルロットちゃんの相手をお願い。私がラウラちゃんの相手をするわ。」

 

 重要なのはラウラのAICを如何に攻略するかだ。発動してしまえば仲間のフォローは出来ないし、何より無防備になる。動けない的などシャルロットとラウラには簡単に撃破できるし、それをさせまいと動く仲間も危険に晒してしまう。

 

 第四世代の紅椿と言えど、真正面からAICを突破することは難しい。AICが強力と言うのもあるが、何より操縦者の箒が未だに紅椿を扱い切れていないからだ。だからこそ楯無はラウラの相手をすると自分で言ったのである。

 

「出来れば()()()を温存したまま勝ちたいけど、危なくなったら無理せずに使って。」

 

「分かりました。」

 

 

 

 

「取りあえず箒を先に落とすぞ。」

 

「そうだね。」

 

 一方その頃、時を同じくして行われていた箒たちの対戦相手であるシャルロット・デュノアとラウラ・ボーデヴィッヒの作戦会議はとても簡素な物だった。

 

「悔しいけど、楯無さんを相手するなら2人がかりじゃないと厳しい。」

 

「紅椿の火力も侮れん。だが燃費が悪い。放っておいても自滅するだろうが、わざわざ逆転の目を残す訳には行かないからな。」

 

 更識楯無。専用機ミステリアス・レイディが操る水は変幻自在、攻防一体。機体の能力と国家代表である楯無の腕が合わさり、1対1で敵を翻弄し自分のペースに持ち込むことを得意とする。

 

 篠ノ之箒。第四世代機である紅椿は世代の差を感じさせる圧倒的な性能を持っているが、燃費が悪い。全身の展開装甲によってあらゆる状況において最適な形態を取ることができる。だが燃費が悪い。(大事なこと)

 

 警戒すべきはもちろん国家代表の楯無だ。だが燃費が悪いとは言え、第四世代を操る箒の火力は出来るだけ早く潰しておきたい。要所要所で展開装甲由来の高火力を受ければ、そのまま押し切られてしまうからだ。

 

「だがあの女のことだ。速攻で落とさなければすぐにフォローに来る。」

 

「それに箒もただ飛んでるだけじゃないし、作戦は必要だよね。」

 

 

 

 

「悪いが勝たせてもらうぞ。」

 

「あら。おねーさんに勝てるかしら?」

 

「もちろんです。目指すは優勝ですから。」

 

「私も、負ける訳にはいかない。」

 

 ピットから飛び出した4人は空中に浮かんだまま言葉を交わし、カウントダウンが始まるのを待った。

 

【箒ちゃん。まずは射撃で分断、その後近付いて1対1に持ち込むわよ。】

 

【分かりました。】

 

【シャルロット、作戦通りにやるぞ。】

 

【オッケー、任せて。】

 

 互いにパートナーとプライベート・チャンネルによる最後の密談をし、カウントダウンが始まると同時に構えた。

 

 箒は雨月と空裂を両手に持ち、楯無は蒼流旋を展開(コール)

 

 シャルロットは高速切替(ラピッド・スイッチ)による即時対応が出来るため手に何も持たず、ラウラも手に持つ武装はないため何も持たず。

 

 対照的な2つのペアは、試合開始と同時に動き出した。

 

「ふっ!」

 

 楯無の蒼流旋に内蔵されたガトリングによる射撃と、箒が手に持った空裂を振ることで放ったエネルギー刃によって、シャルロットとラウラの距離を引き離し、1対1に持ち込もうとする。

 

 狙い通り2人は分かれ、そこにそれぞれが1対1で当たろうと飛行した瞬間、

 

「そぉれっ!」

 

 シャルロットが手の中に展開(コール)した何かを放り投げた。

 

「何を――!?」

 

 その何か――スモークグレネードは、その用途通りに煙を吹き出し、即座に周囲から視界を奪い去った。

 

「煙幕?でも……。」

 

 IS用のスモークグレネードという物はある。が、ハイパーセンサーを持つISにはそんな物は関係ない。そもそもコア・ネットワークで繋がっている以上、大まかにだが位置と方向も分かる。潜伏(ステルス)モードにすればその情報も隠せるが、やっぱりハイパーセンサーで場所は分かる。というか煙幕の範囲から抜け出せばいい。煙幕を張ったところでIS戦に慣れていれば――。

 

「――しまった!?」

 

 そう、I()S()()()()()()()()()、容易く対処できる。代表候補生ならもちろん、国家代表である楯無なら。

 

 たった1人、篠ノ之箒という()()()()()()()()人間を除いて。

 

「煙幕!?どこに――。」

 

「ここだよ!」

 

「行くぞ、シャルロット!」

 

「ッ!?」

 

 煙幕で視界を奪われ、それに対処する前に飛んできたシャルロットとラウラの2人によって箒は包囲された。

 

「逃がさん!」

 

 AICによる拘束、それと同時にレールガンのチャージを始めるラウラ。

 

「すぐに終わらせる!」

 

 両手に銃器を持ち、それを連射しながら高速切替(ラピッド・スイッチ)によってありとあらゆる武器へと弾切れが起こった端から持ち変えるシャルロット。

 

 ガリガリと削られていくシールドエネルギー。AICによって動けずに、むざむざとその減少を眺めるしかない箒。

 

「これで!」

 

 チャージの終わったレールガンを突きつけ、ラウラが最後の一手を放とうとした時、

 

「紅椿!」

 

 ()椿()()()()()

 

「!?」

 

 驚きこそしたがレールガンは発射され、スモークグレネードの物とは違う黒い煙が箒の姿を覆い隠す。

 

「離れなさい!」

 

 そこにガトリングを斉射しながら楯無が飛んでくる。シャルロットとラウラは飛び退いてその弾丸を躱した。

 

 その飛行で風が起こったからか、それとも時間が来たのか、スモークグレネードの煙幕が晴れていく。

 

 視界が通る様になったアリーナの空でただ一点を隠す黒煙が、徐々にその姿を薄れさせていく。

 

 ――そこにあったのは、豪華絢爛なISだった。

 

「【絢爛舞踏】!」

 

 単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)【絢爛舞踏】を発動させ、溢れるエネルギーによって輝く紅椿を纏った箒が、ダメージを感じさせずにそこに居た。

 

「絢爛舞踏!?」

 

「いつの間に使えるように……!?」

 

「隠し玉だ!」

 

 元々スイッチの入れ方が分からないだけで、スイッチ自体は存在していた。IS乗りとして、何より単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)の使い手として先輩である楯無からそのスイッチの入れ方を教えてもらった箒は、少し時間こそかかるが絢爛舞踏を自由に発動できるようになっていた。

 

 シャルロットの銃弾の雨を受け、ただシールドエネルギーの減少を眺めていたのではない。絢爛舞踏を発動するために意識を集中させていたのだ。

 

「(まずい!絢爛舞踏を突破できる装備がない!)」

 

 エネルギー倍化能力である絢爛舞踏は、燃費が悪い紅椿の性能を最大限に発揮させるために設定された専用能力。常にエネルギーが増幅され、保持できる最大量を維持し続けることができ、そのエネルギーを触れるだけで他のISにも譲渡できるため、一撃で戦闘不能に追い込まねばほんの少し時間を置くだけで回復されてしまう。

 

 シャルロットとラウラの機体には威力が高い装備もある。レールガンや盾殺し(シールド・ピアース)がそうだ。だが、それも一撃で戦闘不能に追いやるほどの威力を持っているかといえば違う。

 

 絢爛舞踏。たったそれだけでこの試合は勝敗が確定した。

 

 

 

 

「絢爛舞踏、か。」

 

 天羽飛鳥が待機しているピット。そこで飛鳥と共に試合を見ていた葉加瀬なのはは、ポタージュを入れた魔法瓶を片手に目を細めた。

 

「どうしたのなのは。」

 

「何を対価にしてるんだろうね、あれ。」

 

「あぁ、それ?」

 

 絢爛舞踏。エネルギー倍化という唯一無二の能力。科学の範疇であるISが行うそれは、何かしらの法則がある。

 

「E=mc²、エネルギーと物は等価交換。無からエネルギーは生まれないし、エネルギーは無くなって見えても無くなる訳じゃない。」

 

「アインシュタインの特殊相対性理論だっけ。その最終系がマスターハンドにも使ってるエネルギーの実体化、対生成理論。」

 

 つまり、どこかからエネルギーを拝借しているのでないなら、絢爛舞踏にも何か対価にしている物がある。零落白夜がシールドエネルギーを対価にするように。

 

「GNドライヴもその法則に則ってる。重粒子を崩壊させてGN粒子――エネルギーにしてるからね。」

 

「難しい話しないで?GNドライヴは私よく分かってないんだから。」

 

「昔説明したじゃん。」

 

「位相欠陥とか他で聞かない話されても分かんないよ。」

 

 資料を読んでも全然分からないGNドライヴ。この世界で理解できるのはなのはと篠ノ之束ぐらいだろう。

 

「で、絢爛舞踏はどうなの?」

 

「物質をエネルギーにしてる様には見えない。使ったエネルギーを回収してる訳でもない。何か別のエネルギーを変換してる。」

 

「別のエネルギー?でも見た感じ何か変わった感覚はしないけど。」

 

 変換できそうなエネルギー源は周囲の空間だけだが、純粋種としての感覚がその空間から何かが失われていく喪失感を捉えない。何を変換しているのか。

 

「周りからは取ってない、内から溢れ出たエネルギーを変換してる。」

 

「――感情エネルギー?」

 

「仮説だけどね。」

 

 唯一、等価交換の法則を外れるエネルギーである【感情】。生体エネルギーとは違い溢れ出すそれは、利用できれば無限動力として使用できる。

 

「でも束さんが感情エネルギーなんて使う?」

 

「………………使わなそう。」

 

「(あっ自分で言ってて明らかに違うって思ったから萎えた。)」

 

 飛鳥となのはからすれば、篠ノ之束という人間は夢を追い求めるロマンチストではあるが、論理的な判断をする人間だ。感情エネルギーという揺れ幅のあるエネルギーを使うぐらいなら、異世界からエネルギーを持ってくるだろう。

 

「束さんのことだから何か仕掛けがあるんだろうけどさ、その仕掛けを解き明かしても使わないでしょ。」

 

「使わないけど解きたい……。」

 

「なら先に積んであるクロスワードパズルの本消化して?」

 

「めんどい……。」

 

「おい。」




 ISの戦闘シーンって難しい。特に楯無。無駄に学園最強っていう公式の肩書があるせいで書きにくい。下手な行動させられない。

 あと箒が未熟なので原作であまり活躍しないし何ならアリオス(電池)としての活躍の方が目立つけど、良く考えなくても紅椿って最強なんですよね。絢爛舞踏でずっと動いてられるし、展開装甲で各分野に特化できるし。バトルパートで扱いにくい。
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