『どうも皆さん、おはこんばんちは。いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』
『はいはーい。天っ才博士、葉加瀬なのはだよ。』
『えー、はい。皆様にお知らせがあります。残りの強化訓練は飛ばします。』
『理由ですが、前回の楯無自爆テロを最後に見所さんが居なくなったからです。あと長い。あの後全部で7戦やったんですが、メンバーが変わってもこれといった変化が無かったためただただ
『今回は強化訓練の合間にあった転入生たちの歓迎会の様子を見て、次回からは原作第11巻のストーリーになるよ。』
『という訳で、未来の時間軸の私たちがお知らせしました。』
「それでは!乱ちゃんとヴィシュヌちゃんとファニールちゃんとオニールちゃんの転入を祝って!」
ガチャガチャガチャ! とやかましいぐらい手に持ったジュースの入ったコップを打ち付け合い、一口着けて口の中を潤す。
最初は生徒会室で専用機持ちたちだけで行おうとしていた転入生の歓迎会だが、15人も居る専用機持ちたちが全員生徒会室に入るとぎゅうぎゅう詰めになり歓迎会どころではなくなるため、食堂の一角を借りて行うことになった。そのため周囲には普通に食事をしに来ている生徒たちも居るし、何なら参加している人もいる。
そのお目当てはもちろん新人の4人と仲良くなりたいというのもあるが、1番はテーブルの上に用意された料理だ。
「これ、織斑くんが作ったんだよね!」
「おいしそー!」
生徒会主導で企画された今回の転入生歓迎会は、生徒会長である更識楯無のアイデアとは名ばかりの思い付きで内容の8割が構成されている。その中の1つがこの『料理担当・織斑一夏』である。
テーブルに並ぶのは大人数でも食べやすいように大皿で用意された料理の数々。食堂で働いている人たちにも手伝ってもらいはしたが、ほとんどが一夏の手によって作られた物である。
「ありがとう、遠慮せずに食べてくれ。」
「「「いただきまーす!」」」
瞬く間に無くなっていく料理を我先にと取っていく少女たちから離れ、一夏は専用機持ちたちが固まっている場所に向かった。
「みんな、食べてるか?」
「あ、お兄ちゃん!」
近付いてくる一夏に気付いたオニール・コメットが駆け寄り、その後を追って姉のファニール・コメットも一夏の元にやって来た。
「ちょっとオニール、料理が残ってるのに動いちゃダメじゃない。」
「そうだぞオニール。食堂はきれいに清掃されてるけど、動き回って料理に埃が入りでもしたら嫌だろ?」
「えへへ、ごめんなさい。」
笑いながら一夏の手を引き自分の取った料理を置いたテーブルへと連れて行くオニールに、特に抵抗せず着いていく一夏、更に後を追うファニール。
髪の色も顔立ちも全然違うが、その姿はどこか兄妹のようだった。
「ほんと、オニールは一夏によく懐いてるわねぇ。」
業務用の冷凍品らしきフライドポテトを食べながら、凰鈴音がその様子を見て呟いた。
「ねえ、鈴おねえちゃん。」
「ん、なによ?」
その対面で同じように一夏を見ていた凰乱音が、疑いの眼差しを一夏に向けながら鈴に聞いた。
「一夏ってもしかして、ロリ―― 「違う。」 ――そ、そうよね!」
眼のハイライトどころか感情が抜け落ちた顔でギロリと睨まれながら食い気味に否定された乱は慌てて鈴の言葉に賛同し、動揺を隠すようにフライドポテトを頬張った。
「だいたい、一夏の好みは………………。」
「……ど、どうしたの?鈴おねえちゃん?」
「…………いや、ちょっと自己嫌悪になっただけよ。」
はぁ、と深いため息を吐いて鈴はミートボールをパクリと食べた。
「(一夏って巨乳でスタイル良いのが好みっぽいのよね……。)」
それは一夏のもう1人の幼馴染みである篠ノ之箒も知らない、『そういうこと』を気にし始める中学時代を共に過ごした鈴だけが知っている情報だった。
「(やっぱり胸か、胸なのか。あたしじゃダメだって言うの!?)」
だが好みを知っていようとどうしようもない。鈴の胸部装甲は貧弱で、引き締まった身体は無駄な贅肉こそついていないが身長は低い方であり、一夏の好みから外れている。そこを突いた戦略は使えない。
だから中学時代に日本から中国に帰国する際、羞恥心やら何やらを振り切って精いっぱいの告白──『毎日酢豚を作ってあげる』発言をしたのだが、結果はまさかの『毎日酢豚を奢ってあげる』という最低な覚え間違いをされ御破算──かと思えば、自分で勘違いに気付いて本当のことを聞きに来たもんだから恥ずかしくなって否定してしまったりと、鈴の恋愛事情は兎に角前途多難である。
嫌なことを食べて忘れようと言わんばかりに食事のペースがわずかに上がった鈴を横目に、乱もミートボールを頬張った。
「へー、量産機の試乗がきっかけでISの訓練校に転入したんだ。」
「はい。休日のイベントだったので母が連れて行ってくれて。IS適性もAだったのですんなりと。」
そう話すのはタイ代表候補生のヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー。どこで知ったのか『郷に入っては郷に従え』と言って慣れない箸で苦戦しながら食事をしている彼女を見守りながら、周囲の人が代わる代わる質問していく。
「趣味と特技は?」
「趣味はヨガです。特技は、ムエタイでしょうか。母から指導を受けていたので。」
「お母さんから?」
「はい。母がムエタイチャンプだったので、護身術も兼ねて教わりました。」
「「「へー!」」」
寡黙な方ではあるが受け答えはしっかりしているヴィシュヌは聞けば答えてくれる。性格も悪くないため、すっかり周囲には人が集まっていた。
「あっちは問題なさそうだな。」
その様子をダリル・ケイシーが足を組んで深すぎるスリットの入ったスカートから美しい脚を見せながら見守る。専用機持ちの中で唯一の3年生であるため、生徒会長故に全員を率いる立場に居る楯無とは少し違うが、専用機持ち全員を気にかけていた。
「双子の方も、まあ大丈夫だろ。姉は慣れない環境で警戒しまくってるが、妹が連れ回す内に慣れっだろうし。」
一夏を連れ回すオニールに連れ回されるファニールを見てジュースで口を潤す。
「向こうも鈴が居りゃ問題ないな。」
最後に乱の方を見て、いつの間にか競い合うように鈴と食べ比べしているのを見つけて苦笑いする。
「……にしても、変わったなあ、オレ。」
自嘲するように笑いながら皿に取ったサンドイッチに手を伸ばす。
「
ハムとレタスが挟まれただけの軽食のようなサンドイッチを頬張って、
「ま、悪かねえな。」
「……!」
バッ!とフォルテ・サファイアがダリルの方に振り向いた。
「今のって……。」
僅かだが感じたそれに、フォルテは笑った。
「変われたんっスね、ダリル。」
「タイプレギュラーの粒子を至近距離で受けたにしては遅かったけどね。」
そんなフォルテにたまごサンドを食べながら葉加瀬なのはがそう言った。
「そうなんスか?」
「適性があればタイプレギュラーの粒子放出を1回浴びるだけで変革するからね。タッグトーナメントで浴びてから2ヶ月だと……いや、模擬戦でクアンタが出す分も浴びてるから、標準より適性はかなり低いのか。それを考えれば早い方?どっちでもいいけどね。」
いつもの魔法瓶でポタージュを飲みながら、なのははそう言ってフォルテの元から離れた。
「時間が掛かっても、変われるのが大事なんスよ。」
その背中にそう言って、フォルテもその場を離れた。
「――これで4人目。」
雪の降らない冬の寒空を眺めながら、天羽飛鳥はIS学園の屋上で月を見ていた。
「別に意図的って訳じゃないけど、多いと嬉しいのも事実なんだよなぁ。」
いつも髪を止めているバレッタを外して髪を下ろし、寒風に揺れる黒髪を
「ん、おいし。たまごはやっぱりいいなぁ。」
黄色く分厚いたまごが挟まったサンドイッチ。食べ応えがあるそれは飛鳥にとっても美味しい。
「……これから、どれぐらい増えるかなぁ。」
食べながらたった一人ごちる。
「ねぇ、あなたはどう思う?」
左手で掲げたバレッタは、月の光を受けて鈍く光るだけだった。
「……さむっ。」
パクリと大口でたまごサンドを頬張ってバレッタを付け直した飛鳥は温かい屋内へと戻っていった。