『正直さぁ。』
『何?』
『
『だから一撃必殺の零落白夜が重宝されてるんでしょ。仲良くしたら?』
『覚醒一夏なら兎も角、普通の一夏はそこまで頼りにならないからなぁ。』
『なら覚醒*1させる?』
『【愛】*2ですら恋人が出来るか家族仲が良くないと発現しないし、その次に簡単って言われてる【明鏡止水】*3だって精神修行に比重を置かないと出来ないから、今の一夏には無理じゃん?』
『なら順当に育てたら?』
『アーキタイプ・ブレイカー編が終わるまでに育ち切るかなぁ……?まぁとりあえずその方針で行こうかな。』
『というのがちょっと前の会話である。』
『カメラ止まってた筈なんだけどなぁ!?どこから撮ったのそれ!?』
【織斑一夏、聞こえてるね。】
「この声、葉加瀬さん!?」
第3アリーナで凰鈴音、凰乱音の2人と共に
【今からするのは説教だ。】
「へっ?」
完成した
【前からそうだけど、君は白式の扱いが下手だ。】
「うぐっ。」
なのはの歯に衣を着せない物言いに一夏が
4月に白式を手にしてから8ヶ月経った12月現在、一夏はIS学園での授業や放課後の訓練、何より実戦によって確実に強くなっている。その成長速度はロシア国家代表の更識楯無をして驚かされる程だ。少なくとも一般人上がりの同級生たちとは比較にならない実力を今の一夏は持っている。
だがどうしても共に戦う他の専用機持ちと比べればその実力は劣ってしまう。取り柄と言えば姉から受け継いだ零落白夜による一撃必殺だけ。単純な剣の腕は同じ近接戦闘を得意とする面々を切り崩せない程度であり、
最近は以前にも増して訓練に力を入れているが、それでも未だに第三世代機としては破格の機体性能を持つ白式を扱い切れていなかった。
【と言うよりは、そこまで器用じゃないって言い方の方が合ってるね。君は一つのことを極めるのに向いてる。】
「それ、前に千冬姉にも言われたぜ。」
思い出すのはセシリア・オルコットとのクラス代表の座を賭けた決闘の後、白式の説明を受けている時に織斑千冬から言われた言葉。色々とあったせいですっかり忘れていたが、確かに一夏はその言葉を聞いていた。
【牽制、陽動、迎撃。何をするにも色んな事を覚えたり考えなきゃいけない射撃戦は、素人である君には荷が重い。それなら前にやってた剣道の延長線上にある雪片弐型でのチャンバラを極めた方がいい。】
偏差射撃だとか置きエイムだとか、射撃戦で覚えなければいけないことは多い。ただでさえISについて何も知らない一夏に、そんな新しい概念を教えて覚えさせる余裕はない。精々シャルロット・デュノアがしたように『対処するために射撃武器の性質を教える』程度で十分だった。
一夏をISから遠ざけていた実の姉である千冬はその事をよく理解していた。だからこそ白式が唯一携えた武器、たった一つの雪片弐型を用いた近接戦闘が一夏に合っていると言った。
8ヶ月越しに千冬の言葉の本当の意味を理解した一夏は納得しながらも、「でも」と疑問を口にした。
「剣道と違って、一撃当てたら勝ちって訳じゃないだろ?」
【えっ。】
「えっ?」
一瞬、一夏となのはの間に沈黙が流れた。
【何のための零落白夜な訳?】
「…………あぁっ!?」
言われて気付いた、と一夏が声をあげた。
確かに一夏の言う通り、IS戦と剣道は本来全く違うものだ。何せ剣道にシールドエネルギーなんて物はない。有効打が1撃でも決まればそれで勝ち、それが剣道だ。しかもIS戦と違って1対2になったり2対2になったりすることもないし、銃なんていう射撃武器も存在しない。
そういう違いがいくつもあったからこそ、一夏は剣の振り方ぐらいしか剣道の経験をISに活かせなかった。授業で習ったこと、他の専用機持ちたちに教えてもらったことを武器に戦ってきた。
だが違うのだ。一夏と同じようにISの素人である篠ノ之箒、射撃のエキスパートであるセシリア・オルコット、出会った時には既に剣道を止めていたために意識できない鈴、ISのことを中心に訓練しているシャルロットやラウラ・ボーデヴィッヒや更識姉妹たちから、他ならぬ
『
「そうか!そうかぁ!」
嬉しそうに一夏が笑う。篠ノ之家の引っ越しで通っていた道場がなくなり、中学時代では生活費の足しになればとバイト三昧で、5年のブランクがあった剣道。IS学園に入学して箒と再会し、勝負勘を取り戻すためにと再び始めたそれが、役に立つのだと思うと嬉しくて堪らなかった。
【グルルッ!】
笑う一夏に
「面!」
否、
篠ノ之流古武術裏奥義【零拍子】。相手が動き出す一拍子目を見極め、それより早く動き出す『先の先』を取る技によって、
「ありがとう、葉加瀬さん!俺戦えそうだ!」
【あぁうん、頑張ってね。】
若干の呆れを含んだ声援を背に、一夏は雪片弐型を手に
『……なにこれ。』
『前にソロプレイで遊んでる時に見付けた一夏の強化方法。覚醒程じゃないけど強くなるんだよねぇ、これ。』
『……ウィキに載ってないんだけど。』
『そりゃ編集してないからね。』
『してよ!』
『やだよ面倒臭い。』
『前コメントにウィキ更新をさせようとしていたなのははどこに行っちゃったのかなぁ!?』
「胴!」
発声と共に零落白夜を纏った雪片弐型が
剣道をISに活かせると知った一夏は先程までとは見違えていた。まず目を引くのは零落白夜の使用時間。攻撃の刹那に発動し、切った後はすぐに終了され無駄なシールドエネルギーを消費していない。
これは剣道での1本取れると思った瞬間に打ち込む技術がISと融合した結果だ。発声という分かりやすいスイッチもあって発動までのタイムラグを無くし、残心によって終了する。IS戦では発声は明確な隙だが、
次に飛行。今まで無駄が多かったスラスターのエネルギー消費がぐんと少なくなっている。剣道で培った技術が反映され、決めに行く時と回避する時以外は最小限にしか動かなくなったからだ。他にも無駄にスラスターを噴かすことがなくなったのもエネルギー消費が少なくなった理由である。
左腕の多機能武装腕【雪羅】の使い方は残念だがこれと言った成長がない。荷電粒子砲も爪も盾も剣道では使わない以上、剣道の経験が活かされないからだ。
一夏が考えていた通り、本来ISと剣道は結び付かない。剣の振り方、握り方、勝負勘を培い、身体を動かせるようにする物としてしか機能しない。何せ一撃必殺である剣道とは違い、シールドエネルギーのあるISではそんなもの例外を除いて存在しないから。
だが――
「面!」
零落白夜を――
「面っ!」
『
「めぇんっ!」
……後に一夏の剣道を指南している箒他、姉であり担任である千冬やISの訓練を着けている楯無からなのはに苦情が行った話は割愛する。
ともあれ、零落白夜による一撃必殺と
正直奥義に表も裏もないと思うし、あるにしても何で当時小学4年生だった一夏が裏奥義なんて大層な物を習得しているのか疑問は尽きませんが、零拍子は便利なので使います。