空からのレーザー攻撃を受けた日から一夜明けた翌日。予定通り、シャルロット・デュノアはフランスに一時帰国することとなった。
シャルロット自身はレーザー攻撃があったばかりなのに帰っていられないと予定をキャンセルしようとしたのだが、これからの
しかし事件があったばかりなのも事実。それに
「それじゃ千冬姉、行ってくる。」
「くれぐれも羽目を外し過ぎるなよ。あと目上の人間に食って掛かるんじゃないぞ。」
「分かってるって。」
1人目は織斑一夏。
「教官、行って参ります。」
「織斑先生と呼べ。……もし
「はっ!」
2人目はラウラ・ボーデヴィッヒ。シャルロットの友達として付き添いたいと自ら立候補し、
「更識妹、お前はサポートだ。デュノアは帰国でいっぱいいっぱいだろうからな、お前が他をフォローしてやれ。」
「はい!」
3人目は更識簪。IS学園の専用機持ちの中でも抜きん出て情報戦に強い彼女は、その全距離で攻撃が可能な打鉄弐式の機体性質もあってサポート役として選ばれた。
以上3人の同行が昨日の夜の内に決まり、大慌てで色々と詰め込んだ旅行用の大きなカバンを持って空港にやって来た。
レーザー攻撃があった直後なので他の代表候補生たちは防衛のためIS学園に残され、見送りは千冬1人。最終確認として注意事項を伝え、念のためパスポートは持っているかと再三確認し、搭乗手続きをしにカウンターに向かうシャルロットたち4人を見送り、千冬はIS学園へと戻った。
『はいどうも皆さんおはこんばんちは。いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』
『はいはーい。天っ才博士、葉加瀬なのはだよ。』
『フランス編なんてなかった、イイネ?』
『ボクたちが行かないから勝手にストーリーが進むって言うね。』
『一夏が居れば大体どうにかしてくれるから、私たちって実はそこまで必要じゃないんだよなぁ。まぁそもそも今回、私たちは動けないんだけど。』
『ボクは代表候補生じゃないからそもそも行けないし、飛鳥は
『エクスカリバーみたいなのなら動けるんだけど、フランスは便宜上ただ装備受け取りに行くだけだから行けないんだよなぁ。』
『という訳で、フランス編は全カットです。』
「あーあ、アタシも行きたかったなー、フランス。」
自分の机に腰かけながら、凰乱音がそうぼやいた。
「旅行に行くんじゃないのよ。どこも観光出来ないし、どうせ暇だとか言って
「う、確かにそうかも……。」
近くに居た凰鈴音にそう言われ、乱はぐぬぬと唸る。
「フランスか。確かエッフェル塔と凱旋門が観光名所だったか。」
「あら箒さん、ルーブル美術館もありましてよ?」
乱のぼやきを発端に、クラスはフランスの話で持ち切りになった。
「フランスといえばスイーツだね。クレープもパフェも元はフランス発だ。」
「私は料理の方かなぁ、ポトフとか美味しいし、ガレットとか好きだし。」
わいわいがやがやとうるさくなり始めた頃、教室のドアを開けて山田真耶が入ってきた。
「みなさーん、ホームルームを始めますよー。」
「あ、山田先生。山田先生はフランスって聞いて何を思い浮かべます?」
「え、フランスですか?そうですね、やっぱりラファール・リヴァイヴを生み出したデュノア社ですかね。そうだ!皆さん知ってますか?つい先日、デュノア社が第三世代ISを完成させたんですよ!」
「あ、知ってます!【コスモス】ですよね!」
「はい!実弾武器を弾く第三世代兵器【
そのままホームルームそっちのけでフランス製ISのことについて話し始めた真耶に、話を振った1年1組出席番号1番の相川清香は「あ、話題間違えた」と反省した。
「フランスまでは12時間でしたか。まだ一夏たちは空の上ですね。」
午前中の授業を終え、昼ご飯に学食のメニューで見つけたタイ料理の1つであるグリーンカレーを食べていたヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーがふとそう言った。
「欧州との行き来はまだマシじゃないっスか?ギリシャは15時間以上かかるっスよ。」
「その話し出すとブラジル一強だろ。何せ日本の真裏だからな。」
フォルテ・サファイアとダリル・ケイシーがその話を拾う。
「正確にはウルグアイが1番時間がかかるね。約30時間の空の旅だ。」
「量子ジャンプならどこだろうと一瞬で行き来できるけど、飛行機だと時間かかるからなぁ。海外旅行ってあんまり好きじゃないんだよね。」
葉加瀬なのはと天羽飛鳥も昼食を食べながらそう言った。
「ま、みんな故郷が1番っスからね。」
「違いねぇ。ま、オレに愛国心は無えけどな。」
「自分は逆に愛国心バリバリっスねー。」
元テロリストのダリルは笑う。アメリカ人ではあるが、アメリカは数あるホームの1つという認識しかない。愛着があるかないかでいえばあるが、何に変えても守りたいと言うほどではない。
逆にフォルテの愛国心は強い。神話ぐらいしか誇れるものはないと言うが、それでも守りたいと思っている。コールド・ブラッドのパイロットを決める選抜試験でしのぎを削った親友とも、一緒に祖国を守ろうと誓ったほどだ。
「愛国心ねぇ。あたしそこまで無いのよね。日本と中国のどっちが好きかで言えば日本の方が好きだし。」
「その発言は大丈夫ですの……?」
鈴がラーメンをすすりながらちょっと危ない発言をする。中国でそれは不味いのではないか?とセシリア・オルコットが疑問に思ったが、流すことにした。
「わたくしは―― 「あ、セシリアは分かり切ってるからなしで。」 ――ちょっと!?」
「イギリス貴族なんだから愛国心あるに決まってるんだよなぁ。」
「無かったら逆にびっくりするよ。」
イギリス貴族が愛国心ないのはちょっとどころではなく不味いので、セシリアの答えは分かり切っている。セシリアはイギリスの事を話し始めると長いので話し出す前に止めるのが吉だと鈴はそこそこの期間を過ごして知っているためぶった切った。
「祖国と言えば、実は祖国に置いて来た親友が専用機を手に入れたらしいっス。」
「へぇ、凄いじゃねえか。そいつは
「どうっスかね。ギリシャ大好きっスから自分から来る気はないと思うっスけど、機体の運用テストのために国の頼みで転入してくる可能性はあるっス。」
赤い髪の親友を思い出しながらフォルテが唸る。
「来てくれたら嬉しいっスけど、こっち来て馴染めるか不安っス。」
「そういえばダリル、結局するんスか?」
食事を進めそろそろ食べ終わると言う頃、フォルテがダリルに思い出したように急にそう聞いた
「するにはするらしいぞ。」
それにダリルがコーラを飲みながら答える。
「何の話よ?」
「オレは3年生だからな。普通今年度で卒業するんだよ。」
「そういえばそうね。」
進級。ダリルにとっては卒業だが、あと3ヶ月ほどでそんな時期だ。
「寂しくなるわね。」
「いや居なくならねえから。卒業とはいえ貴重な戦力を手放す訳ないだろ。留年って訳じゃねぇが、あと1年は残ることになった。」
結構もめたそうだが、もし今年度中に
「それ就職大丈夫?」
「オレの永久就職先はフォルテだからな。」
隣のフォルテの肩を抱き寄せてダリルがニヤリと笑う。
「お熱いことで。」
魔法瓶からポタージュを飲んで、なのはは一息ついた。