IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第75話 生徒会長、それは学園最強の称号

「生徒会長と妹が行ったか。」

 

 最後方に置いた篠ノ之箒の元に向かった2人を見て、ダリル・ケイシーはフォルテ・サファイアと共に防御結界を構築しながらそう呟いた。

 

「想定通りっスけど……妙っスね。」

 

「ああ。あの生徒会長があんな見え透いた餌に引っ掛かる訳ねえ。」

 

 舞い踊るGNソードビットの攻撃を防ぎ、自分たちに近付こうとする天羽飛鳥に牽制の火球と氷塊を放ちながらイージスの2人はハイパーセンサーの全方位視界を使って様子を(うかが)う。

 

 絢爛舞踏は1分と掛からずに発動できる。その1分にも満たない時間を稼ぐために箒を最後方に置き、敵が全員で当たれないように味方で壁を作り、更には展開装甲を防御に回せと言ってある。

 

 展開装甲の防御はとても通常のISが突破できるものではない。高出力の零落白夜による1撃か、飛鳥のGNソードⅣフルセイバーによる攻撃でも数回クリーンヒットさせなければ無理だ。

 

 その箒を落とさんと向かった更識楯無と更識簪の2人はどちらかと言えば技巧派。技量でもって相手を手玉に取るタイプで、確かに高火力の攻撃もあるがそれは必殺技。連発出来るならともかく、そう何度も気軽に使えない代物であるのは今までの訓練で既に皆が知っている。

 

 打鉄弐式の拡張領域(バススロット)の容量はそう大きくはない。より正確に言えば打鉄などよりはよっぽど多くの物を量子変換(インストール)できるが、その中身はギリギリ2回山嵐の全弾発射が出来る程度――つまり約100発ほどのGNミサイルでいっぱいだ。そのため攻撃の合間合間に6基ある8連装ミサイルポッド【山嵐】のいくつかからミサイルを撃ち追撃することを考えれば、1回しか出来ない48発同時発射という必殺技はそう簡単に使えない。セシリアの偏向射撃(フレキシブル)による迎撃を考慮すれば尚更だ。

 

 そしてミステリアス・レイディの必殺技、ミストルテインの槍は普段防御に使っている分のアクア・ナノマシンさえも一点に集中して攻撃に使うものだ。破壊エネルギーの総量は気化爆弾4個分に相当するが、自分自身さえもダメージを負いかねない諸刃の剣。1回しか使えないという訳ではないが、連発できる代物でもないし、使おうとアクア・ナノマシンの守りを解いた瞬間は絶好のチャンスだ。小突いてやれば装甲の少ないミステリアス・レイディは大ダメージを受けて勝手に自滅する。

 

 このとても箒を落とせるとは思えない姉妹たちが箒を落としに来るだろうと予想していたのは、他に落とせる可能性がある飛鳥と凰鈴音の2人が自分たちイージスとセシリアを抑えなければならなかったからだ。だからこその見え透いた餌だった。

 

 絢爛舞踏が発動した暁には箒は紅椿の高性能を武器に暴れて貰う予定だ。その最初の標的は間違いなく近くに居る相手で、つまり箒を落としに来た楯無と簪になる。それは楯無だって分かっていたはずだ。それを承知で来たとも考えたが、にしては()()()()()()()()

 

「……オイオイ、まさか――!」

 

 最初に切り捨てた考えがふと(よぎ)り、ダリルは目を剥いた。

 

 その時、試合開始からもうすぐ1分が経とうというところで絢爛舞踏が発動し機体を金色に輝かせた箒に、楯無はニヤリと笑った。

 

「――ここからが本番よ!簪ちゃんッ!!!」

 

「うん!受け取って、お姉ちゃん!」

 

 打鉄弐式によって空中に投影されたキーボードを叩き、簪は自身のGNミサイルの数を絞ってでも持って来た『それ』を楯無に渡した。

 

 ――それは、美しくもある赤い翼。ミステリアス・レイディの専用換装装備(オートクチュール)

 

「【麗しきクリースナヤ】!」

 

 楯無がその名を呼ぶと、それはミステリアス・レイディの背中へと接続され、機体が纏っていたアクア・ヴェールを赤色へと変えた。

 

「クソッ!そういうことかよ生徒会長ッ!」

 

「もう遅いわ!見せてあげる、私の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)を!」

 

 気付いた時にはもう遅い。専用換装装備(オートクチュール)を装備したことで高出力モードへと移行したアクア・ナノマシンは、普段なら使えないその能力を解き放った。

 

「――っ、これは……!?」

 

「な、なんだ!?」

 

「チクショウ……!」

 

「くぅっ……!」

 

 瞬間、セシリア、箒、ダリル、フォルテの動きが鈍る。

 

「【沈む床(セックヴァベック)】!」

 

 それは、超広範囲指定型の拘束結界。高出力モードとなったアクア・ナノマシンによって周りの空間すべてに飲み込まれるようにして抑え付けられる、回避不能の拘束領域。時間が経つごとにその拘束は増していき、最終的にはシュヴァルツェア・レーゲンのAICさえも凌駕する拘束力を発揮する【霧纏の淑女】の隠し札。

 

「普段はアクア・ナノマシンの出力が足りなくて使い物にならないけれど、オートクチュールがあれば別。」

 

 不敵な笑みと共に楯無は自身の身を守るアクア・ヴェールを蒼流旋へと集中させ、ミストルテインの槍を発動させた

 

「思い出させてあげる。IS学園の生徒会長は、学園最強の称号だってことを――!」

 

「チィッ、フォルテ!」

 

「遅い!ミストルテインの槍!」

 

 絢爛舞踏で輝く箒に向かって、光の神を貫いた神殺しの矢が放たれた。

 

 

 

 

「被告、更識楯無。何か釈明は?」

 

 アリーナの地面に立って、逆に地面に正座させられた楯無を飛鳥が堅い真面目モードの目で見下ろす。

 

「えーっと……えへっ♪」

 

「判決、被告更識楯無をケーキ1週間没収の刑に処す。」

 

「待って!?」

 

 とてもかわいい笑顔を浮かべた楯無に判決を言い渡してピットに戻ろうとする飛鳥の腰に(すが)りついて楯無が引き留めた。

 

「ちょっと巻き込んじゃっただけでしょ!?」

 

「私と鈴ちゃん以外全員ふっ飛ばしといてよくそんなこと言えますね?」

 

 うっ、と言葉に詰まった楯無を腰に抱き着かせたまま左足のアンクレットからGN粒子を出して重量を軽減した飛鳥は、ふわりと浮かび上がるように跳躍して離陸しカタパルトからピットへと戻った。

 

 そこには全員仲良く補給を受けている専用機持ちたちの姿があった。

 

「会長の罰は生徒会3時のおやつのケーキ1週間没収に決まりました。」

 

「私のショートケーキ……。」

 

 めそめそとすすり泣く楯無。だが妹の簪さえも助けない。だって簪も被害者だから。

 

「ミストルテインの槍をギリギリ耐えられたからって直後に清き激情(クリア・パッション)で自分ごと全部吹き飛ばすとか、何をどうしたらそうなるかなぁ……。」

 

 試合は一応青チームの勝ちということになったが、その原因が酷かった。

 

 単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)沈む床(セックヴァベック)】によってセシリアとイージスコンビ並びに箒を拘束し、楯無は必殺技であるミストルテインの槍を箒に当てることには成功した。

 

 だが寸でのところで耐えられ瞬く間にシールドエネルギーの回復を始めた紅椿に、楯無は事もあろうに至近距離でミストルテインの槍を形作っていたアクア・ナノマシンを箒に纏わり付かせ、清き激情(クリア・パッション)によって水蒸気爆発を起こしたのだ。麗しきクリースナヤによる高出力モードで

 

 カッ! と真っ白な光が辺りを満たしたかと思えば、次の瞬間にはドカーン!と全員がふっ飛ばされた。楯無本人もふっ飛ばされた。無事だったのは咄嗟に白虎による空間の壁で自分を守った鈴と、機体各部の装甲を展開しGN粒子を放出して即席のGNフィールドを展開した飛鳥だけ。他は全員、そう全員ふっ飛ばされた。

 

 敵味方関係ない自爆テロをかました楯無。連携上達のためのチーム戦とは何だったのか。というか沈む床(セックヴァベック)で相手の動きを止められるなら飛鳥に止めをさしてもらえばよかったんじゃないか。

 

 そんな感じの思いが全員の中に渦巻いたが、言わなかった。反省は大事だがタラレバは言っても仕方がないのを代表候補生たちは理解している。だから言わない。決してプライベート・チャンネルでバレない様に飛鳥からケーキで買収された訳ではない。イチゴたっぷりのケーキとかはない。

 

「ケーキ屋さんに行かなきゃ。」

 

 ないったらない。

 

 

 

 

「で、【沈む床(セックヴァベック)】はどうだった?」

 

 午前中にもう1度チーム戦をするのは無理だったため食堂に移動し昼食の日替わり定食を食べる飛鳥に、葉加瀬なのはがタマゴサンドを食べながら聞いた。

 

「捕まったら負けかな。」

 

 サバの味噌煮を解して白米でかき込みながら飛鳥がそう答える。

 

「対処法はいくらかあるけど、正直相手したくない。」

 

「効果範囲に入ったが最後、ソードビットもGNシールドも動かせなくなるからねぇ。下手したらGNソードⅤの変形も押さえられるかもだし。」

 

「無理矢理動けはするみたいだから脱出は出来るけど、いちいち拘束されてたんじゃストレス溜まるよ。」

 

 味噌汁を飲み、具材の豆腐と湯揚げを食べ、白米を噛みしめる。

 

「だからバスターライフルで吹き飛ばすことにした。」

 

「おいたわしや会長……。」




7対7とか書ける訳ないだろいい加減にしろ!

 正直強化週間早く終われって思ってる駄目な竜がいるらしい。時間をふっ飛ばしたい……。
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