ダブルオークアンタの機体各部の装甲を展開し、機体を覆うように球状のGNフィールドを展開しながら地球へと降りていく*1。ゼロシステムも併用したアプローチを行い、天羽飛鳥はイギリスにいるセシリア・オルコットの元へと向かった。
普段なら量子ジャンプで1秒とかけずに地上と宇宙を行き来するが、今は衛星兵器型IS【エクスカリバー】から助け出したエクシア・カリバーンを抱えている。ダブルオークアンタの量子ジャンプは他者と共にはワープ出来ないため、こうして人目に付きかねない行動をしていた。
もっとも、ダブルオークアンタは通常のレーダーやセンサーにはGN粒子の影響で映らないので、本当に怖いのは比喩なく人目ぐらいだ。イギリスの領空を飛んでいる自国のものではないISがあると知られれば普通に国際問題なので、飛鳥も球状GNフィールドによる防御が必要なくなったところでそれを解除し、代わりに見られないように別の物を展開した。
「外壁部迷彩皮膜展開。」
音声入力と同時に、抱えられたエクシアを残して飛鳥の姿が消えた。
「え、えぇっ!?」
「あ、ごめん。光学迷彩しないとISが飛んでるところが見えちゃうからさ。」
大気圏突入からPICもGN粒子も使わずにほぼそのままの速度で落ちながら、飛鳥は顔の部分の光学迷彩を解いて苦笑いをエクシアに向けた。
通常の大気圏突入ならどこかしらで速度を落とすが、ISのシールドバリアーに守られているため多少の無茶は出来ると飛鳥は速度を落とさない。速度を落とせばそれだけ長い時間を空で過ごすことになり、それは発見のリスクを上昇させるからだ。光学迷彩を使ってもバレる時はバレるので、飛鳥としてはさっさとセシリアの所にエクシアを送り届けたいのである。
「そういえば、エクスカリバーってどれぐらいで直るの?」
「あ、えっと、大体2ヶ月程でまたレーザー攻撃が出来るようになります。」
「2ヶ月か、大きいだけはあるなぁ。」
セシリアによってレーザー照射部分を破壊されたエクスカリバーだが、見た目も機能も衛星兵器でも分類上ISであるため、時間が経てばISの自己修復機能で直る。大きさも相まって2ヶ月という長時間を要するが、逆に言えば2ヶ月経てばまた宇宙からの地上への砲撃が可能だ。
まぁ、直ったところで使い道はないのだが。というかあったら困る。
「あの、飛鳥様。」
「ん、なに?」
どうして国がエクスカリバーを作ったなど考えても仕方のないことだ。企画者であろうオルコット前当主たちがどう焚き付けたにせよ、エクスカリバーはもうセシリアの手を離れない。それでいいのだ。
思考を打ち切った飛鳥はエクシアの呼び掛けに答えた。
「どうして飛鳥様は、私を助けてくれたんですか?」
「どうしてって。」
「飛鳥様がセシリア様とご友人だということは分かっています。それだけで十分私を助けるためにセシリア様にご協力する理由にはなるんでしょうけど……他にも理由、ありますよね?」
「…………。」
それが勘にしろ推理にしろ、鋭いなと飛鳥は思った。
確かに、飛鳥がセシリアと協力してエクシアを助けたのは友達を手伝うという理由もあるが、それは4割程度。残りの6割は別の理由がある。
エクシアはそれを聞きたいのだろうが、飛鳥としてはちょっと恥ずかしい。
「だめ、ですか……?」
「あー……んー……。」
何か不都合がある訳ではないので、話すこと事態は構わない。飛鳥がちょっと恥ずかしいだけだ。いや
唸る飛鳥をエクシアは子犬のような目で見つめる。その目に耐えられなくなった飛鳥は地上に降りるまでの間、昔話をすることにした。
「私が貴女を助けたのは、貴女の名前がエクシアだったから。」
「名前?」
「ガンダムエクシア――私の最初の専用機と同じ名前なんだよ、貴女は。」
自身の髪を纏めるバレッタに触れながら、飛鳥は懐かしそうにはにかんだような笑顔を浮かべた。
30分ほどかけてゼロシステムのアプローチ通りセシリアの居る城を目視した飛鳥は途中で光学迷彩を解除し、PICとGN粒子の慣性制御を最大にして抱えているエクシアに負担が行かないように減速しながら城の中庭にゆっくりと降り立った。
「はい到着。」
「ありがとうございます、飛鳥様。」
左手に抱えていたエクシアを地面に立たせ、飛鳥は紅茶を飲んで待っていたセシリアの方に向かった。
「誕生日おめでとう、セシリア。」
「ありがとうございますわ、飛鳥さん。」
既にISスーツから着替えているセシリアの対面のイスにISを解除して座る。すかさず側に控えたチェルシー・ブランケットが淹れた紅茶を受け取り、「おいしい」と言って用意されたスイーツに手を伸ばした。
「チェルシー、ここはいいから妹の所にお行きなさい。」
「私はお嬢様のメイドです。お世話を投げ出すことは出来ません。」
「ならメイド長として、メイド見習いの教育にお行きなさい。
「!……承りました。」
そこまで言われてチェルシーはずっと視線を向けて来ていた妹の元に駆け出した。
「私からの誕生日プレゼントは新しいメイドってことでいい?」
「それはとても素敵ですわね。」
12月の寒空の元で行われるお茶会を気合と温かい紅茶で耐えながら、マカロンを1つ頬張る。
「なのはは中?」
「えぇ。この気温で客人を外で待たせるなど、友人としても貴族としても出来ませんわ。」
因みに他の皆は時差ボケで今とても眠たくなっていた。イギリス行きの飛行機の中では全員で遊んでいたので、時差ボケ対策を怠った結果である。セシリアは気合で耐えている。誕生日パーティーの最終打ち合わせがあるから眠る訳にはいかないのだ。
「どう?オーバーライトの使い心地は。」
「【
興奮気味に語るセシリアを飛鳥は微笑ましそうに見つめる。出来なかったことが出来るようになる楽しさは飛鳥も覚えがある。篠ノ之束に剣の手ほどきを受けていた時は毎日がそうだった。
「この新生したブルー・ティアーズ・オーバーライトで、必ず飛鳥さんのフルセイバーを倒して見せますわ!」
そう意気込むセシリアは闘志に燃えていた。
「そう簡単に負ける気はないかなぁ。」
飛鳥もそれに応えるように笑った。
「それじゃ、私は戻るから。」
「あら、パーティーには参加していただけませんの?」
「私、入国審査とかしてない密入国状態だから……。」
なお、飛鳥の公的でない犯罪歴は結構凄いことになっている。大体
「改めて、16歳おめでとう。」
「ありがとうございますわ。」