『はい皆さんおはこんばんちは、いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』
『はいはーい、天っ才博士、葉加瀬なのはだよ。』
『クリスマスパーティー長くない?』
『いつもはこの時期イギリスで戦ってるから知らなかったよねぇ。』
『楯無が居るのも長引いてる原因だよなぁ……。』
『今ので何曲目?』
『13曲目。このカラオケ大会何人参加してるんだろ。』
『12時には終わるだろうし、それまで待とう。』
『あと40分もあるんですがそれは……。』
「ぐぬぬぬぬ……!」
オルコット家の所有する城の中庭で、セシリア・オルコットは葉加瀬なのはが作った
今、セシリアの周囲には肩部大型ビットターミナルに組み込まれた展開装甲から発生したエネルギーシールドによって消費されたBTエネルギーが漂っている。ISのハイパーセンサーにさえも表示されないような状態のそれに意識を集中するセシリア。
「戻りなさい!」
「むむむ……。」
さっきから何度も試しては失敗することに唸るセシリアに、
「もっとBTエネルギーを意識して。脳量子波を乗せたイメージ・インターフェースで指令を出すだけじゃダメだよ。」
「ですがなのはさん。意識しようにもハイパーセンサーにさえ映らないものをどう意識すれば……。」
しかし【
イノベイターに変革してからセシリアの操縦には感覚や勘に頼る部分も多くなったが、動きの基部はやはり理論派だった頃からの延長線上にある。そのため前例がないことにはとにかく弱いし、数字も色もなく目に見えないものを意識するのは難しいのだ。
セシリアにどうすれば良いのかを聞かれたなのはは稼働データを取る手を止めないまま答えた。
「【
事実上、【
今セシリアが使えないのはイノベイターの感覚がまだ定着しきれていないことによる知覚不全が原因だ。脳量子波はビットと共に今まで何度も使ってきたため問題ないが、知覚能力はどうしても時間が必要だったためアドバイスも出来なかった。
そこそこ前から既に形になっていたオーバーライトの受け渡しがこの時期まで遅れたのも、セシリアの誕生日に合わせようというのもあったが、早く渡したところで逆に枷になりそうだったからというのが主な理由だ。
「イノベイターになって2ヶ月。そろそろ感覚が定着してくる頃の筈だ。普通じゃ出来ないことも出来るようになってきたでしょ?」
「それは……そう、ですわね。」
なのはの質問をセシリアは肯定した。
思い出すのは今日の決闘の様子。チェルシー・ブランケットが幼少期から剣を嗜むことを知っていたセシリアは最初から全力で戦ったが、あの時は自分でも内心引くぐらい圧倒していた。脳量子波を使った読心や驚異的な反射神経でことごとくチェルシーの攻めを潰し、いつも以上に間合いが分かったが故にカフスのみを切り飛ばすなんて芸当もやった。
あの時は何とも思わなかったが、本来セシリアにカフスのみを切り飛ばすなんて芸当は出来ない。そもそもの剣の技量が足りず、どうしたって肌に傷を作ってしまう。しかしあの時、セシリアは微塵もそうはならないと確信しながら剣を振るい、事実カフスのみを切り飛ばした。
「あれがイノベイターの感覚ですの?」
「ボクも飛鳥も、イノベイターの知覚能力とか感覚が具体的にどういうものなのかは分かってない。計器を繋ぎ続けてたなら別だけど、学校とかあってやれなかったからね。だけどセシリアのそれは十中八九イノベイターの感覚だと思うよ。」
「それが自然と感じられるなら、もう【
それを聞いたセシリアは、今一度周囲のBTエネルギーに意識を向けた。
「(集中しなさい、セシリア・オルコット。)」
目を瞑り、イノベイターの感覚を呼び覚ます。再び開いた時には目を金色に輝かせ――セシリアは周囲のBTエネルギーを幻視した。
「戻りなさい!」
そのBTエネルギーに向かって脳量子波を乗せたイメージ・インターフェースで呼びかける。
――視界の端で、ハイパーセンサーの映すエネルギー残量のグラフの1つが、肩部大型ビットターミナルからのエネルギーシールドの展開と共に減り続けていたそれが
「――――!なのはさん!!!」
「おめでとうセシリア。それが出来ればとりあえず動いても大丈夫だよ。」
「分かりましたわ!」
なのはから許しを貰ったセシリアは肩部大型ビットターミナルから展開していたエネルギーシールドを閉じ、背部ウイングスラスターユニット【ミルキーウェイ】を点火して、BTエネルギーを注ぎ込んで急加速しながら空に飛び立った。
飛翔と共に巻き起こった風が城の窓ガラスを揺らし、ミルキーウェイから溢れる過剰エネルギーの輝きが翼のような形となって羽ばたく。溢れた分のBTエネルギーが即座に【
「(セシリア。今はまだ火器を使ってないから釣り合いが取れてるけど、攻撃も交えると最適解の行動を続けないと【
「一夏さんよりマシなら十分ですわ!」
とても失礼なことを言いながらセシリアは空を飛び、ミルキーウェイの速度に順応していく。
それを見上げながら、なのはは右手に嵌めたマスターハンドからプライベート・チャンネルで通話をかけた。
「もしもし飛鳥?今どんな感じ?」
『もうそろそろ終わりかな。終わったら量子ジャンプで宇宙に上がるから、そっちも準備お願い。』
「オッケー、こっちもセシリアが【
『了解。』
手短に終わった通信を閉じて、なのはは
「エクシア、ね。飛鳥の入れ込みようも凄いけど、ボクも気になってるのは愛着あるからかな。」