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英単語の頭文字から【ゼロシステム】と呼ばれるそれは、かつて篠ノ之束と葉加瀬なのはによって作られた欠陥品のインターフェースだった。
超高度な情報分析と状況予測を行い、毎秒毎瞬無数に計測されるあらゆる【未来】を操縦者に見せ、勝利のために最適な行動を操縦者に提示・実行させる。それが【ゼロシステム】の大まかな仕様だ。
作った理由は色々あったが、結果から言えば使用のリスクと得られるリターンが釣り合わないからと欠陥品とされた。
あらゆる【未来】を見せる【ゼロシステム】は、勝利だけではなく敗北も、死さえも見せる。そしてそこに人道や良心という物はなく、目的に必要であるなら大量虐殺さえも選択肢として提示する。その【未来】に常人は耐え切れず、暴走するか廃人となるかの2択の末路が待っている。
テストがてら自らそれを使用した束も【ゼロシステム】が見せた【未来】に動揺し、咄嗟になのはが外部から【ゼロシステム】を停止させたために大事には至らなかったが、暫くの間食事が喉を通らないほどの精神的負荷が掛かった。
そのため、本来【ゼロシステム】を使用する筈だった天羽飛鳥が触れるよりも先に、束となのはによって欠陥品とされた【ゼロシステム】は設計図という形でだけ残されるのみで、現物は束が責任を持って破棄した──筈だった。
「ソードビット!」「マルチビット!」
戦いの始まりは互いに解き放ったビットだった。飛鳥がGNシールドからGNソードビット6機を解き放つと同時に、束がIS【群咲】の背部ウィングスラスターの一部を切り離し、4機のビットとして自身の周囲に浮かばせた。
束の専用機【群咲】は分類で言えば全身に展開装甲を搭載した第四世代機に該当し、その中でも際立って高い性能を持つハイエンドモデルである。
全身に携えた展開装甲によるあらゆる状況への高い対応力。本体の束をサポートする多目的兵装【マルチビット】4機との連携。それらを扱う束自身の技量も合わさり、正に【
現に飛鳥が飛来させた6機のGNソードビットを、エネルギーシールドを展開させたマルチビットで4機抑え、両手の展開装甲から出したエネルギーブレイドで残りの2機を受け止めていた。
「剣が足りないよ!」
引いてはまた斬りかかるGNソードビットを両手であしらいながら飛鳥にそういう束が、引いたタイミングで飛鳥の方へと踏み込むと同時に両足からもエネルギーブレイドを展開して
「そりゃ7本しかありませんから!」
飛鳥はそれを右手のGNソードⅤと左肩のGNシールドで受け止め、束の背後からGNソードビットを斬りかからせた。
束は背部ウィングスラスタ―の展開装甲からエネルギーブレイドを展開しそれを受け止め、両手のエネルギーブレイドで飛鳥に斬りかかる。
「貰った!」
「全然!」
束が飛鳥を斬る寸前、束の後方でマルチビットのエネルギーシールドとぶつかっていたGNソードビットの内の2機が量子となって消え、GNシールドにマウントされた状態で現れた。それが瞬時にGNシールドを離れ、束の両手のエネルギーブレイドと切り結ぶ。
「
武器を瞬時に収納し、さらに別の武器を展開する
かつてラウラ・ボーデヴィッヒを相手に使った、武器を左右の手で持ち替える技術と同じもの。それを離れた場所にあるGNソードビットに対して行ったのだ。
キャノンボール・ファストや運動会で多人数を抑える時には漁夫の利を取られるために使えなかったが、相手が束1人なら話は変わる。
「切り刻めソードビット!」
他のGNソードビットも一度量子にすることで手元へと戻し、それを束へと向かわせながら飛鳥も束のエネルギーブレイドを跳ね除け斬りかかる。
「でもそれは私も出来るんだよ!」
束の背後に浮かんでいたマルチビットが量子となり、背部ウィングスラスターに戻った状態で再顕現する。それがすぐに分離し、再びエネルギーシールドを展開しGNソードビットを受け止めた。
「どう、あーちゃん!室内での戦いはやり辛いでしょ!」
「束さんこそ、外の方がやり易くないですか、そのビット!」
群咲もダブルオークアンタも、性能をフルで発揮するならある程度の広さを要する。ダブルオークアンタは切り札であるトランザムや量子ジャンプによる速攻が出来ず、群咲も展開装甲の万能性とマルチビットの多機能性を使えていない。
それでも互いに外に出ないのは、それぞれに理由があるからだ。
GNドライヴの製作に協力した束は、当然そこに組み込まれたトランザムシステムについても知っている。それを起動したダブルオークアンタがどれだけの性能を発揮するかもゴーレムⅢを通して知っている。
群咲の性能ならば対応出来るが、それでも使われれば厄介なのは変わらない。何より、束は室内という限定した状況で飛鳥が使っている【ゼロシステム】を抑制していた。
広い空間であればそれだけ取れる選択肢は多くなる。その先の【未来】を【ゼロシステム】が提示する。見る【未来】が多いほど飛鳥の身が危ないと、束は可能性を限定できる室内戦を仕掛けているのだ。
飛鳥の方も有利になる屋外に出ないのには訳がある。今屋外に出れば目視で戦闘中であることがIS学園にバレるからだ。
ダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアに協力してもらい、作戦開始まで姿が見えなくとも怪しまれないように手は打ったが、それでも外で戦っていれば嫌でも目に付く。そうなれば救援として他の専用機持ちも来て、増えた人数分だけ【ゼロシステム】が見せる【未来】がネズミ算的に増えていく。
ただでさえ切れる手札の多い群咲の【未来】を見るのに苦労しているのに、他の専用機持ちたちの【未来】まで見ていたら、肝心の群咲への対応が遅れてしまう。
飛鳥が【ゼロシステム】を使った戦闘に慣れていればどうにか出来たのだが、『ライザーソードで絶対防御の上から相手を殺す』のを最有力候補に挙げるダブルオークアンタの【ゼロシステム】では、どう足掻いても精神的負荷が掛かり過ぎる。
そう、【ゼロシステム】は気軽に殺そうとするのだ。それもあらゆる手を使って、その結末を使用者に見せてくるし、実行させようとする。故に束もなのはも【ゼロシステム】を欠陥品とした。
「それで、何で【ゼロシステム】を使ってるのかな!なーちゃんなら何があってもあーちゃんには使わせない筈だよ!」
だからこそ束には
ダブルオークアンタに組み込まれているのは残った設計図からなのはが作ったからだろう。だが飛鳥の言葉から最大の欠陥である精神的負荷は解決されていないのは目に見えている。そんな欠陥品が何故使われているのか、束には分からなかった。
「こうなるのが見えたからです!言ったら【鍵】をくれました!」
「はぁ!?いつから【ゼロシステム】使ってるのあーちゃん!?」
「クアンタが出来てからは慣らしがてら予定がない時に使ってましたよ!使えないのはクアンタの展開中だけだったので!」
開いた口が塞がらないとはこのことかと束は茫然とした。
「何やってるの!?」
「今の束さんには言われたくないな!」
叫ぶと共に飛鳥は斬り結んでいた束を弾き飛ばした。
「【コード・ヴァイオレット】で世界中のISを全部停止させる気ですよね!」
「っ、【ゼロシステム】で見たんだね!そうだよ!」
「何も変わらない世界を、せめて元に戻そうとしてる!」
「よく分かってるね!流石私の弟子!」
会話を続けながらも衝突は止まらない。束は四肢の先からエネルギーブレイドを展開して斬り掛かり、飛鳥がそれをGNソードビットとGNシールド、GNソードⅤで受け止めていく。
「束さんはやっぱり時々バカですね!」
「いきなり罵倒!?」
突然のバカ呼ばわりに束が困惑の声を上げる。
「進んだ時は戻せないし、事実はどうあっても覆せない!当たり前のことですよそんなの!」
「どうかな!そんな道理、私の無理でこじ開けてみせる!」
「世界を変え切れなかった束さんにそれが出来ますかね!」
「あっはっは、挑発なら乗るよ?」
四肢だけでなく全身の展開装甲を開き、そこからエネルギーブレイドを出した群咲が突っ込んで来るのを
「やばっ、煽り過ぎた。」
一気に【ゼロシステム】の見せる【未来】に敗北が増えたことに頬を引きつらせた。
名称:群咲
型式:XX-00
世代:第四世代
国家:無所属
分類:全状況対応万能型
装備:多機能誘導兵装【マルチビット】×4
装甲:流動量子組成装甲
仕様:展開装甲、ビット、コード・ヴァイオレット
待機形態:機械的なウサ耳
説明:篠ノ之束が自身の専用機として製作したIS。
元々は第一世代の機体だったが、時代の流れと共に改修・改良が施され、現在は白式でテストされた展開装甲を全身に組み込んだ第四世代の機体となっている。
搭載している装備は背部ウィングスラスターの一部を切り離して使用する多機能誘導兵装【マルチビット】4機のみだが、その実全身に組み込まれた展開装甲によってあらゆる状況に対応できる万能機である。
全ISを掌握する能力【コード・ヴァイオレット】を持っており、ISの稼働状態さえも自由に決められるため対ISでは絶対的優位性を誇る。
展開装甲による万能性と束自らが自身の専用機として製作したが故の圧倒的性能を持つ、他のISは戦うことさえ許されない正に『無敵』のISである。
2020年9月現在、IS【群咲】について判明している情報はありません。本項は全て独自設定・独自解釈であり、これを原作における【群咲】と同一視しないで下さい。