IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第48話 葉加瀬なのは、製作を引き受ける

 10分とかけずに隕石から現れた虫の姿をした機械の異邦人を殲滅したセシリア・オルコットは、後処理を教員たちに任せて天羽飛鳥と葉加瀬なのはが運び込まれた医務室へと向かった。

 

「飛鳥さん!なのはさん!」

 

 バンッ!と医務室の扉を勢いよく開け放ったセシリアが飛鳥となのはの名前を呼んだ。

 

「「ん?」」

 

 シャクリ、とウサギの形に切り分けられたリンゴを頬張る2人が、扉を勢いよく開けたセシリアをキョトンとした顔で見つめて来た。

 

「……あら?」

 

「どうしたのセシリア、そんな顔して。」

 

「いえ、お2人が倒れたと聞いて急いで来たのですけれど……。」

 

 「あれ?」と首を傾げるセシリアの元に、遅れてやって来た凰鈴音が合流してくる。

 

「セシリア急ぎ過ぎ。飛鳥がくたばる訳ないでしょうが。」

 

「鈴さん。ですが、なのはさんは飛鳥さんとは違ってデタラメ、ではありますけど荒事には向いていませんし……。」

 

「そっちもあたしは死ぬ気がしないんだけど?」

 

 ベッド脇に置いてあった丸椅子に座った鈴が、飛鳥が差し出した皿に並べられたウサギ型リンゴの1つをシャクリと食べながらそう言った。

 

「確かに、どっちかと言えば私の方が早死にするよね。」

 

「飛鳥も何だかんだ生きるでしょ?」

 

 鈴の言葉を聞いた飛鳥となのはがシャクリとリンゴを食べながらそんな事を言い合う。その様子に何ともないようだとセシリアは安堵した。

 

「後輩ども、具合はどうだー?」

 

「お菓子の差し入れっスよー。」

 

 そこへダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアがIS学園内の購買で購入したお菓子を手にやって来た。

 

「いらっしゃい先輩たち。リンゴ食べます?」

 

「用意が良いっスね。いつ切ったんっス?」

 

「今日気絶するのは分かってたので、昼食代わりに食べようとフルーツナイフと一緒にあらかじめ置いといたんです。目が覚めて最初に切り分けました。」

 

「はーん?さてはお前ら、アレが来ること知ってたな?」

 

 ダリルがシャクリとリンゴを食べて飛鳥となのはにそう問い質す。

 

「あ、それは自分も知ってたっス。」

 

「は?」

 

 が、横に居たフォルテから出た言葉にダリルが固まった。

 

「流石にあんなのが出てくるとは思ってなかったっスけど、あの隕石が普通じゃないことは分かってたっス。」

 

「わたくしも。アレと飛鳥さんが対話しようとしていたのも聞いていましたわ。」

 

「案の定失敗したんだけどねー。怒りの感情が分かっただけマシなんだけどさ。」

 

「飛鳥には受け止めるだけのキャパがないからねぇ。ボクは飛鳥ほど他人に関心がないから対話に向かないし。」

 

 シャクリとリンゴを食べながら、()()()()()()()()()4人が口々に喋り出す。

 

 普通の人類であるダリルと鈴を置いてけぼりに話が進む。

 

「で、結局アレは何なんスか?()()()()っぽいっスけど、機械だったっスよね?」

 

「俗に言う機械生命体、というものですの?」

 

「生命の定義は未だにあやふやだけど、(いち)イノベイターの所感としてはあれは確かに生きた機械だったし、機械生命体でいいんじゃない?近いのはISコアだけど、コア人格だけでISを動かすようになったらあぁなるのかな。」

 

「コア人格とはまた別じゃないかなぁ。あくまで操縦者の夢を具現化するために働くISと違って、アレからは押し通したい()があったように感じたし。」

 

 隕石から現れた機械生命体と高純度GN粒子を介して不完全ながらも対話を行った飛鳥は、彼らが抱く怒りという感情だけは鮮明に受け取っていた。残念ながらそれしか分からなかったが、飛鳥はそこから機械生命体にも理由があってこうなったのだと確信を持った。

 

「理由があっての来訪と怒り。その理由さえどうにかできれば戦う必要はないんだろうけど、それがさっぱり分からないんだよなぁ。」

 

「量子型演算処理システムが出来るまでは結局戦うしかないよ、飛鳥。」

 

 飛鳥は機械生命体の来訪理由を考えるが、それを聞き出す準備が出来ていない現状戦うしかないと言うなのはの言葉にため息を吐いてリンゴを頬張った。

 

「何スか、その量子型演算処理システムって?」

 

「クアンタでの対話を補助する外付けハード。飛鳥だけじゃ処理できる情報の量に限りがあるから、それを受け止めるための物なんだけど、お金無くて作れてないんだよねぇ。」

 

 「亡国機業(ファントム・タスク)辺りにお金出して貰おうかなぁ。」とぼやくなのははリンゴを小さく頬張った。

 

「それでしたら、わたくしが出しましょうか?」

 

「え、いいの?」

 

「12月24日のわたくしの誕生日を期に、オルコット家の資産は全てわたくしが受け継ぎますから、その後であれば。」

 

「クリスマス以降ってことは、年内の完成は流石に無理か。まぁ仕方ない、それでいこう。それまでは亡国機業(ファントム・タスク)にコアを渡してお金出してもらおう。」

 

 亡国機業(ファントム・タスク)という単語に今まで黙って聞いていた鈴が吠えた。

 

「ちょっと!亡国機業(ファントム・タスク)ってどういうことよ!」

 

「お金が足りないからねぇ。ボクとしてもあんまりやりたくはないけど、国に渡すよりは穏便に済むから仕方なくだよ。」

 

「そりゃどっかの国がコア手に入れたら戦争だけど……!」

 

 ISコアの保有数という非常に危うい物でバランスを取っている現在の世界情勢では、どこかの国が新たにコアを手に入れれば戦争が起きる。亡国機業(ファントム・タスク)が弱体化している今、テロリストが国を疲弊させるということもない。

 

 鈴も代表候補生としてその辺りの裏事情は理解しているが、それでもテロリストに塩を送るようなことは腹が立つ。

 

「大体、どうやって連絡するのよ!」

 

「そこの元構成員からアポ取って貰えばすぐに出来るよ。」

 

「ハァ!?オレェ!?」

 

 いきなり話を振られたダリルが声を上げる。グリンっ!と勢いよくダリルに顔を向けた鈴が鋭い眼光でダリルを見つめ、少しして目を見開いた。

 

「あんた、なんか似てるけどスコール・ミューゼルの親戚か何かなの?」

 

「なんで分かったおまえ!?」

 

「いや、どことなく顔のパーツが似てるって言うか……。」

 

「(これだから鈴ちゃん(天才)は怖いんだよなぁ。)」

 

 天才である鈴は少しの手がかりから隠されていた真実を当てて見せた。京都でスコール・ミューゼルと対面したのも見抜けた理由だが、それだけで見破られたダリルの戸惑いは凄まじかった。

 

「言っとくが、オレはもう足洗ったからな!スコール叔母さんとの連絡も今はしてない!」

 

「ふーん……ま、いいわ。分かった、あたしからはもう何も言わない。」

 

「鈴さん、いいんですの?」

 

「良いも悪いもないわよ。あたしだって戦争したい訳じゃないし、仕方ないってのは分かってる。だから何も言わない。」

 

 シャクリと皿に盛られた最後のリンゴを頬張って鈴は立ち上がった。

 

「代わりに、いつかで良いわ。あたしの甲龍にも専用換装装備(オートクチュール)を作ってよ。資金は本国から出させるから。」

 

「口止め料って訳?」

 

「そんなケチなもんじゃないわよ。ただ()()()()()()()()気がしただけ。」

 

「……オーケー、作るよ。」

 

「あんがと。」

 

 「じゃ、大丈夫みたいだしあたしは帰るわ。」そう言って鈴は医務室から出て行った。

 

「飛鳥さん、なのはさん。今のは……。」

 

「本格的にIS学園最強名乗れなくなりそうだなぁ……。」

 

「まさか最善手を打ってくるとは思わなかったねぇ……。」

 

「あの……?」

 

 遠くを見つめる飛鳥となのはにセシリアが『?』を浮かべながら声を掛ける。

 

「セシリア、鈴ちゃんが私に勝てるって話、前にしたよね。」

 

「え?えぇ、それがどうかしましたの?」

 

「あれね、実は冷静さを手に入れるのとは別に二次移行(セカンド・シフト)するのが必須だったの。」

 

「そうなんですの?」

 

 「うん。」と頷いた飛鳥はリンゴが乗っていた皿をベッド脇のテーブルに置き、ダリルとフォルテが持って来たお菓子の袋を開けた。

 

「そもそもクアンタと甲龍じゃ機体性能の差があるから、二次移行(セカンド・シフト)での性能向上と、単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)の獲得が必要だった。」

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)が発現するんですの?」

 

「するよ。中国の他の機体はともかく、凰鈴音が乗る甲龍だけはする。」

 

 飛鳥となのはがポリポリとお菓子を頬張りながら説明していく。

 

「中国の第三世代技術【衝撃砲】。空間に圧力を掛けて空気の砲撃をする兵装だけど、それと単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)が融合すると()()()()()()()()()って部分が拡張される。」

 

「空間に圧を掛ける、ね。それがどうなるって言うんだ?」

 

 なのはの説明にダリルが聞き返す。単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)は未だに解明しきれていない部分だ。どうなるかの予想などそう簡単に出来はしない。だが、飛鳥となのは(こいつら)なら出来るという信頼がある。だからこその(とい)

 

 それを受けたなのはが、ポリッとお菓子をかじって答えた。

 

「分かりやすく言えば、万能の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)。正直使い勝手が良すぎる代物だよ。知れば束さんでも興味を持つぐらいね。」

 

 篠ノ之束の名前にセシリアたちが驚く。

 

「でも、ゼロシステムの予測だと二次移行(セカンド・シフト)はモンド・グロッソまでしない筈だった。」

 

「それを彼女、ボクに頼むことで解決したんだよ。全く、イノベイターでもないのに勘がいい。」

 

 ポリ、とお菓子を頬張り、飛鳥はセシリアに向き直った。

 

「セシリア。」

 

「はい。」

 

「私が見た未来の鈴ちゃんはね――」

 

 

「――暮桜を纏った織斑先生を相手に勝った、正真正銘世界最強(ブリュンヒルデ)を超えた人間だよ。」

 

 

 

 

『……。』

 

『……。』

 

『こわい。』

 

『え……え?』

 

『鈴ちゃんこわい。』

 

『ちょっと強すぎない……?てかまたも専用換装装備(オートクチュール)の製作……?条件は何……?』

 

『連続ダウンさせてくる覚醒鈴ちゃんの更に上とか、なにそれこわい。』




 ※あくまで未来の話です。現在の凰鈴音はそこまで強くありません。
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