『どうも皆さんおはこんばんちは。いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』
『はいはーい、天っ才博士、葉加瀬なのはだよ。』
『まさかの束さんルート突入に驚きを隠せない。師弟関係だから?』
『そうなんじゃない?普通なら電話もかかって来ないし。』
『束さんルートかぁ……
『え゛っ、
『大丈夫かな、チートとかバグとか言われないかな。』
『一応仕様だし大丈夫だとは思うけど……。』
「束さんが織斑一夏を殺す?」
「そう言ってたよ。ボクに『邪魔しないで』ってさ。」
更識楯無に運動会の優勝を掻っ攫われIS学園の食堂でやけ食いをしていた天羽飛鳥は、夜のIS学園1年生寮に戻る頃には落ち着きを取り戻し、ベッドに腰かけて葉加瀬なのはの言葉に耳を傾けていた。
「私は自分で抑えれば良いって、本当にそう言ってたの?」
「そうしてる間にマドちゃんって人が殺してくれるとか言ってたよ。」
「マドちゃん?名前を覚えるなんて珍しい。自然発生なのか人為的なのかはともかく、その子も普通の人間じゃないのかな。」
「織斑先生たちみたいに」と何でもない様に言う飛鳥に、なのはは面食らった。
「……え?」
「あれ、知らなかった?織斑先生も織斑さんも受精卵から遺伝子操作された人間だよ。」
「何でそんなこと知って……いや、そうか。束さんか。」
「うん」となのはの思い至った答えを肯定した飛鳥は、まだ北海道の田舎に居た頃に篠ノ之束から聞いたことを話し始めた。
今から3年前。束が失踪したと世間で騒がれていた当時、当の本人である束は北海道の田舎――飛鳥となのはの地元で、2人を弟子に取っていた。
なのはの考えたGN粒子製造機関【GNドライヴ】の製作に協力しながらISの作り方を教え、飛鳥に実家の古武術と剣の使い方を教えながら試合を繰り返していたある日のこと。
「あーちゃんってちーちゃんと全然違うのに、たまーにダブって見えるんだよね。寂しいのかな私。」
互いに竹刀を横に置き、飛鳥が朝に作ったおにぎりを食べている最中、束がそんなことを呟いた。
「そんなに似てます?」
「黒い髪とかはそっくりだね、あと怪力なところも。相手した感じ身体スペックに差はあんまり無いかなー。でもそのぐらい。ちーちゃんはあーちゃんと違って家事できないし、性格だって全然違うよ。」
「全部いっくん任せなんだよ、ちーちゃん。」そう言ってパクリとおにぎりに齧り付いた束は「おっ、筋子だ!」と喜んだ。
「あっ、それ当たりです!」
「ホント?やった!」
飛鳥と過ごす時の束は普段と違ってあまり思考をしない。飛鳥の高いイノベイター能力が、束の超人的な思考を読んでしまうことへの配慮だ。だからこそ飛鳥と過ごしている時の束はボロッと口を滑らせることがある。
「一番の違いは養殖物か天然物かの違いだね。」
「養殖?」
「遺伝子操作で受精卵の段階から超人として設計されてるんだ。投薬とかもやってね。」
「だから養殖。」パクリパクリと筋子のおにぎりを食べ終えた束は2つ目のおにぎりにも手を伸ばして食べ始めた。
「私やあーちゃんは天然物。何もしてないのに超人として生まれた。まぁ、あーちゃんはなーちゃんに頭の良さを渡してるから、私ほどオーバースペックじゃないけど。」
「束さんはステータスオールSですからね。私は精々肉体関係のステータスにSが多いってだけですし、なのはも物作り関係のステータスだけSですし。」
「2人合わせればどうにか私に匹敵するね。」
「いつか超えて見せますよ。」
「おっ、言うねー。」
――じゃ、その日を楽しみにしてるよ。
「詳しくは聞いてないけど、嘘じゃない筈だよ。」
「人工の超人ねぇ……作って何をしたいんだか。」
「兵士にするんじゃないの。織斑先生が何人も居たら地獄絵図だし。」
瞬時加速に生身で割り込めてISの攻撃を受け止められる人が何人も居てたまるか。
『ステータスSの評価バグってる……。』
『まぁほとんどのキャラが高くてもA止まりだからね。そもそもこのゲーム、基本的にステータスCがスタートで、ゲーム中に授業とかイベントでの育成が主だし。周回プレイのポイントで高ステータスになってる方がおかしいんだよ。』
『ステータスオールSチケットの存在は何なんだ一体……。』
運動会翌日の振り替え休日も明けた月曜日。飛鳥となのはの姿は3組ではなく1組にあった。
「山田先生、説明を。」
「はい。このたび、1年生の専用機持ちはすべて1組に集めることになりました。それもこれも先日の大運動会での結果を、生徒会長なりに判断した結果となります。」
「これで事実上、クラス対抗戦はできなくなってしまったわけだが、専用機持ちの訓練は特別メニューを組んでやるから安心しろ。」
織斑千冬の言葉にゲンナリする専用機持ちたち。
「なのはさんはどうして1組に?」
そんな中、セシリア・オルコットが友人の来訪に首を傾げた。
「飛鳥が副会長権限でねじ込んだんだよ。」
「私となのははセットだから。クアンタのこともあるからあんまり離れるのも嫌だし。」
「相変わらず仲がいいですわね。」
そんなことを話しているセシリアの後ろで、凰鈴音が織斑一夏の隣の席に座ろうとしていた。
「鈴さん、なにを勝手に席を決めていますの?」
「うぇっ!?」
それを見ないまま、イノベイターの空間把握能力で察知したセシリアに驚いた声を上げた鈴に、専用機持ちたちが席替えを希望し出す。
「やれやれ、歴代最強にして最大の問題クラスになったな。」
その騒がしさに、千冬は頭を抱えた。
恋する楯無パートなんてなかった。というか関わりようがなかった。某A国の秘匿潜水艦とかわざわざ行く理由もないし……。そもそもこれ、前回の話に纏めれば良かったのでは……?短くなった理由も話を盛れなかったのもそうだけど、10巻に内容が入っちゃうからだし……。
完全な余談
感想でELSに「呼んだー?」と言われましたが、この世界にELSが来たらバッドエンド不可避です。
触れたらアウト、侵食により実弾無効のELSをどうにかできるISの数が少なすぎるので、対話前に地球が侵食されて終わります。
束や飛鳥やセシリアが居てもカバーできる範囲に限りがあるので、どうしようもありません。