「生徒会長が勝ったか。」
3年生唯一の専用機持ち、アメリカ代表候補生のダリル・ケイシーは待機していたアリーナのピットから第一試合の結末を見てそう呟いた。
「絢爛舞踏、だるいっスねあれ。」
隣に座るパートナー、ギリシャ代表候補生のフォルテ・サファイアがそう言った。
「せっかく削ったシールドエネルギーがすぐ満タンとか、すごいっスね第四世代。」
「そうだな。でもオレたちイージスなら負けねぇよ。」
フォルテの肩を抱き寄せ、ダリルはそうフォルテに囁いた。
「ちょっと、くすぐったいっスよ。」
頬を赤らめそういうフォルテに微笑んで、ダリルはその唇を奪った。
「絢爛舞踏、使えるようになってたのね。」
「まずいですわね。わたくしたちの攻撃を集中させてようやく絢爛舞踏の回復量を超えるダメージを与えられるかどうか。抵抗や妨害を考えると削り切れるか……。」
イージスコンビと同じようにアリーナのピットで待機していた凰鈴音とセシリア・オルコットのペアは、ディスプレイに映る第一試合の様子に苦い顔をしていた。
立ち回りも技術もまだまだで、第四世代の機体性能に頼りがちではあるが、篠ノ之箒はシャルロット・デュノアとラウラ・ボーデヴィッヒという代表候補生でも指折りの実力者たちの猛攻から生き残ってみせた。
もちろん絢爛舞踏によるシールドエネルギーの回復があってこそだが、だからこそ恐ろしい。AICで防御も回避もできない状態で、ただ回復していただけで生き残ったのだ。本来はもっと与えられるダメージは少なかったのに、全弾命中しての生存。脅威としか言いようがない。
「戦うのは決勝だし、今は次の試合に勝つこと考えましょ。」
「そうですわね。」
そうして2人は作戦会議を始めた。
「はじめまして。イギリス代表候補生、セシリア・オルコットですわ。」
「中国代表候補生の凰鈴音よ。」
「おう。オレはアメリカ代表候補生のダリル・ケイシー。こっちはギリシャ代表候補生のフォルテ・サファイアだ。」
「どうもっス。」
アリーナの空中で会合した4人がまず交わしたのは、初対面なので普通のことだが自己紹介だった。
「お噂は聞いていますわ。イージスと謳われるそのコンビネーション、ぜひ見せてくださいな。」
「あぁ、そのつもりだ。」
威嚇なのか、ダリルの専用機ヘル・ハウンドの両肩にある特徴的な犬頭から炎が漏れる。
「絶っ対に勝つわよ、セシリア。優勝して一夏にギャフンって言わせてやるんだから。」
「えぇ、元より負けるつもりはありませんわ。」
カウントダウンが始まる。
セシリアは天羽飛鳥から貰ったGNソードⅡブラスターを、鈴はこの日のために刀刃仕様にしてもらった双天牙月を、ダリルは双刃剣の【
「ブルー・ティアーズ!」
まず行動したのはセシリアだった。いつものように4機のレーザービットを飛ばす――のではなく、自分の周囲に浮かばせた。
今までセシリアが相手を囲むようにビットを飛ばしていたのは、ビットの利点である多角的攻撃をするにはそうするしかなかったからだ。しかし今のセシリアは
ならわざわざ相手を囲むより、自分の側に従えた方が操縦難易度的にやりやすい。そもそもタッグである以上、ちょこまかとビットがあっては鈴の邪魔になる。だからセシリアはビットを周囲に浮かばせ、そこから
「まずはご挨拶よ!」
続いて鈴が肩部大型衝撃砲を連射しながら前に出る。
「ま、定石通りだな。だが――」
「――それじゃムリっス。」
衝撃砲は当たることなく、その前で『何か』に阻まれた。
「それが【イージス】ね!」
それを見た鈴が叫ぶ。
【イージス】。それはダリルとフォルテのコンビネーションの名前であり、熱気と冷気を操る2人のイメージ・インターフェースを組み合わせて行う、分子の相転移によりエネルギーの変換・分散させる防御結界の名前である。
IS学園名物・イージスコンビ。国家代表とさえ渡り合えると言われるのはその連携の技術が高度であるだけでなく、その防御結界があるからだ。
「イージス、破ってみせますわ!」
「ヒヨッコには出来ねぇな!」
セシリアが周囲に浮かばせたレーザービットから
それを撃ち落としながら、セシリアは苦い顔で戦況を見た。
「(機体性能に大きな差はない。単純に練度の差……いえ、経験の差。)」
単純な話だ。ISの専門学校であるIS学園で2、3年学んだイージスコンビと、まだ半年ほどしか学んでいない鈴とセシリアでは、埋めがたい『差』がある。
パートナーとのコンビネーション、操縦技術の練度、そして何より経験。単純に1、2年早くIS学園に入学したダリルとフォルテは、その分だけ授業を受け、専門的な訓練をしている。それが差となって現れる。
「(
未だに真価を発揮できない武装ではあるが、それでもビットで撃った時よりも威力は高いGNソードⅡブラスターによる攻撃なら防御結界に阻まれようと届く
「(イージスを突破する
たった1発突破したところで、イージスコンビなら容易く対処する。実際に4つのレーザーは捌かれた。なら――
「(――カギは、鈴さんですわね。)」
「実の所さ、私の才能って大したことないの。」
「そうなんですの?」
いつもの様に飛鳥さんと訓練している時、休憩中にふとしたことで『才能』の話になりました。
「私もまぁ、才能はある方だよ?伊達に『こう』なる前からIS適正Sじゃないからさ。ブリュンヒルデになれる程度には戦う才能もばっちり持ってる。」
「でも、鈴ちゃんの方が才能はある。」
「鈴さんが?」
「そっ、鈴ちゃん。」と、手持ち無沙汰にスポーツドリンクの容器を両手でキャッチボールしだした飛鳥さんは言いましたわ。
「今世界中に居る専用機持ちで、これから成長していくことも考えた『
「鈴ちゃんはその1人。もちろんセシリアもね。」
「だりゃぁ!!」
「……。」
鈴が振るう双天牙月を弾き、逸らし、躱し、ねじ伏せながら、ダリルは違和感に眉をひそめた。
「なぁ、凰っつったか。」
「そうだけど、なに!?」
「お前、ISの勉強始めたのいつからだ?」
「中2の時よ!文句ある?!」
「あー、だからか。」
納得行ったような顔をするダリルに、その顔がムカついた鈴が突進する。それを往なしながら、ダリルは言った。
「肩の力抜け。気張りすぎだ。」
「ハァ!?」
「もっとテキトーでいいんだよ、お前。変に知恵使おうとするな。感性で乗り回せ。」
右手に持った双刃剣で肩を叩きながらそう言うダリル。
「そんなの出来る訳……!」
「やってみろ。今のお前はその方がいい。」
【鈴さん、わたくしもダリルさんを支持しますわ。】
「セシリア!?」
味方からの思わぬ声に、プライベート・チャンネルではなくオープン・チャンネルで答えてしまう。
【大丈夫、わたくしが支えます。だから鈴さんは、鈴さんの思うままに動いてくださいまし。】
「……わぁったわよ、もう!やればいいんでしょ!?」
自棄糞気味に叫んだ鈴はそのまま
「どうなっても知らないからね!」
【大丈夫ですわ。鈴さんの動きは
その言葉と同時に、
「さぁ、これでどう変わるか──!」
そう言いながらイージスを構築するダリルとフォルテ。
「──ここ!」
「──!」
「やっぱそうするわよね!」
フォルテの氷の盾で即座にガードされたそれに、鈴はさらに衝撃砲を放った。
それはフォルテが作った氷の盾を貫通し、第二試合初めてのダメージをイージスコンビの与えることに成功した。
「作戦とかもうどうでもいいわ!セシリア!援護して!」
【えぇ!】
ダリルの感じていた違和感、それは不馴れな動きだ。どうにも窮屈そうにしていたのだ。何故かと言えばとても簡単な話、鈴が作戦というものに慣れていなかったからだ。中学2年から勉強を始め、僅か1年での専用機受領は確かに快挙だが、十分な教導が終わっていなかった。他に適任が居なかったためまだまだ『これから』の鈴が選ばれたが、知識面はともかく実習が終わっていない。
作戦遂行のための心得がないのだ。投げ出すことはしないが、予定通りに動くというのがぎこちない。だからこそ動きがおかしくなる。それがダリルには気になった。だからISを学び始めた年を聞いて、つい1年前というので納得した。
1年ちょっとで作戦通りに行動するのは、訓練時間的に教導が終わっていない。それを見抜いたダリルは、先輩のアドバイスとして『そんな作戦捨てちまえ(要約)』と言った。何故言ったか?先輩が後輩を気にかけるのは当然だろbyダリル
「へっ、そうこなくっちゃな!」
「せんぱ~い、焚き付けたんですから頑張って倒してくださいよ~。」
「わぁってるって。」
そうして両者は、第2ラウンドを始めた。
結論から言えば、イージスコンビの勝ちに終わった。いくら鈴が天才で、いくらセシリアが変革を始めているとはいっても、相手はコンビという戦い方に慣れている。その上経験も豊富で、防御に秀でている。ダメージが思ったように与えられなかったのだ。
だが、その相手をして撃墜されずに判定勝負へと持ち込ませた鈴とセシリアは、間違いなく強かった。
イージスは強さがいまいち分からないし、キャラも分かりにくい。ゴーレムⅢに機体が帰国して修理必要なぐらい壊されるってのが判断に困る。倒してはいるんですが……。あとなぜ離脱させたし。