「私と戦え、ダイル・ケイシー……!」
溢れる闘志に赤い長髪が揺れ、翠眼が真っ直ぐと相手を射抜く。傍目からは炎のような、はたまた氷のような印象を受けるその少女は、友人のために剣を取った。
そんな少女を前にして、ダリル・ケイシーはニヤリと笑って答えた。
「いいぜ。本家本元のイージスの力、見せてやるよ。」
冬休みが明けた、3学期初日の朝の出来事だった。
「みんな、おはよう。さて、こうして朝から集まってもらった理由はもう察してるんじゃないかしら?」
ホームルーム前の空き時間にそれぞれのISへと送られたメッセージによって集められた専用機持ちたち。それを見渡して更識楯無は上機嫌に笑った。
「まあ、大体は。また新たな代表候補生が来たんですか?」
「正解!よくできました、箒ちゃん。」
「あれだけの敵が現れたんだし、戦力の増強は歓迎よね。」
年末に市街地に現れた20mもの大きさを誇る植物型と、それに率いられた大型小型問わない
幸い現場に居合わせた楯無たちによる迅速な対応で、道路や建造物に多少の破損こそあったが負傷者は0に終わったが、お偉い人間たちはこれを重く受け止めた。
ただ大量の
しかし今回現れた植物型は訳が違う。強力なエネルギーバリアーがある植物型は1体だけでも倒すのに時間が掛かり過ぎる。エネルギー無効化能力【零落白夜】を有する織斑一夏なら早期撃破ができるが、それ以外では戦う内に被害が必ず出てしまう。
今まで
そのため家庭の事情で遅れている予定通りの増援とは別に、新たな増援が行われることとなったのである。
――と、ここまでが表向きの理由。
実際は今年度の夏頃から開発が始まり、12月に完成したギリシャ製のとある新機体の運用試験が目的だ。
早い段階から公的にではないものの専属パイロットが決まっていたその機体は、完成時期が12月であることやそのパイロットが今年度で高校を卒業することも重なって、IS学園での運用試験はしない予定だった。
しかし
とはいえIS学園には既にギリシャ代表候補生にして専用機【コールド・ブラッド】を持つフォルテ・サファイアが居たため、対外的にどう説明してIS学園に転入させようかという悩みがあった。そこに来ての今回の植物型襲来である。
『乗るしかない、このビッグウェーブに』。ギリシャはIS学園への増援を真っ先に提案し、他の国もギリシャの目的が自国の最新鋭機の運用試験だと見抜きながらも、それを受け入れた。それだけ植物型を重く見たのである。
そのことに気付いている者と気付いていない者に分かれる中、楯無は扉の方に向かって声を掛けた。
「それじゃ、ベルベットちゃん。入ってくれる?」
――シーン……
「……あら?」
「廊下に誰も居ませんよ、会長。」
誰も入ってこないことの首を傾げる楯無に天羽飛鳥が誰も居ないことを教える。
「おかしいわね。この時間に廊下に待機してもらうように言っておいたんだけど。」
「迷ってるんじゃない?ここって広いし。」
「それはないわ。ダリルちゃんに案内を頼んだもの。」
「そのダリルも居ないっスよ?」
フォルテに言われて改めて集まった面々を見渡した楯無は、その中に特徴的な金髪巨乳長身の姉御が居ないのを確認して再び首を傾げた。
「……なんでー?」
「いや知らないっス。私だって四六時中一緒に居る訳じゃないっスから。」
「学年違うし、友達付き合いとかあるし」と言いながらフォルテはISのコア・ネットワークでダリルの専用機【ヘル・ハウンド】の位置を探す。イノベイターになった今人1人探す程度造作もないが、手癖のようなものだ。
「第3アリーナに居るみたいっスね。あと何かIS展開してるみたいっス。」
「え、まさか戦ってるの?」
「じゃないっスか?」
改めて言うが、現在はホームルーム前の空き時間である。
「決着つかなくないかしら?」
「IS学園で勉強してた分ダリルの方が有利っスけど、火力はそこまでっスから時間は掛かるっスね。」
アップグレードはしているが、数年前の機体であるヘル・ハウンドでは最新鋭の機体を操る転入生、それも同じ3年生が相手では倒すのに時間が掛かる。
ホームルームまでに決着がつかないと考えた楯無は、フォルテに2人を呼び戻すように伝えてから改めて放課後に集まるように全員に言って解散した。
3学期最初の授業が終わった放課後。改めて集まった専用機持ちたちの前で赤い長髪の少女が顔を強張らせながら現れた。
「という訳で、ベルベットちゃんよ。さあ、挨拶をどうぞ。」
「……朝はごめんなさい。ベルベット・ヘル、ギリシャ代表候補生。18歳、3年生。」
言葉少ないながらも自己紹介した少女はペコリと頭を下げた。
「ギリシャ代表候補生ってことは、フォルテが前に言ってた人?」
「そうっスよ。表情がちょっと硬いのと口下手なせいでボッチ気質っスけど、みんなも仲良くしてあげて欲しいっス。」
「フォルテ……。」
フォルテの言い草に何か言いたげなベルベット・ヘルだったが、「私が
「あと見た目に反して子どもとかかわいい動物が好きっス。」
「フォ、フォルテ……!」
「私仲良くなれそう。」
「飛鳥、自重。」
その後も親友のかわいいポイントを次から次へと語るフォルテにベルベットが赤面しながら止めにかかり、その様子を見た専用機持ちたちに外見からの第一印象を完全に忘れさせた。
「他にもコーヒーはミルクと砂糖を入れないと飲めなかったり、私が誕生日にプレゼントしたぬいぐるみを抱き枕にしてたり――。」
「フォルテ……!」
「(可愛いなこの人。)」
いかにも『氷の魔女です』という感じのクールな外見とは裏腹に、フォルテによって暴露されていくエピソードがいちいちかわいい。
これがギャップ萌えか、と年頃の少女たちが理解する頃には、髪色と同じように耳まで赤くした氷の魔女はただの少女になっていた。
『何度聞いてもギャップ萌えの徒にしか聞こえないよなぁ。』
『イージス残留ルートじゃないと聞けないからねぇ、これ。』
『これで加入がもうちょっと早ければ覇権もあっただろうに……。』
『新ヒロインを随時投入する戦法なのが悪い。』