『予備のコントローラーがあって良かった。』
『連射コン使わなかったのは失敗だったね。』
『まさか割れるとは思わなかった。』
『アクリルで作った特製コントローラーが割れるとは思わなかった。』
『また作って?』
『アクリル代は出してね。』
『地味に痛い出費……。』
「さーて次なる種目はIS学園特別競技『玉打ち落とし』だ~!」
2年生の放送部副部長・黛薫子がマイクで高らかに実況解説を始める。
『玉打ち落とし』とは専用の機械で空高く打ち上げた大小様々なボールを、ISを使って撃墜していくIS学園ならではの伝統競技。
今回は代表候補生対抗なのもあって、専用機持ちたちによるそれが行われようとしていた。
「一意専心。常在戦場。心静かに参るのみ!」
「魅了されなさい。わたくし、セシリア・オルコットと『ブルー・ティアーズ』の奏でるロンドで!」
「射撃限定ってわけじゃないんだから、あたしの実力見せつけるわよ!」
「機動力なら負けないよ。行くよ、『リヴァイヴ』!」
「己の無力、思い知るがいい!」
「……やるだけ、やってみる。いいよね、『打鉄弐式』。」
他の面々が燃える中、天羽飛鳥は悩んでいた。
「(どう動こう……。)」
飛鳥は複数を意識した動きというのが苦手だった。単純に練習できる回数が少なく、立ち回りをまだ把握していないからである。
まだ専用機を手にしていなかった学年別トーナメントでは、パートナーだった葉加瀬なのはの読みによって対戦相手だったセシリア・オルコットと凰鈴音の行動がおおよそ分かっており、それに対しての作戦をなのはが立てたことで訓練機でもダメージを受けずに専用機に勝つことが出来た。
専用機を手に入れた後のキャノンボール・ファストでは、レースという形式から徹底的に『他を前に出させない』ことを意識したのもあって、ほぼセシリアとの一騎打ち。GNソードビットを他の妨害に当てていたため苦戦したが、最後はトランザムで突き放した。
実質的に初の1対多であったタッグマッチトーナメントでは、初戦が世界でも通用するコンビネーションを誇るイージスコンビだったのもあって量子ジャンプを使った。しかしすぐに対応され、トランザムだけでは不足すると思った飛鳥は量子化を晒し、どうにか勝利を収めた。織斑一夏と簪のペアはGNソードビットによる数の暴力ですぐ終わった。
――お分かりいただけただろうか?専用機がなかった上なのはが作戦を立てた学年別トーナメントはともかく、それ以外の対複数は大体トランザムでのごり押しで勝っている事実。タッグマッチ・トーナメントに至っては任意ワープしたりビットで数の暴力したり、そりゃ立ち回りの把握もできないというものだ。
まぁ今はそれは関係ない。重要なのは飛鳥が複数相手の立ち回り方がまだ把握できていないことだ。
「(この後もISを使う競技はあるだろうし、墜とすのはダメ。となるとキャノンボール・ファストの時みたいに妨害?いや、点を横取りする方がいいのかなぁ?)」
あれこれ考えるが、そもそも飛鳥はのんびり屋気質。溜め込みこそしないが夏休みの宿題は最終日まで少ないながらも残すタイプであり、何より考えるより行動派。作戦を考えるよりその場で対応する方が性に合っているのもあって、今回も「まぁ邪魔ならどかそう」と思考をぽいっと放り投げた。
「それでは、ISによる玉打ち落とし、スタート!」
「ソードビット!」「ブルー・ティアーズ!」
スタートの合図と同時に専用の機械がはき出した大小様々なボールをまず捉えたのは飛鳥とセシリアのビットだった。緑の粒子の尾を引きながら飛ぶ6機のGNソードビットがボールを斬り裂き、対照的にセシリアは自身の周囲にレーザービットを浮かべ、
「くっ、やるな。だが私も!」
篠ノ之箒も空裂と雨月を駆使してボールを破壊していく。が、GNソードビットと
「あぁもう!邪魔よアンタら!」
ごっそりと横取りされる訳ではないが、ちょこちょこと掠め取っていく飛鳥たちにキレた鈴が双天牙月を構えて突っ込んできたのを飛鳥はGNシールド上部のGNビームガンで迎撃する。
GNシールドにはダブルオークアンタの心臓部とも言える2つのGNドライヴの片方が内蔵されており、そのGNドライヴが生産するGN粒子の恩恵を直に受けている。それはGNシールド上部のGNビームガンも受けており、それ故に本来迎撃用の代物であるGNビームガンは連射性も威力も高い。
GNビームガンの弾幕に飛鳥に近付くことを諦めた鈴がセシリアに向かって行き、手に持っていたGNソードⅡブラスターから放たれた極太ビームを気合で避けたのを横目に見ながら、飛鳥は
「(これ【ライザーソード】で一掃できるんじゃ……。)」
そんなことを考えていた。
「(飛鳥、ライザーソードは無しだからね。)」
「(分かってるよ。地上じゃやり過ぎる、でしょ?)」
「(分かってるならいいよ。)」
【ライザーソード】。ダブルオークアンタの最強の武装たるそれは、あまりの強大さに地上での使用が
果たして使う時は来るのか。頭の片隅で考えながら、飛鳥はボールを破壊していった。
「さあさあ、続いての競技は軍事障害物競争です!」
まず分解されたアサルトライフルを組み立て、それを持ってはしごを登っては降り、網を
「これ捨てよう。」
「そうだね。」
マイクから聞こえる説明を聞いた飛鳥となのははこの競技で点を取るのを諦めた。
飛鳥はアサルトライフルの組み立てをできない訳ではないが、時間がかかる。逆になのはは組み立てを一瞬で終わらせられるが、障害物競争の部分で他に抜かれ、最後の射撃で数発外すのが分かっている。
飛鳥となのは、2人は互いにやれることが正反対なのだ。そのどちらもが求められるこの競技では点を取りに行くことができない。白組のチームメイトたちの中にはどちらも得意だという人もいるが、ドイツ軍人ラウラ・ボーデヴィッヒを冠する黒組はチームワークを高めるために何故かこの競技と似たことをやっていたらしいので流石に勝てない。
2人の考えは正しく、軍事障害物競争はラウラのいる黒組が勝利した。
『整備も製作もステ振ってないのに早く組み立てられる訳ないじゃん。』
『射撃にステータス振ってないのに的に当てられる訳ないじゃん。』
『というかこの競技、黒組に勝てなくない?』
『キャラメイクだとやらないことは他人任せだから整備切りとか普通だからね。それこそステータスオールSチケットとか使わないと無理じゃない?』
「午前の部、最後は騎馬戦よ!」
「これもなぁ……。」
騎馬戦、と聞いて飛鳥はため息を吐いた。
飛鳥は凄まじい身体能力を持っているが、騎馬戦は如何に仲間と息を合わせられるかの競技。飛鳥の身体能力は逆に足を引っ張る結果となるのを、中学の頃に経験済みだった。
というか、飛鳥の力だと下手すると周りを怪我をさせてしまう。だから長年の付き合いで力加減を覚えたなのは以外との接触は握手さえ控えているのに、騎馬戦なんて怪我をどれだけさせてしまうか。
相手は専用機持ちなので、いざとなればISが自動展開して守ってくれるのだが、それでも気にしてしまう。
「玉打ち落としでのリード分があるし、逃げ回ってもいいけど。」
「多分途中で会長が何かするだろうから、それまでは様子見してようかなぁ。」
飛鳥のその読みは当たり、途中で500点を持った一夏の騎馬が参戦した。それは流石に見逃せないと、自分を狙う騎馬に他の組の騎馬を当てる位置取りをし続け様子見をしていた飛鳥率いる白組も一夏を狙う。
「一夏ぁ!!!」
突如鈴が甲龍を纏って衝撃砲を放った。
「どわぁ!?」
それを白式を展開しシールドで防いだ一夏が、騎馬の女子たちを逃がして空に飛び上がった。
そこにセシリアがブルー・ティアーズの集中砲火を浴びせた。左腕の多機能武装腕【雪羅】のシールドでその攻撃を消した一夏だったが、そこをラウラのAICによる停止結界が捕らえた。
「ここで!」
「……王手。」
上空に箒、地上に簪。動きも止められ逃げ場はない。
「たっ、助けてくれシャル!」
「知らないっ!」
頼みの綱だったシャルロット・デュノアにも見放された一夏は、一斉攻撃による爆発に飲み込まれた。
「――トランザム終了。」
その頃地上では、
一斉攻撃による爆発に一夏が飲み込まれる寸前に、ダブルオークアンタがトランザム中にのみ行える【量子化】を使用して一瞬で一夏に接近し、白式を展開しているからと怪我させると遠慮していたハチマキを奪う行為をしてからまた量子化で戻ってきた飛鳥は、「これ得点になるかなぁ」と騎馬戦では無くなってしまった競技に疑問符を浮かべた。
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