IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第56話 転入生、それは新キャラとの出会い

「………………。」

 

――ズ~~~ン……

 

 専用機持ちたちによる乱戦形式の模擬戦後、参加した中で唯一の国家代表操縦者にしてIS学園最強の称号である生徒会長の更識楯無の表情はかつてないほどに暗かった。

 

「初っ端瞬殺……ふふ、私も落ちたものね……ははっ……。」

 

 いや、暗いどころか薄ら笑いを浮かべていた。目は死んでいるが。

 

「お姉ちゃん、気をしっかり。私だってビットで瞬殺されたから。」

 

「そうですよ。俺なんて投げられた武器に突っ込んで自爆しましたし。」

 

「私も、絢爛舞踏も使えませんでしたし。」

 

 更識簪、織斑一夏、篠ノ之箒の瞬殺仲間がアリーナの地面に(うずくま)る楯無を慰めている中、僅かながらも対抗したシャルロット・デュノアとラウラ・ボーデヴィッヒの2人がセシリア・オルコットたち最後まで戦った組に話を聞いていた。

 

「衝撃砲の砲身を盾にしただと?」

 

「そんなことが出来るの?」

 

「普通じゃ無理。そもそも攻撃を衝撃砲のある部位で受けるとか正気じゃないし、やろうとして出来るもんじゃないわ。」

 

「それ、自分で言うんですの?」

 

 こちらは楯無とは違って負けたことをなんとも思っていない。むしろ向上心からどう立ち回れば良かったのかを話し合っていた。

 

「氷漬けが良いんじゃないっスか?」

 

「やっぱ動けなくするのが1番だよなー。」

 

「私ルイベ*1にされるんです……?」

 

 その中で出たダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアの物騒な会話に、イノベイターとしての感覚で2人が本気でそう思っているのを感じた飛鳥は身を震わせた。

 

「でも今のコールド・ブラッドじゃそんなこと出来ないんスよね~。」

 

「ISを止めるにゃ出力が足りないんだったか。二次移行(セカンド・シフト)すりゃぁ変わるんだろうが期待できねーし。」

 

「あとやっぱり機体性能が心許(こころもと)ないっス。」

 

 フォルテ曰く、ギリシャ製第三世代IS【コールド・ブラッド】はイメージ・インターフェースに性能を振り切ったような機体で、パワーもスピードも第三世代の中では下から数えた方が早く、ともすれば第二世代をチューンしたシャルロットの専用機【ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ】よりも機体性能が低いかもしれないらしい。

 

 分子活動を鈍らせ、果てには停止させることで凍結を行うイメージ・インターフェースにしても、冷たいジュースが飲めるぐらいで大して使い勝手が良い訳でもないとか。

 

 それでも現状セシリアを抜き、飛鳥に次いでIS学園の強さランキング2位に居るフォルテはイノベイターであることを加味しても強い。機体性能で勝りビットを有するセシリアを相手に自身のシールドエネルギーを守り抜き、逆にセシリアのシールドエネルギーを全損させられる腕前は流石の一言に尽きる。

 

 とはいえイノベイターの能力と培ってきた技量だけでは、コールド・ブラッドの機体性能の低さを誤魔化すのにも限界がある。というか機体に足を引っ張られてフォルテの真価を発揮できないでいる。

 

ギリシャ(うち)に余裕があれば自分もなのはにオートクチュールを頼んだっスけど、生憎神話ぐらいしか取り柄がないもんで。潔く諦めるっス。」

 

 そう自虐的に言うフォルテだが、それは専用換装装備(オートクチュール)の製作を依頼しない理由の半分に過ぎない。真に頼まない理由は『イージスの連携が崩れるから』だ。

 

 コールド・ブラッドとは逆に炎を操るアメリカ製第三世代IS【ヘル・ハウンド】に乗るダリルとの連携。互いに互いの機体性能や癖を完全に理解した事で実現した異体同心(いたいどうしん)のコンビネーション【イージス】。

 

 フォルテがイノベイターに変革してからはそのコンビネーションを利用してダリルもイノベイターと同等の動きをしているが、実はフォルテの先導にダリルが合わせているだけでただのコンビネーションの範疇で、それは2人が積み重ねてきた互いへの理解を軸としているからこその連携。

 

 しかし日頃の鍛練で徐々に強くなっていくならともかく、天才たる葉加瀬なのはによって作られた専用換装装備(オートクチュール)によって飛躍的に強くなっては、その積み重ねが一時的にとはいえ崩れてしまう。再び積み上げるまでの間、『イノベイター2人』の戦力が『イノベイター1人』になってしまう。

 

 取捨選択した結果、フォルテはイノベイター2人を取った。窮屈な思いこそしているが勝てない相手はそれこそ飛鳥ぐらいなのもそうさせた理由で、何より一時的にとは言えパートナーと積み上げてきたものが崩れるのが嫌だったから。

 

「ボクとしても今は手いっぱいで、調整なら兎も角他の依頼は受けられないから助かったけどね。」

 

 理由はどうあれ、専用換装装備(オートクチュール)の製作が新しく依頼されなかったことに一安心といった風にピットから出て来た葉加瀬なのはが言う。

 

「あ、なのは。あたしの実力確認ってどうなったのよ。」

 

 なのはが来たことで思い出したように凰鈴音がそう聞いた。

 

「なんだ、気付いてたんだ。」

 

「あの状態になんなきゃ分かんなかったわよ。よくも使わせたわね。で、結果は?」

 

 ジト目になった鈴の言葉になのはが空中に画面を投影し、数値化された鈴のデータを眺め僅かに考えた後、

 

「んー、飛鳥相手にこのタイミングで虚を突けるなら十分合格ラインだけど、今は第四世代までが限度だね。それ以上は【紅椿】みたいに性能を引き出せないで宝の持ち腐れになる。」

 

「……!」

 

 すぐ側にいる【紅椿】の操縦者を引き合いに出してそう言った。

 

「そう、ならそれでいいからお願い。」

 

「口座に振り込みよろしくね。」

 

「はいはい。」

 

 鈴となのはのそのやり取りを見た箒は人知れず歯を食いしばった。

 

「(鈴は第四世代の性能を引き出せるのに、私は……。)」

 

 姉であるISの製作者、篠ノ之束に頼んで作って貰った第四世代IS【紅椿】。箒はその性能を引き出し切れていない。

 

 元々ハイスペックな代物故に使いこなすには相応の実力が必要ではあるが、そもそも性能を引き出す大前提の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)【絢爛舞踏】の発動にさえ時間を要する現状では()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 搭載された操縦支援システムによってある程度勝手に動いてくれる上、第四世代故の高い機体性能、何より2振りの刀という箒向きの武装を備え、無限にエネルギーを増幅させる【絢爛舞踏】を有する紅椿は本来最強のISだ。

 

 それが瞬殺されるなど、操縦者である箒が未熟である以外に説明がつかない。

 

「(これでは、姉さんに顔向けできないではないか。)」

 

 京都での亡国機業(ファントム・タスク)との戦い以降、雰囲気が柔らかくなり、隙とも言えるような気の緩みを見て取れるようになって、ようやく姉妹仲が改善してきた大好きな姉。

 

「(紅椿を作ってくれた姉さんのためにも、無様は晒せない。もっと精進せねば。)」

 

 

 

 

『絢爛舞踏が本気を出すな。』

 

『絶対防御を発動させる以外に突破方がないとかいうチート機体。()()()()()()()なの本当におかしい。』

 

『束さんはさぁ……。』

 

『なお群咲には負ける模様。』

 

『束さんはさぁ……!』

 

 

 

 

「お前たち。」

 

「織斑先生?」

 

 ピットから織斑千冬が顔を出して声を掛けてくる。

 

「どうかしたんですの?」

 

「今さっき対イマージュ・オリジスの戦力として転入して来た代表候補生が到着した。顔合わせと互いの実力確認をこれから行う。」

 

「え、今から……ですか?」

 

「そうだ。とはいえ、補給が済んでいるのは天羽だけか。」

 

 少し眉間に皺が寄ったが、「まぁいい」と息を吐いて、

 

「天羽、軽く揉んでやれ。」

 

「(この人やっぱり大雑把だなぁ)分かりました。」

 

 心の中で『天羽と戦わせても心が折れたりしないだろ、多分』と思いながらそう言った千冬に、『流石束さんの親友』というとてつもなく嫌な顔をされそうなことを考えながら、飛鳥は千冬の頼みを快諾した。

 

「よし――お前たち、出てこい!」

 

「しっつれーしまーす。」「失礼します。」

 

 千冬の呼びかけにピットからISを纏った少女が2人、アリーナの地面にPICでふわりと降り立った。

 

「は?」

 

 そのうちの片方、どこか鈴の専用機【甲龍】と似た雰囲気(デザイン)のISを纏った少女を見て鈴が目を丸くし、すぅ、とその目から光が無くなった。

 

「ちょっとアンタ、まだ中等部の癖に何でここに居んのよ?」

 

「どーも、鈴()()()()()()。アタシ、優秀だから?飛び級だってさ、いいでしょ?フフン!」

 

「…………。」

 

「……な、なに?」

 

 鈴を『おねえちゃん』と呼んだ少女は無言の鈴に不安そうな顔で鈴の様子を(うかが)った。

 

「──ッチ、代表候補生程度の力量はあるみたいね。ま、そうでなきゃ甲龍の量産型とはいえ専用機が渡される訳ないか。」

 

「え──。」

 

「歓迎はしないけど迎え入れてあげる。台湾代表候補生、凰乱音(ファンランイン)。」

 

「────。」

 

 何故か固まった凰乱音と鈴に呼ばれた少女から視線を外し、箒が隣にいた一夏に小声で話し掛けた。

 

「一夏、鈴には妹が居たのか?」

「いや、俺も初めて知った。何なんだ、あの鈴2号は?」

 

「従妹よ。」

 

「「!」」ビクッ

 

 小声で話していた所に突然鈴から答えが来た2人の肩がビクッと震えた。

 

「乱は私の従妹。なんやかんやで台湾暮らしなの。」

 

「そ、そうなのか。」

 

「あと一夏、間違っても2号は言っちゃダメだからね。昔から私と比べられまくった乱にそれは地雷よ。」

 

「お、おう、分かった。」

 

 普段と違いとても分かりやすく教えてくれた鈴に驚きながら、一夏はその忠告をしっかりと心のメモ帳に書き留めた。

 

「あの……。」

 

 そんなやり取りをしていると、もう1人の転入生が困ったように声を上げた。

 

「あぁすまん。はじめまして、俺は織斑一夏、よろしくな。」

 

「はじめまして、タイ代表候補生、ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーです。」

 

 一夏の自己紹介に返すようにその転入生、ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーが礼儀正しく頭を下げた。

 

「「「あっ。」」」

 

 次の瞬間、飛鳥、セシリア、フォルテの3人から声が漏れた。

 

「ん?どうかしたか?」

 

「「「いえなにも。」」」

 

「そうか?」

 

 3人の異口同音(いくどうおん)の返答を気にも止めず、一夏はヴィシュヌとの会話を続けた。

 

「(一目惚れしたね、今。)」

 

「(しましたわね、一目惚れ。)」

 

「(これ以上モテてどうする気なんスかね。)」

 

 脳量子波による内緒話をし始めた3人のイノベイターは、ヴィシュヌが一夏に一目惚れしたことを見抜いていた。

 

「(どうも自覚はないみたいだけど、これで何人目?)」

 

「(専用機持ちだけで8人目ですわ。)」

 

「(いつか刺されるんじゃないっスかね、あれ。)」

 

 もはや呆れながらの内緒話はシャルロットによって自己紹介の流れが出来たことで中断された。なおこの場にいるもう1人のイノベイター、なのはは他人の色恋に無頓着であるため内緒話には参加しなかった。

 

「あいさつは済んだな?では天羽、あくまでこれは実力を確認するための模擬戦だ、蹂躙と瞬殺はやめろよ。」

 

「はい。」

 

 『フルセイバーでそれは無理です』と口を出かけたが、言っても聞いてもらえないだろうなぁと思い留まった飛鳥は千冬の注文に頷き、ダブルオークアンタフルセイバーを装着した。

 

「ねぇ、どっちが先にやる?」

 

「私はどちらでも。」

 

「ならアタシが先♪」

 

 そんなやり取りの後、乱がPICでふわりと浮かび上がった。

 

「えーと、飛鳥だっけ?アタシの実力、見せてあげる!」

 

「それでは、始め!」

 

 千冬に合図と共に、乱はスラスターを噴かせた。

*1
北海道の郷土料理。サケ類などを冷凍保存したもの、または凍ったまま薄切りにした刺身のこと




 実力確認の模擬戦に乱とヴィシュヌが来ないのはおかしいと思ったので来て貰いました。戦闘は次回。

 何気にファーストコンタクトが変わったことで乱は一夏を(少なくとも今は)嫌っておらず、ヴィシュヌも初対面で一夏に胸を揉まれてないので塩対応しません。ヴィシュヌ周りのバタフライエフェクト凄そう(小並感)
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