IS学園のカリキュラムは基本的にIS関連のものばかりだが、一般的な高校で受けるような授業ももちろんある。しかしその種類は普通の高校よりも少ない。
数学、理科、英語、世界史、地理、保健体育、情報処理。以上である。
IS学園では国語も美術も教えない。正確には2年生から選択できる整備科で美術の授業を受けることになるが、それも機体デザインに関するものであるため、言っては何だが美術ではない。
国語は外国人も多く入学する関係でやっていない。ISが日本発祥であるためIS関係者は基本的に日本語の勉強もするのが習わしになっているが、日本語
古文?奴は死んだ、もういない。日本史?外国人を殺す気か、日本でさえ何の役にも立たないぞ。そうやってIS学園を設立するに当たって関係各所が話し合って残ったのが、今IS学園で教えている一般科目たちである。
そんなIS学園の期末テストだが、そこまで難しいものでもない。赤点は40点以下と良心的な範囲だし、出題される問題も授業を真面目に受けていれば解けるものばかりだ。ノートを取っていればより確実だろう。書くことによる学習は論文もあるぐらい有効だ。
しかし復習は必須である。何故って、期末テストが5日後だからだ。
「という訳で!」
パン! と手を叩いて、更識楯無はにこやかな笑顔で集まった面々を見渡した。
「期末テスト対策勉強会~♪」
「わー!」
「(また楯無さんか。)」
オニール・コメットがパチパチパチと拍手する中、織斑一夏は頭を抱えた。
食堂の一角に集まった専用機持ちたち。それぞれがテキストとノートを持ち寄り、5日後に急遽決まった期末テストに向けての勉強会をしようとしていた。
「しっかしロラン、あんた嫌な時期に転入したわね。テスト目前だなんて。」
「ふふ、箒に1秒でも早く出会うためなら安いものさ。」
「ならロランの手助けは要らないな。」
「待ってくれ箒、それとこれとは話が別だよ。」
凰鈴音の言葉に笑ってそんな歯の浮くようなセリフで答えたロランことロランツィーネ・ローランディフィルネィに、篠ノ之箒がムッとした顔で隣を離れようとするのを必死にロランが引き留める。
「フフン、高校レベルって言っても大したことないわね!」
「乱、ここのマイナスを書き忘れてますよ。」
「えっうそ!?」
「ほらここ。コサインが120度の時は-√1/2です。」
「あ、ホントだ。ありがとヴィシュヌ。」
早速数学のテキストを1ページ分解いた凰乱音のノートを正面に座っていたヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーが覗き込み、その三角比の計算式のミスを指摘する。
「前々から思っていたのだが、世界史で日本の名前があまり出てこないのはなぜだ?結構な歴史のある国だろう。もっと名前が上がるのが普通じゃないか?」
「昔はほとんど空気なのよねー、日本。現代に近付くにつれて存在感が増していくんだけど。」
「日本はヨーロッパから東に遠く離れた島国で、自国内で自己完結してたのが大きな理由……。」
「ふむ……。」
ラウラ・ボーデヴィッヒの疑問に楯無と更識簪が答え、世界史の年表を眺めながら合間合間にラウラは2人に質問していった。
「(あれ……?)」
普段は率先して場をかき乱しにかかる楯無が、率先して教えている状況に一夏の脳がバグる。それに気付いた楯無がムスッとした顔になった。
「い~ち~か~く~ん?おねえさんだって、流石に通知表に影響が出るようなおふざけはしないわよ。生徒会長よ、私。」
「すみません!」
生徒会長として、生徒の成績が悪くなるようなことはしないのが楯無である。ちょっと遅刻させたり騒ぎすぎて怒られたりはするが、成績に影響がない範囲でみんなを楽しませるのが楯無である。面倒見が良いのも楯無が人たらしと言われる所為であった。
「さっ!どんどん解いていきましょ!」
こうして勉強会は順調に始まった。
『まぁボクたちは思考読めば正解分かるんだけどね。』
『
『普通に授業受けてれば分かるし、やるだけ無駄だよね。』
『リスニングは無理だよ?』
『聞けば分かるじゃん。』
『無理だよ?』
「「「終わったあああああ!!!」」」
イヤッフー! と湧き上がる教室。期末テスト最後の科目であった数学が終わった途端に普段の2割増で騒がしくなった。
「どう一夏、手応えはあった?」
「おう鈴。なぁ、最終問題難しくなかったか?」
「立方体の中の領域の奴?あれ余計な計算要らないわよ。というか書いてたら終わらないし。」
「……マジ?」
「長文に引っ掛かったわね。」
早速自己採点を始めている人も居れば、問題の難易度をネタにお喋りする人も居る。
「一番難しかった科目どれよ。」
「地理。」
「あんた、外国に興味持たないもんねぇ。」
「鈴だって興味ないだろ、地理。」
「そりゃね。でも代表候補生には必要だから覚えたわ。」
そんな話をしながら、『打ち上げするぞー!』と盛り上がるクラスメイトたちに混じって一夏たちもカフェテラスエリアへと消費した糖分を確保しに向かった。
『まぁカットするよね。』
『誰が好き好んでテスト風景を映すのか。』
『やるならバカ決定戦だよね。』
『IS学園に居るのって大体頭良いんだよなぁ。』
「わたくし、明日イギリスに戻りますわ。」
「どうした急に。」
カフェテラスエリアでケーキと紅茶を嗜んでいたセシリア・オルコットの突然の言葉にダリル・ケイシーが思わず突っ込んだ。
「実はわたくし、明日16歳の誕生日でして。」
「そりゃめでたいっスね。」
「明日はわたくしがオルコット家当主へと正式に就任する日でもありますわ。ですので、他の貴族の方々への挨拶も合わせて城でパーティーをすることになっていますの。」
「城か。」
「城っスか。」
「城ですわ。」
『屋敷とかホテルとかじゃなくて城か』と平民たちが慄いていると、セシリアは紅茶を美しい所作で1口飲んでから言った。
「皆さんもご招待しますわ!」
「「「(このご時世に俺/私たち動けなくない?)」」」
セシリア以外の全員の心が重なった。
「
「「「(あなたもパーティーに行きたいだけですよね?)」」」
職員室で採点作業をしていた織斑千冬は、晴れやかな笑顔で仕事を副担任に押し付けた。