『はいおはこんばんちは。いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』
『はいはーい、天っ才博士、葉加瀬なのはだよ。』
『
『平日昼間から何やってるんだろうね、ボクたち。』
『言わないで。』
「クラス対抗戦、どうしようか。」
「どうしたのさ藪から棒に。」
クラス代表として書類を運んでいた飛鳥は、隣を歩くなのはに話しかけた。
「いや、圧勝しても良いのかなって。」
「いいんじゃない?学食デザートの半年フリーパス取って来てよ。」
「なのははデザート食べたいだけでしょ。」
「それを抜きにしても、4組代表の代表候補生と入れ替わった2組代表の中国製第三世代を量産機で倒せば、代表候補生に大分近付くと思うよ。」
項目にさえ入れられない白式。
「中国製第三世代ねぇ、どんな感じなの?」
飛鳥の問いになのはは空中に画面を投影し、そこに中国が発表しているデータを表示させた。
「分類としては近・中距離両用型、搭載されてる第三世代技術は衝撃砲。良い感じに纏まってるね。」
「高出力の単発と低出力の連射を使い分けられる射撃武器の衝撃砲と、近接武器として大型の青龍刀2本を装備。青龍刀はこの大きさなら盾にも出来そうかな。」
「やっぱり適正距離の違う武器は必須だよね。ブレードオンリーとか弾幕張られたらどうしようもないし、銃だけだと余程巧くないと詰められて終わるし。」
近接用ブレード1本しかない白式。
「スピードも第三世代らしい速度が出るし、最悪
「武装的にそこそこ
「んー、多分積まないんじゃないかな?近・中距離両用型としてなら結構完成度高いし、ここに新しく積める武装ってそうそうないよ。」
射撃武器として衝撃砲ほど優秀なものはそうそうない。砲身も砲弾も見えず、その威力も連射速度も可変。牽制にも決め手にも使える武装は、コレだけで他の射撃武器全ての役割をこなせる。
近接武器も機体特性を考えれば大型青龍刀がベストだ。衝撃砲では高威力の時に連射が効かないため、その穴を埋める形として重い攻撃を連続で繰り出せる大型青龍刀が一番いいのである。
「積むとしたらワイヤーとか鎖とかの拘束武器かな。相手の動きを鈍らせればそれだけ青龍刀も衝撃砲も当てられるし。」
「なら一番厄介なのは青龍刀かな。完全に大型盾として使われたらめんどくさい。」
「攻撃は全部避けるからいいや」と言う飛鳥に、「じゃちょっとシミュレーションしてみようか」と言うなのは。
「飛鳥の近接ブレードを青龍刀で防御、手が塞がっててもイメージ・インターフェースで動く衝撃砲で攻撃、それを避けるのにスラスター吹かせば取り敢えずジャブの衝撃砲連打、近接しようが射撃しようが間に入り込んで盾になる青龍刀。」
「「あれ、中国強くね?」」と2人の考えが一致した。
「……まぁ、精々代表候補生だし、山田先生みたいに何でもかんでも避けて防がれることはないでしょ。」
「あの人も代表候補生だよ飛鳥。別格だけど。」
『システムがステータスでクラス代表選ぶから飛鳥がクラス代表だったね。』
『代表候補生居ればそっちが優先されるけど、3組にはいないからね。成績的にも本気の山田先生から逃げ延びてるし当然。』
『これ1組だとクラス代表決定戦に巻き込まれて、2組だと鈴ちゃんが候補生だから持ってかれて、4組だと簪ちゃんがなるんだっけ。』
『うん。2組で候補生だとアリーナで鈴と試合して負けると持ってかれる。』
『勝ったらクラス対抗戦の原作をぶっ壊せるの?』
『
『束さんは鬼畜だなぁ……。』
クラス対抗戦当日、第一試合が1組対2組であったため、出場するが時間がある飛鳥はなのはと並んで観客席に座っていた。
「初戦はやっぱ2組が勝つかな。」
「負ける要素が零落白夜に当たることだけだしね。衝撃砲撃ってるだけで終わるかもよ?」
「青龍刀とは。」
そんなことを話していると、カタパルトからISが飛び出してきた。
「来たね。さぁて、解析解析。」
空中に画面を投影し、ネットワークに接続して中国製第三世代機の稼働状況を見ながら、他にもハイパーセンサーなどを起動してなのはは解析を始めた。
「あ、早速撃ったみたいだよ。……分かりやすいなぁ。」
「挙動で撃つぞってタイミングが隠せてないね。あと撃つために空間にかけてる圧力がハイパーセンサーで丸分かり。発射のタイミングは見てれば分かるかな。」
「狙いも正直だなぁ。誘い込みとか一切やって無い。いや出来ないのかな?」
「これなら飛鳥が勝つね。考えてた防御力高いムーブも出来ないみたいだし、能力使わなくても行けると思うよ。」
「4組は専用機出来てないらしいし、見所無いからもう工房に戻ろうかなぁ」となのはが呟いたその時、
「「っ!」」
2人は空から飛来してくる『それ』を見上げ、
――――ドッオォォオンッ!!!
『それ』が放った砲撃が、アリーナのバリアーを破壊した。
『今更だけどさ、ゲーム内の私たち何で最初から変革してるの?システム的にはクアンタがガチャで出たからだけど、設定的にどうなってるの?』
『ツインドライヴシステムの恩恵でしょ。』
『なのは、GNドライヴ作ったっけ?』
『ガチャでクアンタ引いた時にその材料としてアイテム欄に追加されてるよ。何処から湧いて出たんだろうね。』
『……まだ機体完成して』
『飛鳥、コラボ先の設定との整合性を考えると死ぬよ。』
ハイパーセンサーが映した『それ』は、全身を装甲で覆った異形の機体だった。細すぎる腰、長すぎる腕。意思を感じさせない、生物らしい揺らぎのない動き。
その形状、その挙動から、なのはは即座に見抜いた。
「無人機……。」
「脳量子波がない。と言うか人が乗れるスペースがない。間違いなく機械だ。」
目を金に輝かせながら、アリーナを覆うバリアーを突破し中に入り込んだ異形の機体を見詰める飛鳥は、なのはに間違いないと告げる。
「作ったのは束さんだね。アリーナのバリアーを壊せる攻撃はそう多くない。火力でぶち破ったならそれを作れるのはボクか束さんだけだ。」
「一体何のつもりで……
「多分後者だね。白式を受け取って大体1ヶ月経ってる。どの程度使える様になったか、オモチャを差し向けて計りに来たんだ。」
ネットワークを接続し、異形の機体のデータを閲覧したなのははそれを見た上でオモチャと断じた。
「ゴーレムⅠ……武器は両腕の高出力ビーム兵器4門のみ。スラスター出力が異様に高くて、零距離からの離脱には1秒もかからない。」
「流石束さん、ハイスペックだこと。でもそれだけだね。」
「うん、行動はパターンで決められてるし、何より倒す気がないね。束さんがやる気ならもっと鬼畜な行動させられるもん。白式の様子を見に来ただけだよ、あれ。」
なのははアリーナで無人機を相手に戦っている白式に視線を向け、そちらにもネットワークを繋げて稼働状況を見た。
「うわ酷。」
「エネルギーロス多くない?スロットルワーク出来てないよねこれ。」
「アクセルベタ踏みもいいところだよ。」
専用機が出す結果とは思えないあまりの惨状に言葉を失う飛鳥たち。必要ないところでもスラスターを余分に吹かせエネルギーを無駄遣いしているし、零落白夜の連続使用時間が明らかに長い上、出力最低でも凄まじい威力を発揮するのにそれも中途半端。初心者なのを加味しても、せめて虎の子の零落白夜は2秒ぐらいまで使用時間を短くして出力ももっと落とさないと自滅してしまうのでは?
「戦闘技術とか操縦技術以前に、最低限零落白夜の扱いを覚えないとこの先やっていけないんじゃ……。」
「攻撃は零落白夜頼りなのに、これじゃ余程フォローの上手い人とでも組まないとやっていけないでしょ。」
2人が心配している間に無人機は倒され、この襲撃によってクラス対抗戦は中止となった。
『介入も何も出来ない序盤って映す意味ある?』
『カットすると音ズレするじゃん。まぁ見てても退屈だろうけど……。』
『そもそも候補生にはいつなるのさ。』
『上手く行けば学年別トーナメント明けにはなれるんだけど、ランダム性が強いんだよね。』
『あぁ、普通だと12パターンある組み合わせから選ばれるんだっけ。』
『通常プレイだと中止させないで優勝とかもできるけど、マルチプレイはプレイヤー同士が勝手に組むから大前提のラウラとタッグを組むのが出来なくて、そうなると一回戦でかんちゃんとかの強いキャラと当たって圧倒するなりしないといけなくて……。』
『ならボクに任せて。良い案がある。』
『え、何するの?』
「織斑先生ー。」
授業が終わり、職員室に昼食を取りに行こうと廊下を歩いていた千冬は、後ろからの声に振り返った。
「お前は確か、3組の葉加瀬だな。何か用か?」
声の主であった葉加瀬なのはについて、千冬はそれほど詳しくない。自分の受け持つクラスの生徒なら色々と覚えたが、他のクラスや学年の生徒となると顔と名前が一致する程度だ。なのはに関してはIS適正がSであることと飛鳥と同じで北海道の田舎出身であることなどで印象に残っている方であるが、それでもあまり詳しくはない。
「そうです。」
ただ、この会話で思い知らされることとなった。
「学年別トーナメント、ボクと飛鳥の対戦相手には強い人としか当たらない様にして欲しいんです。」
「なに?」
千冬としても、自分に匹敵するだろう飛鳥の対戦相手はなるべく強い者が当たる様、この後行われる学年別トーナメントに関する会議で提案するつもりであった。一般生徒では山田先生と渡り合った飛鳥の相手を出来ないからだ。出身を同じくするなのはがそれを考慮して提案してくるのも分かる。
だが、何故自分も強い相手をぶつけようとするのかが分からない。飛鳥にだけ押し付けるという提案だと断られると思ってのことなのか?それとも別の意図が?
「
疑問に思った千冬の思考を読んだかのような言葉。疑問に思うことは容易に想像できるが、こちらが口に出す前に言われたことが気にかかる。
「あ、
「っ!?」
「それじゃご飯行ってきまーす!」
言うだけ言って、なのはは走って行った。
「葉加瀬なのは……お前は一体……。」
1人残された千冬は、なのはが何者なのかについて空腹を感じて「そう言えば昼だ」と思い出すまで考え込むこととなった。
「次の学年別トーナメントですが、クラスリーグマッチでの無人機襲撃を考慮して、2人1組のツーマンセルで行うことにしませんか?」
「(まさか、こうなることを読んでいたというのか?)」
予定通り行われた学年別トーナメントの会議で最初に言われた言葉に、千冬は戦慄した。
「(ボクと飛鳥の対戦相手とは、ボクと飛鳥のチームの対戦相手、と言う意味だったのか。)」
確かにすぐ分かった。何せそう言われた日の会議なのだから。
「(確かに予想できる範疇だ。だが、あの提案は別にトーナメントの仕様変更が告知されてからでも良いはず。何故今日なんだ?)」
「織斑先生はどうですか?ツーマンセル。」
「あ、そうですね。私も賛成です。」
思考の海から抜け出し千冬も賛成する。
「そうですか、全員賛成ですね。」
「あ、あのー……。」
そこで山田先生が手を挙げた。
「山田先生、どうしました?」
「3組の天羽飛鳥さんなんですけど、彼女の相手は一般生徒には出来ません。
現状、
「少なくとも
「しかし、仮に天羽さんの相手を代表候補生に限定するとして、タッグを組む生徒が可哀想じゃないですか?」
「それはそうですけど……。」
「(なるほど、ここまで読んだ上で今日だったんだな)それについてですが──」
千冬の説明により、本人たちが了承済みとのことでツーマンセルトーナメントで飛鳥たちは実技入試での成績上位者や代表候補生が当たるように調整されることとなった。
「根回しはこれでオッケー。後は強い人が出られない状況にならない様に気を配れば……。」