『みなさん、おはこんばんちは。いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』
『はいはーい、天っ才博士、葉加瀬なのはだよ。』
『長いよ大会。試合ごとに区切ったせいだけど3
『こっちは飛鳥みたいに試合をする訳でもないから暇で仕方ないよ。暇潰しにクアンタをフルセイバーに換装しようか迷ったぐらい暇。』
『フルセイバーは過剰戦力だからNG。あんなの勝つに決まってる。』
「ダブルオークアンタ、天羽飛鳥、出る!」
カタパルトでピットから飛び出し、GN粒子を背中から吹き出しながら宙を舞う。
視界に捉えた2つの影、イージスコンビと向き合うように静止し、声をかけた。
「初めまして、先輩方。日本代表候補生の天羽飛鳥です。」
私は基本、誰かを呼ぶときは苗字にさん付けで呼んでいる。親しくなればちゃん付けになったり呼び捨てにしたりするけど、今の所IS学園で呼び捨てやちゃん付けにするのはセシリアと鈴ちゃんぐらいだ。鈴ちゃんは私に勝てるかもっていう期待からちゃん付けだけど。
そんなことを考えていると、向き合う相手が応えてくる。
「3年のダリル・ケイシーだ。」
「2年のフォルテ・サファイアっス。」
「――。2対1ですけど、負けません。ダブルオークアンタと一緒に、未来を切り開きます。」
今、嘘があった。
イージスと謳われる抜群のコンビネーションを発揮するパートナーにさえ、偽名を明かしていない。それを少し申し訳なく思いながらも、ケイシー先輩は達観の元にそれを受け入れている。
感情はもちろん、思考も偽れはしない。なら、彼女が抱いた
「頼もしいな。ならその機体とお前の力、見せてみな。」
「――えぇ、見せましょう。ダブルオークアンタの力を。」
GNソードⅤを握る右手に力が入る。周囲の目があったからテストもしていないシステムを、よりにもよってこんな大勢の前で晒すことへの抵抗感。もし失敗したらという重圧。それらをはね除け、私は覚悟を決める。
思っていた以上に早く使うことになったけど、ここで使わないと手遅れになる。事を起こして、もう戻れなくなってからじゃ遅い。まだ実害のない
カウントダウンが始まる。互いに構え、互いに意識を向ける。静かに戦意の灯る目で見つめられながら、私は最低限試合の体を保つための戦いを始めた。
「ソードビット!」
試合開始と同時にGNシールドにマウントしているGNソードビット6機を解き放つ。
今回は本気だ。そもそもイージスの防御結界を真正面から突破するには、GNソードⅤをバスターソードかバスターライフルにしないと時間がかかる。
GN粒子を吹き荒らし、飛翔すると同時にGNソードビットを環状に配置し、その中心に飛び込み――
――私は、姿を消す。
「っどこに――。」
「後ろです!」
周囲を見渡すサファイア先輩の後ろから姿を現し、右手のGNソードⅤで斬りかかる。
「いつの間に――!」
瞬時にターンして手にイメージ・インターフェースで作った氷の武器を持ちそれで打ち合おうとするサファイア先輩。流石の対応力だと感心する。でもそれじゃ足りない。
GNソードⅤはGN粒子を貯め込むGNコンデンサーの素材を転用したクリアグリーンの刀身を持つ。この刀身は粒子を熱に変換し、さらにその熱を触れたものに瞬時に伝達させることで、耐熱限界以上の熱量で切断する。分かりやすく言えば触れた瞬間溶ける。
そんなGNソードⅤと所詮氷で作った武器が打ち合えば、結果は目に見えている。
ジュッ!と音を立てて氷の武器は溶け、GNソードⅤの刃はサファイア先輩に届いた。
「ぐっ!」
「フォルテ!」
すぐにサファイア先輩のフォローに回り、追撃をさせないためにイメージ・インターフェースで作った火球を放ち、更に自分自身も飛んでこちらに向かってくる。
それを後ろで環状に配置したGNソードビットの中に飛び込み回避し、背後から飛び出し斬りかかる。
「っ今度はこっちか!」
イメージ・インターフェースで作られた火球が飛んでくるが、前面に移動させたGNシールドで全て受け止めながら飛翔し斬りつける。
「ッチィ!」
双刃剣【
「そこっス!」
「――!」
サファイア先輩のイメージ・インターフェースによる氷塊での攻撃がGNソードビットを狙う。配置を解除しGNソードビットで全ての氷塊を斬り裂き、離脱を中断した私を狙う火球ごとGNソードⅤを変形させたライフルモードとGNシールド上部のGNビームガンで狙い撃つ。
だが、防御結界イージスで攻撃が届く頃には威力を削がれ、楽々回避されてしまう。
「もう気付きますか。」
一度仕切り直しだ。互いに攻撃の手を止め、オープン・チャンネルで呼びかけ合う。
「あぁ。お前が消えるタネはそのビットだ。」
「2回もそれで消えて、3回目でビットを狙ったら消えずに迎撃したっス。」
「環状に配置したビットの中心を潜ると消える。何で消えるのか分からねぇが、それさえ分かれば対処できる。」
「いやそれはおかしい。」
確かにビットを配置して潜るまでは隙みたいなものだ。人数差の関係で、ビット無しの瞬間は1対1しかできないから1人フリーになる。
その1人に妨害されれば確かに私も迎撃するしかないけど、密着状態にあるパートナーごとやるような攻撃は普通出来ない。
「並大抵の信頼関係じゃできない。」
「たりめーだ。オレとフォルテだからできる。」
「その訳分からない手品はもう効かないっスよ。」
「……ま、それもそうかな。」
どうも過小評価だったらしい。この2人のコンビネーションは凄い。
「だからこそ惜しい。」
「何?」
「本当のことを話さないのは優しさじゃない。」
「――お前……。」
私の言葉に表情が変わる。
「何も話さず、もう全てが手遅れになってから打ち明ける気みたいですね。」
「どこで知った!」
「ダリル先輩……?」
サファイア先輩の困惑の声。確かに知らないと訳が分からない。
「呪いだと諦めて、何も変えられない自分が情けなくて。ここでの日常で知った光が心地よくて、だからこそ壊れるのを恐れてる。」
「やめろ……!」
「拒絶されるのが怖いですか?」
「やめろよ……!」
「信じられないですか?」
「やめてくれ……!」
「本名を明かすのは、そんなに難しいですか?」
「――――っ!!」
ビュンっ!とスラスターエネルギーの消費を考えていないスロットルワークで飛び出したヘル・ハウンドが刃を振るう。
それを左手で掴み取り、
「言わなきゃ何も伝わらない。」
「ッ!?」
全身の装甲が開いていく。GNシールドが花開く。
「クアンタムシステム起動!タイプレギュラー!」
私の言葉と共に、高純度GN粒子の奔流が巻き起こる。
「今こそ対話する!」
目を金色に輝かせ、私は対話を始めた。
次回【イージスコンビ、互いを知る】