「強引になったね、セシリア……。」
セシリア・オルコットに手を引かれて第3アリーナまでやって来た天羽飛鳥は、未だに手を放してくれないセシリアに向かって恨めしいといった表情でそう言った。
「なのはさんから『飛鳥はあれで押されると弱い』と教えて頂いたので、実践してみましたの。」
「抵抗したら怪我させちゃうからだよ?加減する私の気も考えて?」
幼少の頃から熊を絞め殺せる程の怪力を持っていた飛鳥は、いつも周りに対して気を使ってきた。今でこそ加減出来るようになっているが、昔はよく両親に怪我をさせていたし、家の物を壊していたのもあって、ふとした拍子に怪我をさせないか、大事なものを壊さないかという不安をいつも心の奥底に抱えている。
そのため、飛鳥がIS戦以外で誰かに『触れる』というのは信頼の証なのだ。葉加瀬なのは然り、篠ノ之束然り、飛鳥と触れ合える人物は相手に合わせた力加減を無意識にでも行えるほど親しくなれた証拠であり、セシリアもその枠組みに入っている。
しかし今回のように相手側から押されると、抵抗しようにもその弾みに加減を間違えないかと行動を起こすことが出来ない。気を許している相手でなければそんなことになる前に間合いを取るのだが、気を許しているからこそ飛鳥は不覚を取る。
「飛鳥さんの優しさを利用する様で心は痛みましたが、飛鳥さんには多少強引でも問題ないと思いましたから。」
「……そんなに私受け寄り?」
「いえ、元々は攻めなんでしょうけど、気を許すと受けでも満足する感じですわね。」
「度し難くない、私?」
『私が変態みたいな話はやめろぉ!』
『ロリコンが何か言ってる。』
『ちっちゃい子が好きで何が悪い!』
『全部悪い!』
「飛鳥さん、1つ勝負をしませんこと?」
「勝負?良いけど……。」
他の面々が未だにISスーツへの着替えを行っている間、制服のままアリーナに居るセシリアが同じく制服のままである飛鳥に勝負を持ち掛けた。
「でも、単純な勝敗っていうなら勝負にならないよ。私がフルセイバーを使う以上、
「……それほどの性能ですの?」
それを了承した飛鳥だが、すぐに条件を付け加えた。聞き返してくるセシリアに、既にフルセイバーを衆目にさらす覚悟を決めた飛鳥はその性能を黙することなく口にした。
「地球に気を使って加減した状態の束さんと群咲相手にならまず勝てる程度には、ね。セシリアと鈴ちゃんの
「わたくしたちのオートクチュールは一体どうなってますの?」
京都で見た飛鳥と篠ノ之束の戦いを思い出してセシリアが『あれでまだ加減している篠ノ之博士すごい』と思いながら、それを相手にほぼ勝てるという飛鳥の
「作るのが火力厨のなのはだからなぁ……束さんなら機能性とか操縦性とか色々考慮してくれるけど、なのはは取りあえず載せるし。」
「火力厨……。」
京都で見たライザーソードを思い浮かべたセシリアは火力厨という飛鳥の言葉に納得すると同時に、もしかして似たような物がブルー・ティアーズの
攻撃力はあるに越したことはないが、あのレベルとなるとアリーナのシールドバリアーすら破壊してしまうため使い時がないのではないか。そもそもあれの使い時とはどういう時なのかという考えが脳裏を巡る。
「(
「まぁツインドライヴのクアンタと違ってエネルギー総量がバカ多い訳でもないから抑え気味だろうけど。あぁそれで、何で勝負する?」
「そうですわね……では、生徒会長をどちらが先に落とすか。それを競いましょう。」
「オーケー。」
『イノベイター2人に狙われる楯無可哀そう。』
『フォルテも誘おう。』
『おまけでダリルパイセンも来るから死んじゃう。』
「あら?2人とも、ISスーツは?」
ISスーツに着替えISを纏い第3アリーナに入ってきた更識楯無が怪訝な顔で見つめてくる。
「あ、会長。」
「そういえば着替えていませんでしたわね。」
楯無の言葉にISスーツを着ていないことを思い出したセシリアが呟いた。
「はぁ、すぐに着替えてらっしゃい。」
「いえ、このままでいいです。」
「え?」
着替えを促した楯無に飛鳥が拒否の言葉を口にする。
「時間を取るのも嫌なのでこのまま行きます。セシリア。」
「そうですわね、着替えていなかった罰としましょう。」
普段はISスーツに着替えてからISを纏うが、別にそれは必須ではない。専用機であれば個人用のISスーツがISに収納されており、IS展開時に一緒に着ることが出来るためだ。エネルギーを消耗するため余裕がある時は着替えるが、今回は罰としてそれを行うことにした。
「行きますわよ、ブルー・ティアーズ。」
制服と下着が量子変換され収納されると同時に、ブルー・ティアーズに収納されていたセシリアのISスーツが瞬時にその身体を覆い、ブルー・ティアーズが装着される。
それを見てから、飛鳥がその名を口にした。
「目覚めろ、フルセイバー。」
飛鳥の身体をISスーツが覆い、さらにISが装着されていく。
左側に変化はない。だが、右側はシルエットが変わるほどに変化があった。
「それが……。」
「ダブルオークアンタの唯一の
目を引くのは右肩に装備された大きな実体剣。ISを纏うことで全高が高くなっている飛鳥と同程度の大きさを持つその剣は、刃の部分がダブルオークアンタの武装特有のクリアグリーンの素材で出来ている。
更に正面に居る人には見えていないが、背部にはコーン型スラスターが装着され、ダブルオークアンタと比べて速度が上昇しているだけでなく、
「加減はしますけど、手加減はしません。」
「あぁ、望むところだ!」
織斑一夏の返事に薄く笑い、飛鳥はシステムリンクを用いて模擬戦のためのカウントダウンを始めた。
――3
「あぁ、セシリア。」
「はい?」
――2
「
「――!」
――1
「ダブルオークアンタフルセイバー、目標を駆逐する。」
――0
「えっ――」
セシリアの声に楯無が僅かに身を引いた瞬間。
「遅い。」
右肩から外された大型実体剣を右手に、左腰にあったGNソードⅤにGNソードビットを合体させバスターソードモードとした剣を逆手で左手に持った飛鳥が、楯無を切り裂いた。
「きゃああ!」
「お姉ちゃん!?」
2つの大剣で一瞬にしてシールドエネルギーを0にした楯無に妹の更識簪が声を上げる。
「バカ、後ろ!」
「ッ!?」
鈴の声に振り返った簪が襲来したGNソードビットに切り裂かれすべての武装を破壊される。
「このっ!止まれ!」
ラウラ・ボーデヴィッヒがAICによる停止結界で飛鳥を止めようとするが、停止結界の網に掛かろうかという瞬間に飛鳥の姿が
「なっ――!?」
「良い狙いだ、でも足りない。」
「ぐぅ!!」
後ろに出現した飛鳥が右肩に装備していた大型実体剣を変形させ巨大なビームを放ち、それに飲み込まれたラウラはシールドエネルギーを無くして墜ちていった。
「好きにはさせない!」
シャルロット・デュノアが両手にマシンガンを持って飛鳥に向かって連射する。
「フルセイバーじゃなかったらそれで正解だったけど、それはもう効かない。」
その弾を全て、
「ハァッ!?」
あまりのとんでもにシャルロットが目を見開いて驚く。
「GNガンブレイド。クアンタにはなかった気軽に使える遠距離武器。距離を取れば良いってもんじゃなくなったんだなぁ、これが。」
弾を撃ち落としながら接近し、
「うおぉぉぉ!」
そこに零落白夜を使い一撃必殺の構えを取った一夏が
「
その姿に助言をしながらGNガンブレイドをブレイドモードで投げつけ自分で攻撃に突っ込ませ自爆させる。
「一夏!」
「狼狽えない。それが隙。」
落ちていく一夏に気を取られた篠ノ之箒を一息で切り捨て、残った4人に飛鳥は視線を向ける。
「これで残りはセシリアと鈴ちゃんとイージスコンビ。さぁ、頑張って抵抗してくださいね?」
大型実体剣を構え、飛鳥は笑った。
武力介入用パッケージ【フルセイバー】
ダブルオークアンタ唯一の
【GNソードⅣフルセイバー】を構成するメインブレイドユニット、メイングリップユニット、マルチカウンターからなるメインソードと、そこに付属する3つの【GNガンブレイド】を変形合体させることで全状況・全距離に置いて高い適応力を発揮する。
また、通常時のダブルオークアンタとは違い、トランザムを使用していない状態でも量子化による短距離ワープを行うことが出来る。
通常時から量子化とかいうチート。マキオンで近接攻撃時に量子化してるのが元ネタですが、これダメでは……?