――セシリア・オルコットの能力を改めて確認してから数日。天羽飛鳥は昼食を食べるべき昼休みの時間に、第3アリーナへと葉加瀬なのはを伴ってやって来ていた。
「轡木さんには感謝だね。」
「昼休みなのに第3アリーナに入りたいって言っても理由を聞かないで鍵を開けてくれたからね。何かやる気なのを察してくれたってのが大きいんだろうけど。」
IS学園の事実上の運営者である轡木十蔵。用務員に扮している彼に第3アリーナを開けてもらった飛鳥となのはは、これから降ってくる隕石とそこから現れる
「ゼロシステムが見せた未来。全部を見れた訳じゃないけど、直近の出来事は分かった。」
「第3アリーナに落ちて来た隕石から現れた機械生命体が、織斑一夏たちと戦う。まぁ
「その前に一言でも伝えないと。『話し合おう』って。」
IS起動中はロックが掛けられているゼロシステムだが、待機形態でなら使用することが出来る。IS起動中は出来ることが多すぎるが故に未来が多岐に渡り、その全ての未来を飛鳥が気まぐれに見ないようにするためのなのはの処置だ。
待機形態でなら見れるのは飛鳥をゼロシステムに慣れさせるためだ。待機形態であれば予知する未来もある程度纏まっていて数が減っている。その少ない未来を余裕のある時に見ることでゼロシステムに慣れさせているのだ。
今日第3アリーナに来たのは、そのゼロシステムが
「ゼロシステムで見ただけだから事情とかは全然分からないけど、出会ってすぐ戦闘は私としてはスッゴい嫌なんだよね。」
「それで数ヶ月寝てる覚悟決めるってのがボクには理解し難いんだけどね。」
セシリアにも言ったことだが、量子型演算処理システムによる補助がない状態では、如何にダブルオークアンタの力を使った飛鳥といえど対話は失敗する。
それでも飛鳥が対話しようとするのは、飛鳥の中で失敗することが
飛鳥にしてみれば、機械生命体と出会って対話をしようとしない方がおかしい。それが失敗に終わるとしても、まさか話そうとさえしないで戦うなど有り得ない。それで数ヶ月眠ることになったとしてもだ。
手を握ってくれたセシリアには悪いが、飛鳥としてはどうしても譲れない。
「なのは、後のことはお願いね。」
「資金難で量子型演算処理システムもGNドライヴ[T]も作れないのに任されても困るんだけど?」
「……ちょろまかした無人機のコアでどうにかならない?」
「
コアの相場っていくらなんだろう、とそんなことを考えながら、ワープして真っ直ぐこちらに落ちてくる隕石に備えて飛鳥はGNフィールドを張った。
──ドオォォォンッ!!!
瞬間、アリーナに張られたシールドバリアを隕石が破壊した。
ブレーキでも掛けたかのように減速したが、それでも十分な速度でアリーナへと落ちた隕石はクレーターを作り、土埃を巻き上げる。
落下の衝撃をGNフィールドで防ぎきった飛鳥はGNフィールドを形成していたGNソードビットをGNシールドへと戻し、なのはを置いて隕石の落下地点に歩き出した。
クレーターの端から見下ろすと、隕石から正に機械生命体たちが出てくる姿が見えた。どことなく虫を思わせるフォルムで動くその姿にやはり常識は通じない相手だと感じながらも、飛鳥は決意を曲げずにシステムの起動に取りかかった。
「クアンタムシステム起動、フルパワー。」
これまでも何度か行った高純度GN粒子の大量放出による対話領域の形成。人同士であれば装甲を展開し、隙間から放出する分だけで十分だったが、失敗するにしても少しでも言葉を伝えたい飛鳥はそのフルパワーを使うことに決めた。
左肩のGNシールドが背部へと移動し、GNソードビットが外れると共に花開く用に内蔵されたGNドライヴを露出させ、背部のGNドライヴと直列配置にする。
GNソードビットは周囲を囲み、クラビカルアンテナとして大量のGN粒子の制御を行う準備を終え、左腰のGNソードⅤを右手に持ってから全身の装甲をパージし、各部GNコンデンサーをポップアップして貯蔵していたGN粒子を最大限に放出するための体勢を整える。
GNコンデンサーに圧縮貯蔵されたGN粒子を全面解放するという点でトランザムシステムの発展系であるこのシステムは、そのプロセスにトランザムを含むため粒子解放直後は一瞬圧縮粒子の影響で機体が赤く輝くが、すぐに高純度GN粒子の色である緑色の輝きへと変化する。
その緑色の輝きが周囲を覆う中、飛鳥は目を金色に輝かせて対話を始めた。
【我々の世界からエネルギーを奪うのを止めろ!!】
「「――!?」」
――怒りが、飛鳥となのはへと叩きつけられた。
『事情知ってる側からすると完全にこっちが悪者なんだよなぁ、これ。』
『というか大体束さんが悪い。』
『言っちゃえばデモだからね。破壊活動が多いけど。』
『こいつらには通訳登場か量子型演算処理システム作るか超大型が来るまで対話出来ない仕様なのって、怒りによる怒声を受け止められないからだしね。』
『ところでなのは。』
『何、飛鳥。』
『束さんの群咲って別宇宙からエネルギーを際限なく吸収することで燃費解決してるじゃん?で、それが最近撃ち合いでライザーソード使ったんですよ。』
『あっ(察し)。』
『世界で2番目ぐらいに私が悪いんだぁ……(絶望)。』
「おい、天羽はどうした?」
「どこにも居ないんです。」
「またか……京都といい今回といい、単独行動が過ぎるな。」
第3アリーナに隕石が落ちてすぐ、IS学園に鳴り響いた緊急事態宣言。全専用機持ちの招集もされたため作戦本部へと走った織斑一夏は、既視感のあるやり取りを姉の織斑千冬と行っていた。
「まあいい。それでは状況を説明する。」
千冬のその言葉に全員が姿勢を整えた。
「先ほど、第3アリーナに謎の隕石とおぼしきものが墜落した。しかし、これはどうやら隕石ではない。隕石とおぼしきものは第3アリーナのシールドバリアに衝突する寸前、重力ブレーキをかけたことが確認された。さらにはエネルギー状の杭でアリーナのシールドバリアを破壊した。」
「それって……。」
「これは明らかに自然災害ではない。人為的なものだと推測される。」
人為的。その言葉に全員の顔が強張る。
「この物体が観測されたのは宇宙だ。外宇宙からの飛来物という可能性もゼロではない。」
「はぁっ!?それってつまり宇宙人とかエイリアンとかって意味かよ、千冬姉!」
「織斑先生だ。あと説明の途中だ。」
「あっ、す、すみません。」
外宇宙からの飛来物という単語に一夏が驚きの声を上げる。即座に千冬に睨まれて慌てて謝った。
「既に戦闘教員が迎撃に向かっている。これより各員もパックアップ態勢に入ってもらう。戦闘準備が整い次第――。」
『お、織斑先生織斑先生!』
突如、作戦本部に山田真耶の焦った声で通信が入った。
「どうした山田先生!」
『第3アリーナに天羽さんと葉加瀬さんが倒れて!』
「なにっ!?」
作戦本部にいた全員に衝撃が走った。
国家代表とも渡り合えるイージスコンビと最強の称号を持つ更識楯無を倒した真のIS学園最強、それが専用機持ちたちの間での飛鳥の認識だ。IS戦では未だに負けたところを見たことがない彼女が、幼馴染のなのはと一緒に倒れているなど、とてもではないが信じられない。
「――飛鳥さん……ッ!」
「あっ、ちょっとセシリア!?」
凰鈴音の静止を振り切りセシリアが作戦本部を飛び出した。
「ダリル、自分たちも行くっスよ。飛鳥が退場するのはヤバいっス。」
「だな。じゃ、先行ってるぜ。」
それに続いてフォルテ・サファイアとダリル・ケイシーが作戦本部から駆け出して行く。
「ちぃ、お前たち!ISスーツの展開を許可する!今すぐ第3アリーナに急行しろ!」
「りょ、了解!」
千冬の凄まじい剣幕での命令に、全員が作戦本部を飛び出した。
エネルギーを消費するISスーツの展開を行い、瞬時にISを身に纏った専用機持ちたちが第3アリーナで見たのは、散らばったダブルオークアンタの装甲と、虫の様な機械の怪物だった。
「なんなんだこいつら!?」
「この関節の作り、虫なのか?」
「んなわけないでしょ。虫に似てるけど、どう見ても機械じゃない。」
虫嫌いの更識簪が後ろの方でドン引きしているが、ラウラ・ボーデヴィッヒと鈴が相手の考察をする。
「皆、飛鳥ちゃんとなのはちゃんは山田先生が保護してくれたそうよ。安心して目の前の敵に集中しなさい!」
「りょうか――。」
雪片弐型を構えた一夏の横を5つのレーザーが通り抜けた。
「蹴散らして差し上げますわ!」
「殲滅するっスよ、ダリル。」
「さっさと終わらせて飛鳥の見舞い行くぞ。」
後に一夏は語る。
「セシリアどころかサファイア先輩も動き凄かったし、それに合わせるケイシー先輩も凄かった。正直勝てる気がしない。あと
近くに居て巻き添えを食らったボクっ娘がいるらしい。