IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第94話 ギリシャ対決、それは防御結界への道

「それでベルベットちゃん。どうして朝ダリルちゃんと戦ってたのかしら?」

 

「それは……。」

 

 フォルテ・サファイアによる親友のかわいいポイント暴露が本人によって強制終了され、専用機持ちたちの自己紹介が終わった後。更識楯無からの質問にベルベット・ヘルは口を噤んだ。どうやらあまり言いたくないことらしいと織斑一夏以外は察した。

 

「オレがフォルテのパートナーだって知って、親友を任せられるかを確認しに来たんだよ。フォルテお前、いい友達持ったなあ。」

 

 だがダイル・ケイシーによって即行でバラされた。時と場合によっては秘密をサラッと話す彼女にその胸の内を打ち明けてしまった、今朝のベルベットの過失である。

 

「へえー……。」

 

「……な、なに?」

 

 さっきまでの暴露話とはまた別の羞恥で頬を赤くするベルベットをニヤニヤと見つめるフォルテ。その視線に更に頬を赤くしたベルベットが口を開くと、フォルテは更にニヤニヤした。

 

「いや別に、すっごく大事にされてるな~、って改めて実感しただけっス。」

 

「……だって、親友だもの。」

 

 恥ずかしそうに、けれどはっきりとそう言ったベルベットが耳まで赤くする。フォルテは少しの間キョトンとしてから、それまでのニヤニヤ顔ではなく本当の笑顔で笑った。

 

「持つべきものは親友っスね!」

 

「……そうね。」

 

 笑うフォルテにつられるようにベルベットも小さく笑った。

 

 

 

 

『なお原作では殺し合う模様。』

 

『大体亡国機業(ファントム・タスク)のせい。』

 

『原作でもちゃんと話し合ってれば解決したんだけどなぁ。』

 

『離反してもろくに情報共有されてないの可哀想だよね。』

 

『まぁオータムも詳しく知らないらしいから仕方ないんだけど。』

 

『オータムすぐ捕まるから情報抜き放題になっちゃうからねぇ。』

 

『オータムだけ弱すぎる……。』

 

 

 

 

 場所は変わって第3アリーナ。観客席に座った専用機持ちたちはその時を今か今かと待ちわびていた。

 

「それじゃ、ベルベットちゃんとフォルテちゃんのギリシャ対決よ!」

 

 事の発端はやはり楯無だった。転入生との交流もそこそこに、開いた扇子に『勝負!』の文字を浮かばせた楯無が笑顔でそんなことを言った。

 

「ほら、2人とも互いにどれぐらい強くなったか知りたいでしょ?私たちもベルベットちゃんのISのこと知りたいし、戦ってほしいの。」

 

「私はいいっスよ。ベルベットはどうっスか?」

 

「私も構わない。」

 

 とんとん拍子でことは運び、ベルベットとフォルテが戦うことになった。

 

 どこで知ったのかギリシャ対決を聞きつけた一般生徒たちも観客席に集まる中、2人のギリシャ代表候補生はそれぞれのピットから飛び出した。

 

「「「おおっ!!」」」

 

 やはり視線が向かうのはベルベットの方だった。珍しさもあるが、何よりそのデザインが目を引いた。

 

 全体的には黒で(ふち)取られた白のフレームだが、右半身には青、左半身には赤のパーツがついている。形状こそ左右対称だが、色彩的には右と左で正反対。その珍しいとしか言えないデザインに驚き混じりの歓声が上がる。

 

 早速拡張領域(バススロット)からハルバ―ドを取り出し手に持ったベルベットに対し、フォルテはいつもの様にイメージ・インターフェースで氷の武器を作りそれを手に取った。

 

「そう言えばいっつも氷で武器作ってるけど、アイツ何か装備積んでないの?」

 

 カウントダウンを待つ間、凰乱音がふとそんなことをダリルに聞いた。

 

 確かに、フォルテが武器を展開(コール)したところを見たことがない。乱以外からも視線が集まる中、ダリルはすぐに口を開いた。

 

「あるぜ。」

 

「何で出さないの?」

 

 至極当然の質問が続いて飛び出す。確かにフォルテのIS【コールド・ブラッド】の分子運動を停止させ冷気を操る第三世代技術は便利だが、遠距離にしろ近距離にしろ、何かしら武器を出した方が良いはずだ。

 

 その疑問にダリルはすらすらと答えていく。

 

「銃は単純に弾薬補給が面倒だからってのもあるが、何より邪魔になるから出してない。」

 

「邪魔になる?」

 

 スリットの深いスカートから覗く足を組み変え、ダリルはフォルテを見た。

 

「すぐ壊れるんだよ。コールド・ブラッドの冷気に材質が耐えられねえんだ。使えない訳じゃねえが、氷で武器用意した方が後々の補給が楽だから使ってねえ。おら、分かったら前向け前。始まるぞ。」

 

 ダリルがそう言った時、カウントダウンが0になった。

 

 

 

 

 ギリシャ製第三世代IS【ヘル・アンド・ヘブン】は、IS学園で結成されたイージスコンビが起こした防御結界を単機で形成することを目的に作られた機体である。

 

 プラスとマイナス両方向の熱を操るイメージ・インターフェースを搭載し、炎と氷を操るこの機体はスペック上、防御結界による鉄壁の防御力を備え、更に氷塊や火球による攻撃さえも可能という代物だ。

 

 ベルベットはまだ防御結界を構築することはできないが、氷塊や火球での攻撃はできるし、何なら脚部にあるコンテナにはミサイルなどがたんまりと入っている。その火力は簪の打鉄弐式に次ぐ。

 

 だが、その火力を使ってもベルベットはフォルテを攻め切ることが出来なかった。

 

「くっ……!」

 

 放ったミサイルが、マイクロミサイルが、榴弾が、火球が、氷塊が、それら全てがより練度の高い氷によって阻まれる。

 

 機体スペックは間違いなくヘル・アンド・ヘブンの方が上だ。コールド・ブラッドは第三世代が開発されるようになった初期の頃の機体であり、機体スペック自体は第二世代最後発のラファール・リヴァイヴ以下である。イメージ・インターフェースの出力も最新鋭であるヘル・アンド・ヘブンの方が上だ。

 

 しかし、その差を埋めて余りあるほど、()()()()()()()()()

 

「ちょっとずるいっスけど、私も負ける気はないっスから、やらせてもらうっスよ。」

 

 目を金色に輝かせたフォルテが笑う。特大の氷塊を瞬時に作り出し、それをベルベットに向けて射出した。

 

 結局、ギリシャ代表候補生対決は時間こそかかりはしたが終始圧倒したフォルテが勝利したのだった。

 

 

 

 

「ま、今朝初めて戦ったにしちゃあ、頑張った方じゃねえの?」

 

 フォルテとベルベットのギリシャ対決を見届けたダリルは、パートナーであるフォルテの勝利に喜ぶでもなく、知ってたと言わんばかりの声音でそう言った。

 

「今朝初めて戦ったとはどういうことだ?」

 

 ダリルの言葉にギョッとした顔でラウラ・ボーデヴィッヒが尋ねる。ラウラにはベルベットの動きが今朝初めて戦った──つまり今回で2回目の実戦の動きだとは思えなかった。

 

 機体の完成時期から考えて、専用機の受領からそう日は経っていない。専用機の起動時間は長くても100時間程度だろう。それを加味すれば今朝初めて戦ったというのも確かに頷ける話ではある。

 

 だが最新鋭の機体スペックに振り回されずに、何より氷と炎を操るイメージ・インターフェースを実戦に使えるレベルで専用機を習熟している。それは訓練だけで出来ることではない。幾度かの実戦を経験して初めて出来るようになることだ。

 

「あれは何度もあの機体で戦ったことがある者の動きだ。今朝初めて戦った機体の動きではない。ギリシャで戦っていたのではないのか?」

 

 ラウラの語るその理屈は正しい。だが、何事にも例外というものがある。

 

「イメトレ。」

 

「なに?」

 

「イメージトレーニングだ。ベルベットがあの機体でやった実戦はそれだけらしい。今朝本人に聞いた。」

 

 ベルベット曰く、フォルテがIS学園に入学してからは対戦相手が居なかったらしい。コミュ障なので自分から誰かを誘うことが出来ず、ボッチ気質なので誰かに誘われることもなく――

 

「――で、仕方なくずっとイメトレしてたんだとよ。」

 

「バカなのか?」

 

 ボッチ気質のコミュ障とフォルテが言っていたが、想像の10倍ぐらい酷い気がする。眩暈(めまい)がした頭を押さえてラウラは思わず心の底からの言葉を口にした。

 

「まあ基礎の訓練は1人でも出来るもんだし、イメトレもそう悪いことじゃない。現実との誤差は今朝オレとやり合った時にあらかた修正して、それで()()だ。」

 

 終始フォルテが圧倒してこそ居たが、その動きは軍人のラウラをして何度も実戦をしていたと勘違いさせるほどのもの。

 

「強くなるぜ、あいつは。」

 

 珍しく上級生らしい視点で語るダリルの視線を追うように、アリーナの地面に立ってフォルテと話すベルベットに全員の視線が突き刺さった。

 

 

 

 

『戦力としてならイージスコンビが居れば十分なんだよなぁ。』

 

『防御結界覚えるまで結構掛かるしねぇ。』

 

『あとモンド・グロッソに出てこられると面倒臭い。』

 

『機体スペックは第三世代の中でも上から数えた方が早いからね、ヘル・アンド・ヘブン。』

 

『育てなくても普通の代表候補生程度には強いし、放置でいいかなぁ。』

 

 

 

 

「ヘル・アンド・ヘブン、派手だったなぁ。」

 

「炎とか氷をバンバン出すからね、そりゃ派手になるよ。」

 

 葉加瀬なのはの工房に戻った天羽飛鳥は、キーボードを叩くなのはを膝に抱えながら今日見たベルベットの専用機について話していた。

 

「それもだけど、色がさ。」

 

「色?」

 

「右と左で色が違った。青と赤で。」

 

「……視覚的に色付けすることでイメージ・インターフェースを使いやすくしてる?変な癖付きそうだけど。」

 

 寒色の青を配置した右側で氷を、暖色の赤を配置した左側で炎を使うとすれば、確かに2種のイメージ・インターフェースは比較的簡単に使えるようになる。

 

 だがいざという時に逆側での炎や氷の使用に支障が出るんじゃないかとなのはは思った。

 

「まぁイメージ・インターフェースが使えるなら良いんじゃない?防御結界は苦労しそうだけどね。」

 

「普通のマルチタスクじゃ難しいからなぁ。」

 

 炎と氷のイメージ・インターフェース。それを1人で操り防御結界を作るのは、複数のビットを操るのとは訳が違う。

 

 方向性が全く逆なのだ。炎と氷の同時使用はともかく、防御結界は右を見ながら左を見るようなもの。普通1人でやることではない。それこそイージスコンビのようにそれぞれのイメージ・インターフェースを持った2人でやる。

 

 なのはが単機での防御結界使用を目的とした機体を作るとしたら、防御結界は単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)として設定し、IS側にある程度自動化してもらう。

 

二次移行(セカンド・シフト)に期待かな。」

 

「だねぇ。」

 

 飛鳥もなのはも、ベルベットの成長に手を貸す気はない。自分たちが手を貸さずとも成長することが目に見えている。

 

「防御結界の使い方は防御結界を使える人に聞くべきだよね。」

 

 

 

 

「よぉし、ベルベット。これからオレたちがお前の面倒を見てやる。」

 

「頑張るっスよー。」

 

 ISスーツ姿でアリーナに立つダリルとフォルテが不敵に笑い、その正面に立ったベルベットが傍からは分からないが困惑した顔でそれを見つめる。

 

「とりあえずの目標は防御結界の形成だが、二次移行(セカンド・シフト)でもしねえ限り1年以内に覚えるのは無理だ。」

 

「というか、そう簡単に覚えられたらイージスの立つ瀬がないっス。」

 

「だからまずお前にはイメージ・インターフェースの使い方を叩き込む。機体制御は特に問題ねえからな。」

 

 言いながら、ダリルは専用機ヘル・ハウンドを身に纏った。

 

「炎でも氷でもいいから撃ってこい。ただしそれ以外は使うな。」

 

「……分かったわ。」

 

 ダリルに言われてベルベットも専用機ヘル・アンド・ヘブンを展開する。無手の状態でいつでもイメージ・インターフェースを使えるようにしながらPICで浮かび上がった。

 

「こっちからも炎を撃つ。避けてもいいしイメージ・インターフェースで防いでもいい。実戦形式でその機体の使い方を覚えろ。」

 

「……貫け。」

 

 氷塊を形成したベルベットがそれをダリルに向かって射出する。

 

「ぬるい。」

 

 その氷の弾丸にダリルが金色に輝く眼を向けると、それはダリルに届く前に融けて無くなった。

 

「……!」

 

「今朝はやらなかったが、オレとフォルテのイメージ・インターフェースは互いに練度が高い方が相手の攻撃を無効化できる。」

 

 肩部に浮かぶ獣の頭から漏れる炎を手元に移しながらダリルはオープン・チャンネルでベルベットに話し掛けた。

 

「これは防御結界の基礎だ。これが出来るぐらい練度を高くしねえと防御結界は出来ねえし、これが出来ねえ内はお前はその機体を使いこなせたとは言えねえ。」

 

「これが、防御結界の……。」

 

「もっと冷やせ。もっと燃やせ。まずはそれからだ。おら、いくぞ!」

 

 ダリルは手元の炎をベルベットに向かって放つ。

 

 それに対してベルベットは右手を向け、イメージ・インターフェースでの無効化をしようとして顔を顰め、氷壁を張って防いだ。

 

「出来ない時は防げ、避けろ。スパルタでいくぞ!」

 

「……来なさい!」

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