IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第55話 天羽飛鳥、奥の手を切る

「ちっ。」

 

 腕部小型衝撃砲【崩拳】を受けてアリーナの地面へと落ち、舞い上がった土埃で姿の隠れた天羽飛鳥を見下ろして凰鈴音は舌打ちをした。

 

「やるじゃねぇか、ヒヨッコ。」

 

「飛鳥の攻撃を防ぐとかやるっスね~。」

 

 飛鳥が落ちるのと同時に量子となって消えたGNソードビットの相手をしていたダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアのイージスコンビが大型実体剣【GNソードⅣフルセイバー】の攻撃を防いで見せた鈴を称賛しながら近付いてくる。少し遅れてセシリア・オルコットが4基のレーザービットを周囲に浮かべながら合流した。

 

「飛鳥さんがクリーンヒットを受けるところ、初めて見ましたわ。」

 

 IS学園で最も飛鳥と手合わせしているセシリアだが、そのセシリアでも飛鳥に攻撃をクリーンヒットさせたことはなかった。ビットと偏向射撃(フレキシブル)による多角的な曲射によってダメージこそ与えられるが、どうしてもシールドエネルギーを削るだけに留まっていた。

 

 イノベイターの能力が回避や防御に役立つということはセシリア自身も体験しているが、ダブルオークアンタの機体性能と飛鳥自身の素の技量も合わさって、避けるし防ぐし固い飛鳥に対し、見事クリーンヒットを叩き込んだ鈴は偉業を成し遂げたヒーローと言っても過言ではなかった。

 

()()。」

 

 だがその偉業は、他ならぬ鈴によって否定された。

 

「防がれた。」

 

「……はい?」

 

「オイオイ、あのタイミング、あの状況でどうやって防いだんだよ。左肩の盾も右手の大剣も動かせなかっただろ。」

 

「ダリルの言う通りっス。大剣は衝撃砲を叩き込む寸前に引き戻せないよう右腕ごと跳ね除けてたっスし、盾の方は自分が動かないように固めてた。それでどうやって……。」

 

 

 

 

「――高速切替(ラピッド・スイッチ)の応用だな。」

 

 ピットから一連の攻防を見ていた織斑千冬がそう口にした。

 

「跳ね除けられた右手の大剣を引き戻さずに量子変換し、瞬時に左手に展開(コール)して盾にしたか。」

 

 飛鳥が行った防御は言ってしまえば『ただ()を展開して防いだ』だけだ。単なるIS操縦におけるテクニックの1つであり、シャルロット・デュノアを始めとしてIS学園でもそれを行える者は多い。

 

「凰の攻めも()()()()()()()()()()彷彿(ほうふつ)とさせる良い物だったが、小手先の技術では天羽の方が上だったな。」

 

 「その辺りは今後の課題だな」と千冬は口元を緩める。

 

 山田真耶。千冬の後輩にしてかつての日本代表候補生。千冬が最も模擬戦を交わした相手であり、あがり症でさえなければもっと高い評価を受けていた筈の人間。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()女性を引き合いに出しての鈴へ評価は、間違いなく高かった。

 

 一方、同じようにその攻防を見ていた葉加瀬なのはは、土煙で姿を隠している親友ではなく鈴の方に視線を向けていた。

 

「まさか【天之四霊(てんのしれい)】に自分で至りかけてるなんてねぇ……。」

 

「【天之四霊】?」

 

 思わずと言った風になのはの口から零れた聞きなれない単語を千冬が拾った。

 

「攻撃も防御も加減速も、相手の拘束さえも可能とする万能の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)。甲龍が二次移行(セカンド・シフト)したら使えるようになる筈だったんだけど、まさか自力でやるとは思わなかったよ。」

 

「ほう。」

 

 なのはの話を聞いた千冬が僅かに目を剥いた。

 

「随分とまぁ便利な物を手に入れるんだな。【零落白夜】とは大違いだ。」

 

「良くも悪くもエネルギー無効化しか出来ないからねぇ、零落白夜は。それで十分強力なんだけど。」

 

「アレに試合時間が短くなる以上の利点はない。」

 

 今ではその名を出せば白式の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)と言われる零落白夜だが、元々の担い手は千冬の専用機【暮桜】だ。当然暮桜でその能力を発現させた千冬が1番その扱い方を知っている。

 

「零落白夜は『落とせない相手を落とす』能力だ。」

 

 零落とは落ちぶれること、白夜とは決して沈まぬことの比喩。故に『沈まぬものを落とす力』、それが【零落白夜】。

 

「現役時代、私が苦戦する相手というのは少なからず存在した。そう言った手合いに時間を掛ければ掛けるほど、私の負ける確率は高くなる。」

 

 世界最強(ブリュンヒルデ)となり公式戦で無敗を誇る千冬だが、別に苦戦しなかった訳ではない。シールドエネルギーは普通に削られたし、第一世代故にただ一つのみ備えていた武装である【雪片壱型】を受け止める相手も多く居た。

 

「そういう奴を相手に僅かな隙を見つけては叩き込んでいたのが零落白夜だ。」

 

 曰く、ただダメージレースを有利に運んで短期決戦に持ち込むだけの能力。苦戦しなければあんな使いにくい能力など使わないと千冬はため息混じりにそう言った。

 

「それがイマージュ・オリジス相手にも有効だからってこれから使われていく訳だ。」

 

「頭の痛い話だ。」

 

 

 

 

 一方その頃、土煙で姿を隠している飛鳥は、

 

「(白虎使えるとか聞いてないんだけど。ねぇ何か言ってよゼロシステム。)」

 

 ゼロシステムに当たっていた。なお現在ゼロシステムはなのはによってロックされているので何も答えてくれない。

 

「(どうしよこれ、1対1ならどうとでもなるけど……。)」

 

 甲龍が二次移行(セカンド・シフト)で手にする筈の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)、正式名称【天之四霊(ティェンヂィースーリン)】は甲龍に搭載された第三世代兵器【衝撃砲】に使われる空間に圧を掛ける技術を、中国神話に語られる四神の名を冠する4つの用途に発展をさせた能力だ。

 

 その内の1つ、空間に圧を掛け盾とする白虎の守りを限定的とはいえ二次移行(セカンド・シフト)前に使って見せた鈴に飛鳥は対処に困っていた。

 

「(ソードビットを使えば鈴ちゃんは落とせる。でもセシリアがいるからなぁ。)」

 

 GNソードⅣフルセイバーの一撃を受け止められた以上、鈴を落とすには必殺の一撃ではなく確殺の手数が要る。幸いダブルオークアンタはお(あつら)え向きの武装であるGNソードビットを備えているが、それを鈴に当てた瞬間待っているのはセシリアのビットによる多角曲射だ。

 

「(イージスコンビの2人も油断できないし。)」

 

 限定的にイノベイター2人の連携と同等のことをするダリルとフォルテのイージスコンビも油断できない。攻撃は全て防御結界【イージス】に止められ、軽減され、有効打を的確に対策して来るからだ。大技なら突破できるが、他の面子(めんつ)がその隙を許してくれるかと言えば首を傾げざるを得ない。

 

「(鈴ちゃんのお陰で楽しくなって(ゆだ)ってた頭は冷えたけど、どうしようかなぁ。)」

 

 つい楽しくなってやり過ぎてしまう、ということはもうない。白虎からの崩拳を受けて飛鳥の思考は冷えた。というか肝が冷えた。()()()()()()()()()()()()()()

 

「(うーん……。)」

 

 実の所、勝とうと思えば勝てる。それこそ4対1でも、その相手がイノベイターとそれに準ずる実力者4人だとしてもだ。だが、

 

「(なんか負けた気がするんだよなぁ。)」

 

 勝ちは勝ちだが、納得いくかと言えば別だ。そもそもイノベイター級の実力者が相手とはいえ、制限を設けて白式程度の性能しかないが第五世代機であるダブルオークアンタを、更に戦闘特化にしているフルセイバー装備でそれを行えば「それ実質私の負けじゃね?」と飛鳥は思う。

 

 とはいえ、それ以外で勝つにはそれこそ枷を外して第五世代の性能を発揮するぐらいしかない。

 

「(他の方法は時間が掛かり過ぎてピットにいる織斑先生が途中で切り上げるだろうし……仕方ないか。)」

 

 GNシールドに戻したGNソードビットのGN粒子充填量が上限になったのを確認し、一度GNソードⅣフルセイバーを右肩に戻してから、息を整えてそのキーワードを口にする。

 

「トランザム!」

 

 

 

 

 最初に気付いたのは脳量子波が使えず、()()による対話を行ったダリルだった。

 

「あん?この感じ……。」

 

「ダリル?どうし――これって。」

 

 ダリルに続いてフォルテが、セシリアが、鈴が気付く。周囲を漂うGN粒子に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「まさか――!」

 

 中空からアリーナの地面を、土埃で姿を隠していたそれに視線を向けた。

 

 白と青を基本に、ところどころを赤と武装のクリアグリーンで彩られていた機体が、赤く染まっていた。

 

「トランザム……!?」

 

「クアンタフルセイバー、目標を殲滅する!」

 

 セシリアの呟きと同時に物騒なことを言って、飛鳥が量子化する。

 

「またそれか!」

 

「こう言う機体なので!」

 

「ダリル後ろっス!」「ッ!?」

 

 GNソードⅤにGNソードビットを合体させバスターソードモードにしたそれを左手に、右手にGNソードⅣフルセイバーを持って絶対防御を抜いてダリルのシールドエネルギーを削り切る。

 

「1人目!」

 

「このっ!」「墜ちなさい!」

 

 ダリルを落とした飛鳥に向かって衝撃砲とレーザービットの攻撃が放たれるが、当たったと思った瞬間再び飛鳥の身体が量子となって(ほど)けた。

 

「また――でも!」

 

 だが同じ手は何度も通じない。イノベイターの知覚能力で瞬時に出現場所を察知したフォルテが瞬時に迎撃に氷の弾丸を放った。

 

「遅い!」

 

「はやっ――!?」

 

 それを出現と同時にスラスターを噴かせ、まるで大きな一歩で移動したかのような動きをした飛鳥に躱され、左手に持ったGNソードⅤバスターソードモードから分離したGNソードビットがトランザムの速度でコールド・ブラッドの装甲を咄嗟に作られた氷の盾とシールドエネルギー共々斬り刻まれた。

 

「2人目!」

 

「イージスをこんなに早く……!」

 

 守りに定評のあるイージスコンビの2人をいとも簡単に落として見せた飛鳥に、セシリアのGNソードⅡブラスターを握る手に力が入る。

 

「セシリア、後ろ任せた!」「分かりましたわ!」

 

 射撃ではまた量子化で回避されると理解した鈴が双天牙月を手に飛鳥に飛翔する。

 

「はっ!」

 

「焦ったね鈴ちゃん!」

 

 振るわれた双天牙月を高速切替(ラピッド・スイッチ)によって持ち替えたGNガンブレイドで()()()()()ぶつけ合う。

 

「やばっ──!」

 

 イージスコンビを早期敗北に追いやったトランザムの性能に知らず知らずの内に焦った鈴がそれに気付いて光のない瞳を見開いた時には、もう既に双天牙月の刀身は溶断されていた。

 

「鈴さんから離れて下さいな!」

 

「!ソードビット!」

 

 追撃にと高速切替(ラピット・スイッチ)で持ち替えたGNソードⅤを振るうより先にセシリアによって放たれたレーザーを、トランザムによって刀身に展開されているGNフィールドも強固になっているのに任せてGNソードビットで切り裂きながら進ませ、そのままレーザービットを切り落とす。

 

「いつも以上のデタラメを……っ!」

 

「切り刻め、ソードビット!」

 

 そのまま6基のGNソードビットで逃げ場を無くしてからシールドエネルギーが0になるまで攻撃し、セシリアを倒す。

 

「これで3人目!」

 

「好き放題してくれるじゃないの!」

 

 溶断され刀身の短くなった双天牙月を構えた鈴が肩部大型衝撃砲【龍咆】を高威力で放つための溜めをしながら切り込んでくるのを、瞬時に高速切替(ラピット・スイッチ)でGNガンブレイドを持った飛鳥が迎え撃つ。

 

「ちぃっ!」

 

 段々と溶断され短くなる双天牙月に小さく舌打ちをした鈴は、龍咆のチャージが終わるや否や双天牙月を更に短くしようと腕を振るう飛鳥に向かってそれを放った。

 

「見えてるよ!」

 

 だが、チャージを見逃していなかった飛鳥によって瞬間的なスラスター噴射による短距離移動でそれを躱され、高速切替(ラピット・スイッチ)でその手に持たれたGNソードⅣフルセイバーが鈴の甲龍を絶対防御ごと切り裂いた。

 

勝者 天羽飛鳥 ダブルオークアンタフルセイバー

 

 

 

 

『飛鳥、トランザムは使わないでね。』

 

『了解、トランザム!』

 

『実は劇中でこんなセリフないんだけどね。』

 

『まだ使うとヤバイ時に使わないと負ける相手に仕方なく使ったせいだからね。』




イノベイター2人&それと同じ動きが出来る人&今はまだ国家代表級の人
VS
ツインドライヴ搭載の戦闘特化イノベイター専用機に乗るイノベイター(粒子量制限中)

(ガンダム00曰く)トランザムすれば勝てる

この面子相手に4対1は流石に飛鳥が負けますが、ゼロシステム使ったり粒子量の制限取り払ったりトランザムしたりGNガンブレイドの攻撃を双天牙月が受けきれなくなる限界までし続けたりすればその限りではありません。


あ、トランザム中の飛鳥の発言を赤くしてみましたが、これ見やすいですかね……?場合によっては改訂します
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