「セシリア、大丈夫?」
「え、えぇ……。」
大会が終わるまでアリーナのピットで試合を見ていようと2人揃って残っていたセシリア・オルコットと凰鈴音のペアは、自分たちに勝ったイージスコンビと天羽飛鳥の試合中に起こった怪現象に驚いていた。
「考えてることが伝わるなんて……この光のせい?」
鈴は漂う光の粒子を見ながらそう推察した。
「ダブルオークアンタ……前から違和感を感じてはいましたが、まさか本当に……。」
「セシリア、どうし──あんたその眼……!?」
「はい?」
鈴を見つめるセシリアは、きょとんとした顔で
「この光は……。」
時を同じくして、シャルロット・デュノアとラウラ・ボーデヴィッヒのペアもその怪現象を体験していた。
「考えていることが口に出さずとも分かる。これは……ん……?」
ふと、ラウラは左目を覆う眼帯越しに左目に触れた。
「ラウラ?」
「まさか、そんなはずは……。」
慣れた手つきで眼帯を外したその下にあった左目は、
「タイプレギュラー、まさかこんな大勢の前で見せることになるなんて……。」
アリーナのピットで周囲に漂う光──GN粒子を見た葉加瀬なのはは、そうなった事実にため息を吐いた。
タイプレギュラー。それはダブルオークアンタに搭載されたクアンタムシステムを起動して行ういくつかの形態の内の1つだ。
機体各部の装甲を展開し、GNシールドさえも開くことでそこに隠されたダブルオークアンタの心臓部と言っても過言ではない
「まさかテストなしのぶっつけ本番になるなんて思いもしなかったよ。」
クアンタムシステムはダブルオークアンタの真価を発揮するのに必要不可欠なものだ。それ故になのはは細心の注意を払ってシステムの構築を行ったが、そのテストは出来ず仕舞いだった。何せ完成から今までずっと人目のあるIS学園に飛鳥が残らねばならなかったからだ。たまに抜け出していたが、テストを出来るほどの時間は確保できなかった。
いつかいつかと先伸ばしにし続けた結果、ついにはぶっつけ本番となってしまったのである。
「……まぁ、飛鳥なら仕方ないか。」
本来なら怒るべきだろうが、伊達に何年も親友をやって来たなのはではない。飛鳥の性格からして、こうなる可能性は考えていた。少しの
が、
「何で量子化使った???」
まさかそれまで見せるとは思っていなかった。
試合が終わりピットに戻ってきた飛鳥は、ISスーツ姿のままなのはにピットの硬い床に正座させられていた。
「それで?楽しくなってつい量子化しちゃったんだ?」
「うん……。」
「はぁ~~~…………。」
大きいため息を吐いて、なのはは正座する飛鳥の足の上に座った。
「なのは?」
「これからいろんな所への説明で苦労するボクを労え。」
そう言ってぐりぐりと頭を擦りつけてくるなのはを、飛鳥はぎゅっと抱きしめた。
「ごめんね、いっつも任せっきりで……。」
「いいよ別に。それより、クアンタムシステムはどうだった?」
「――人間同士ならタイプレギュラーで十分対話できる。少なくともIS関係者は束さんのお陰で日本語を覚えてるから問題なし。それ以外の人たちはやってみないと分からないけど、種の規格は同じだから多分いける、と思う。」
「そう。」と短く答え、飛鳥の言葉を頭の中で反復させたなのはは苦い顔をした。
「やっぱり、飛鳥とクアンタだけじゃ――」
「――『
飛鳥は少しだけ沈んだ表情でそう言った。
「日本とアメリカでコンセントの規格が違うのと同じで、人間と『
「それを解決するのに必要な『
「機体だけでお金が底をついちゃったからねぇ……。」
はぁ、と2人してため息を吐いた。
実の所、飛鳥の専用機であるダブルオークアンタは真の意味での完成とは言えない状態にある。試合で戦う分には何ら問題ないが、ダブルオークアンタの
だからこそリアルタイムでその処理を代行する外付けの量子コンピュータが必要なのだが、それを作るのに必要な資金が圧倒的に足りないのが現状だ。
「やっぱりブリュンヒルデになるしかないかなぁ!」
ばっ!と沈んだ表情を吹き飛ばして笑顔になった飛鳥が言った。
「大体の問題が片付くブリュンヒルデって本当に便利だね。最初の計画通り、ブリュンヒルデになるのが一番手っ取り早いか。」
仕方ない、と言いたげになのはも賛同した。
ブリュンヒルデ――世界最強の称号。元々目指していたが、それにはいくつか理由があった。
飛鳥は単純に憧れた。特殊なのはその称号を手にした織斑千冬にその感情が向かなかったことだが、別に尊敬していない訳ではないので置いておく。
なのははその立場に惹かれた。ISを中心としつつある世界での頂点なら、多少の無茶は押し通せるだろうという所に魅力を感じた。主に開発費や制作費の無茶を押し通せる所が魅力的だった。
飛鳥が目指し、なのはが支えるブリュンヒルデへの道。それは今は閉ざされている。織斑千冬の引退後、日本は国家代表を選出出来ていないからだ。なまじ織斑千冬という存在を知っているだけに、その後釜を選べずいるのだ。
だが、飛鳥とクアンタなら必ずなれる。本人のやる気と、それを支える親友のサポートがあるのだから。
「それじゃ飛鳥、まずは軽く日本代表候補生を蹴散らしてきてね。」
「オッケー、GNミサイルと零落白夜になんて当たらないで、今まで通りノーダメージで勝ってくる。」
PICを使ってふわりと浮き上がってなのはを降ろし、飛鳥はそのままプカプカと移動してカタパルトへと移動していった。
TRPGのオンセを夜な夜なやっていたら執筆が出来ませんでした……低評価不可避……。