「お帰り。何かあった?」
「ただいま。うん、この前街に出た植物型の亜種みたいなのが居た。」
葉加瀬なのはの工房に戻ってきた天羽飛鳥は、出迎えたなのはの問いに答えながら部屋の片隅に置いてあるコンテナを開け、その中から地下に潜るために外していたダブルオークアンタの
「大丈夫?1人で出来る?」
「へーきへーき。束さんに一通りは教わってるから。」
普段なのはに任せっきりではあるが、飛鳥も代表候補生として相応の知識は持っている。ダブルオークアンタが空中に投影した仮想コンソールを弄り、フルセイバーの
「で、何で呼ばれてた訳?」
なのはも自身の作業の手を止めないまま飛鳥と話し始めた。
「それがさぁ、分からなかったんだよ。呼んでたのは間違いないんだけど、着いたら拒絶されちゃって。」
「クアンタを持って行ったからじゃないの?」
「それが原因かなぁ。怖がらせてたみたいだし、嫌われたかも。」
「そうだ、なのはこれ。」
「……コア?」
飛鳥は仮想コンソールを叩く手を止め、なのはのデスクの上に地下から持ち帰ったコアを置いた。
「外殻壊したら中から出て来た人型っぽいのを倒したらそれ落としたんだ。」
「調べろって?今手が空いてないんだけど。」
「下手に弄ると後が怖いし、持ってるだけで良いと思うなぁ。私が持ってると戦う時に変なことになりそうだから、なのはが持ってて。」
「いいけど、これ狙いでここに何か来たら助けてね。」
「もちろん。量子ジャンプですぐ駆け付けるから。」
フルセイバーの
「進捗はどのぐらい?」
「2割ってところ。単純に時間が掛かる作業はこれだから……。」
「束さんが手伝ってくれればもっと早いんだけどなぁ。」
「ほんとだよ!どこで何やってるんだあの人は!」
憤慨するなのはの頭を撫でながら、飛鳥は欠伸をかみ殺した。
「ん、何?眠いの?」
「何か呼ばれた……行ってくる。」
「はぁ?」
自分の髪に顔を埋め寝息を立て始めた飛鳥に困惑しながらも、なのはは仮想コンソールを叩き続けた。
その側では、
「ここは……クアンタの花畑?」
眠った飛鳥が降り立ったのは、ダブルオークアンタのコア人格が居る色とりどりの花が咲き誇る花畑だった。
「クアンタ、貴女が呼んだの?」
「私は場所を提供しただけ。呼んだのはあの子。」
「あの子?」
指し示された方に目を向ければ、1人の幼い少女が花畑の花を摘んでいた。
草木を思わせる色の髪と瞳。何だかんだ成長はしているなのはとは違って本当に幼いと分かる身体。そして今日聞いたばかりの脳量子波。
地下で戦った
「こんにちは。」
近付いて膝を折り、目線を合わせながら声を掛ける。
「?こんにちは!」
にぱー! と笑いながら挨拶してくる少女。戦闘中にあったこちらに対する恐怖はなかった。
「私は天羽飛鳥。あなたのお名前は?」
「レクイ・コンベ!」
「レクイちゃんか。レクイちゃん、どうして私を呼んだの?」
「聞いてくれるから!」
笑顔で答える少女、レクイ・コンベは集めていた花を束ねて飛鳥に差し出した。
「遊ぼう!
「遊ぼっか。」
「ロリコンほいほい……。」
一瞬で篭絡された主人に頭を抱えながら、コア人格は虚空からテーブルとイスを取り出し1人紅茶を飲んだ。
「……んぅ?」
「おはよう飛鳥。結局誰に呼ばれたの?」
「私の子ども。」
「は?」
『はい、これでゲーム内の私が
『こうでもしないと人類側が
『これを早く知りたいがために1人でコア型討伐してました。フルセイバー使うとフラグが消えるから外してな*1!外殻堅ぇよ!』
『生まれると記憶無くすけど、生まれる前のコア状態なら覚えてるので、ニュータイプとかガンダムファイターとかイノベイターとかXラウンダーでコアと対話可能な人はやってみようね。』
『因みに零落白夜で倒されるとコア状態でも記憶を無くします。ワンサマー君さぁ……。』
『余談だけどラストヒットが零落白夜じゃなければいいだけだから1人で倒す意味は全くないよ。飛鳥はせっかちだから1人でやったけど。』
『レクイちゃんは私の娘。異論は認めない。』
『このロリコンめ。』
「──間違いないんだな?」
IS学園作戦本部。そこで織斑千冬と飛鳥の2人が話をしていた。
「少なくとも嘘はありませんでした。」
飛鳥が地下発電所で戦った植物型
「束さんも前に京都で『ISは別宇宙からエネルギーを貰ってる』って言ってましたから、間違いありません。」
「加害者は我々か……。ISの関連施設への襲撃も、デモの一環だというなら納得だ。」
要するに、
「しかし、だからと言って奴らの破壊活動を見過ごすことは出来ない。」
事情を知れば悪いのは明らかに勝手に
もしこれを
「それに
そもそもからして
「根本的な問題解決には束にISコアを弄らせるしかない。」
しかし、それではいつまで経っても終わらない戦いが始まるだけだ。
ISコアを破壊、ないし封印を施すことでエネルギーの横取りを強引に解決することは出来るが、既に人類はISを手放せない以上、現実的とは言えない。
となれば、ISコアを弄り別宇宙からエネルギーを貰っている部分を改変するしか残された解決手段はない。それが出来るのはISコアのブラックボックスを熟知し、全ISへの命令権を持つ篠ノ之束を置いて他に居ない。
「それなんですけど織斑先生。束さんと連絡取れたりしません?私もなのはもほとんどGN粒子がある場所に居る関係でスマホに連絡先入れてないんです。」
「あのバカとは音信不通だ。肝心な時に連絡が着かん。」
「京都で群咲のプライベートチャンネル教えて貰うんだったなぁ……。」
2人揃って脳裏に浮かんだ『てへっ ミ☆』とウィンクしながら笑う親友/師匠にため息を吐く。
「それで天羽。お前が手に入れたエネミーコアについてだが。」
「分かってます。秘密、ですよね?」
「ああ。エネミーコアなんて代物を記録が残る状態で管理したくはない。研究材料として狙われでもすれば対応が面倒だからな。」
「アメリカとかドイツとかロシアとか中国とか……」と対応が面倒な相手を列挙していく千冬の顔が苦虫を嚙み潰したように歪んでいく。脳量子波で千冬の感情が伝わってきた飛鳥の顔も歪む。それを見た千冬は思考を切り替え話を続けた。
「幸い、お前が地下で戦ったことは記録に残っていないし、エネミーコアのことも知られていない。そのままそっちで預かっていてくれ。」
「分かりました。」
『ちなみに早めに
『追加ヒロインたちは事後処理とかの関係でちゃんと転入してくるからやり得だよねぇ、これ。』
『まぁ肝心の温泉イベントの発生確率が低いからやっとくのが吉程度の域を出ないんだけど、知ってるとその後の会話がちょっと変わるからなぁ。』
『結局やり込み要素以上の意味はないから、やる時は考えてやろうね。』
「さて……それじゃなのは、私レクイちゃんと遊んでくるから。」
「行くな行くな。」
なのはの工房。そこに置かれることになったエネミーコアの前でタオルケットと枕を持って横になろうとする飛鳥をなのはが引き留める。
「何でついさっき会ったばっかりの相手がそんなに好感度高いの?」
「どけ!私はレクイちゃんのママだ!それだけで十分!」
「飛鳥に子供はいない!目を覚ませ!そこに居るのは飛鳥を篭絡する悪魔だけだから!」
「悪魔でいい!1度でもママって言われたらママなんだ!」
「それだと寝惚けて先生をママって言っちゃった不良が先生の子どもになるだろいい加減にしろ!」
その日はそのまま2人の攻防が続き、寮の門限が過ぎて呼びに来た千冬によって2人は怒られるのだった……。