IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第42話 ライザーソード、それは未来を切り拓く剣

 その出会いは偶然だった。

 

 遊び半分でやろうとした日本中のパソコンハッキングRTA。北海道から沖縄までの47都道府県で1つずつパソコンをハッキングしていき、何か1つデータを持ち出せれば終了。レギュレーションは複数同時ハッキングはしないことぐらい。

 

 その栄えある最初のハッキングで、私は手こずった。

 

 前に探った国家機密が生温いほどの防壁。突破したかと思えば追い出され、途中からハッキングし返されたりもした。

 

 20分の攻防の末、どうにか相手のパソコンからデータを抜き出して攻撃を振り切った私は、そんなに厳重に守られているデータに興味を持った。

 

 そしてデータを見た私は一瞬、()()()()()()()()()()()()

 

 一緒に抜き出せていたファイルに書いてある文章を読んで、私は震えた。

 

 これは間違いなく世界を変えることができる。ISが出来なかったことができる。そう思って、私は北海道に向かった。

 

 向かった先はハッキングしたパソコンの持ち主の所。住所なんてすぐに分かる。インターフォンを押して、出て来た少女に私は言った。

 

「面白いことしてるね!」

 

「人違いです。」

 

 ハッキング対策で忙しい本人ではなく、その友人が出て来るのは流石に予想できなかった。

 

 それが私たちの出会い。偶然出会った私みたいな超人・天羽飛鳥と、偶然見つけた私みたいな天才・葉加瀬なのはとの出会い。

 

 思えば、あの頃が一番楽しい人生を送っていた気がする――――

 

 

 

 

 圧縮されたGN粒子によって赤く輝くトランザム中のダブルオークアンタに、全身の展開装甲を使用することで篠ノ之束は対抗する。

 

 別宇宙からエネルギーを拝借しているISコア。そのラインを更に太くしている【群咲】は無尽蔵のエネルギーを有している。その為エネルギー切れという概念はなく、それ故に【紅椿】の絢爛舞踏の様な()()()をしなくとも展開装甲を十全に使うことが出来る。

 

 スペックは第四世代最高峰、展開装甲由来の万能性、それを支えるエネルギーも無尽蔵。それとは別に【コード・ヴァイオレット】によって文字通りの無敵となる群咲は、束だからこそ扱えている所がある問題児だ。

 

 今やっているトランザムの速度に追いつくための、全身の展開装甲で行う移動の瞬時加速(イグニッション・ブースト)化――無制限瞬時加速(アンリミデッド・イグニッション・ブースト)などその代表だ。束のような超人でなければ身体がバラバラに吹き飛んでいるだろう。

 

 それをしてもなお、束が押されていた。

 

「刻めソードビット!」

 

「阻めマルチビット!」

 

 互いにビット同士を戦わせるのは室内で戦っていた時と変わらない。しかし本人同士の戦いは違った。

 

 ダブルオークアンタのトランザムに対応するため、群咲の展開装甲が移動だけで手一杯なのだ。両手両足の先からエネルギーブレイドを発生させることは出来るが、それ以外の展開装甲はスラスターとして使用されている。

 

 となれば、束のマルチビット4機をGNソードビット4機で抑え、残ったGNソードビット2機を攻撃に参加させられる飛鳥の方が有利なのだ。両手両足の4つのエネルギーブレイドで武具の数こそ同じだが、束とて人間である以上その武具を攻撃に使えない体勢がある。

 

 両腕を振るえば前傾姿勢となって蹴りが出せず、蹴りを出せば後傾姿勢になって手が出せない。四肢の全てを同時に攻撃には使えないのだ。

 

 対して飛鳥はGNシールドこそ攻撃に使えないが、GNソードⅤとGNソードビット2機がある。攻撃の手は束より多く、それが【ゼロシステム】によって的確に使用される。

 

 むしろこれで押される程度で済んでいる束を賞賛すべきだろう。通信妨害などで周囲に影響のあるGN粒子の量を制限している関係で性能が【白式】程度に下がっているダブルオークアンタより、群咲の方が性能が高いのも理由の1つだが。

 

 それでも束が未だに負けないのは、彼女が仮にも篠ノ之流剣術という古武術を現代まで継承している家系の長女だからだ。

 

 本人にその気は毛ほどもないが、何度か見ている以上束は篠ノ之流剣術を扱えるし、教えることも出来る立派な『師範代』だ。実際に北海道で飛鳥に剣の振り方を教えていたし、篠ノ之流剣術の奥義も一部だが伝授している。

 

 血に流れる剣士の才能。それが束を敗北から遠ざけていた。

 

「そういえば、聞いてませんでした!」

 

「何をかな!」

 

 斬り結び、切り払い、ぶつけ合う。その最中、飛鳥がトランザムによってダブルオークアンタから放出された高純度GN粒子に乗せて束に話し掛けた。

 

「何で終わらせる気になったんですか!」

 

「他ならぬあーちゃんがそれを聞くんだ!」

 

 周囲でGNソードビットとぶつかり合うマルチビットが瞬時にエネルギービームを飛鳥に向けて撃ち、すぐにGNソードビットとエネルギーシールドを発生させて再びぶつかり合う。

 

 撃たれたエネルギービームを僅かな回避動作から量子化することで回避した飛鳥が出現するのを、ハイパーセンサーの全方位視界で確認すると同時に無制限瞬時加速(アンリミデッド・イグニッション・ブースト)で移動し応戦する。

 

「そりゃ聞きますよ!だって言わなきゃ伝わらない!」

 

「全くその通りだね!でも女の子はいつだって分かってほしい物なんだよ!」

 

 GNソードビットを囮としてGNソードⅤで飛鳥が斬り掛かり、それを無制限瞬時加速(アンリミデッド・イグニッション・ブースト)の移動と、それによって放出されるエネルギーが副次的に形成するハイパーセンサーさえコンマ数秒欺く残像で束が回避する。

 

「イノベイターだからって言葉が要らないと思わないでください!」

 

「天才だからって何でも教えると思わないでよね!」

 

「なら群咲に聞きます!」

 

「えっ。」

 

 ツインドライヴの高純度GN粒子の補助があれば、他人の乗っているISのコア人格とも会話できる。理論的に可能であることは束にはすぐに分かった。

 

「あっ待ってお願いねぇちょっとあーちゃん!?」

 

「教えて群咲!」

 

「ねぇってばー!!!」

 

「拗ねてる。」

 

 GN粒子に乗って群咲から告げられたたった1単語に、飛鳥の動きが止まった。同時に束が顔を赤くして(うつむ)く。

 

「GN粒子が新たなイノベイターを誕生させた。つまり世界を変えられることが証明された。だから変えれなかった私たち(IS)を消そうとしてる。」

 

「……。」

 

「無言やめてよ!何か喋ってよ!」

 

「いや……えぇ……?」

 

 ISコアは嘘を吐かない。つまり今の言葉は紛れもない真実。

 

「つまり、なんですか?なのはのGNドライヴさえあればイノベイターが生まれて世界は変わっていくから、変えれなかったISは要らないっていう……。」

 

「そうだよ悪い!?」

 

「バカですか!?いやバカだった!束さんはバカだ!」

 

「バカバカ言うなー!!!」

 

 顔を羞恥で赤く染めた束が動きを止めていたマルチビット4機で飛鳥にエネルギービームを撃った。それをGNシールドで受けた飛鳥は1度トランザムを停止させた。

 

「女の子が羽ばたく翼!それがISだったのに、今はただの兵器だ!戦闘機に取って代わっただけ、銃がISになっただけ!そんな危ない物、ない方が良いでしょ!?」

 

「だからバカなんです!なんでそう極端なんですか束さんは!なんで0or1なんですか!パソコンじゃないんですから二進数みたいなそんな考え止めてください!」

 

 言い合いながら、先ほどまでと比較すればじゃれ合いの様な戦いが始まった。互いにビットを戻し、普通のISがやるような速度で、右手の剣だけでぶつかり合う。さながら剣道の試合の様な形相で、もはや隠す必要もないと声を張り上げた。

 

「大体、ISが無くなったら人類の宇宙進出がまた延びるじゃないですか!許しませんよそんなこと!」

 

「あーちゃんなら1人でも外宇宙探索できるでしょ!他が遅れようが別にいいじゃん!」

 

「良いわけないでしょ!!!」

 

「っ!」

 

 飛鳥の咆哮と共にGNソードⅤが束の右手から出るエネルギーブレイドを跳ね除けた。

 

「他でもない束さんが!自分の夢を遅らせるな!」

 

「夢――?」

 

 体制を崩した束に追撃をせず、飛鳥は言葉を続けた。

 

「宇宙人探し!まだ見つけてない!」

 

「!」

 

 かつて世界に飽き飽きしていた束は、未知の多い宇宙に興味を持った。地球にもまだ未知はあるが、それよりも広大な宇宙に視点を向けた。

 

 自分自身(女の子)を羽ばたかせたくて作った、広大な宇宙へ飛び出しても問題ないマルチフォーム・スーツ。それがISだ。多大な拡張性によってあらゆる方面でも使用できるようにと、束の叡智の髄を詰め込んで作り上げた発明がISだ。

 

 それで束個人が夢見たのが宇宙人探し。地球に生命体が居る以上、他の星にも居る。そして()()()()()()()()()()()()()()()()以上、それは探求するに値することだと束は思った。

 

 しかし流石の束も、広大な宇宙を1人で探し回るのは不可能。だからこそ人類を宇宙へと進出させようと、世界を変えようとISを発表し――夢破れた。

 

 宇宙になんて飛び出さないで、地球の上で未だに戦争をしようとしている。抑止だなんだと理由を付けて争うことしか考えていない。そんな世界に、束はもうコリゴリしていた。

 

 自分自身の夢を叶えることを止めて、世界を変えることを止めて、自分が変える前の世界に戻す。それが今の束の目的。

 

「そんなの私が許さない!」

 

 だが、それを飛鳥は認めない。

 

 夢に破れて、色々と参っていて、束なりに考えた結果だとは理解している。だが、それでも認めない。

 

「だって、私は束さんの笑顔が好きだから!」

 

 己の師匠の笑顔のためにも、認めない。

 

「……今の、告白?」

 

「私より身長低くなってからその戯言(ざれごと)は言ってください。」

 

「このロリコンッ!」

 

 束が羞恥とは別の感情でポッと頬を赤らめて言った言葉を飛鳥は冷めた目で切り捨てた。

 

「ともかく、私は束さんを止めます。」

 

「……はぁ、分かった。今回は私が折れる。」

 

 GN粒子に乗って伝わる固い意志に、遂に束が折れた。

 

「でもいっくんは殺すよ。」

 

 折れてなかった。

 

「私疲れてるんです!ゼロシステムで頭フル回転してるからすっごく眠いんです!もう終わりましょう!?」

 

「えー?」

 

「『えー?』じゃない!早く終わるために明るい内から始めたのに第2ラウンドとか嫌です!断固拒否!」

 

 不満気な束に両手で×印を作って飛鳥が抗議する。

 

 ゼロシステムで思考を止めずに4時間動きっぱなしの飛鳥は疲れていた。今寝れば朝までぐっすり眠れるだろうという疲労感が全身を包んでいる。お腹だって空いている。お風呂入ってご飯食べて眠りたい。というかゼロシステムを停止させたい。

 

 これ以上戦うのはいくら超人とはいえ、16歳の少女には苦だった。

 

「んー、じゃぁ最大火力の撃ち合いで勝った方の勝ちね。」

 

「わぁい、束さん大好きー。」

 

 未だにダブルオークアンタのトランザムで放出されたGN粒子による意識共有が残る中、束と飛鳥は互いに構えた。

 

「マルチビット腕部接続!展開装甲フルオープン!抜刀!」

 

 マルチビット4機を右腕に接続し、全身の展開装甲を全て活用しての特大エネルギーブレイド。

 

「GN粒子リチャージ完了!GNソードⅤ・バスターライフルスタンバイ!トランザム!

 

 トランザムによって消費していたGN粒子の充填を終わらせ、GNソードビット6機をGNソードⅤに合体させバスターライフルにし、トランザムによって解放された圧縮粒子を解き放つ。

 

「「ライザーソード!!!」」

 

 京都の夜空に、2つの柱が立った。

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