IS学園3年、アメリカ代表候補生ダリル・ケイシー――コードネーム『レイン・ミューゼル』。
彼女が
炎の家系と言われるその家は、争いによって成立した。ワールドウォー2――第二次世界大戦において打ち立てた武勇。
100という数は比喩で、実際にどれだけの人間を殺したかは分からない。だが決して1人2人ではない。血に染まった己の手を見詰め、ミューゼルは誓った。
【争いのない世界を作る】と。
「何スか、これ……。」
脳裏を過ぎる記憶に、フォルテ・サファイアは困惑した。
「レイン・ミューゼル……?
ダリル・ケイシーの事は良く知っている筈だった。だってパートナーだから。学年が違うから授業中は離れているけど、それ以外はいつも一緒と言っていいほど近くにいた。
食事は一緒に食べていたし、放課後は一緒に過ごした。寝る時だって……。
いつも彼女は楽しそうに笑っていた。その彼女がテロリスト?
「何か言うっスよ、ダリル……!」
隣にいるパートナーは、顔を伏せたまま喋らない。
「うちらの一緒に過ごして来た時間は、嘘だったんスか……?!」
視界が歪む。胸を締め付ける苦しさに息が乱れる。
「フォルテ……。」
「なんで……なんでっ……。」
何で自分は泣いているのだろう。パートナーがテロリストだったから?知らないことがあったこと?いや、違う。
相手の全てを知らないのなんて当たり前。どれだけ親しくても、知らないことはある。でも、そんな当たり前のことだからこそ、目を逸らしていた。
だって、恋はそういう物だから。花火の様に輝いて、いつか消えていく物だから。そこ以外目に入らなくなる物だから。
「――フォルテ。」
ぎゅっ、と。いつもの様に抱きしめられて、いつもの様に名前を呼ばれた。
「ダリルぅ……。」
テロリストだと分かっている。でも、こうして抱きしめられると縋りたい。離したくない。離れたくない。
だって、フォルテ・サファイアはダリル・ケイシーが大好きだから。
創設者が何を望んで作り上げたのか、それは今となっては分からない。創設者本人はもう既に居ないし、初期の頃から居るメンバーなどもはや存在しないし、その記録も残されていないから。
今の
ある者は金稼ぎのため。ある者は争いを起こすため。ある者は世界を牛耳るため。
そしてある者――ミューゼルは、争いを無くすため。
矛盾だとミューゼルも分かっている。争いを無くすために争いの種となるテロリストに所属するなど、笑い話としか言いようがない。
だが、その笑い話がISの登場で一変した。
ISはISにしか倒せない。もちろん、シールドエネルギーを削るだけなら拳銃でも可能だ。しかし削りきる前にISはその発射元を潰せる。それは相手が戦闘機や戦車であろうと同じであり、だからこそISは既存の兵器を圧倒する兵器であると言われるようになった。
ISを使えば、IS以外の脅威はなくなる。強いて言うなら核兵器を使われればシールドエネルギーが周囲の地形ごと吹き飛ぶが、核兵器などそう簡単に使えはしないし、使ったが最後一般人から批難の声が上がる。結局ISはISでしか倒せない状況となる。
そんな状況でもしISを独占できたなら、
世界を牛耳るのも、金を稼ぐのも、争いを起こすのも、無くすのも、ISを手に入れれば夢ではなくなる。
だからこそ【呪い】。いやに現実的な『争いを無くす手段』と、魅力的な『争いのない世界』が見えるからこそ、ミューゼルは
だって、
争いの炎を消す
「そんな……。」
自分を抱き締める腕の中で、フォルテは驚きで目を見開いた。
嘘は何処にもなかった。いつも笑っていたのは本当に楽しかったからであり、自分に囁いた愛は心の底から溢れ出た言葉だった。
彼女は本当の名前を明かせないことに苦しんでいた。
――そうなったら、
「そんなに、自分のこと……。」
「大好きに決まってるだろ。」
フォルテを抱きしめる腕に力が入る。
「初恋なんだ、フォルテ。初めて誰かを好きになったんだ。一緒に居たいって思ったんだ。ずっと、ずっと一緒に……。」
「ダリル……。」
いつも何だかんだフォルテを引っ張ってくれる先輩が心の内に秘めた、少女の姿がそこにあった。
「フォルテ、オレと一緒に来ないか?一緒にこの世界を変えないか?」
――離れたくない。離したくない。
愛が伝わってくる。強く鮮烈な愛。形のしっかりした愛。
こんなにも自分を愛してくれているパートナーが、こんなにも自分を求めている人が、離れてしまうことに怯えている。今年度卒業してしまうから、そうなってしまえばもう会えないから、巻き込んでしまったとしても一緒に居たいと思っている。
それは――
「――違うっス。」
「え――。」
それは、違う。
「ダリルが自分と一緒に来るっス。」
もっと大きく、もっと鮮やかな愛が溢れ出す。
「っ。」
「離したくない?逆っス、離さない。」
もし、誰かを殺そうとした直後で、その姿を間近で見た時に勧誘を受けたなら、フォルテは葛藤の末に拒絶しただろう。
もし、それでたった1人戦うパートナーを見たら、愛のために世界を裏切っただろう。
だが、そんなことにはならなかった。互いに思いを打ち明けて、そこに偽りがないことを知った。今までの時間がまやかしではないと知った。何より、
なら、それを助けないなんてあり得ない。どうやって?それはもちろん――
「世界よりも自分を選ぶっス、ダリル・ケイシー。」
――愛の力で。
「話しは終わりました?」
「――はいっス。」
クアンタムシステムを終了させ、全身の装甲を閉じた天羽飛鳥の言葉に、フォルテ・サファイアははっきりと答えた。
「今のは、その機体の力っスよね?」
「はい。詳しくは秘密ですけど。」
「聞き出す気はないっス。ただ、お礼を言いたいっス。」
隣に浮かぶヘル・ハウンドの手を握り、フォルテは笑った。
「ダリルは自分を選んだっス。」
「お、おう。」
恥ずかしそうに頬を赤く染めた【ダリル・ケイシー】が、フォルテの手を握り返した。
「ひとまずはおめでとうございます。結婚式には呼んでくださいね。」
「結婚!?」
「ギリシャでやるかアメリカでやるかは後で話し合うっス。」
「フォルテ!?」
慌てるダリルにフォルテと飛鳥が2人でクスッと笑い、どちらともなく手に武器を持った。
「試合、終わらせましょうか。」
「そうっスね。さっさと終わらせて部屋に帰って……ふふ。」
妖しく微笑むフォルテ。一体何をする気なのだろうか。その思考を読まないよう全力で別の所に意識を向けた飛鳥には分からない。
「あとで泣いたって止めてやらねぇからなフォルテ!」
「ダリルは今日ずっとネコっスから。」
「えっ。」
何をするのか分からない。
「早く終わらせたいなら、私の本気の攻めを耐えてください。耐えれたら私の負けで良いです。」
「良いっスよ。イージスの防壁、超えられるなら超えてみるっス。」
「お前ら何か仲良くねぇか?なぁ、なぁ!」
『嫉妬してるダリルかわいい』と思いながら、フォルテはダリルに身を寄せた。
「ど、どうした。」
「ダリル、『アレ』やるっス。」
「『アレ』?ここでか?」
「見せつけるっス。自分たちの新しい始まりを、皆に。」
フォルテがダリルを抱き寄せ、あごをクイッと持ち上げ真正面から見つめた。
「『ダリルは自分のものだ』って。」
「……何か、変わったな。」
「嫌っスか?」
「いんや、大好きだ。」
そう笑うダリルにフォルテは微笑み、口づけを交わした。
「行くっスよ、《
2人の体が炎を内蔵した氷のアーマーに包まれる。外面の氷が衝撃を緩和し、内に秘めた炎が破損部から噴き出すことで攻撃を跳ね除けるある種の
「GN粒子、リチャージ完了。」
《
「あとでなのはに怒られるだろうけど……私いま、すごく楽しいの。」
初めての対話が上手くいった安堵。自分と対抗する人間が居ることへの高揚。すべてを纏めて『楽しい』と一言で形容し、飛鳥は秘密をまた1つ明かす覚悟を決めた。
「行こう、クアンタ――トランザム!」
充填したばかりの圧縮粒子を解放し、機体性能を引き上げたクアンタが飛翔する。更にGNシールドに戻してGN粒子の急速チャージを終えたGNソードビットを飛ばし、それを環状に配置して形成したゲートに飛び込んで姿を消した。
「また消えたか!」
ダリルが叫んだ瞬間、2人の後ろから飛鳥が姿を現し、それに続くように現れたGNソードビットをGNソードⅤに合体させ巨大なバスターソードに変えると、それでイージスに斬りかかった。
「白兵戦で来るっスか!」
2人はそれを《
「っし!」
「これならいけるっス!」
離脱と反撃を同時に行える《
そう確信した2人は、炎を食らった位置にいるだろう飛鳥に視線を向け、
「なっ!?」「後ろ!?」
《
「どこに――!?」
ハイパーセンサーの全方位視界を使って周囲を見渡し、フォルテは見た。
まるで武器を
「っ――!」
反射でイメージ・インターフェースを使用した氷塊を撃ち出そうとして、それより早くバスターソードによって斬られ、《
「跳べ!」
――まるで
「はぁっ!?」
現れてはバスターソードで斬りつけて2人のシールドエネルギーを削り、噴き出す炎を消えて避け、それを繰り返し、
「これで、最後──!!!」
最後には、真正面に出現しての一閃で決着がついた。
優勝予想2位が、優勝予想最下位に敗れた瞬間だった。
「何で量子化見せたの?」ゴゴゴゴゴゴゴ
「あの、怒らないで……。」
「怒ってないよ、ただ聞いてるだけ。」ゴゴゴゴゴゴゴ
「(こわい。)」
祝! イージスコンビ残留決定!
まず始めに断っておきますが、亡国機業、ひいてはミューゼルについては完全な捏造です。ダリルなのかレインなのか未だに呼び方に困る人についても捏造です。
イージスコンビはクアンタで対話すればIS学園に残ってくれるだろうと考えたのはいいんですが、色々情報が少なすぎて捏造しないと書けなかったんです。何だよ争いの家系って、愛のためにとかあのIS原作者がそんな設定作る訳ないだろ(自問自答)。
もっと良い設定はあるんでしょうが、駄竜にはこれしか思い付きませんでした。ユルシテ……
あと量子化出すの早まった感。恐らく素のバスターライフルモードでイージスの防御を抜くのは十分だったんですが、ライザーソード使う時のものしかバスターライフルモードの資料を見つけられずに断念。GNソードⅡブラスターみたいに射程と威力の拡張とかできたりしません?誰か教えて