『そろそろ運動会を終わらせたい。』
『長いとダレるからね、タッグマッチの時みたいに。』
『だから昼食は一夏たちと離れて取る。そうすると昼食イベントがスキップ出来るから、飛ばしたい人はそうしよう。』
結局、騎馬戦での500点は無効となった。ISを使って騎馬戦では無くなったかららしい。まぁ仕方ないかと切り替えて、ご飯を食べて午後の部。
「それでは行きましょう、『コスプレ生着替え走』!」
代表が用意した衣装をくじで引いて、それに着替えての競争。衣装の用意のために事前に告知されていた競技で、私もこの競技のために北海道の実家にダブルオークアンタの量子ジャンプで衣装を取りに行った。
「それでは着替えを手伝ってもらうパートナーを紹介していただきましょう!」
くじで衣装を選ぶ以上、1人で着れないものを引いた時のためにパートナーを選ぶことになっている。私のパートナーは当然、
「葉加瀬なのは。背中のチャックを閉めるためだけに来た。」
そう、なのはだ。サイズが合わなかったりした時のために、私だと服を破いてしまうから非力ななのはを呼んだ。私となのはは互いに互いの不足を補う関係性。今までも力を入れすぎそうな時はなのはに頼んできた。
まぁそれは今はいい。各パートナーの紹介が終わったから、そろそろスタートだ。
「それでは、レーススタート!」
実況席からの声とピストルの音を聞いて走り出す。なのはを遥か後方に置き去りにして真っ先に紙を手に入れた私は、その内容を読み上げた。
「アットゥシ!」
「「「……何それ?」」」
実況席で織斑さんが漏らした声をマイクが拾った。それだけではなく、観客たちも首を傾げている。
無理もないとは思うけど、ここまで知名度がないのは少し寂しい。
「アットゥシは北海道アイヌ民族の民族衣装よ。樹皮から取った繊維を織って作られる織物ね。」
実況席から更識楯無生徒会長の説明がマイクで行われ、それを聞いた一部の人が「あぁ、あれそんな名前なんだ」と頷いた。
大多数には独特な紋様がある服、という印象しかないアットゥシ。なんで私がそれを持っているのかと言えば、探せばあるような先祖代々の着物みたいなもので、ただ受け継いだだけのこと。
まぁ、このアットゥシは昔作られた物じゃなくて、それを調べに調べて現代技術でなのはと一緒に作った再現品なんだけど。結構肌触りがいいから実家にいる時は普段着にしていたけど、IS学園に来る時に
「さぁトップは自分で用意した衣装を引き当てた飛鳥ちゃん!流石に着なれているのかものの数十秒で着替え終わり、第一関門の跳び箱をなんなく突破!続いて平均台!これもぐらつくことなく突破!後続はやっと跳び箱に到着したところ!これは勝負あったか!?」
なのはの補助もあって大分手早く着替えた私は、サイズが合わなかったり着方が難しかったりする他の衣装に苦戦している他を突き放して走った。
そして第三関門の紐で吊るしたあんパンを手を使わずに取る……パン食い競走としか言い方を知らないけど、これコスプレ生着替え走だからパン食い競走ではないんじゃないかなぁ、とか考えながら風で揺れるパンにかじりついていると、後ろの平均台の方から突風が吹いた。
「ハハハハハ!ISを使えばこの程度の障害など!」
「はい、ラウラちゃん失格~。」
ISを使えば確かに障害を無視できるだろうけど、乗り越えるとは言えない。ルールブレイカーを行ったラウラ・ボーデヴィッヒは笛を吹かれて失格となった。
だが、それで生着替えコスプレ姿を見せたラウラが納得できるはずもない。
「こんな格好までして失格だと!?貴様ら全員、吹き飛ばしてくれる!」
右肩の大口径リボルバーキャノンの狙いを定めるラウラ。しかしそれは1発の弾丸によって阻止された。
「ルールは守りましょうねー。」
山田真耶が教員用のラファール・リヴァイヴに乗って放った弾丸が、的確にリボルバーキャノンの心臓部を破壊した。
「馬鹿なあぁぁぁぁぁ!!!」
そう叫んでラウラは爆発した。
「……え、これどうなるの?」
平均台の上で突風の煽りを受けた他の人たちは全員倒れている。というか立っているのは飛鳥だけだった。これでは競争でもなんでもない。
審議の結果、十中八九飛鳥が1位だったし、ということで500点を手にすることが出来た。
「何か
そう煮え切らない感情を抱えながら、運動会は進んでいった。
『本当に今更だけど、この運動会はミニゲームの集合体だよ。A連打だったりコマンド打ったり、まぁ楽しい方ではあるけど、ストーリー中だと録にクリア出来ないから人気はないね。』
『まぁ一夏とイチャついた奴が勝ちみたいなものだし。』
『何故普通に運動会出来ないのか。』
上空50m、そこで大量の風船を身につけた織斑一夏が浮かんでいた。
「さて、最終競技『バルーンファイト』では、一夏くんの風船をISで割りながら、最後にキャッチして地上におろした人の勝ちです!得点はなんと1億点!」
「今までの競技の意味……。」
500点で一喜一憂していたのにこれである。いや、トップと最下位の点差を考えれば最終競技の点数が高くなるのは分かるんだけど、1億ってちょっと……。
あと織斑さんの安全が一切考慮されていないのはツッコミどころだろうか。せめてネットとか設置出来なかったのか。これはやっぱりみんなの食事を奢って貰わないと。特に織斑さんには特別手当てが必要だろうし。
そのためにも勝たないと。
「それでは~~~~~開始っ!」
開始の合図と同時に他が宙へと浮かび上がる中、私はGNソードビットをGNソードⅤに合体させた。
「GNソードⅤ・バスターライフルモード。」
GNソードビットでの多角攻撃が便利だから使い時がなかったけど、これなら風船を一気に割れる。
「狙い打つ!」
「!危ないですわ!」
ロックオンと同時にトリガーを引く。通常のライフルモードやGNビームガンなんて目じゃない極太ビームが射線上にいたISたちを押し退けて風船を破壊した。
「ソードビット!」
GNソードⅤに合体させていたGNソードビットを解き放ち、それぞれを他の妨害に当てる。セシリアには足りないだろうけど、それでも少しなら時間稼ぎになる。素早く移動した私は落下する織斑さんに手を伸ばした。
「織斑さん、手を!」
「あ、あぁ!」
左手で織斑さんの手を掴み、右手のGNソードⅤをライフルモードにしてGNビームガンと一緒にセシリアにビームを撃つ。
「手数が足りていませんわよ飛鳥さん!」
そういいながらセシリアはブルー・ティアーズのビットを自身の周囲に浮かべ、GNソードビットをGNソードⅡブラスターで捌きビームを回避しながら、
「くっ!」
セシリアは
「ごめんなさい、織斑さん!」
「え、おわぁぁぁっ!!?」
左手で掴んでいた織斑さんを離して、GNビームガンとGNソードⅤ・ライフルモードをそれぞれGNシールドとGNソードⅤ・ソードモードに切り替えて防衛に移る。
「捕まえましたわ、一夏さん!」
「せ、セシリアか。助かった……。」
ビームはダメだ、織斑さんを怪我させかねない。となれば必然的に接近戦。
私はGNソードⅤを手にセシリアに斬りかかった。
「飛鳥さん!ビットの欠けた貴女なら、このブルー・ティアーズでも対応出来ますわよ!」
「何なら私の方が不利だしね!」
周囲に浮かぶレーザービットからの攻撃をGNシールドで防ぎ、切り払い、更にセシリアに斬りかかる。それをセシリアはGNソードⅡブラスターで受け止め、レーザービットからの攻撃で私を引き離す。
私とセシリアの戦いはビットの戦い。そのビットが欠けている私は圧倒的に不利。あと織斑さんをセシリアが抱えているのも厄介だ。ISを使えない今の織斑さんは下手に火力で押しきろうとすると怪我をしてしまう。
私がビームを使えばセシリアも織斑さんを庇って放り投げるだろうけど、『もしも』を考えるとあまりできない。セシリアは
どうしよう、このままじゃセシリアが勝ってしまう。かと言って妨害に使っているGNソードビットは戻せない。混戦になると織斑さんが危ないからだ。
……あれ、もしかして詰んでる?
そう思考している私の耳に声が聞こえた。
「セシリア……すまん!」
「え?ちょっ、一夏さん!?」
セシリアから織斑さんが離れた。慌てて後を追うセシリアを更に追う。
でもスピードは出せない。あまり速すぎると織斑さんが怪我をする。トランザムも
「(量子化で先回り……ダメだ、停止状態だと受け止めた衝撃がそのまま織斑さんに行っちゃう。速度を合わせて怪我させない速度でブレーキ……慣性軽減も使えば……あれ、人が怪我しない速度ってどれぐらい?)」
妙案を思い付いたと思った飛鳥だったが、そもそも生身の人間を相手した経験が少ないため、他人が怪我をしないようにするにはどうすればいいのか分からない。前に
「(どうしよう、このままだと織斑さんが地面の染みになっちゃう。)」
本当にどうしようか悩んでいる飛鳥だったが、
「一夏くん!」
実況席から飛び出した楯無が無事に受け止めたために、ホッと胸を撫で下ろした。
「優勝、更識楯無!」
「……えっ。」