IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第41話 ダブルオークアンタ、それは――

 京都観光を終え、亡国機業(ファントム・タスク)掃討作戦のためのミーティングを始めようという時に、集まった面々を見渡した織斑千冬は目付きを鋭くして専用機持ちたちに問いかけた。

 

「おい、天羽はどうした。」

 

「先輩たちと京都を回るからって別れてからは会ってませんけど……。」

 

 シャルロット・デュノアがダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアの方を見ながらそう言う。

 

「天羽さんに限って遅刻はないよな?」

 

「うん。真面目な人だから……。」

 

 生徒会で関わりのある織斑一夏と更識簪が揃って首を傾げた。

 

「飛鳥ちゃんはいつも集合時間のちょっと前から待ってるのに、どうしたのかしら。」

 

 同じく更識楯無が首を傾げる。

 

「セシリア、お前は何か知らないのか?」

 

「何をしているかは知ってますけれど、どこにいるかまでは……。」

 

「?あの人は京都に用事があったのか?」

 

 篠ノ之箒とラウラ・ボーデヴィッヒがセシリア・オルコットに質問する最中、凰鈴音がダリルとフォルテに聞いた。

 

「ねぇ、アンタらは知らないの?」

 

「知ってるっスよ。」

 

「邪魔したら死ぬから黙ってたけどな。」

 

 何でもない様にそう言うダリルとフォルテに、千冬が険しい顔で問い詰めた。

 

「天羽はどこにいる。」

 

「篠ノ之束の所だ。」

 

「なに?」

 

 千冬をして予想していなかったダリルの返答に、全員に驚きが広がる。

 

「姉さん?」

 

「何で束さんの所に?」

 

 箒と一夏が困惑する中、セシリアは話し始めたダリルたちを不安の眼差しで見つめた。

 

「(大丈夫っスよ、元々口止めされてたのは作戦開始までっスから。)」

 

「(脳量子波でいきなり話し掛けるののやめてくれません?)」

 

「(同類の好っスし、仲良くしましょ?)」

 

 ()()()()()()()()()フォルテがセシリアの方を見ながら脳量子波で声を掛けた。

 

 タッグマッチトーナメントでダブルオークアンタのクアンタムバーストによる高純度GN粒子を浴びたフォルテは、それから少しして純粋種のイノベイターへと変革を遂げていた。

 

 この事実は天羽飛鳥も葉加瀬なのはも、篠ノ之束さえも知らない。ビット使いであったためにイノベイターの素質を持っているだろうと当たりをつけられていたセシリアと違い、フォルテのことを誰も気にかけていなかったのと、フォルテが変革してすぐにイノベイターとしての能力を制御してみせたからだ。

 

 飛鳥の知覚すらかいくぐり、誰にも気付かれないで調査を進め、セシリアが同類であると見抜いたフォルテの方から接触されたことで、セシリアだけはその事実を知っている。

 

 飛鳥となのはに言うべきではとセシリアは言ったがに、フォルテがあまり言いふらすことでもないし、言ったところで専用換装装備(オートクチュール)を作ってもらえるほどの金額を用意できないからと引き留めたのもあって、セシリアも言わずにいた。

 

 そしてこれにより、IS学園の強さランキングで楯無がトップ3にすら入れないという事実は、結構先まで判明することはなかった。

 

 閑話休題

 

 篠ノ之束の名前が出たことで驚く面々に、ダリルが飛鳥から聞いていたことをそのまま話した。

 

「作戦の邪魔をしてくるから、それを抑えに行くんだとよ。」

 

「はぁ!?」

 

 束が敵側という事実と、それを何も言わずに1人で抑えに行った飛鳥に対して驚きの声が上がる。

 

「それって、篠ノ之博士が敵ってこと!?」

 

「らしいぜ。」

 

 シャルロットの疑問を肯定し、ダリルは近くに居たフォルテの頭を手持ち無沙汰に撫で始めた。

 

「助けに行かないと!」

 

「やめとけやめとけ、飛鳥の邪魔するだけだ。」

 

「でも!」

 

「止めろ織斑。」

 

「千冬姉!」

 

 飛鳥を助けようと言う一夏を千冬が止めた。

 

「ケイシー、天羽は他に何か言っていたか?」

 

「機体の3つある枷の内1つを外すってよ。あれで競技用リミッター以外にも制限掛けてるんだってさ。」

 

「あれで……!?」

 

 タッグマッチトーナメントで戦った簪が驚く。抵抗さえ出来ずに負けたというのに、あれで制限を設けていたなど信じられなかった。

 

「4時間49分、それが戦闘時間らしい。今4時間経ってっから、もうそろそろ終わるだろ。」

 

「……なら、天羽抜きで作戦を開始する。」

 

「千冬姉!?」

 

 千冬の言葉に一夏が目を見開いた。

 

「天羽なら大丈夫だ。世界最強(ブリュンヒルデ)になると言ったんだ、束ぐらい越えてくる。」

 

 続くその信頼の言葉に、一夏も口を閉じた。

 

 

 

 

 一方、飛鳥は

 

「吹き飛べぇ!」

 

「GNフィールド!」

 

 だんだん加減を止め始めた束の攻撃を受けるのに苦労していた。

 

「出力オバケ!エネルギーどうしてるんですかそれ!」

 

「他のISと同じく、別宇宙のエネルギーを貰ってるのさ!ただちょっとそのラインが太くてね!群咲にエネルギー切れはないよ!そらっ!」

 

「インチキも大概にしてください!」

 

「半永久機関使ってるあーちゃんに言われたくないな!」

 

 戦闘開始から4時間。互いにシールドエネルギーを多少削りこそしているが、ほぼ無傷と言っていい状態で拮抗していた。

 

 束も飛鳥も、本人と機体のスペックが高く、更にエネルギー切れがないという点は共通している。それでも素の2人が戦えば束が勝利するのは、束の方が戦略を練るのが上手いからだ。しかしその有利な点は飛鳥の使う【ゼロシステム】によって無くなっている。

 

 今の2人には武装以外に差はないと言っていい。飛鳥が攻撃を受け止めるのに苦労するのはその差だ。

 

 群咲の武装【マルチビット】は、それ1つでエネルギーブレードを発生させた溶断・エネルギービームを撃ち出す射撃・エネルギーシールドを発生させる防御、その他にも色々なことができる万能武装。

 

 対してダブルオークアンタのGNソードビットはあくまでソードであり、6機で発生させるGNフィールドはビット全てを使う必要があるなど、マルチビットの方が扱いやすさに分がある。

 

 現に今、マルチビットによる射撃で飛鳥は苦労している。

 

 セシリアを相手している時の様にGNソードビットで迎撃したいが、無限のエネルギーで高威力のビームを放つマルチビットの攻撃は流石に斬り裂けない。

 

 後のことも考えるとGNソードビットを破壊される訳にはいかないため、飛鳥の動きは慎重だった。

 

 だが、それもここまで。()()()()()()()()ため、飛鳥も本腰を入れる。

 

「トランザム!」

 

「!」

 

 圧縮粒子を全面開放し、数倍以上の出力でもって強引に束ごと窓を突き破って飛鳥は外に躍り出た。

 

「あーちゃん!!」

 

 瞬間、【ゼロシステム】が見せる【未来】の数が跳ね上がる。

 

「――っ。」

 

 GNソードビットの動きが乱れるのを見て、束は恐れていたことが起こってしまったと歯噛みした。

 

 

 

 

 地獄を見た。

 

 人の死を見た。街の死を見た。国の死を見た。世界の死を見た。星の死を見た。

 

 誰もが泣いていた。誰もが嘆いていた。誰もが怒っていた。誰もが諦めていた。

 

 前に進む勇気も、共に生きる友情も、誰かを思う愛情を、非道を嫌う純真も、状況を変える知識も、行動を起こす誠実も、明日への希望もない。

 

 地獄を見た。

 

 

地獄を見た。

 

 

地獄を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――飛鳥!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――飛鳥!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――飛鳥!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「飛鳥!」

 

「!」

 

 気付けば、色とりどりの花が咲き誇る花畑に立っていた。

 

「ここ……。」

 

 知っている。私はここを知っている。何度も訪れた場所だ。

 

「飛鳥、ゼロシステムに負けないで。」

 

 声が聞こえる。()()の声だ。

 

「私はいつもあなたと一緒に居る。忘れないで、あなたは1人じゃない。」

 

 優しい声が聞こえる。私のことをいつも気にかけている()()の声。争いを望まない優しい子。

 

「あなたと私、2人揃って対話がなる。」

 

「……そうだね。そうだった。」

 

 力を持って生まれて、言葉の重みを知って、そして求めた【対話のための機体】。

 

「私はただ伝えるだけ。あなたに想いを、あなたの想いを。」

 

「うん、ごめんね。思ってた以上に精神やられてたみたい。」

 

 ゼロシステムの見せる未来。それに当てられて、一時(いっとき)とはいえ願いを忘れていた。

 

「飛鳥、あなたの願いは?」

 

「私の願いは――戦争根絶。」

 

 最初はただなのはとの喧嘩で、もうすれ違いたくないと望んだ。

 

 ISの登場で、宇宙人が居るのかをバカみたいになのはと議論した。

 

 束さんと出会って世界のことを知って、どうにかしたいと思った。

 

 力で捻じ伏せることは簡単だろうと思った。けどそれじゃダメだって束さんに教えてもらった。

 

 言葉を尽くせば分かってくれるだろうと思った。けどそれじゃ足りないと束さんに教えてもらった。

 

 だからその2つを、もっと強く。

 

「力を貸して――――!!!」

 

 

 

「ダブルオークアンタ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 緑の閃光が6つ(またた)いた。

 

「ッ!?」

 

 群咲のシールドエネルギーが減ってようやく攻撃を受けたことに気付いた束が、助けようと近付いた飛鳥から離れる。

 

「うそ……。」

 

 思わずと漏れたのは、唖然とした声だった。

 

 今まで上位権限を持つ束にさえ開示されていなかったダブルオークアンタの情報。それをハイパーセンサーが映し出した。

 

「想いだけでも、力だけでも、世界は変えられない。」

 

 GNソードⅤを右手に持ち、左肩にGNシールドとその上部に取り付けられたGNビームガンを向け、周囲にGNソードビットを6機浮かばせて。

 

「だから、2つ共を求めた。」

 

 GNT-0000、ダブルオークアンタ。

 

「対話のための機体、世界を相手取る機体。」

 

 世代、()()()()

 

「ダブルオークアンタ、天羽飛鳥!未来を切り拓く!」

 

 操縦者の願いを叶えるために、そのISは飛翔した。




名称:00 QAN[T]
和名:ダブルオークアンタ
型式:GNT-0000
世代:第五世代
国家:日本
分類:全距離対応対話型
装備:可変複合兵装【GNソードⅤ】
  :無線誘導切断兵器【GNソードビット】(A2/B2/C2)
  :多機能複合兵装【GNシールド】
  :迎撃用射撃兵装【GNビームガン】
装甲:Eカーボン
仕様:GNドライヴ搭載機、ツインドライブシステム、トランザムシステム、クアンタムシステム、ゼロシステム、ビット、量子ジャンプ、イノベイター専用
待機形態:緑色の石が付いたアンクレット
説明:
 多様変異性フォトン【GN粒子】を生産する半永久機関【GNドライヴ】。それを2基搭載し同調稼働させることで粒子生産量を2乗化する【ツインドライヴシステム】を採用した、純粋種のイノベイターとして高い能力を持つ天羽飛鳥に対応できるように葉加瀬なのはが数ヶ月の時間をかけてあらゆる見直しを行った上で開発・製作・整備した天羽飛鳥専用機。
 世界でただ1つの第五世代機であるが、普段は3つの枷をつけることで第三・五世代程度に性能を落としている。
 1つ目の枷は【フルセイバー】を使用しないことによる戦闘力低下。
 2つ目の枷は【ゼロシステム】を使用しないことによる戦闘力低下。
 3つ目の枷は通信妨害等の影響があるGN粒子の量を減らしていることによる性能低下である。
 これらの枷はそれぞれさまざまな理由で付けられているが、場合によっては外されダブルオークアンタの能力を解放していくことがある。
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