IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第57話 凰鈴音、それはおねえちゃんの気持ち

 台湾代表候補生、凰乱音(ファンランイン)の纏う専用機は中国によって開発された第三世代IS【甲龍(シェンロン)】を量産したモデルである【甲龍(シェンロン)紫煙(スィーエ)】だ。

 

 量産するに当たって第三世代兵器【衝撃砲】は大型衝撃砲【龍咆・単式】という1門だけに減らされ、更に初期装備(プリセット)も大型青龍刀【双天牙月】2振りから片刃の大型実体剣【角武】1振りと、それでカバーしきれない至近距離用の【龍牙】という2つのカタール*1に変更されている。

 そんな甲龍・紫煙の甲龍との最大の違いは、先端に銃火器を内蔵した尻尾のような形状の武装【甲尾】を持っていること。減らされた衝撃砲の代わりの遠距離武器という側面が強い甲尾だが、先端が3つに別れその1つ1つが銃口を備えているために遠距離武器としては申し分なく、また尻尾のような形状を活かして鞭のように使うことも出来る遠近両用の武装で、角武や龍咆・単式などの装備の隙を埋める便利な武器だ。

 

 総合的に見て、流石甲龍の量産型だと言える良い機体。それが甲龍・紫煙である。

 

「ま、大体こんな感じね。」

 

 乱の使う機体について解説した凰鈴音は、そう締めくくって息を吐いた。

 

「「「…………。」」」

 

「何よ、変な顔して?」

 

 唖然というか、ポカーンというか、呆けた顔で自身を見つめてくる友人たちに鈴が怪訝そうな顔をする。

 

「いや……鈴が頭良さそうなこと言ってるから、驚いた。」

 

「喧嘩なら買うわよ?」

 

「すまん!」

 

 凄まじく失礼なことを言った織斑一夏を威圧してから、鈴は上空で天羽飛鳥を相手にしている乱に視線を向けた。

 

「しっかし、乱が来るなんてねぇ……台湾の人材不足はよっぽど深刻みたい。」

 

「そうなのか?実力は申し分ないように見えるが……。」

 

 鈴の言葉に篠ノ之箒が首を傾げる。

 

「そりゃ半端なのを送ったら国の威信に関わるからよ。少なくとも審査は通らないと乱はここに居ないわ。」

 

 対絶対天敵(イマージュ・オリジス)の迎撃拠点に選ばれたIS学園には、各国から戦力が派遣されることになっている。国内最強の国家代表は流石に国土防衛で忙しいため動かせないので、そのワンランク下になる代表候補生が派遣される。

 

 ではIS学園に派遣する代表候補生の選定はどんな基準で行われるかと言えば、まず第1に『専用機を持っていること』が絶対条件だ。これだけでほとんどの代表候補生が条件から外れる。まぁ今回を機に専用機を与えてもいいため、選考の優先度が高い程度に留まるが。

 

 第2の『送り出せる人材であること』が重要だ。素行に問題があったり、他の代表候補生たちと歩調を合わせられないような者を送り出したとあっては国の信用に関わる。そのため送り出す人材は国の方で厳重な審査がされる。

 

 さて、では凰乱音はこれをクリアしているかと言えば、そこはもちろんしている。

 

 言動が少し鼻につくが、それも個性の範囲内で済む程度で致命的ではない。量産型とはいえ第三世代の専用機を持っていて、命令は守るし協力だって出来るし、実力だって申し分ない。選ばれて然るべきだろう。

 

 それでも鈴が乱の派遣から人材不足を感じたのにはちゃんとした訳がある。

 

「乱はね、()()()なの。」

 

「新参者?どういう意味だ?」

 

「乱はあたしが訓練し始めてから訓練を始めたのよ。」

 

「……ねぇ、鈴が訓練を始めたのって。」

 

 鈴の言葉でその事実を理解したシャルロット・デュノアが、驚きで目を見開きながら鈴に確認する様に聞いた。

 

「中3の頃からね。大体1年で甲龍を貰ったわ。」

 

「!つまり乱も……!」

 

「そっ、2()()()()()()()()()()()よ。」

 

 代表候補生たちが絶句した。

 

 専用機という物は特別だ。国ごとに配布された貴重なISコアの1つを個人に持たせる以上、国としてはどうしても慎重になる。それこそ年単位でその人となりを、実力を把握してからでないと渡せない。

 

 大体3年、早くて2年。それが専用機を与えられる月日だ。よほどのことがない限り、それは覆せない。つまり2年経たずに専用機を手にした乱は――

 

「あんなだけどまぁ、一般的には天才なのよ、乱は。」

 

 必然、よほどの存在――

 

「でもその程度で専用機は貰えない。」

 

「え?」

 

 ――それは一瞬の間もなく、即座に否定された。

 

「代表候補生なんて掃いて捨てるほどいる。それこそ何年も訓練した秀才って奴がね。」

 

 見上げた先、アリーナの内部を飛び回る乱を()()()()()()で見つめながら、鈴は手首で待機形態となっている専用機、甲龍を撫でた。

 

「あたしみたいに専用機に乗った国家代表を訓練機で倒すとかしたならともかく――」

 

「待って鈴、今凄いこと言わなかった?」

 

「――ともかく。

 

「ゴリ押した……!?」

 

 ふと零してしまった黒歴史に目敏(めざと)く反応したシャルロットを無視して、鈴は未だに飛鳥に剣を振るわせるどころか、スタート位置から押し出すことも出来ない乱を見て、

 

「何の実績もないポッと出の、ただの早熟する天才に専用機を与えることになる程度にしか、台湾の代表候補生は育ってないのよ。」

 

 いつもなら言わないそんな言葉を口にした。

 

「珍しいですわね、鈴さんがそんな話をするなんて。」

 

 セシリア・オルコットが鈴の言葉に少し驚いたように言う。イギリス貴族の1人として様々な人間を見て来たセシリアからすれば、鈴は良くも悪くも関心のないことにはとことん関心が湧かないタイプの人間だと見ていた。

 

 世界情勢や政治に興味などなく、専用機持ちの代表候補生としてテストで点数を取れるように、ということでただ知識を付けただけ。それがこうも他国について語るというのは、正直意外と言う他なかった。

 

「愚痴よ愚痴。他が育ってないからって乱を送ってきた台湾へのね。」

 

 そう言いながら、剣を振らない飛鳥に業を煮やした乱が角武を持って瞬時加速(イグニッション・ブースト)で突っ込んだのを見てため息を吐いた。

 

「愚痴、ねぇ。」

 

 フォルテ・サファイアの頭を撫でていたダリル・ケイシーがニヤニヤと笑いながら鈴を見る。

 

「……何よ。」

 

()()()()()()()()()()()。」

 

「――――。」

 

 ピタリ、と待機形態の甲龍を撫でていた鈴の手が止まった。

 

「愛されてんなー、あいつ。」

 

「ふんっ。」

 

 プイッ、とそっぽを向く鈴にダリルが笑う。

 

「あ、落ちた。」

 

「え?」

 

 試合開始から5分。鈴が目を離した瞬間に飛鳥が右肩のGNソードⅣフルセイバーを振り下ろし、乱は絶対防御を発動させシールドエネルギーが0になった。

 

 

 

 

『よし、何か条件付けられたせいで耐久戦になったけど勝てた。』

 

『時間まで落とされない、落とさないって面倒だね。』

 

『ヴィシュヌともこれやるの……?』

 

『やるんじゃない?』

 

『あの蹴りを相手にするのか……。』

 

 

 

 

「1撃ってどういうことよ!」

 

 模擬戦後、アリーナの地面に降り立った乱は開口一番にそう叫んだ。

 

「飛鳥相手に近付くからそうなるのよ。」

 

「というか角武ごと斬られたんだけど!何あれ!?」

 

 ズビシッ!と乱に続いて降りてきた飛鳥の右肩に取り付けられたGNソードⅣフルセイバーを指差して、乱は近付いてきた鈴に問い質した。

 

「ヒートソード、つまり溶断武器よ。飛鳥の近接武器は全部そうだから、今後気を付けなさい。」

 

「ハァ!?ハイパーセンサーに熱源とか無かったんだけど!」

 

「触れなきゃ熱くなんないのよ、アレ。圧力センサーか何か仕込んでるんでしょ。」

 

 GNソードⅣフルセイバーに限らずダブルオークアンタの持つ全ての装備が実際に受けるまで溶断武器であることを悟らせない理由は、乱の言うようにヒートソード特有の刀身の熱源がないからだ。そのため、相手からすればただクリアグリーンで出来た刃や刀身の剣で斬りかかってくる様にしか見えない。

 

 端から見れば普通に斬りかかってくるだけなので、当然その対応も普通に防ぐか躱すか。しかし実際は鈴の予想通り、触れた瞬間に刀身の素材がGN粒子を熱変換し、その熱を対象に移動させる圧力センサーに似た機能が備わっているため、防げばそのまま溶断されることになる。

 

「初見殺しじゃない!」

 

「それに対応するのも実力よ。」

 

「ぐぬぬ……!」

 

 いや対応する方がおかしい。そう言いたかった飛鳥だが、ここで口を挟むと面倒なことになるとイノベイターの勘が言ったため黙ることにした。

 

「天羽、次も頼めるか?」

 

 そこに千冬が声を掛けてくる。

 

「シールドエネルギーも十分ありますから、問題ありません。」

 

「よし。ギャラクシー、今見た通りだ。全力で戦え。」

 

「はい。ドゥルガー・シン、出撃します!」

 

 千冬に発破をかけられ、ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーは秘かに闘志を燃やしながら専用機を展開した。

 

 タイ製第三世代IS【ドゥルガー・シン】。搭載された第三世代技術は非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)として機体との相対位置が決まっているスラスターを任意で移動させられるというビットにも似た技術。

 

「天羽さん。」

 

「飛鳥で良いですよ。」

 

「では飛鳥さん、お手合わせお願いします!」

 

 右手に展開(コール)した弓型の武器【拡散弓クラスター・ボウ】を持ち、ヴィシュヌは飛び上がった。

*1
実はジャマダハルというのが正式名称でカタールは全くの別物




 鈴が喋りまくったので乱の戦闘は描写せず仕舞い。あと気付いたんですけど甲尾以外公式でもほぼ鈴みたいな扱いだったから書き分けがとても難しい。
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