先に動いたのは天羽飛鳥だった。
「クアンタ、セブンソード・コンビネーション!」
油断も慢心もせずに、初手から右手に持ったGNソードⅤと左肩のGNシールドから解き放ったGNソードビット6基を合わせた
周囲に浮かべたGNソードビットから蓄えたGN粒子を吹き荒れさせ、弾けるように飛び出した飛鳥がGNソードビットで形成した量子ゲートを潜り姿を消す。
そして山田真耶の背後に量子ジャンプした飛鳥は、
「そこですよね?」
「天羽さんに当てた!?」
開始早々起こった出来事に観客席で見ていた専用機持ちたちの表情が驚愕に変わる。
「今の、攻撃を置いてた……?」
「ああ、ワープ先を読んでいたとしか思えない攻撃だ。」
更識簪とラウラ・ボーデヴィッヒが一連の流れを考察する。
真耶は眼前で飛鳥がGNソードビットの量子ゲートを潜り姿を消すと同時に振り返り、まだ飛鳥が姿を現す前に引き金を引いていた。そうして放たれたビームが、丁度ワープした飛鳥の顔に直撃した。明らかにどこにワープするかを読んだ動きだ。
「一体どうやって……。」
「――あんな物、ただ後ろを撃っただけだ。」
思考を巡らせる生徒たちに、織斑千冬は淡々とそう言い放った。
「織斑先生、それはどういう……?」
シャルロット・デュノアが疑問符を浮かべながら聞いたため、千冬は「よく思い出せ」と言って
「天羽は基本的に、相手の後ろにしかワープしない。」
はっ、と息をのんだような声が専用機持ちたちから零れる。それを気に留めずに千冬は続けて言った。
「人体の構造上、ハイパーセンサーで見えてはいても背後に居る相手に攻撃することは難しい。それを考えての位置取りだろうが、天羽の場合はただワープ先を教えているだけだ。」
どこから来るか分からない、距離も速度も意味をなさないというのが飛鳥の量子ジャンプの強味だ。しかし飛鳥は基本的に量子ジャンプを使用すると相手の背後を取るため、その強味を自分から潰している。
「あんな物は射的と変わらん。お前たちでもやろうと思えば出来ることだ。」
無理です、とブンブンと首を横に振る専用機持ちたち。そんな中、
「なるほど……!」
「衝撃砲でやれるかしら?」
「当てた所でって感じんスよねー。」
「普っ通に接近戦されて負けんだよなー。」
そんな事を言う、最近目覚ましい飛躍を遂げている人たちが居た。
「っ、ソードビット!」
顔にビームを食らい僅かに仰け反り思考に空白が出来ていた飛鳥は、すぐに立ち直るとGNソードビットを操り真耶へと肉薄させた。
「(分かってた筈なのに……!)」
飛鳥自身、自分が相手の背後にワープする癖があるのは理解していた。しかしそれでもその癖を改めないのは、一定以下の実力しかない相手ならそれで勝てるからだ。
千冬が言ったように、人体の構造的にISと言えど背後の敵に攻撃するのは難しい。基本武器を手に持って戦い、機体に固定装備するにしても正面に即座に向けられるようでなければならない以上、どうしたって反転して応戦するのが自然だ。
だが飛行技術や速度で背後を取るのと違って、飛鳥は量子ジャンプによって背後を取る。ワープから出現まで1秒とかからないそれが戦闘中に突然起こったとして、即座に反転して迎撃できる実力者は国家代表操縦者の中でも本の一握りの者だけだ。
何より
しかし、今相手にしているのはあの【
ブルー・ティアーズのような新技術の実験のためでも、
甲龍のような次世代量産型の試作機のためでも、
シュヴァルツェア・レーゲンのような軍人のための機体としてでも、
ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡのような個人を守るための機体としてでもなく、
本当の意味で『専用の機体を作るために』与えられた人間だ。ワープをする相手だとしても移動先が分かっているなら、対応できない筈がない。
まして、今は
迫るGNソードビットを見て、真耶は自身の機体を覆う盾を
「シールドビット!」
機体から離れたそれは音を立てずに更に分離し、10個の盾としてその姿を現した。
「ビットですの!?」
思わずといった風にセシリア・オルコットが立ち上がり声を上げた。
もはや見知った武装ととても似た装備。機体を覆う大型の盾だと思っていた緑色のそれは、蓋を開けてみればビット兵器だったのだ。
「しかも10個って、セシリアたちより多いじゃない。」
「山田先生、あんなことも出来たんだ……。」
凰鈴音と凰乱音もセシリアと同じようにビットを使う真耶に驚いていた。強いことは知っていたが、扱いが難しいビット兵器を10個も操れるとは流石に考えもしなかった。というか、最新技術の1つであるビット兵器は既に現役を退いている真耶の使ったことのない武装だろうに、何時習熟を行ったのだろうか。
そんなビットを扱う真耶を見て、シャルロットが視線を鋭くした。
「……あのリヴァイヴ、一体……?」
「シャルロット?どうしたんですか?」
様子がおかしいシャルロットに気付いたヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーが声を掛けた。それで気を取り戻したシャルロットは「ちょっとね」と言って、気になる点を共有した。
「僕が知る限り、ラファール・リヴァイヴにビットを取り付けるパッケージはない筈なんだ。そもそもビットは第三世代技術に分類されるから、第二世代のリヴァイヴじゃOSも対応してない。」
「使えない筈の装備ということか?」
「うん。」
篠ノ之箒が簡潔に纏めた言葉にシャルロットは頷いた。
ラファール・リヴァイヴは第二世代の最後発で、今まで世界各国で解明されたISの基礎技術を使い、更に独自の技術で
しかし今アリーナで戦っている真耶は、そのラファール・リヴァイヴでビットを使っている。そんな改造を施せるのは――
「――ま、ボクなんだけどね。」
「うわっ!?葉加瀬さん!?何時からそこに!?」
専用機持ちたちが揃って座っていた観客席の1つ後ろの列に何時の間にか座っていた葉加瀬なのはにシャルロットが驚く。
「なのはさん、あのビットは……。」
「前にボクが作った物だね。昨日頼まれて取り付けたんだ。」
セシリアの問いに何でもない様に答えたなのはに専用機持ちたちの視線が向く。
「有り合わせの物で組み上げたから、欠陥多いんだけどね。」
「欠陥?」
「機体に粒子供給コードとかGNコンデンサーがないから、粒子貯蔵タンクのGN粒子を武器以外に使えないんだ。姿勢制御とか質量軽減とかの恩恵がないし、PICと接続アームだけであのビットを保持してるから動きが遅いし、ビットの操縦補佐も乗せれてないから全部自分で動かさなきゃいけない。常人に使えるはずないんだけどねぇ……。何で使えるんだ。」
ボソッと呟いた声が聞こえ、何でそんな物を渡したんだと全員の思いが1つになった。
「シールドビット――
真耶が出したビットを見た飛鳥は、それが何であるかを知っているが故にまずはそれを破壊しようとGNソードビットを動かした。
迫る6つの刃に、真耶は10の盾で応戦する。触れれば如何に盾のビット言えど溶断されるそれに真耶が取った行動は――刃を受け止めることだった。
「ハァ――?!」
2つの盾が、挟み込むようにして飛鳥のGNソードビットを白羽取りしている。あんまりな光景に再び飛鳥の思考に空白が出来た。
「
そう言いながら、真耶は10個の盾で2枚掛かりで5つのGNソードビットの動きを止め、残った1つは真耶自身がその手で溶断能力を持たない青い接続部分を掴むことで動きを封じた。
「ライフルビット!」
ガシャン!と音を立てて、
姿を現した【GNライフルビットⅡ】は、盾――【GNホルスタービット】と真耶の手に捕らえられたGNソードビット、そして動きの止まった飛鳥に向かってピンク色の粒子ビームを放った。
「GNホルスタービット。その名の通り、内側に銃を収納した盾型ビット。その性能を真に発揮させるには、攻撃する10のビットと防御する10のビット、合わせて20個のビットをそれぞれの用途で動かす必要がある。」
「――――。」
言葉も出ない。アリーナで起こったそれは、あまりに常識外れだった。
どうやったらGNソードビットを白羽取りなど出来るのか。どうやったら20ものビットを操り、用途の違う2種類を適切に動かせるのか。
「普通、あのビットは操縦補佐を乗せないと動かせない。二重人格とか2人乗りとか、そういうのじゃないと無理だ。1人でやるには面倒臭すぎるからね。単純なビットの数なら100は動かせる飛鳥でもやらない。」
「……わたくしも、あれを使い熟せる気はしませんわね。」
なのはの説明にセシリアも匙を投げる。1種類のビットであればセシリアも20個は既に動かせるだろうが、用途が違うとなれば話は別だ。
「何であの人、日本代表になってないんだろうねぇ……。」
なのはの口から零れたその言葉は、紛れもなく高評価のものだった。
ラファール・リヴァイヴ・Sカスタム
山田真耶の教員用ラファール・リヴァイヴに【GNホルスタービット】とそこに収納する【GNピストルビット】/【GNライフルビットⅡ】を取り付け、飛鳥が暇な時に貯めさせた高純度GN粒子がたっぷり入った【粒子貯蔵タンク】を動力源として葉加瀬なのはが改造を施した『スペシャル』で『サバーニャ』な機体。
ラファール・リヴァイヴの大きな
しかしながら攻撃力・防御力は飛躍的に向上しており、殲滅力もアップしている。だが攻撃用と防御用のビットがそれぞれ10個もあり、とてもではないが常人が使いこなせる代物ではない。
山田真耶
覚醒【
銃器及び盾に関してのみあらゆる操縦難易度を無視して使い熟せる【
実は飛鳥が極普通に白兵戦したら勝てたりする。理由は次回