『はいどうもおはこんばんちは、いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』
『はいはーい、天っ才博士の葉加瀬なのはだよー。』
『全ての現況である束さんに勝利して終わった10巻。それによって11巻も12巻も13巻も内容がほぼ無くなりました。』
『セシリアの誕生日とか大晦日とかの日常パートはあるけど、エクスカリバーとか赤月なんかの事件はもう起こらない──』
『──な訳ないよなあ!』
戦闘員が使っていたラファール・リヴァイヴとそのコアは無事に確保出来たが、それだけ。相手に未だ第三世代の専用機がある以上、各国から再びコアが奪われない保証はない。
結果として、一時的に
「ま、そもそも潰すのが間違いなんだけどさ。」
その様子を信じられない物を見るような目で見ていた千冬が思わずと言ったように声を掛けた。
「それはどういうことだ、束。」
「そのまんまだよ。
国際テロ組織
そう言いながら干されたままになっていた千冬の服を畳み始めた束に、先ほどよりも信じられない物を見るような目を向ける千冬。
「さっきからどうしたの、ちーちゃん?」
流石にその視線が
「束お前、家事出来たのか?」
「女の子なら当然でしょ?」
何でもない様に言う束に千冬が崩れ落ちた。
「どうしたのちーちゃん?」
10年以上束と関わってきた千冬だったが、束がこんなにも家事が出来るとは露程も思わなかった。てっきりお掃除ロボットとかに丸投げして、自分では服を畳むことさえ碌に出来ないと思っていた。
だが実際には千冬が畳むよりも綺麗に千冬の服は畳まれていくし、千冬がやるよりも綺麗に千冬の部屋が掃除がされていく。
千冬とて家事が出来ない訳ではない。今でこそ弟の織斑一夏に任せているが、それまで家の家事は千冬がやっていたのだ。IS学園に就職し住み込みで働くようになってからは食事こそ食堂を利用しているが、掃除も洗濯も自分でやっている。
だと言うのに、そんな自分が日頃からやっていることをより高度にてきぱきとやっていく自分の親友に、女性としてとても負けた気がした。
「……なんでも、ない。」
「そう?あ、ちーちゃん。今度私の娘も連れてくるから、一緒に住める部屋用意してくれる?」
「あ、あぁ……娘?」
おおよそこの人間からは聞くはずのない単語に、千冬の思考が停止した。
「うん、くーちゃん。」
「くーちゃん……。」
束の言葉を反復して口にした千冬が一瞬にして束に詰め寄り肩を掴んだ。
「だ、誰の子だ!?」
「私の子。」
「父親は!?」
「居ないよそんなの。」
「バツイチ……!?」
「結婚してないよ私。」
「シングルマザー……!?」
「合ってるけど違うよちーちゃん。落ち着いてよ、もう。」
そんなどこにでもあるような普通の生活を、束は笑って過ごした。
「やることないなぁ。」
葉加瀬なのはの工房でなのはを膝に抱えながら、天羽飛鳥がそんなことを口にした。
「ボクはセシリアの
「それもすぐ終わるでしょ?」
「試験運用とかもあるから飛鳥が思ってる以上には掛かるよ。」
飛鳥の膝に抱えられたなのははそのまま空中に浮かぶ画面を見ながらキーボードを叩く。
「……今は何やってるの、これ?」
後ろからそれを見た飛鳥がなのはに問う。
「ブルー・ティアーズをただ今のセシリアの能力に合うように性能を上げるだけじゃ、燃費が悪くなるだけだからね。紅椿とか群咲みたいにエネルギーを工面しないといけないでしょ。その為の専用システムの最終チェック。」
「へぇ、名前は?」
「【
画面をスクロールし一番上に書かれた文字を見せながらなのはが笑う。
【
イノベイターとなったセシリア・オルコット専用のシステムとして製作され、セシリア以外には使えないよう設計されたシステム。故にこそ名前からしてセシリアをイメージして決定されたのだろう。十分他のことにも応用できそうなシステムなのに。
「なのはって突飛なこと考えるよね。」
「そりゃ天才だからね。普通のこと考えても仕方ないでしょ。」
システムの概要を大まかにだが把握した飛鳥が呆れ込みでなのはにそう言った。それになのはは何も思わない。突飛なことを考えられない天才はただ物覚えが良いだけの凡人でしかないとは束から受け継いだなのはの持論だった。
「半永久機関じゃんこれ。」
「そうしないと白式みたいになるからね。シールドエネルギーは無理だけど、これさえあればセシリアが持つ限り動いていられる。まぁ、ほぼ最適解の行動しないと回復が追い付かないんだけど。」
扱いにくさはセシリアのイノベイターとしての能力に丸投げし、なのはは【
元々BT兵器にはIS適性とは別にBT適性も必要である以上、使える人材は決して多くない。それならば使える1人にとことん合わせていった方が良いとなのはは考える。
イギリスはまだその段階ではないが、いずれ似た結論に至るだろう。なにせ、
「セシリアが使いこなすには時間かかるだろうなぁこれ……。」
セシリアの苦労を想像して、飛鳥は小さくため息を吐いた。
──その日の夜。
「──!」
バッ!と飛び起きた飛鳥はベッドから抜け出し、閉じていたカーテンを開けて窓から空を見上げた。
「……隕石?」
空に赤い線が見える。隕石が大気圏に突入し燃えている。それは普通のことだが、飛鳥が気になったのはそこではない。
「あの隕石、
飛鳥が気になったのは、その隕石が
なのはは、いや飛鳥以外のイノベイターは気付いていない。起きている時ならともかく、害意を持たないただの隕石が突然現れたところで、違和感こそ感じれどそんなもので起こされはしない。
飛鳥が起きたのは何故か寝付けず、ダラダラと寝っ転がっていたからだ。だからこそ突然の出現を感じ取れたし、その異常性を認識できた。
「空間転移……クアンタ以外にはまだ実用化されてないのに。」
量子ジャンプが可能であり、太陽系を飛び出しての活動もできるダブルオークアンタ。それ以外は束ですら完成させていない空間転移を行った隕石。
イコール、
「外宇宙か、はたまた別世界か……何を目的に地球に来た?」
遥か上空で燃え尽きた隕石のあとを見ながら、飛鳥は考える。
空間転移の実験でたまたま地球に隕石が来たとかならいい。でも、それ以外なら──
「──まだ、準備できてないのに。」
早すぎる来るべき対話が、始まろうとしていた。
『というわけで、次回からアーキタイプ・ブレイカー編突入!』
『11巻以降なんてなかった。』
『でもこれクアンタあればすぐ終わらない?』
『と思うじゃん?』
『ちょっとやめてよ怖いよ。』