IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第25話 更識簪、姉を撃つ

「勝てる可能性は十分にあったんだけど、負けちゃったか。」

 

「才能は1級品なのに気性が激しいからそれを発揮しきれない。未だに目覚め切らない能力。どっちかがあれば勝てたのにね。」

 

 アリーナのピット。そこで第二試合を見ていた天羽飛鳥と葉加瀬なのはは、その試合結果を見てため息混じりにそう言った。

 

 飛鳥に勝てる可能性がある人間、その中に含まれる凰鈴音とセシリア・オルコットは、その潜在能力を発揮させればイージスにも勝てる筈だった。

 

 セシリアはGNソードⅡブラスターの能力である射程と威力の拡張を使えれば、防御結界を易々と突破した上で、フォルテ・サファイアが張る氷の盾さえも突き破って一方的な攻撃を行えただろう。

 

 鈴であれば、感情に振り回されずにその身に宿る才能に身を委ねられれば、最適解の行動を行い続け、連撃を途切れることなく叩き込み続けただろう。

 

 どちらかがあれば勝てた。イージスは強いがそれは経験に依る物であり、才能もあるにはあるがそれは鈴の物よりも小さく、セシリアの能力より取るに足らない物だ。2人のどちらかが真価を発揮できれば、本当に勝てた。

 

「鈴ちゃんは簡単にいかないだろうとは思ってたけど、セシリアの覚醒もなかったなぁ。これ切っ掛け作りしないとダメかな。」

 

「ビット操作の練習に付き合うついでにツインドライヴで後押ししてきたけど、あとは覚悟かごり押しじゃないと無理だろうね。」

 

 あと2、3年もすれば冷静さを自然に手に入れる鈴と違って、セシリアは放課後に下地を作ってきたが切っ掛けがなければ変わらない。

 

「……成り行きに任せよう。その時が来たなら、それが運命だ。」

 

「運命ねぇ……そう見えるだけの必然ばっかりだけど。まぁ、因果の話はするだけ無駄だし、そうしとこうか。」

 

 

 

 

『凄い久しぶりに喋った気がする。』

 

『これだから大会は嫌なんだ。』

 

『次は第三試合、なのはが弄った白式と打鉄弐式VSミステリアス・レイディと紅椿。なぜだろう、私には結果が見える。』

 

『地獄が生まれるだろうね。』

 

 

 

 

 第三試合――――それは一方的とは言えないが、反撃をさせない試合だった。

 

「【山嵐】!」

 

 試合開始と同時にイメージ・インターフェースによる()()()()()()()()()()()()を行い、4()8()()()G()N()()()()()を発射した更識簪の手によって。

 

「マルチロックオン!箒ちゃん、迎撃よ!」

 

「【空裂】!」

 

 マルチロックオンを知っていた更識楯無の指示で、篠ノ之箒がエネルギー刃を飛ばす空裂でGNミサイルの迎撃を始める。楯無も蒼流旋に内蔵されたガトリング・ガンで撃ち落としにかかる。

 

 だが、GN粒子の特性で慣性や重力を軽減しているGNミサイルは速い上に、その軌道は通常のミサイルよりも鋭い。48発という数も相まって、全てを落とすことはできない。

 

「箒ちゃん、展開装甲で防御して!」

 

「は、はい!」

 

 再び楯無の指示で防御を行う箒。楯無もいつもやっている様に水のヴェールによる防御を行った。

 

 それが命取り。

 

 展開装甲のエネルギーシールドとアクアナノマシンの水のヴェールにGNミサイルが接触すると同時に、GNミサイルは内蔵された小型GNコンデンサーからGN粒子を流し込んでそれを破壊しにかかった。

 

「っ!?」

 

 箒は紅椿の性能もあって防ぎ切った。だが楯無は水のヴェールを吹き飛ばされた。

 

 そこにまたGNミサイルが殺到する。今度は防御のない楯無を。

 

 GNミサイルは接触個所からGN粒子を注ぎ込み、内側から破壊する。ISのシールドバリアーにそれが行われるとシールドエネルギーを大幅に消費するだけで済むが、装甲に当たればその箇所を完全に破壊され機能不全に。運が悪いと絶対防御が発動し、数が多ければISの操縦者保護機能が働いて昏睡状態にまで追い込む。下手な武器よりも殺意の塊のような代物だ。

 

 それがフルスクラッチ故に装甲の薄い楯無を襲う。

 

「あ――」

 

 1発なら絶対防御だけで済んだだろう。だが2発、3発と食らえば?

 

 1対1ならそもそも当たらなかっただろう。引き撃ちで全て対処したはずだ。だが今回は箒のお()りを優先し、回避ではなく防御を選んだ。だからこそこの結果は必然だった。

 

 試合開始から20秒、更識楯無はシールドエネルギーを0にした。

 

 

 

 

『いや早いよ!何やってんの!?』

 

『GNミサイルつよっ。』

 

『クアンタでもまともに受けたら落ちるけど、いくらなんでも脆いよ楯無!』

 

『水のヴェールが優秀だから堅いけど、装甲少ないしそりゃ素の防御力は低いよね。』

 

 

 

 

「楯無さん!?」

 

 すぐ横で落ちていく楯無に驚く箒。

 

「まだ終わってないぜ、箒!」

 

 そこに瞬時加速(イグニッション・ブースト)で突撃し、【零落白夜】を発動させ雪片弐型で斬りかかる織斑一夏。

 

「リロード開始……!」

 

 拡張領域(バススロット)から次のGNミサイルを山嵐に装填し出す簪。更に手に対複合装甲用薙刀【夢現】を持ち、瞬時加速(イグニッション・ブースト)のためのチャージを始める。

 

「くっ、負けるものか!」

 

 そう言って防御に使っていた展開装甲を閉じて両手の空裂と雨月で雪片弐型と打ち合う箒。そこに一夏は左腕の多機能武装腕【雪羅】の荷電粒子砲による攻撃を至近距離で行った。避けれる筈もなく直撃しよろめいたところに、簪が瞬時加速(イグニッション・ブースト)で飛び込んでくる。

 

「絢爛舞踏は使わせない……!」

 

 少しでも時間を与えればダメージを回復する絢爛舞踏の発動の隙を与えない連撃。夢現と連射型荷電粒子砲【春雷】で絶え間なく放たれる攻撃は、確実に紅椿のエネルギーを減らしていく。

 

【スイッチ!】

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

 プライベート・チャンネルによる合図と同時に、簪が離れ一夏が入れ替わって攻撃を始める。

 

 1週間前、なのはによって打鉄弐式が完成してから、2人は何もして来なかった訳ではない。少ないながらも連携パターンを構築してきた。これもその1つ。特定の単語による行動の示し合わせである。

 

 コンビネーションとしては初歩中の初歩だ。これからやることを言っているに過ぎない。だがそのシンプルさが一夏には合っていた。覚えることが少ない分、シミュレーションも容易で、何より()()()()()()()()()()()。以前シャルロット・デュノアとペアを組んだ時のような、ただフォローされているのではなく、フォローしていると感じられる。それが一夏には嬉しい。

 

 浮かれてはいないが、テンションは高い。空回りもせず、思うように体が動く。俗にいう絶好調。零落白夜も、まだまだ無駄はあるが今までより格段に節約出来ている。

 

「悪いな箒!今日は負ける気がしない!」

 

「なにをっ……!」

 

【ブラスト!】

 

「!」

 

 簪からの合図と同時に一夏が箒から離れる。その瞬間、紅椿のハイパーセンサーがロックオンアラートを発した。

 

「しまっ──」

 

「山嵐!」

 

 48発のGNミサイルが、今度は1人に向けて放たれる。

 

「(絢爛舞踏──ダメだ、間に合わない!)空裂──ッ!?」

 

 先ほどと同じようにエネルギー刃で迎撃しようとする箒に、一夏が雪羅の荷電粒子砲を当てて妨害する。その隙はあまりに大きく、迎撃する時間がなくなった箒は展開装甲による防御で乗り切ろうとそのシールドを広げ──

 

────ドオォォォォンッッ!!!

 

 巨大な爆発の中に消えた。

 

 爆発から数秒経ってから、爆煙の中から箒が地面に向かって落ちていく。

 

 アリーナの大画面が、試合結果を表示した。

 

勝者 織斑一夏&更識簪ペア

 

 ロシア国家代表と第四世代のペア、何よりもオッズ1位を相手に、シールドエネルギーを全損させての勝利。

 

 オッズワースト2位が起こした大判狂わせに、アリーナは弾けた。

 

「「「わあああああああ!!!」」」

 

「すごい!すごいよかんちゃんとおりむー!」

 

「会長に勝っちゃった!」

 

「賭けてよかったぁぁぁ!」

 

 その声を受けながら、一夏は簪の元に飛んで行った。

 

「やったな、簪!」

 

「うん……!」

 

 笑みを浮かべる簪に一夏は右手を掲げる。

 

「……?」

 

「ほら、ハイタッチ。やろうぜ。」

 

 ぎこちなく右手を上げた簪とハイタッチを交わした一夏は、そのまま地面に倒れたままの楯無と箒の元へと降りて行った。

 

「織斑君……。」

 

 触れた手を胸元に抱いた簪もゆっくりと降り、やっと勝てた姉との仲直りの第一歩を踏み出そうと、その肩を担いだ。

 

 

 

 

 アリーナのピット、そこで第三試合を見ていた飛鳥が呟いた。

 

「GNミサイルってさ。」

 

「ん?」

 

「クアンタでもまともに受けたら落ちるよね。」

 

「まぁね。」

 

 開発者であるなのはのお墨付きが出た。

 

 ダブルオークアンタは高性能だが、それでも限度はある。もちろん防御力も高いし装甲も堅いが、GNミサイルはそれさえも突破することが可能だ。

 

「私聞いてない。」

 

「言ってないからね。」

 

「大事なことじゃん。GNミサイル渡したなら言ってよ。」

 

「GNミサイルでもそうじゃなくても対処法は同じでしょ。」

 

 GNビームガンやGNソードⅤライフルモードでの迎撃、それがダブルオークアンタでの主なミサイル対処法だ。それはGNミサイルだろうと変わらない。というか銃弾にもやるので、今更言ったところで大した意味がない。結局撃ち落とすのだから。

 

「いや万一の時GNシールドで防げないでしょ。危ないよ。」

 

「来ない未来を想定することほど無意味なことないよ飛鳥。」

 

「可能性だけなら0%はないって昔言ったのなのはでしょ。」

 

「飛鳥だけは別。零落白夜で事故らない限り負けないじゃん。」

 

「セシリアとか鈴ちゃんで負け筋は3つあったんだよなぁ……。」

 

 飛鳥がこのトーナメントで警戒していた負け筋は3つ。1つは零落白夜のクリーンヒットを受けてのシールドエネルギー全損。2つ目がセシリアの覚醒によるGNソードⅡブラスターの本領発揮。最後に鈴が才能に身を委ね感情を律して最適解を選ぶこと。

 

 どれも対処可能ではあるが、想定しているのとそうでないのとでは動きが変わる。GNミサイルだったら1発でも受ければダメージは必至。GNシールドでの防御が出来なくなるのは単純に行動パターンが削られるに等しい。

 

「知ってるのと知ってないのとじゃ大違いだよなのは。」

 

「トランザムしないGNミサイルなんて飛鳥の敵じゃないから。セシリアが持ってたら流石に言ったけど。」

 

「GNミサイルビットはまずい。」

 

 脳波コントロールできるGNミサイルは流石に殺意がありすぎる。セシリアの技術なら迎撃を全て回避させて命中させることも夢ではない。そんなものを受ければ大ダメージは免れず、そのままレーザーで焼き払われるだろう。

 

「というか、GNミサイルに使ったGN粒子はどうしたの?」

 

「粒子貯蔵タンクに貯めてたのから使った。あとで補充手伝って。」

 

「いや本当になんで言わなかったの?」




 打鉄弐式の原作との相違点
・整備科の手を借りずに完成
・楯無の機体データ未使用
・大会1週間前に完成
・その1週間で試験運転がされている
・マルチロックオンシステム搭載
・最高品質のチューンがされている
・GNミサイル装備

 作中でも書いたように、1人なら楯無は引き撃ちで山嵐を全て迎撃します。
 今回は箒が居たので引き撃ちせずに一緒にガードしてそのまま落ちましたが、別の人とペアなら楯無はちゃんと生き残ります。楯無はペアが悪かった。

 だから別に楯無が弱いとか簪贔屓という訳ではありません。動かし難いから速攻で沈めようとした訳じゃない。ホントホント、駄竜ウソ吐かない。

 ちなみに簪と一夏の合図は
【スイッチ】 変わって
【ブラスト】 山嵐撃つよ  です。他にもありますが、それは出てきたときにでも。

 そして正直面倒な更識姉妹の関係改善は、打鉄弐式完成後の1週間でアレコレした一夏に丸投げしました。描写したくない。何が悲しくて推しの泣き顔を書かなきゃいけないのか。
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