IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第43話 IS、それは女の子を羽ばたかせる翼

 亡国機業(ファントム・タスク)が拠点としている京都のホテル。そこへの強襲部隊に編制されたダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアの2人は、他のメンバーにホテル制圧を任せて突入と同時にワラワラと出て来た戦闘員たちを相手取っていた。

 

「ぐあっ!」

 

 どさりと音を立てて、第二世代量産機IS【ラファール・リヴァイヴ】を纏った亡国機業(ファントム・タスク)の戦闘員の最後の1人が倒れる。

 

「今ので最後か?」

 

「みたいっス。あー疲れた。」

 

 10分も掛からずに複数のISを行動不能に追い込み、自分たちの消耗はシールドエネルギーが1割程度減っただけ。端から見ても明らかな実力差でもって、イージスコンビは戦闘員たちを一掃した。

 

 如何にテロリストとして実戦を経験している亡国機業(ファントム・タスク)の戦闘員といえど、2人合わされば国家代表──それも第2回モンド・グロッソ優勝者であるイタリア国家代表操縦者アリーシャ・ジョセスターフを相手に()()()()()()()イージスコンビの相手は、些か以上に無謀な戦いだった。

 

「このラファール・リヴァイヴ、どこのっスかね?」

 

「いろんなとこから奪ってっからなー。コアナンバー見ねーと分かんね。」

 

 世界中でISコアを強奪し、場合によっては専用機さえも奪い取る亡国機業(ファントム・タスク)。そのため特徴的なカスタムがされた量産機か1点物である専用機でもない限り、どこから奪われた物なのかを外見から判別することはできない。

 

 唯一見分けることができるのがコアナンバー、ISコアに刻まれた製造番号である。その番号と各国が持っているコア分配時に作られた資料を照らし合わせ、ようやくそれが『どの国が持っていたコア』かが分かる。

 

 だからと言ってすぐ返還されることはない。ISコアをみすみす奪われるような国に、またコアを渡すのかと言えばまず間違いなくほとんどが『NO』と言うだろう。再び奪われれば堪ったもんじゃないし、何より喉から手が出るほど欲しいISは相手との交渉の上で最大の切り札(カード)となる。そう易々と手放す訳がない。

 

 まぁ、今回捕獲出来たISはIS学園が一時的に保管し、その後それぞれ元あった国に戻されるだろうが。

 

 そんなことを考えていたダリルの横顔を、外を一望できる窓からの光が照らした。

 

「ん?──は?」

 

「どうしたっスかダリル──え?」

 

 窓から外を見上げ固まったダリルに近付き、自身も外を見上げたフォルテも凍りつく。

 

 そこには、遥かな天に届かんばかりの光の柱が2本立っていた。

 

 

 

 

 時を同じく篠ノ之箒、凰鈴音、セシリア・オルコット、そしてアリーシャ、それと対峙するオータムとスコールも、その光の柱を見上げていた。

 

「なんだありゃぁ……!?」

 

 オータムの驚愕の声は全員の内心の代弁だった。

 

「あれ、飛鳥のビームよね?ってことは……。」

 

「もう片方は……姉さんなのか……!?」

 

 2つある柱の内、片方の色を見て鈴が言った言葉に続いて箒が驚きの声を上げた。

 

 果てが見えない光の柱。その元をハイパーセンサーの視力を頼りに見れば、そこには2機のISがあった。

 

 1つは圧縮粒子の影響で赤く輝くIS【ダブルオークアンタ】を纏った天羽飛鳥。もう1つは全身の展開装甲から溢れるエネルギーで薄紫色に輝くIS【群咲】を纏った篠ノ之束。

 

「あれがライザーソード……!」

 

「知っているのか、セシリア!」

 

「えぇ、以前飛鳥さんから聞いた事がありますわ。トランザム中にのみ使えるダブルオークアンタの必殺技……ですが、篠ノ之博士がそれと同規模の攻撃を行えるなんて……。」

 

 セシリアが飛鳥との模擬戦の合間に聞いた、ダブルオークアンタが行える一番強力な攻撃【ライザーソード】。極太ビームを出すという簡単というか簡素な説明だったが、実物を見たセシリアはまさにその通りだと飛鳥のかつての説明に納得した。

 

 そして、それと同規模のことをやっている束に尊敬の念を抱いた。科学者としてISを生み出すだけでなく、飛鳥の師匠としてIS操縦者としても凄いのだと魅せられた。

 

「オータム、撤退よ。」

 

「アァ!?何でだよスコール!」

 

「天羽飛鳥と敵対する訳にはいかないの。」

 

 同じように柱を見たスコールがどこか焦ったようにそう言った。

 

「逃がす訳ないのサ!」

 

 それに瞬時にアリーシャが肉薄する。単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)疾駆する嵐(アーリィ・テンペスタ)】によって形成された、ISさえも傷付ける風の分身が退路を断ち、数的有利でもって制圧に掛かる。

 

「悪いけど、巻き添えは嫌なの。あなたたちも離れた方が良いわよ?」

 

 スコールはそう言って機体の周囲に展開された熱線のバリア【プロミネンス・コート】による防御で無理矢理風の分身を崩し、未だに使用できない【アラクネ】の代わりにラファール・リヴァイヴに乗るオータムを掴み、近付くアリーシャを超高熱火球【ソリッド・フレア】で後退させ、その隙に瞬時加速(イグニッション・ブースト)で遠方へと逃げて行った。

 

「あー!逃げるな!」

 

「あのバリアさえなければ、わたくしのブルー・ティアーズで押し切れたものを……!」

 

 プロミネンス・コートによって一定以下のダメージは全て軽減されてしまう。セシリアのビット攻撃はその『一定以下』だった。GNソードⅡブラスターでの攻撃は通ったためサポートは行えたが、まさか威力不足になるとは思っていなかったセシリアが歯噛みする。

 

「お、おい!あれ!」

 

「え?」

 

 箒の声に空を見上げた一同は、天へと伸びる柱が()()()()()のを見た。

 

「あれは……まさか、砲撃ではなく!?」

 

「ビームサーベルですってぇ!?」

 

 2つの極太ビームサーベルが、交差した。

 

 

 

 

「ねぇ、あーちゃん。」

 

「何です、束さん。」

 

 戦っていたホテル近くの空とは打って変わって、そこから離れた道路に仰向けに倒れて空に浮かぶ月を見る飛鳥に、同じように倒れている束が聞いた。

 

()()()()()()()()()?」

 

「こうなるところまで、です。」

 

「そっか……。」

 

 ライザーソード同士のぶつかり合い。その勝者は飛鳥だった。

 

 束のIS【群咲】は別宇宙から補給される無尽蔵のエネルギーでライザーソード(という愛称のただの極太エネルギーブレイド)を使用できるが、その出力は飛鳥のライザーソードより劣る。束もそれは理解していたが、だからこそ『飛鳥はぶつけ合わない』と思っていた。

 

 出力で勝る飛鳥のライザーソードとそれより劣るが高出力の束のライザーソードがぶつかり合えば、弾き飛ばされたエネルギーによって周囲に被害が出る。ゼロシステムでそれを間違いなく予測できる飛鳥ならそれをせず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう思ったからこそ束は撃ち合いを望んだ。飛鳥が束自身を狙うならそれを口実に逃れることができるし、もし周囲に被害の出るぶつけ合いをしたなら、その処理のゴタゴタの隙に逃げる気でいた。

 

 だが実際はぶつかり合った。そして抵抗などなく飲み込まれた。

 

 集束を甘くして弾け易くした束のエネルギーブレイドを余すことなく飲み込み、飛鳥のライザーソードが束を切り裂いたのだ。

 

「あーあ、結局あーちゃんの掌の上で踊らされてたか。」

 

「ほぼ私が負ける未来でしたよ。その中で勝てる可能性が一番高い未来が4時間49分も掛かるこの戦いだったんです。途中ゼロシステムに呑まれかけましたけど……。」

 

 ゼロシステムが見せた勝利の未来は他にもあるが、やはりライザーソードでの長距離狙撃やら絶対防御を意図的に抜いての攻撃で絶命させるやらのやれない物を却下し、そうして残った中で勝率の高い物が今回の戦いだった。

 

 戦う内に敗北の未来がどんどん増えていくのに肝を冷やした飛鳥だが、数十秒の誤差こそあるが概ね予測通りに勝利できたことに安堵した。

 

「そうだ、大丈夫なのあーちゃん?」

 

「クアンタが助けてくれましたから。私の願いを思い出させてくれました。」

 

「……願い、かぁ。」

 

 願い。その単語を聞いた束はぼんやりと繰り返して口にする。

 

「ねぇ、あーちゃん。こんな世界で満足?」

 

「……。」

 

「私は嫌だよ。だから変えたかった。」

 

 月と、そこに見える『()』を見つめながら、束はそこに手を伸ばした。

 

「ISは女の子(私自身)を羽ばたかせるマルチフォーム・スーツ。何処にだって行けるようになる無限の成層圏。宇宙だけじゃない。深海だって、地下深くだっていい。人類の進歩、未知の究明に使われるなら、私はそれでよかった。」

 

「でも、最初で躓いた。」

 

「うん。学会じゃボロクソに言われて、ムカついたから白騎士事件を起こしたらこうなっちゃった。」

 

 束の人生初の挫折は間違いなくそこだった。ボロクソに言われたのにムカつき、分かりやすく注目を集めるために全世界からミサイルを発射させ、それをISで迎撃するというデビューはあまりに鮮烈過ぎた。

 

「最初の使い方がミサイル迎撃、その次が戦闘機、巡洋艦、空母、衛星の破壊。そりゃぁ軍事利用されるよって話だよ。でもその時はただ認めさせたかったから、何か言うこともなかった。ただ軍事利用されるのは嫌だから、男が乗れないようにした。」

 

 軍人と言うのはほとんどが男性だ。女性が居ない訳ではないが、数は少ない。だからこそ軍人の大多数が使えないようにした。

 

「ま、一時しのぎにしかならなかったけどね。だから467個でコアの製造を止めて雲隠れした。現代じゃ表立って軍拡は出来ないからね。モンド・グロッソっていう形で代理戦争をやってるから、それを主流にさせた。」

 

 ISを用いた国際競技。世界にISのすばらしさが伝わればそれでいい。軍事利用さえされなければ、競技に使われるのも派手で良いだろうと思ったからこそ、それを主流にした。

 

「で、そのままダラダラと何も変わらず。愚かなまま、戦うことしか考えないで、世界を破滅に導いていく。それにISが使われる。」

 

「変えようと投じた男性操縦者も、第四世代も関係なく。それで全部消す、と。」

 

「GNドライヴがあれば人類は是が非でも変わっていく。それにISは要らないんだよ。」

 

「だからその二進数みたいな考え止めてください。」

 

「何か辛辣だねあーちゃん?」

 

 月から飛鳥の方に向き直った束がジトーっと飛鳥を見つめる。

 

「束さんは1回決めたら頑固です。コンロ周りの油みたいに。

 

「例え汚くない?」

 

「ISは宇宙進出に必要です。あると無いとじゃかなり必要年数変わりますよ。ゼロシステムもそう言ってます。」

 

「……何年ぐらい?」

 

「300年ぐらい。」

 

「うわぁ……。」

 

 イノベイターとして200年ほどの寿命を有する飛鳥やセシリアたちでさえ死んでいる年月に束は引いた。準備込みとはいえそれだけ掛かる人類に引いた。

 

「ISがあれば大分縮むんです。宇宙開発に必須の軌道エレベーターの建造とか楽になりますし、ISがあれば事故死もないので安全。それによる遅れも発生しないので良いこと尽くめなんです。」

 

「それはそうだけど……。」

 

「荷物も量子変換でコンパクト。宇宙を旅するのにISによる肉体保護は必須。もう1度言いますよ、ISないと宇宙進出遅れるんです。消すとか無しです。」

 

「わ、分かったから……近いよ。」

 

 這いずって束に近付き、くっ付きそうなほど顔を近付ける飛鳥に束が頬を赤らめる。

 

「分かってくれたなら良いです。あと織斑さんは旗頭として丁度いいので殺さないでください。居ると世界の統一に役立ちます。」

 

「いっくんが?」

 

「ほら、たらしだから……。」

 

「あぁ……。」

 

 飛鳥の呆れの様な声色で言ったそれに、束も微妙な気持ちで納得してしまった。




 束戦、決着!
 群咲とか束の真意とか色々捏造ですが、原作が何もフォローしてくれないので仕方ない……よね?
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