「それにしても、まさかあんたが専用機持ちになるなんてねぇ。」
「そんな話、今まで全くしてなかったよな?」
「びっくりさせようと思って~、こそこそ~、こそこそ~って準備してたからね~。」
忍び歩きをするように手を胸の前まで上げてゆらゆらと歩く本音に、織斑一夏が笑いながらびっくりしたと言う。
その側で更識簪が同じくこのことを秘密にしていた天羽飛鳥に胸の内を打ち明けた。
「わ、私、うっかりみんなの前で話しそうでドキドキしてた……。」
「(特に問題なさそうだったからすっぱり忘れてたなんて言えない。)」
なおその胸の内を打ち明けられた当の飛鳥は『会長も流石に職員主導の計画で変なことしないよなぁ』と思いながら渡された資料に1度だけ目を通し、その後は記憶からすっぱりと忘却していた。そのため全く秘密になどしていない。
因みに朝の顔合わせで飛鳥が一夏のように驚かなかったのは、昨日の夜に葉加瀬なのはから「そろそろ本音が戦線に加わるからよろしくね」と言われたことで思い出していたからである。苦笑いしていたのはそうするしかなかったからだということは誰も知らない。
「いつ頃から専用機を開発していたんですの?」
「えっとね~、12月の頭ぐらいかな~。」
そんな中、セシリア・オルコットがした質問に本音はそう答えた。
「1ヶ月もの間、秘密裏に専用機の開発を進めていたという訳か。」
「みんな忙しそうにしてたから~、気付かなかったでしょ~?」
本音の回答にラウラ・ボーデヴィッヒがその情報秘匿能力に驚くが、それに対して本音はそう言った。
実のところ、専用機開発については知ろうと思えば誰でも簡単に知ることが出来たのである。何せ装甲や武装を制作するために工房を1つ、組み立てと調整のために整備室1つをそれぞれ1ヶ月もの間占領し、そこに何人もの整備科生徒たちが通い詰めていたため、とても目立っていたからだ。
しかも本来専用機を開発している現場にあるような『関係者以外立ち入り禁止』なんてこともなく、入ろうとすれば誰でも入れた。気になって中に入るだけでバレていたのだ。
「仕方ないことだけど~、みんな
そして一般生徒たちも、戦ってくれている専用機持ちたちとの間に今まではなかった壁のような物を感じてしまったが故に、普段付き合いこそしても世間話をすることが減ってしまった。
「お嬢様もその辺~、いまいち分かってなかったみたいだし~。」
「うっ……。」
本音の
IS学園の生徒会長は、IS学園のその特殊な環境故に生徒の中で最強であることが就任の条件となっているが、そうだとしても『生徒会長』である。IS学園の特権階級とも言える専用機持ちと一般生徒たちの間の溝については対処しなければならない事案だ。
これに関して、例年通りだったなら楯無は十分に上手く対処していたと言えた。しかし
「私の落ち度だわ……。」
「私もお姉ちゃんも黙ってたから~、分からなくても仕方ないよ~。」
「そんなことになってたのか……。」
「初耳……。」
本音の話を聞いた楯無と一夏と簪が落ち込む中、生徒会副会長である飛鳥が何も言わないことに気付いたシャルロット・デュノアが飛鳥の方を見た。
「(会長何も対策してなかったの……!?)」
「(あっ、天羽さんも驚いてる。)」
てっきり何かやっている物だと思っていた飛鳥の驚く顔に僅かにすれ違いながら、シャルロットが話題を変えようと本音の専用機について切り出した。
「ところで、のほほんさんの専用機ってどんな機体なの?やっぱり日本の技術がベースなんだよね?」
「ふっふっふ、それはね~。」
シャルロットの話題に食い付き、本音が離そうとしたその時、最近聞きなれてしまった音が鳴り響いた。
「これって!?」
「
一夏が声を上げるのとほぼ同時に大きな衝突音と共に地面が揺れた。それは
「ってことは、私たちの出番だね~。」
「えっ!?い、いきなり大丈夫なの?」
「迷ってる暇はないぜ!早く迎撃しに行かないと!」
「お~!しゅっつげ~き!」
やる気満々だと声を上げる本音に促されるまま、一夏たちは隕石の落下したいつもの第3アリーナに向かった。
『生徒会に所属してても実際プレイヤーは仕事の操作とかしなくていいから、この辺の感傷薄いよねぇ。』
『何か特典ある訳でも無いからなぁ、生徒会って。生徒会長になっても経歴に箔が付くだけで何も変わらないし。』
『一応生徒会長だと生徒会メンバーを好きな子で固めてハーレム状態に出来るけど、ねぇ……。』
『交渉面倒臭いんだよなぁあれ……。』
「おせーぞお前等。」
「すみません!」
一夏たちが第3アリーナに到着した時には、先に到着していたダリル・ケイシーとフォルテ・サファイア、そしてベルベット・ヘルの3人が既に
「へー、それが整備科の皆が作った専用機っスか。」
「は~い!これが【
九尾の尻尾を模した狐色の9つの突起を背中のバックパックに備えた、白地の装甲に赤の差し色が目を引く機体。尻尾が揺れるかのようにバックパックの突起部分が動く様は本当に尻尾のようで、胸を張る本音の姿は誇らしげだった。
「さっそく、のほほんさんの雄姿が見られるな!」
「本音、初陣がんばって……!」
「まっかせてー!むむむ……。」
一夏と簪の応援を背に両手を前に突き出した本音が何かを念じる。それを見た代表候補生たちはイメージ・インターフェースを使おうとしていることに気付いたが、一向に何かが起こる様子がないことに首を傾げた。
「のほほんさん?どうしたんだ?」
一夏が一向に攻撃しない本音に困惑しながら訪ねると、本音は一夏の方に振り向きながら困った顔をした。
「おりむー……。どうしよう~、ISの出力が上がらない~……。」
「ええっ!?」
「そんな、調整不足……!?」
「わかんない~……でも、うまく動かせない~……。」
そう言いながら今も手を伸ばしてイメージ・インターフェースを使おうとしている本音に一夏と簪が駆け寄る。
その前に躍り出た楯無が本音を庇いながら声を上げた。
「本音ちゃん、すぐに下がりなさい!そのままじゃ敵の良い的になってしまうわ!」
「は、はい~……。」
言われた通り後ろに下がっていく本音。その姿に目線を奪われる面々を楯無が一括した。
「みんな、集中!本音ちゃんのことは敵を倒してからよ!」
「は、はいっ!」
慌てて武器を構える一夏たち。そこにPICでふわりと近付いてきたフォルテが言った。
「もう終わったっスよ。」
「……えっ?」
フォルテの言葉に改めて
「新人の動きに一喜一憂し過ぎっス。気になるのは仕方ないにしても、働いて貰わないと困るっスよ。」
「すみませんでした!」
フォルテの正論に、一夏たちは頭を下げるしかなかった。
『のほほんさん加入イベントは短縮箇所がここぐらいしかないのがなぁ。』
『初戦を早く終わらせるぐらいしかないよねぇ。秒単位ならもうちょっとあるけど、RTAじゃないから意味ないし。』
『ここも数分しか短縮されないからそういう意味じゃほとんど意味ないんだけど、会話がいくつか無くなって編集的に楽になるから短縮しない理由もないって言う。』
『わざわざ長引かせるのもテンポ悪くなるからねぇ。』