IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第51話 天羽飛鳥、各地で戦う

「大人しくしてて。」

 

【グルァ!?】

 

 昆虫のような姿の機械生命体の関節を断ち切って地面に転がす。

 

【グルルルル……!!】

 

「ごめんね、まだどの程度壊せば無力化出来るか分かってないんだ。」

 

【グルルァ!!】

 

 威嚇するように唸り立ち上がろうとする姿に悲しげな顔をして、天羽飛鳥は右手に握った大剣【GNソードⅣフルセイバー】を右肩の接続ユニットに戻し、左腰からGNソードⅤを抜いてGNシールドから分離させたGNソードビットと合わせバスターソードモードにしたそれを振り抜いた。

 

 ISのシールドバリアーに似たエネルギーシールドに阻まれるが、それを無理矢理突破して飛鳥は機械の身体を両断した。

 

【ギ、ガガ、ガ……。】

 

 ――実の所、ダブルオークアンタはエネルギーシールドを突破することができる。というか、攻撃力の高いISであれば大体がエネルギーシールドの類を突破できる。防げない火力で攻撃するだけでいい。

 

 相手の防御力にもよるが、その防御力を超えれば相手にダメージを与えられる。ゲーム的に言えば『クリティカル』という奴だ。

 

 ISであれば多大なエネルギーを消費して絶対防御による守りを展開するため、実質的な大ダメージこそ受けたとしても余程でなければ怪我しないのだが、ISと似ていても機械生命体に絶対防御はない。エネルギーシールドを越えればそのまま機械の身体に攻撃が通り、飛鳥であればそれを両断できる。

 

 普段の対IS戦では『クリティカル連打とかクソゲーじゃん』と言って決してやらないが、葉加瀬なのはに諭された飛鳥はその甘えを捨てた。

 

「……はぁ。」

 

 沈黙した機械生命体を前に一息吐いた飛鳥は武器を納めて周囲を見渡した。

 

【【【…………。】】】

 

 周囲に散らばる機械生命体の残骸の数々。これは全て飛鳥が破壊したものだ。

 

 最初の飛来から半月経った今も、機械生命体は世界各国のIS関連施設を中心に出現している。飛鳥はその中から立地や人員の関係で初期対応が遅れ、民間人への被害が出るとゼロシステムによって予測された場所に出向き、1人で機械生命体と戦っていた。

 

 その戦いの結果である残骸を見て飛鳥は溜め息を吐いた。

 

「やっぱりフルセイバーじゃ加減出来ないなぁ。粉々だよ、もう。」

 

 近くに転がっていた破片の1つを拾い上げ、最後にGNソードⅤバスターソードモードで斬った相手と見比べてみてもその違いは一目瞭然だった。片や手のひらに収まる大きさ、片や小型冷蔵庫程度には大きな残骸。

 

 既に各地で対峙した機械生命体相手に何度も試したが、これが限界だった。

 

「無力化にはバスターソードモードで斬るのが1番加減が()く。でもソードビットが使えなくなるし、バスターソードモードでもそうほいほいエネルギーシールドを突破できる訳じゃないからなぁ。フルセイバーじゃ突破は簡単だけど壊し過ぎるし……難しい。」

 

 右肩に装備されたGNソードⅣフルセイバーに1度視線を向けた飛鳥はまた溜め息を吐いて、持っていた破片を地面に落としてからGNソードビットを使ってIS学園に向けての量子ジャンプを行った。

 

 その数分後。

 

「こちらグリフィン・レッドラム。隕石飛来地点に到着……したんだけど……?」

 

 政府からの要請で出動したIS乗りは、ただ残骸が広がるだけのその場所に困惑した。

 

 

 

 

 量子ジャンプで長距離の移動時間を短縮した飛鳥は、時差によってもう既に日が落ちている夜のIS学園1年生寮の自室へと帰ってきた。

 

「おかえり、どうだった?ブラジル。」

 

「ただいま。12時間も時差があるだけあって明るかったよ。」

 

 出迎えたなのはとそんな話をしながら、飛鳥はベッドに腰かけてなのはに聞いた。

 

「そっちはどう?量子型演算処理システムの建造は順調?」

 

「まだ何とも。今は人手不足解消のためにサポートメカ組み上げてる段階だからね。建材だってまだ用意しきれてないし。」

 

「量が量だからなぁ。搬入する時は手伝うよ。」

 

「ありがと。」

 

 量子型演算処理システムを作るための一応の資金は亡国機業(ファントム・タスク)との商談で既に手に入れたなのはだが、すぐに製作に取り掛かった訳ではない。早期完成のため人手の確保が必要であるし、組み上げるための材料だって買わなければならない。

 

 人手不足はサポートメカを作ることでクリアするつもりだが、材料の購入は量が量だけに相手側が材料を用意する時間が必要な関係でどうやっても時間が掛かる。

 

 そう、最初の機械生命体の飛来から半月経った現在でさえ、量子型演算処理システムの製作は始まっていないのである。

 

「機械生命体がISを狙う関係で授業から実習が減って自由時間は増えたけど、やってること前と対して変わってない気がする……。」

 

「私はアリーナの使用に制限掛かってセシリアとの訓練が出来なくなったし、量子ジャンプで世界中飛び回ってるから大分変わったかなぁ。生徒会もイベントの企画が増えて忙しくなってるし。」

 

 飛来してくる機械生命体がISを狙っていることは既に周知の事実だ。それを受けてIS学園では現在、授業でのIS実習や部活でのIS使用、ならびに放課後に解放されていたアリーナでの操縦訓練が出来なくなっている。

 

 授業は代わりに座学の比率が増えているが、それでもこの時期にISに乗ることが出来ないのはカリキュラム的にも辛い。3年生などは就職活動に影響が出ている上、生徒のほとんどが突如現れた未知の存在に不安になっている。

 

 それを受けてIS学園生徒会では生徒たちの不安を和らげるためいつにも増してイベントを開催する動きがあり、飛鳥も量子ジャンプを駆使して機械生命体への対応が遅れる場所に向かい戦う傍ら、生徒会副会長として会議に出席してイベントの企画を行っている。

 

 なのはの方も実習が無いことで以前よりは増えた自由時間を使って色々と作っているが、やっていることは以前と対して変わっていないため結構退屈していた。

 

「なのははこれから忙しくなるし、何なら今もセシリアの専用換装装備(オートクチュール)作りで忙しいでしょ。」

 

「9割方終わってるから余程サボらない限りあと2週間程度で終わるよ。」

 

「その頃にはもう量子型演算処理システム作り始めてない……?」

 

 そんな会話をしながら夜は更けていった。

 

 飛鳥が人知れず動いていたのもあって民間人からの被害者は1人も出ないまま、機械生命体──【絶対天敵(イマージュ・オリジス)】の最初の飛来から1ヶ月経った頃。

 

 各国緊急対策会議の結果、IS学園が迎撃拠点として正式に決定。自国防衛のために動けない各国の国家代表たちに代わって派遣されてくる専用機持ちの代表候補生たちも交え、IS学園の専用機持ちでの対絶対天敵(イマージュ・オリジス)戦が決まった。

 

 

 

 

「みんな、集まったわね。」

 

 生徒会長・更識楯無の言葉に集められたIS学園の専用機持ちたちが僅かに姿勢を正した。

 

「知っての通り、イマージュ・オリジスの対抗手段としてISが最も有効とされたわ。その結果を受け、情報の集約と戦力の集結のため、各国緊急対策会議でここIS学園が迎撃拠点となることが正式決定しました。」

 

 珍しく真面目な顔をした楯無の言葉に織斑一夏が気を引き締めているのを感じながら、飛鳥はその決定に1ヶ月も時間が掛かるのかと疑問に思っていた。

 

「(まぁた政治とかで遅れたのかなぁ?)」

 

 絶対天敵(イマージュ・オリジス)という目に見える相手にさえまともに足並みを揃えるのに1ヶ月も時間が掛かる世界に呆れる飛鳥。相手がどういう存在か分からないことを加味しても遅いんじゃないかと考えていた。

 

「──あと。」

 

 思考に(ふけ)る飛鳥の耳に話を続けていた楯無の声が聞こえた

 

「現状でのみんなの実力を改めて確認させてほしいの。今後、どういった戦略・戦術を取っていくかの参考にしたいから。」

 

「えっ。」

 

 楯無の言葉に飛鳥の口から声が漏れる。

 

「(まずい、今のクアンタにはフルセイバーが付いてる。確実に変なことになる。)」

 

 【フルセイバー】が装備されたクアンタの力を見せれば、各々に反応の差こそあるが大体良くない事になる。そこに政治的な物が含まれない分ここの面々は遥かにマシだが、それでもまだセシリアの専用換装装備(オートクチュール)が未完成である今、特出した戦力を見せるのはこれからの戦術を練る上でも悪影響を出しかねない。

 

「どうしたの飛鳥ちゃん?そんな声出して。」

 

 内心焦る飛鳥に楯無が声をかける。

 

「あの、なのはのところに寄ってからでいいですか?」

 

「なのはちゃん?機体に何かあったの?」

 

「ちょっと色々ありまして……。」

 

 言っていて自分でも明らかに『隠し事があります』と宣言している苦し紛れの言葉に、飛鳥自身内心で頭を抱えた。

 

「いいけど、なるべく早く帰ってきて頂戴ね。」

 

 (いぶか)しげではあったが許可を貰えた事に飛鳥が安堵したその時、

 

「お待ちください。」

 

 ──セシリア・オルコットが声をあげた。

 

「セシリアちゃん?」

 

 楯無がキョトンとした顔でセシリアを見つめる中、セシリアは飛鳥に向かって()()()()()()()()()

 

「飛鳥さん。今()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「!」

 

「なのはさんの所で外そうとしている様ですけれど、そうは行きませんわ。」

 

 セシリアは飛鳥の右手をギュッと握り、そのまま引っ張って歩き始めた。

 

「ちょっ、セシリア?」

 

「どうせもうすぐわたくしの専用換装装備(オートクチュール)が完成するんですし、そちらのお披露目が多少早まった所で問題はないでしょう?」

 

「いや、絶対変なことになるから。過剰戦力だから。」

 

 セシリアに怪我をさせまいとそのゴリラパワーでの抵抗ができない飛鳥の優しさを利用し、セシリアはグイグイと飛鳥を引っ張っていく。

 

「あら、戦力はあるに越したことはありませんわ。そのままの実力を見せてくださいな。」

 

「待って、あっ、あぁ~。」

 

 セシリアに連れ出されていった飛鳥に、残された専用機持ちたちは困惑しながらもその後を追った。

 

 

 

 

『セシリアー!?』

 

『これは本格的にクソゲー待ったなしだねぇ。』

 

『えぇい、即堕ち2コマしたいならそうしてやる!』

 

ガタッ

 

『?なのは、今の音なに?』

 

『誰か立ったんじゃない?』

 

『……今私たちしか家に居ないんだけど。』

 

『幽霊かなんかでしょ。』

 

『ヒエッ。』

 

『相変わらず幽霊ダメだね飛鳥は……。』




 IS実習とかがないのは独自解釈です。そうしないと授業中に頻繁に隕石墜ちてくるので。

 次回『抜剣、フルセイバー』、お楽しみに


セシリアがフルセイバーを知っていた不具合を修正
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