IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第77話 攻撃、それは宇宙(そら)からの呼び声

『どうも皆さん、おはこんばんちは。いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』

 

『はいはーい。天っ才博士、葉加瀬なのはだよ。』

 

『今回から原作11巻のイベントがアーキタイプ・ブレイカーのシナリオと並行して始まります。』

 

『アーキタイプ・ブレイカーと時期が重なった影響でいくつかのイベントは起こらないんだけどね。ロシアの強襲とかドイツの演習とか。』

 

『でもエクスカリバーの暴走は束さん抑えても確定で起こるっていう。オルコット家当主になるのに必要なことだからなの……?』

 

 

 

 

「明日、フランスに帰ろうと思うんだ。」

 

「なっ、いきなりどうしたんだよシャル?!」

 

 1週間に渡る強化訓練を終え、シャワーで汗や土埃などの汚れを洗い流してから3時のおやつ(どき)を僅かに過ぎた学食・カフェテラスエリアにて打ち上げをしている時にシャルロット・デュノアの放ったその言葉に、一緒にスイーツを食べていた織斑一夏が驚きの声を上げた。

 

「あ、ごめん一夏。帰るって言っても最新装備を受領しに行くだけだから、2~3日で戻るよ。」

 

「そうなのか、よかった……。」

 

 明らかに普通じゃない反応をする一夏に、凰乱音たち最近転入してきた組が怪訝そうな顔をする。教師陣を除くIS学園のほとんどの人間がシャルロットの複雑な家庭事情を知らないため、乱たちが知らないのも当然だ。

 

 しかし気になりはしたが質問していい話題なのか分からず、一夏が安堵していることから問題ないだろうと判断して聞くことはしなかった。

 

「って、最新装備?」

 

「うん。詳しいことは分からないけど、対絶対天敵(イマージュ・オリジス)のための装備だって。」

 

「へえ。」

 

 いつもの空気が戻ってきたことに乱たちは僅かに強張っていた身体から力を抜き、スイーツに舌鼓を打った。ショートケーキ、チョコケーキ、チーズケーキ、アップルパイなどなど、乙女の思考を蕩けさせる甘さが訓練で疲れた体に染み渡り、頬が落ちそうになる。

 

 IS学園は世界中から多種多様な人が来るため、食事に関しては世界一気を遣っている。個々人のアレルギーはもちろん、宗教的な理由から特定の食材を口にできない人も来るからだ。そういった問題はメニューの豊富さでカバーしているが、それ以外にも食事に関する問題点がある。味だ。

 

 誰だって美味しい料理が食べたいし、それが全寮制で3年間過ごす学校での食事なら尚更だ。しかもIS学園にやって来る者の中にはセシリア・オルコットやシャルロットのような貴族や社長令嬢も居るため、下手なものを食べさせる訳にはいかない。しかし高級食材をそうポンポン使っていては財政難に陥ってしまうので、一部業務用食品で誤魔化してはいるが基本的には純粋な腕で美味しい料理を作る必要がある。

 

 更に言えばその数も問題だ。生徒と教職員合わせて大体400人分の食事を毎日朝昼晩と作るので、結構どころではないハードワークである。普通ならメニューを絞ったりビュッフェ形式にして効率化するのだが、IS学園の性質上それができないためただただ辛い。ドマイナー料理のオーダーが入った時は静かにブチギレているとは専らの噂である。

 

 これらの問題点を乗り越え提供されるIS学園の食事は美味しい。そして食堂に併設されているカフェテラスエリアで提供されるスイーツ類も美味しい。少女たちの別腹にいくらでも入ってしまいそうなぐらい美味しい。お腹や二の腕のプニプニが気になるからやらないが。

 

 因みにここ最近で一番忙しかったのは秋に生徒会長の提案で突発的に行った1年生対抗一夏争奪代表候補生ヴァーサス・マッチ大運動会当日の晩御飯だったらしい。一体誰の仕業なんだ……!

 

「♪~~♪~♪♪~。」

 

 葉加瀬なのはは周囲の状況を気にせずに鼻歌混じりにデラックスパフェ盛りを食べている。1人では食べ切れないため反対側から天羽飛鳥も食べている。以前は収入がなかったため2000円のこのパフェは手痛い出費だったが、代表候補生となり収入を得た今は2000円程度普通に出せるので、これは飛鳥の奢りだった。

 

 各々がそれぞれのスイーツに舌鼓を打っているその時、

 

「……。」

 

 ピタリ、と飛鳥がパフェに伸ばしていたスプーンを止めた。

 

「飛鳥?」

 

 空中でスプーンを止めた飛鳥になのはが不思議そうな顔をする。しかし飛鳥はなのはの声に応えずに、天井を――否、()()()に視線を向けた。

 

「――っ、なのは!後任せたッ!」

 

 テーブル席の端に座っていた飛鳥はそう言うと瞬時に通路に抜け出し、そのままダブルオークアンタフルセイバーを身に纏ってテーブルを跳び越えてカフェテラスエリアの大きな窓ガラスを蹴破り外に出て行った。

 

「「「きゃあっ!?」」」

 

「飛鳥!?」

 

 窓の割れる音に驚いて周囲で悲鳴が上がり、飛鳥の突然の行動になのはさえ声を上げる。

 

「一体何を――っ!?」

 

 バッ! と弾かれるようになのはも空に目を向けた。

 

()()()()()()()()!!」

 

 瞬間、空から光が降ってきた。

 

「「「きゃああああっ!!!??」」」

 

 飛鳥が窓を蹴破った時とは桁違いの悲鳴が上がる。誰もが身を屈め、身を守っている。

 

「全員、IS展開!」

 

「「「はいッ!!」」」

 

 更識楯無の言葉で代表候補生たちがそれぞれの専用機を纏う。

 

「なのはちゃん!ここは任せたわ!」

 

 そうなのはに言って楯無が先行して飛鳥が割った窓から外に飛び出し、続いて代表候補生たちが飛び出していく。ただ1人残されたなのはは、混乱する周囲の人間をシェルターへと誘導するために声を上げた。

 

 

 

 

『これで怪我人0なの凄いよね。』

 

『混乱で転んだりした人は居たらしいけど、衛星砲で誰も死んでないって普通有り得ないからなぁ。』

 

『コア人格に感謝しよう。』

 

 

 

 

「……。」

 

 IS学園のグラウンドの中心で、飛鳥は空の先を見ていた。

 

 周囲は空から降ってきた極太のレーザー攻撃のせいでところどころにクレーターが出来ており、一部はその熱で発火したのか燃えている。だが、周囲を照らした光の割には、その被害は小さかった。

 

「攻撃を弾くGNフィールドだから仕方ないけど……被害、出ちゃったなぁ……。」

 

 イノベイターの知覚で遥か空の彼方からIS学園に砲門を向けられたのを察知した飛鳥は、それが誰も居ないグラウンドを狙っていることに気付きながらも、被害を抑えようと動いた。

 

 普段掛けているダブルオークアンタの【枷】を全て外し、ゼロシステムで最適な防御方法を割り出し、普段10%に抑えているGN粒子の貯蔵制限を取り払ったことで飛躍的に性能の上がった機体とGNフィールドの出力でもって、通常のISであれば1撃で墜とせるだろう攻撃を防ぎ切った。

 

「飛鳥ちゃん!」

 

 そこにISを纏った楯無が降りてくる。

 

「会長。」

 

「大丈夫!?怪我はない!?」

 

「大丈夫です。」

 

「そう……。」

 

 安心したように一息吐いた楯無に続くように、続々とやって来た代表候補生たちがグラウンドの惨状に息を吞む。

 

「ひでぇ……。」

 

「どうしてこんな……。」

 

 未だに火が消えないグラウンドを見て、慣れ親しんだ場所の変わり果てた姿に心が揺さぶられる。

 

 そんな時、声が聞こえた。

 

「お迎えにあがりました、お嬢様。」

 

 ISのハイパーセンサーに突如として現れた存在。それはISを身に纏い、セシリアに向かて頭を下げた。

 

「え……チェルシー?どうして貴女がここに……いえそれ以前に、どうしてISに……!?」

 

 セシリアにチェルシーと呼ばれたその女性が身に纏う機体の情報をハイパーセンサーが映し出す。

 

 イギリス製第三世代IS【ダイブ・トゥ・ブルー】。セシリアのブルー・ティア―ズの流れを汲むB()T()3()()()

 

「イギリスでお待ちしております。それでは……。」

 

「お、お待ちなさい!」

 

 セシリアの静止を聞かず、チェルシーと呼ばれた女性は空間に沈むように消えた。

 

「チェルシー……どうして……。」

 

 セシリアの呟きに答えられる者は居なかった。

 

 

 

 

 その後、IS学園作戦本部から織斑千冬の指揮の下、第2射の警戒をしながらグラウンドの復旧作業が始まった。日の入りが早い12月。既に辺りが暗くなっている中の作業をISの性能で手早く終え、ついでに飛鳥が蹴破ったカフェテラスエリアの窓もブルーシートで塞がれた。

 

 絶対天敵(イマージュ・オリジス)とは明確に違う脅威に全員が不安を感じる中、セシリアはなのはと飛鳥の部屋を訪ねた。

 

「なのはさん。」

 

「……来ちゃったか。」

 

「ええ、来てしまいましたわ。」

 

 手慣れた様子でいつものポタージュを用意してセシリアに渡した飛鳥を横目に、セシリアはなのはに真剣な眼差しを向けた。

 

「レーザー攻撃の直前、言ってましたわね。『エクスカリバーか』、と。」

 

「言ったね。」

 

「……それは、なんですの?」

 

 真っ直ぐ、目を金色に輝かせて、セシリアが問い詰める。

 

「……エクスカリバーは――。」

 

 

「生体融合型ISだ。」

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