IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第74話 天羽飛鳥、読み間違える

 10分間の作戦会議を終え、カタパルトに乗って戦場へと飛び出した代表候補生たち。アリーナの空に浮かぶ14機もの専用機の並びは実に壮観で、世界中から人材が集うIS学園でもまず見れない光景だった。

 

「これだけの専用機が並ぶと流石に壮観ですわね。」

 

「IS学園でも前代未聞でしょうからね、7対7なんて。」

 

 そんなことを話しながら、拡張領域(バススロット)から展開(コール)した武装を手に持ち今か今かと開始の(とき)を待つ。そんな中、他のイノベイターたちに悟られない様に自分の脳量子波を制御して思考を読めないようにしながら天羽飛鳥は1人考えていた。

 

「(先輩たち、紅椿が【絢爛舞踏】を発動させるまで全力で守る気だ。)」

 

 ブザーが鳴っていないだけで既に戦いは始まっている。いつもなら思考を読んでいる飛鳥だが今回は盗聴禁止ということでそれを封じ、場の様子から情報を探った。

 

 14機ものISが戦うこのチーム戦では、それぞれの立ち位置からして重要な情報となる。タッグの時とは違ってチーム全員が横に並ぶと幅を取り過ぎるため、ある程度の近さで3次元的に全員がそれぞれ浮かんでいる。それを見れば大体どうしたいのか分かるのだ。

 

 赤チームは雪片弐型を右手に構えた織斑一夏と肉弾戦を得意とするヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーを最前列に置き、中段に防御結界【イージス】を構築できるダリル・ケイシーとフォルテ・サファイア、更にコメット姉妹の4人が並んでいる。そして紅椿に乗った篠ノ之箒が両手に日本刀型の近接ブレードを持って最後方、まさかのブルー・ティア―ズに乗ったセシリア・オルコットの横に陣取っていた。

 

 大体が想定通りの立ち位置だが、明らかに怪しいところが1つある。箒の立ち位置だ。

 

 展開装甲を持つ第四世代故にあらゆる状況に対応可能な万能機の紅椿だが、乗り手が箒である以上最も力を発揮するのは近接戦闘だ。必然前衛としてチームの前方に置くのが戦力としての通常の運用である。

 

 しかし実際にはセシリアと同じ最後方。それが意味することはただ1つ、『絢爛舞踏の発動までの時間稼ぎ』だ。

 

「(誰だってそうする。私だってそうする。)」

 

 現在確認されている単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)の数は少ないが、その中でも間違いなく最強の能力であると断言できるのが【絢爛舞踏】だ。高性能の対価として燃費最悪な機体である紅椿だが、絢爛舞踏を使うことでただの超高性能機へと変貌する。

 

 展開装甲に使用するエネルギーどころか、ISバトルに置いて勝敗を決める数値(HP)であるシールドエネルギーさえも回復する規格外の能力。発動したが最後、生半可な攻撃ではシールドエネルギーを削った側から回復され落とすことは叶わない。そうなればもう勝ち確だ。

 

「(ライザーソードはアリーナだと使えないから、フルセイバーをクリーンヒットさせないとなんだよなぁ。)」

 

 ダブルオークアンタを持ってすれば絢爛舞踏を発動させた紅椿と言えど落とすことは可能だ。アリーナ内なので今は出来ないが、ライザーソードを使えば簡単に落とせる。そうでなくても一応GNソードⅣフルセイバーをクリーンヒットさせて絶対防御を無理やり発動させてやれば落とせるだろう。

 

 しかし全身の展開装甲を防御モードにすれば相応に堅くなるので、GNソードⅣフルセイバーをクリーンヒットさせても1撃でシールドエネルギーを0に出来るかがちょっと分からない。行けそうな気もするしダメそうな気もする。要するに運だとイノベイターの直感が告げている。

 

「(何回も打ち込める状況にしないと……。)」

 

 飛鳥は既に絢爛舞踏の発動前に箒を落とすことを諦めていた。防御の要になるだろうイージスコンビやビットと偏向射撃(フレキシブル)で迎撃の鬼になるセシリアを抑えても、その他の全員がそれぞれの得意な位置に着いている様でその実、箒を守れるようにしているからだ。

 

 1分掛からずに発動できる絢爛舞踏が発動するよりも早くこの強固な守りを突破して箒を落とすのは、トランザムか量子ジャンプを使わない限り無理だ。その2つは連携上達のための今回のチーム戦の趣向的に使えない以上、必ず絢爛舞踏は発動する。

 

 そうなれば国家代表の更識楯無と言えど倒せない。必殺技の【ミストルテインの槍】なら倒せる可能性はあるが、あんな隙の大きい技をセシリアが見逃すはずがない。偏向射撃(フレキシブル)で起点となるアクア・クリスタルを撃ち抜かれて妨害されるのが関の山だ。

 山嵐でGNミサイルを48発同時に発射可能な更識簪も絢爛舞踏を突破できる可能性はあるが、こちらもセシリアが1発でも自由に偏向射撃(フレキシブル)を撃てれば迎撃される。ヴィシュヌの【クラスター・ボウ】でも撃ち落とされるだろう。

 

 つまり、絢爛舞踏を発動した第四世代機【紅椿】とのガチ戦闘がほぼほぼ確定している。流石の飛鳥も周りに邪魔が居る状態では戦いたくない。

 

「(ソードビットを他に当てると肝心のイージスを突破し切れないだろうから、サポートは出来そうに無いなぁ。)」

 

 厄介なイージスの2人をどうにか手短に倒せないか、飛鳥は思考を巡らせた。

 

 

 

 

 その対面で、

 

「(――とか考えてんだろうなー、飛鳥の奴。)」

 

 ()()()()()と、ダリルはほくそ笑んだ。

 

「(チーム分けにかなり助けられた。オレとフォルテが揃ってるのもそうだが、セシリアと篠ノ之が居るのがマジででけぇ。どこを疎かにしてもそっちには辛ぇだろ。)」

 

 偏向射撃(フレキシブル)の扱いが上達し続けているセシリアはもちろん、自分たちの防御結界も更に磨きがかかっている。そこにダメ押しの第四世代IS【紅椿】。誰もが戦線を崩壊させるだけの能力がある。

 

「(この中で一番落としやすいのが篠ノ之で、1番残しちゃいけねーのも篠ノ之だ。当然最初に狙う。)」

 

 絢爛舞踏はそれだけ破格の能力だ。それにエリート揃いの代表候補生が周りに多いから埋もれているだけで、一般生徒としては十分に優秀な腕をしている。残せばそれだけ厄介な存在だ。しかしそれが落とせない場合は?

 

「(これ見よがしな最後方。よく見りゃ分かる防衛布陣。絢爛舞踏の発動が確実なこの状況で、おまえには2つの道がある。自分1人で篠ノ之を落とすか、他に任せるかだ。)」

 

 飛鳥とダブルオークアンタを持ってすれば、イージスの防御結界も6人の防衛布陣も突き抜けて箒の元に辿り着き、GNソードⅣフルセイバーの1撃でシールドエネルギーを削り取れただろう。それを見越してダリルは箒に『開始と同時に展開装甲を全て防御に回せ』と言ってはあるが、多少残っても絢爛舞踏発動前に落とされそうだとは感じていた。

 

 だがこれは連携上達を目的としたチーム戦。そんなことを思いついても飛鳥ならやらないだろうと考えたダリルは、最初からもう1つの道の方を想定していた。

 

「(生徒会長辺りに全部任せて、自分はオレたちを抑えてチームに貢献する。同じ理由で鈴の奴もセシリアを抑えに行く。他じゃ相手できねーからな。)」

 

 そこまで読んでの作戦会議だった。そこまで()()()()()()()()の作戦会議だった。

 

「(ここまではオレにも読めた。なら当然、あんたにも読めてたはずだ──生徒会長。)」

 

 水のヴェールを纏い、蒼流旋を右手に持った楯無を見て、ダリルは目を細めた。

 

 

 

 

「(ここまでは想定通りね。)」

 

 件の生徒会長・楯無は、考えていた中で最もベターな展開に脳内で組み立てた作戦を少し修正し始めた。

 

「(一番イヤだったのは飛鳥ちゃんが1人で突っ込むこと。次点で箒ちゃんを囮にしてこっちの数を減らされること。)」

 

 チーム戦という趣向から飛鳥の性格ならしないとは思っていたが、それでもその方が勝率の面では上だ。だから下手すれば飛鳥1人で全て片付けてしまわないかと考え、それも考慮していくつか作戦を練っていた。

 

 その次点として、赤チームで最も意識しないといけない箒を囮にしてこちらの人数を削られるのが嫌だった。強力だからこその見え透いた罠にされると、どうしても対応が面倒臭くなるからだ。赤チームを引っ張るだろうダリルの性格ならやらないだろうとは思っていたが、やりかねないとも思っていた。

 

「(最初の賭けには勝てた。思ってた以上に真っ当なチーム戦が出来そうね。)」

 

 連携上達のためという目的からか、少なくとも変なことは起こらないと当たりを付けて楯無は試合開始の時を待った。

 

「(()()()も用意してるし、今回は勝たせてもらうわよ♪)」

 

 

 

 

 アリーナのシステムとリンクされたハイパーセンサーの画面にカウントダウンが映る。気を引き締めて得物を握り、構え――0になるのと同時に飛翔する!

 

「ソードビット!」「ブルー・ティアーズ!」

 

 最初に飛び出した飛鳥が左肩のGNシールドからGNソードビットを解き放つのと同時に、セシリアがレーザービット4基を自身の周囲に展開して攻撃を始める。

 

「【白虎】!」

 

 そのレーザーの雨を凰鈴音が単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)【天之四霊】の能力の1つ、空間を圧縮して見えない壁を作る白虎で防ぎながらセシリアを抑え込まんと飛翔する。

 

「嫁よ!お前の相手は私だ!」

 

「やっぱりラウラか!」

 

 AICの拘束を放ちながらラウラ・ボーデヴィッヒが最前列に居る一夏に肉薄する。それを左腕の荷電粒子砲で牽制しながら、一夏は迎え撃った。

 

「ここは通しません!」

 

「なら通らせてもらうよ!」

 

 箒を目指して飛ぶ楯無たちの前に立ち塞がったヴィシュヌをシャルロット・デュノアに任せ。

 

「行かせない!」「私たちが相手だよ!」

 

「邪魔すんじゃないわよ!」

 

 中段に構えていたファニール・コメットとオニール・コメットを凰乱音が相手にし。

 

「はぁい、箒ちゃん。来ちゃった♪」「覚悟して……!」

 

「来ないでください!」

 

 狙い通り、箒の元に楯無と簪は辿り着いた。

 

「(絢爛舞踏が発動するまでの時間さえ稼げればいい!)紅椿!」

 

 展開装甲を防御に全て回し、万全の状態で迎え撃とうとする箒を見て。

 

「読み通り♪」

 

 楯無はいたずらが成功した時の様に笑った。

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