『どうも皆さん、おはこんばんちは。いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』
『はいはーい。天っ才博士、葉加瀬なのはだよ。』
『山田先生
『まさかフルセイバーの武装破壊を見ることになるとは思わなかったねぇ。』
『ビットをビットで白羽取りとか、束さんでもやらないんだよなぁ……。』
『というか、適性無視して盾と銃なら使えるのやっぱりおかしくない?』
『裏で100回戦ったけど、100回目でようやく1回勝てる様になるレベルなのホントおかしい。』
強化訓練2日目。通常の授業の代わりにみっちりと山田真耶にしごかれる予定の専用機持ちたちは、昨日と同じように第3アリーナにやって来た。
「あら、なのはさん?」
そこでは愛用している魔法瓶を隣の席に置いた葉加瀬なのはが、空中に投影した画面に向かってキーボードを叩いていた。
「どうしてこちらに?授業がある筈では。」
「今の山田先生の機体を整備できるのはボクだけだからね。実技ならともかく座学で習うことはないから、ここでこうして整備する時まで山田先生が提出するレポート用の資料作りをして暇を潰してる。」
そう答えるなのははキーボードを叩く手を止めない。
強化訓練と銘打っている1週間の対
しかし通常の授業を行わなければならない1年1組担任の織斑千冬はこちらの様子を見れないためレポートを書けない。かと言っていつ
幸い強化訓練が終わってから数日提出の猶予があるため、なのははこうしてレポートを書く際に役立つように諸々の資料を用意しているのだ。
「ま、ボクのことなんてどうでもいいさ。それよりも今日は珍しいものが見れるよ。」
「珍しいもの?」
繰り返すようにして聞き返された言葉になのはは笑う。
「――度胸は十分。覚悟も決まって、京都の時ぐらい真剣。そうそうないよ、あの飛鳥は。」
ピットから同時に飛び出して、昨日の様に対峙する。機体を守る盾であるGNホルスタービットを、機体の後ろに置いたGN粒子貯蔵タンクから伸びる接続アームで保持している相手の姿は、その身長に見合わない威圧感を放っている。
いや、普段の穏やかな顔とは違うキリッとした顔も、威圧感を与えてくる要因だろう。その威圧感に見合うだけの実力があり、現にイノベイターである私がゼロシステムを使って行った本物のそれと何らそん色のないバトルシミュレーションで、99回負かされた。
「山田先生。」
「どうかしました?天羽さん。」
「こんな狭いアリーナじゃなくて、周りに何もない――それこそ宇宙とかなら、100回やって99回私が負けます。」
「……そうですね。確かに、その条件なら私に分があります。」
いつもの様に
シミュレーションで私が負けた主な理由は距離を詰め切れなかったこと。私がしたシミュレーションではデフォルト設定にしてあった、遠距離型が本領を発揮できる宇宙ステージで戦った。でも障害物もなければ広さの制限もない宇宙と違って、このアリーナはISバトルが出来る程度に広いだけ。1回の
アリーナなら負けることはない。武装を全て破壊されるよりも、シールドエネルギーが尽きるよりも先に距離を詰めて斬り裂ける。でもアリーナより広くて、なおかつ障害物のない場所だと負けが込む。私が詰める距離よりも、離される距離の方が長いから。
本当ならそういう時にこそ量子ジャンプで距離を詰めるんだけど、私がワープした瞬間に目の前をピンクの粒子ビームが埋め尽くすから出来なかった。咄嗟に出ちゃった量子化で移動した時にもビームが飛んで来たのは、設定ミスでゼロシステムでの未来予測のデータが戦闘に反映されてるんじゃないかって思ったぐらい驚いた。見てみたらそんなことはなかったけど。
「でも、それは勝ちを譲って良い理由にはならないですよ?」
「はい。」
投げかけられた問に肯定する。
イノベイターに変革して、それよりも前から超人的な身体を持って生まれた私には、それこそ束さんや織斑先生でもないと比較にならない身体能力と知覚能力がある。だから基本的に勝負という事態にならない。
普通はテクニックの差とか根気とかも勝負には関わってくるけど、例えそれらが相手の方が上でも私は負けない。それで覆せる範疇に無い。だから私は勝ち負けにあんまり執着しない。
ISバトルでもそれは変わらない。違う点があるとすれば、私と戦って『勝負になる人』が多いぐらい。その人たちと競い合うのは好きだけど、その勝ち負けを意識はしていない。代表候補生になるまでは実績が必要だったから勝ちに拘っていたけど、今はそれもしていない。
でも昨日、織斑先生に言われた。
――
思い出したんだ。
「
左腰にあるGNソードⅤを、左手に
「だから――――!」
『お前の様な代表候補生がいるか。』
『第2回モンド・グロッソ優勝者より強い日本代表候補生。』
『何で日本代表になってないの?』
『現役を退いてるのに第二世代機で現役バリバリのドイツ軍人の最新鋭第三世代機と引き分ける奴。』
『もう1回言うけど、お前の様な代表候補生がいるか。』
「トランザム!」
ブザーと同時に機体各部のGNコンデンサーから貯蔵していた圧縮粒子を全面開放し、機体を赤く染め上げ、溢れるGN粒子によって表層意識の共有が起こる。
「行きます!」
「シールドビット!ライフルビット!」
対する相手は銃を抜き、盾が自在に宙を舞う。20ものビットを操りながら、本体も距離を取る。
「ソードビット!」
対抗してこちらもトランザム状態のGNソードビットを放つ。赤い光を纏い、緑のGN粒子の残光を残して空を駆ける。その全てが相手を斬り刻まんと殺到し、
それを成したのは、銃でも盾でもなく――
「――ビームサーベル……!」
「ライフルを外せば使えるんですよ!」
ピンク色の圧縮粒子を刃としたGNビームサーベルの2振りが、肉薄するGNソードビットの全てを逸らす。更にお返しとばかりに10のGNライフルビットⅡからビームの雨が降り注ぐ。
「それは100回見ました!」
右手のGNソードⅣフルセイバーの刀身が纏うGNフィールドを頼りにビームを全て切り払う。続けて
再び
「昨日とは大違いですね!」
「そっちだって!」
落ちていくフルセイバーのパーツを量子変換で右肩に戻しながら私自身も近付く。そうしている間も猛攻を続ける6つのGNソードビットを2つのGNビームサーベルで捌き、残る10のGNホルスタービットと6つのGNライフルビットⅡを動かしこちらの動きを制限してくる。
「私用の立ち回りですね!」
「当然です!」
的確に私が行きたいルートを潰しながら、虎視眈々とGNソードビットを破壊する瞬間を狙っている。つまりトランザムが切れる瞬間。
「それより早く!切り開く!」
スラスターを噴かせ加速する。隙間を縫うようにして、邪魔なGNホルスタービットを切り裂いて、
「ここは、私の距離だ!」
右手に
「だから対策はバッチリです!」
「デタラメも大概にしてください!」
「天羽さんも大概ですよ!」
GNビームサーベルを投げ捨て、両手で溶断が起こらないクリアグリーンの部分以外を挟み込み、白羽取りで止められた。そのまま周囲から6つのビームが狙い撃ってくる。離れればまた最初から、GNライフルビットⅡの包囲網を抜けるところからだ。
「そんなのやれるかぁ!」
フルセイバーのメインブレイドユニットとマルチカウンターの接続を解除し、ビームの射線上にフルセイバーのパーツ4つを投げ捨てるようにして放り盾にする。残る2つのビームは左肩のGNシールド上部のGNビームガンと左手に
「!」
メインブレイドユニットから手を離して再び手の中にGNビームサーベルを
「ソードビットォ!」
「っ!」
GNソードビットを、
「やります、ねっ!」
「くぅっ!」
左手で振るわれたGNビームサーベルがダブルオークアンタフルセイバーのシールドエネルギーを削る。さらに腹を蹴られ距離を開けられる。
「でも!」
GNライフルビットがない今、ビームが飛んでくることはない。だったら――!
「跳べ!クアンタ!」
量子化したって、問題ない――!
離れた距離を一瞬で詰め、後ろで実体化する。そのまま、振り返られるより先にGN粒子貯蔵タンクを切り裂いた。
手に持たれていたGNビームサーベルからビームが消え、浮いていたGNホルスタービットが地に落ちていく。
「私の、勝ちだ!」
ウマ娘のせいで執筆が遅れるぅ