『はい皆さんおはこんばんちは、いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』
『はいはーい、天っ才博士、葉加瀬なのはだよ。』
『無事にエクスカリバーの制御権をセシリアが手に入れ、11巻は終わりました。』
『次は12巻、ではなくずっとアーキタイプ・ブレイカーだよ。』
『12巻のフラグは大体折ったからなぁ。日常パートはともかく事件はほぼ起こらないし、何より第七王女の来日がないし。』
『
織斑一夏らがイギリスから帰国して数日。クリスマス色に染まっていたIS学園は正月へと衣替えし、冬休みに突入したのもあって帰郷している生徒も大勢いるため寮は普段の姦しさが鳴りを潜め、すっかり様変わりしていた。
そんな中、時差ボケも抜けて『大晦日だし明日あたり家に帰って大掃除するかー』と考えながら、食堂で昼食を食べていた一夏の対面の席に凰鈴音が座った。
「ここ座るわよー。」
「おー。」
ラーメンを置いてから一夏の返事も待たずに座った鈴に短く答えながら、一夏はサラダをむしゃむしゃと頬張った。
「そうだ一夏。あんた、明日暇?」
「明日?大掃除しに家に帰るつもりだけど、どうかしたのか?」
麺を啜り、チロリと唇を舐める鈴からの突然の質問に、一夏は今さっき立てたばかりの予定を口にしながら用件を聞いた。
「乱が欲しい物あるらしいんだけど、どこに何の店があるか知らないって言うのよ。それで思い出したのよ、街の案内したことないなーって。」
「そう言えばそうだな。」
「それで明日、ヴィシュヌたちも一緒に街を案内することにしたのよ。」
「もしかして、俺を誘ったのって荷物持ちのためか?」
「そうよ?」
当たり前でしょ、と言った風に答える鈴に一夏は水を飲んでふぅと息を吐く。
「まあ、ヴィシュヌたちの案内ってことなら俺も別にいいけど……奢らないからな?」
「えー。」
専用機持ちの代表候補生として毎月給料を貰っており、しかも今や
それはケチ臭いとか金に汚いとかではなく、鈴の財布を持ち歩かない主義故にそうなっている。中学時代からそれは変わらず、よく遊びに出た先で鈴の分も色々と奢ったのを一夏は覚えている。
「何でよ、良いでしょ別に。あんたお金いっぱい持ってるんだし。」
「金があるからって浪費していい訳じゃないだろ?節約するに越したことはないんだしさ。」
「あんたのその主夫力、ホントにどこから湧いてるんだか……。」
「ほっとけ。」
ぶっきらぼうにそう言って一夏は白米をかき込み、続くように鈴はチャーシューに齧りついた。
翌日。
「一夏、これは一体どういうこと?」
人工島であるIS学園と本島を繋ぐ唯一のモノレールの駅で、鈴は頭を押さえながら一夏を問い質した。
「いや、女子のことなら女子に任せるのが一番だろ?だからみんなも呼んだんだよ。」
そう答えた一夏の後ろには、見慣れたというかいつものというか、専用機持ちたちがほとんど揃っていた。
「抜け駆けは許さんぞ。」
「大勢でゾロゾロ動く訳にも行かないでしょうが。何人居ると思ってるのよ。」
ラウラ・ボーデヴィッヒの言葉に即座にそう返した鈴はため息を吐いた。
現在この場にいるのは13人。本格的に量子型演算処理システムの製作に取りかかった葉加瀬なのはのお世話のために残った天羽飛鳥、そして『寝正月する』とパスしたイージスコンビの2人を除いた専用機持ちが揃っている。
戦力的には国の1つや2つ落とせるこの人数で動くとなると、どうしても移動がもたつく。小学生であるコメット姉妹のことも考慮してあまり広範囲を案内するつもりはなかった鈴ではあるが、この人数での移動に漠然とだが立てていた予定は早速修正となった。
「とりあえずショッピングモールに行くわよ。最悪そこだけ覚えればどうにかなるし。ほら、モノレールに乗った乗った。」
「お、おい、押すなって。」
鈴は一夏を背中から押してモノレールに押し込み、それに続くように他の専用機持ちたちもモノレールに乗り込む。やがてドアが閉じ動き出したモノレールの中で駄弁り始めた。
「そういえば乱。欲しいものがあるらしいけど、何が欲しいんだ?」
そんな中で、一夏が凰乱音にそんな話題を振った。
「ボディークリームが切れかけてるから、新しいのが欲しかったのよ。」
香港で使っていた物をそのまま持って来たのだが、残量が心もとないらしい。
「ヴィシュヌたちも、何か欲しいものとかあるか?案内するぞ。」
「私はヨガのグッズを少し。」
「ヨガのグッズ?ヨガって道具使うのか?」
ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーの言ったヨガのグッズについて、知らない分野にはとことん無知な一夏が疑問符を浮かべる。一夏は脳内でヨガをするヴィシュヌを思い浮かべたが、何か道具が必要なのかと首を傾げた。
「そう多くはありませんが、マットやウェアがやはり必要なので。今日は、ウェアを買い換えたいのです。」
ヴィシュヌの住んでいたタイは平均気温が約29度で高温多湿。つまり日本の夏のような蒸し暑い気候なので、日本の冬のような肌寒い季節というのがない。日本にも愛用のヨガウェアを持って来たヴィシュヌだが、日本の寒さに対応するためのウェアが欲しいのだという。
「うーん、ヨガ用のウェアか。どういう店に行けばいいんだ?」
服屋か、それとも専門店があるのか。見当もつかない一夏にヴィシュヌは僅かに頬を赤らめながらクイッ、と袖を引っ張った。
「……あの、2人で探しませんか?」
「ああ、そうするか。ヴィシュヌもどこにどんな店があるのか知っておきたいだろ?」
「ええ!」
鮮やかに2人で回る約束を取り付けたヴィシュヌの機嫌が目に見えて良くなるのを横目に、ロランツィーネ・ローランディフィルネィが声を上げた。
「私は何かと入り用でね。色々と見て回るつもりなんだ。」
「色々って、どんなのが欲しいんだよ。」
「それは乙女の秘密というものだよ、織斑一夏。というわけで荷物持ち、よろしく頼むよ。」
「(それだと俺に何買ったかバレるんじゃないか?)」
多分気付いてないだろうロランに気を使って何も言わない一夏。思ったことがすぐ口に出る方である一夏にしては珍しいことだが、そういう気遣いは他の所で活かしてほしいとこの場に唯一いるイノベイターのセシリア・オルコットは心の中で思った。
「ファニールとオニールはどうだ?」
「服!日本の服が見てみたい!」
「そうね。カナダとは流行が違うみたいだし、見ておきたいかも。」
他と比べてとても分かりやすい要望にほっと胸を撫でおろす一夏。そんな話をしている内に本島に到着したモノレールから降り、そこから出ている公共のバスに乗り込んで街の中心部へと向かった。
そうしてやって来たのが、IS学園の生徒と職員のほとんどが利用している大型ショッピングモール。近くにIS学園があるためか年々品揃えが多岐に渡っている、世界各国の代表候補生たちも一押しの買い物スポットである。
「ここは……とても大きなショッピングモールですね。」
圧倒されたようにヴィシュヌがキョロキョロとショッピングモールの中を見渡す。
「ここなら欲しい物は大体揃えられると思うぜ。」
「へー、いいじゃない!アタシ好みのお店もあるみたいだし。」
乱も辺りを見渡しながら、探索するだけでも楽しそうだと笑う。
「それじゃあ、予定通り行こうぜ。」
流石に13人で動くのは邪魔になるので、何人かに別れてショッピングモールを案内することがモノレールの中での話し合いで決まっている。
個人的に買い物をしたい人も合わせて、転入して来たばかりの少女たちはショッピングモールのあちこちに散らばっていった。
女子の買い物分からぬ……ということで次回に引き延ばす。