IS 今こそ対話する!   作:駄竜

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第98話 特待生、それは見知ったあの子

『どうも皆さん、おはこんばんちは。いつもパタパタ空を飛ぶ、天羽飛鳥です。』

 

『はいはーい。天っ才博士、葉加瀬なのはだよ。前回はストーリーを短縮できるかもしれないフラグ立てのために飛鳥が1人でコア型と戦って、絶対天敵(イマージュ・オリジス)の襲撃理由を知ったところで終わったね。』

 

『今後は娘を守っていくつもりだけど、この後って何かあったっけ……。』

 

『2年生になってからアーキタイプ・ブレイカー編に入ればフードギャラクシィとか芸術祭があるけど、1年生の時にアーキタイプ・ブレイカー編に入ると代表候補生たちが来るぐらいで何にもないよ。ランダムで温泉とかのイベントは入るけど。』

 

『運動会とか焼き回されても困るからいいけど、やっぱりこれ2年生からアーキタイプ・ブレイカー編に入るのが本筋だよなぁ。原作だとIF展開とか言って1年生でやってたのに、どうやっても時系列合わないし。』

 

『因みに芸術祭での暴走が起こらない限りレズはバイにならないよ。』

 

『ロランは元々バイじゃない?性癖の矯正って普通出来ないし。』

 

『飛鳥のロリコンも治らないしねぇ。』

 

『元凶が治そうとしても逆効果だからなぁ。』

 

 

 

 

 3学期の開始と共にIS学園に編入してきたギリシャ代表候補生ベルベット・ヘルの加入から数日経ち、土日の休日を挟んだ月曜日。

 

 更識楯無によって朝から呼び出された専用機持ちたちは、新人であるベルベット以外がその理由におおよその当たりを付けながら言われた通り教室へと集まった。

 

「はい、またもやこうして集まってもらった訳だけど……。」

 

 ベルベットを紹介しようとした時のように『実は全員集まっていなかった』なんてことがないように全員を見渡してから話し始めた楯無はそこで1度言葉を区切り、

 

「じゃじゃーん!今日から、新しい専用機持ちがもう1人増えます!」

 

 にこやかな笑顔でそう言った。

 

「いや、もう完全に分かってたし。そんな盛り上げようとされても困るんだけど。」

 

 そんな楯無に向かってジト目の凰鈴音が『知ってた』とばかりに呆れ混じりに言う。

 

 凰乱音とヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーの2人から始まり、コメット姉妹、ロランツィーネ・ローランディフィルネィ、そしてベルベットと続いた戦力増員。それによって人が増える度にこうして楯無に集められて来たのだから、いい加減予想出来るし新鮮味もない。何ならベルベットの時の肝心要である本人不在が1番新鮮だったまである。

 

 2番煎じどころか出涸らし。天丼どころかいつまでも擦られ続けるネタ。もはやその域までこの戦力増員時の顔合わせは来ている。

 

「えー、お姉さん、同じ展開に飽きられないように頑張ったのにな。」

 

 鈴の言葉に楯無がぼやくが、特にショックを受けた様子はない。どうも自分ですらちょっとワンパターンだと感じていたらしい。

 

「またどこかの国からの転入生ですか?」

 

 サプライズ好きの楯無は同じ生徒会の面々にすら大事なことを秘密にしながら推し進めることが多いため、引き継ぎの関係で既に生徒会長と同程度の権限がある天羽飛鳥以外何も知らない何てことがざらにある。現に織斑一夏は生徒会庶務であるにも関わらず何も知らされておらず、楯無に質問した。

 

「うふふ♪今回の子は特別で、IS学園代表候補生ってことになってるわ。」

 

「IS学園代表候補生?」

 

 唐突に出て来た知っている単語が繋がった知らない単語に一夏が疑問符を浮かべる。

 

「簡単に言っちゃえば特待生ね。ほら、IS学園に入学してくる中で優秀な生徒って大体がどこかで訓練を積んだ代表候補生でしょ?でも飛鳥ちゃんみたいに在学中にその能力が判明したり、授業で実力を高める生徒が少なからず居るのよ。」

 

「ああ……。」

 

 昔を懐かしむような目になった一夏が楯無の話に相槌を打つ。全くの無名だった飛鳥のことを姉である織斑千冬から聞いた時の一夏の驚きは人生で1、2を争う。実際に学年別トーナメントで鈴とセシリア・オルコットの2人を撃破したのを見て納得したが、最初の頃は半信半疑と言わざるを得なかったほどだ。

 

「そういう子たちって、学年別トーナメントとかキャノンボール・ファストみたいな外からの来賓がある場でないとほとんど評価されないのよ。でも何ヶ月も燻ぶらせるには惜しいじゃない?そこで立案されたのがIS学園代表候補生。本来は優先的に訓練機を使用できるって制度なんだけど、今回はそこに別で企画されてた『IS学園整備科専用機開発計画』を組み合わせて、専用機持ちにしたって訳なのよ。」

 

「あの、それ初耳なんですけど。」

 

「だって教えてないも~ん♪」

 

 ここ数週間で決まったことでないのは一夏でも分かった。一体いつから秘密裏に計画が進められていたのか。そもそもそんなことを進めていれば飛鳥か妹である更識簪が気付いて――

 

「――はっ!?」

 

 バッ! と振り返った一夏は苦笑いしている飛鳥と簪を見つけた。

 

「まさか、知らなかったのって俺だけか……?」

 

「う、うん……。」

 

「マジか……。」

 

 1人だけ知らなかったことに落ち込む一夏を簪がオロオロとしながら「驚かせたくて……」と意図的に隠していたから仕方ないとフォローする。その言葉に一夏は「そう言えば簪って楯無さんの妹だった」と普段あまり意識しないことをしみじみと感じた。この姉妹、サプライズ好きである。なお簪にその自覚はない。

 

「さて!説明はこのぐらいにして、顔合わせと行きましょうか。入って。」

 

 手をパンッ、と叩いて場の空気を切り替えた楯無が教室のドアに向かって声を掛ける。一瞬の間を置いて開かれた扉から現れたのは――

 

「やっほ~~~~~、おりむー!」

 

 ――のほほんとした1年1組の珍獣、のほほんさんこと布仏本音だった。

 

「えっ、のほほんさん!?」

 

「ま、まさか、本音さんが専用機持ちに?」

 

「ええ、そうよ。」

 

 驚く一夏とセシリアに向かって楯無が愛用の扇子に『驚愕!』の文字を浮かばせながら笑う。

 

「どうして?確か、整備科志望だって聞いてたけど。」

 

「えへへ、大出世~!なんとなんと、私の専用機が作られちゃったんだよ!その名も【九尾ノ魂(きゅうびのたましい)】!私専用機なんだよ~、専用なんだよ~!えっへ~ん!」

 

 本当に嬉しそうな笑顔ではしゃぐ本音にだんだん全員の驚きが静まり、微笑ましいものを見る目に変わっていく。

 

「て、テンション高いなぁ。」

 

「それはまあ、専用機が貰えたとなればこうもなるでしょ。」

 

「ええ、専用機持ちになれるのは世界でもごく限られた人だけですから。」

 

 1人本音のテンションの高さに苦笑いになった一夏の言葉に乱とヴィシュヌが微笑ましそうな顔で本音を見ながら言う。周りが専用機持ちだらけで感覚がマヒしているが、本来専用機は2桁も集まらない代物だ。今年度のIS学園がおかしいだけで、むしろ本音の反応が正常である。

 

「……誰?」

 

 そんな中、唯一3年生に転入したベルベットが首を傾げた。

 

「ああ、そうだ。ベルベットさんは3年生だし、のほほんさんのこと知りませんよね。」

 

「僕たちのクラスメイトで、布仏本音さん。みんなは、のほほんさんって呼んでるんです。」

 

 そんなベルベットに一夏とシャルロット・デュノアが本音を紹介する。

 

「どーもー、よろしくお願いしま~す。」

 

「……よろしく。」

 

 差し出された袖に隠れた手に僅かに手を彷徨わせながらも握手をしたベルベットはそのまま上下にぶんぶんと腕を振られた。

 

「(そのまま握手するのか……。)」

 

 袖をまくったりせずそのまま握手するのに一夏が驚いていると、本音が一夏に近付いて来た。

 

「あのね、おりむー。かんちゃんにも、整備をい~っぱい、手伝ってもらったんだよ~。」

 

「かんちゃんって、簪が?」

 

 本音の言葉に一夏が簪の方を見る。

 

「う、うん。前に、私の専用機のために力を貸してくれたから。よかったね、本音。ずっと、頑張ってたもんね。」

 

「えへへへ~!ありがと~、かんちゃん!あとねあとね!博士にもアドバイスをもらったんだ~!」

 

「博士?……葉加瀬さん?」

 

 一夏の視線が今度は飛鳥に向かう。

 

「イメージ・インターフェースのことで、文字の無駄が多いって教えてもらったんだ~!」

 

「へー、そうだったのか。」

 

 葉加瀬なのはにアドバイスを貰えたということに驚きながらも、かつてなのは自身が言っていた『助けることにしている人物像』に合致する本音なら、確かに協力してくれるだろうという納得もあった。

 

「でも、のほほんさんって戦えるのか?攻撃的なイメージが全くないんだが。運動会の時の射撃も全弾外してたし。」

 

 銃の組み立てが早いのは知っているが、戦えるかは知らない一夏には疑問でならない。一番本音のことを知っているだろう簪に一夏はそう聞いた。

 

「実戦では、未知数……。」

 

「ええ?未知数って、そんなことで大丈夫なの?」

 

「一応、私との模擬戦では、ちゃんと戦えてた。」

 

 一夏の問いに本音はそう答えた。それにラウラ・ボーデヴィッヒが渋い顔をする。

 

「模擬戦など、絶対天敵(イマージュ・オリジス)との戦いに比べれば遊びも同然だ。このまま戦場に出せば足を引っ張りかねんぞ。」

 

「でも、最初はみんな初めてだったんだから。仲間が増えるのはうれしいし、心強いよね。ねっ、お兄ちゃん。」

 

「ああ。オニールの言う通りだ。よろしく、のほほんさん。」

 

 ラウラの苦言にオニール・コメットが単純に仲間が増える喜びを伝えれ、一夏もそれに乗っかって本音を迎え入れる。ラウラも仲間が増えることには賛成なのか、特にそれ以上言うことはなかった。

 

「は~~い!私もみんなと一緒に戦うよ~!よろしく~、よろしく~!」

 

「微妙に不安も残るが……」

 

「まあまあ、そこは俺たちでフォローしていこうぜ。」

 

「そうだな。」

 

 篠ノ之箒の言葉にそう言いながら、新しい月曜日が始まった。

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