『どうも皆さん、おはこんばんちは。いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』
『はいはーい。天っ才博士、葉加瀬なのはだよ。』
『強化訓練4日目。いい加減絵面に変化がなくて苦痛になって来ました。』
『この現状を打破するためにコメット姉妹には頑張って欲しいね。』
『……無理そう。』
「……?」
1週間の強化訓練も折り返しとなる4日目の朝。食堂で朝食の定番メニューである焼き魚定食を食べていた天羽飛鳥は、同じく食堂で食事を摂っていたシャルロット・デュノアを見て首を傾げた。
「(いつにも増して無理してる?)」
飛鳥から見たシャルロットの印象は『優等生』だ。穏やかな性格で誰にでも優しく接し、自分から問題を起こすことも少ない。世界第3位のシェアを誇る第二世代量産機随一の傑作機【ラファール・リヴァイヴ】を作り上げたデュノア社社長の娘なのもあってかISの知識も豊富で、多少カスタマイズしているが第二世代の機体で第三世代と互角の戦いを繰り広げる実力者でもある。
正直、飛鳥が今の1年生で1番警戒しているのは他ならないシャルロットだ。才能を解放し【黄帝】を手にした凰鈴音やイノベイターとなったセシリア・オルコット、GNミサイルや零落白夜によって当たればダブルオークアンタでさえ落とされかねない攻撃力がある更識簪や織斑一夏よりよほど恐ろしく思っている。
その原因は山田真耶だ。傑作機とはいえ第二世代ISであるラファール・リヴァイヴで第三世代の専用機に勝利できる真耶と、そのカスタム機とはいえ同じラファール・リヴァイヴで最新鋭の第三世代ISを操る代表候補生と対等に渡り合えるシャルロットは重なる部分が多い。しかも未だに成長の余地がある分、シャルロットは真耶を越えるかもしれないと飛鳥は考えている。
そのためかなり前から飛鳥は秘かにシャルロットのことを気にかけていたのだが、そうする内にシャルロットが普段無理をしていることを見抜いていた。
正確には猫を被っているだとか本心を隠しているという表現の方が合っているが、ともかくシャルロットという『優等生』は外面を取り繕うのがとても上手いのだ。それこそイノベイターでもなければ分からない程上手く隠している。
「(うーん、助けになりたいけど……
別に隠している訳ではないが、イノベイターの読心能力はあまり知られていいものでもない。あまりに上手く隠しているシャルロットの本心は傍から見て気付ける物でない以上、そこを指摘すれば頭のいいシャルロットなら読心能力に思い至るかもしれない。そうなれば迷惑を掛けまいとシャルロットはそれとなく距離を取るだろう。それはとても困る。
「(何で隠してるのかも知らないし……。)」
そもそもの話、キャラを作るのはよくあることだ。地方から都心にやって来た子が今までとガラッとキャラを変えるのは男女共通で起こり得ることだし、シャルロットは最初IS学園に男装して入学した経歴がある。その頃のキャラが抜けきっていないだとか、理由は色々考えられた。
「(私じゃ力になれそうにないなぁ。)」
焼き魚定食を食べながら、飛鳥はそう思い至った。
『部外者がとやかく言える問題じゃないんだよなぁ。』
『理由が理由だしねぇ。まぁ大体父親のせいなんだけどさ。』
『あの人はあの人で不器用すぎるんだよなぁ……。』
『拗れた理由の2割ぐらいは正妻のせいだよね。』
『不妊体質はしょうがないから……。』
『クアンタ使えば全部上手くいきそうだよね。』
『対人トラブルの8割はクアンタでどうにかなるけど、流石に身も蓋も無さすぎる。』
「はい、皆さん集まってますね。」
朝食を食べ終えて続々と第3アリーナに集まって来た専用機持ちたちを出迎えた山田真耶は、全員が居るのを確認してから今日の予定を話し始めた。
「今日で強化訓練も4日目、折り返しとなりました。昨日までは皆さんのスキルアップのために私と戦ってもらいましたけど、今日からは本格的に連携上達のための訓練になります。なので今日は私との模擬戦はせずに、チーム同士で戦ってもらいます。」
「チーム?」
「はい。今14機の専用機がこの場に集まっていますから、7対7の模擬戦をします。」
「「「7対7!?」」」
思っていた以上の規模に驚きの声が上がる。
7対7。それほどまでに大規模なISバトルは今まで聞いたことがない。そもそも1ヶ所に稼働状態で集まるISの数が少ないため2対2のタッグ戦が限度で、あっても3対3だ。それを2倍以上の数でやるなど前代未聞のことである。どの国の軍隊でもまず出来ないことだ。
改めて、現状が如何に異常事態かを代表候補生たちは痛感した。
「それではチーム決めのためにくじ引きをしましょう。葉加瀬さん、お願いします!」
「はいはーい。」
真耶に呼ばれ、
「不正防止のためにこっちで用意したくじを全員同時に引いてねー。グローバル・メテオダウンはどっちか1人が代表で。」
なのはの持つ容器から飛び出る14本の棒をそれぞれが1本ずつ掴み、同時に引き抜いた。
「お、オレは赤か。」「こっちも赤っス。」
流石と言うべきか、ダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアのイージスコンビは同じチームになった。
「アタシは青よ!」「え、あたしも青なんだけど。」「えっ。」
凰乱音と鈴は共に青を引いた。
「私は赤ですね。」「俺も赤だな。」
ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーと織斑一夏は赤を。
「私は青だな。」「私も……。」
ラウラ・ボーデヴィッヒと簪は青を。
「私たちは赤よ!」「頑張ろう、ファニール。」
代表してくじを引いたファニール・コメットは赤を引き、オニール・コメットと共に赤チームへ。
「青よ。簪ちゃんと同じね♪」
実力者の1人、更識楯無は妹と同じ青チームへ。
「(よし、一夏と同じ!)赤だ!」「あら、わたくしもですわね。」
篠ノ之箒とセシリアの2名は赤チームへ。
「僕は青かぁ。」「私も青です。」
シャルロットと飛鳥の2名は青チームへ。
「それでは10分後にチーム戦を始めます。それまではピットで作戦を練ってください。」
「盗聴は無しだからねー。こっちはその間に報告書纏めるから。」
そう言って空中に投影した画面とにらめっこを始めた2人を置いて、それぞれのチームはピットへと移動を始めた。
『赤チームはダリル、フォルテ、ヴィシュヌ、コメット姉妹、一夏、箒、セシリア。』
『青チームは乱、鈴、簪、楯無、シャルロット、ラウラ、そして飛鳥。』
『姉妹の絆強くない?てか紅白コンビは不味いって。』
『箒を落とそうにもイージスコンビが守るよねこれ。セシリアもいるし。』
『あれ詰んだ?』
「まずは箒ちゃんを落としましょう。」
「「「賛成。」」」
楯無の提案はすぐさま可決された。
「ちょ、ちょっと。どうしたのよ?そんなヤバいの?」
唯一箒の
「あぁ、そういやアンタは見たことなかったわね。箒の紅椿には【絢爛舞踏】っていうワンオフがあるのよ。発動されたが最後、エネルギーを無尽蔵に回復し始めるわ。」
「ハァ!?何そのインチキ!」
発動までに時間が掛かる以外に隙が無い。しかも今回は同じチームに一夏がいる。
「あれを使われると一夏の【零落白夜】のデメリットもなくなるから、出来る限り引き離さないとだね。」
「嫁の相手は私がしよう。AICなら白式を抑えることは容易だ。」
絶大な攻撃力を誇る零落白夜の欠点は自分自身のシールドエネルギーを削ることだが、絢爛舞踏と併用するとその欠点が無くなる。それだけは避けなければならない。
「じゃ、それまであたしはセシリア抑えてるわ。飛鳥はイージスの2人をお願い。」
「白式と紅椿を守られたら敵わないからね、任せて。」
鈴の言葉に飛鳥が頷く。警戒しなければならない相手が多すぎる。
「私と簪ちゃんで箒ちゃんを攻めるわ。シャルロットちゃんと乱ちゃんはフォローをお願い。」
「分かりました。」
「任せなさい!」
「まず篠ノ之を死ぬ気で守るぞ。誰も前に出るな。」
開口一番、ダリルがそんなことを言った。
「どうしてですか?」
「向こうが篠ノ之をまず落としに来るからだ。こっちのチームで向こう視点一番ヤベーのがそこだからな。」
ヴィシュヌの質問にダリルはそう答える。
「何がヤバいの、お兄ちゃん?」
「ああ、箒の紅椿には絢爛舞踏っていうワンオフ・アビリティがあってな。シールドエネルギーを回復できるんだ。」
「おまけに自分だけじゃなくて他人のエネルギーも回復できるインチキ性能だ。それと零落白夜のコンボを向こうは警戒する。露骨な強コンボだからな。引き離すためにドイツのちっこいの辺りが白式を抑えに来るだろうよ。AICは近接機体と相性いいからな。」
オニールの質問に一夏が答え、続けるようにダリルが予想を伝える。
「で、守られたら厄介だから飛鳥がオレたちイージスを抑えに来る。ビットの
「どうして分かるのよ?」
流石に具体的過ぎる内容が気になったファニールが質問し、それにダリルは
「3年生なめんな。経験が違うんだよ。」
そう言ってニヤリと笑った。
厳正なるくじの結果
・赤チーム
ダリル、フォルテ、ヴィシュヌ、コメット姉妹、一夏、箒、セシリア
・青チーム
乱、鈴、簪、楯無、シャルロット、ラウラ、飛鳥
となりました。イージスコンビと紅白コンビが揃ってるのヤバイよ。ていうか姉妹の絆強い。