不死身の体でヒーローになる 作:塩谷あれる
あと、今回から何日かだけ数字にします。月はまだ未公開で。
■月31日
隣の席の奴は、運がいいのか悪いのか、何とか生き残った。全身血まみれ傷だらけ、もう息も絶え絶えの半死人の状態で見つかったんだそうだ。
右腕が欠損、足も修復不可なレベルで痛めつけられていたらしく、もしかしたら今年いっぱい病院で生活することになるかもしれない、と聞いた。俺は、ちょっとあのクソッタレが許せなくなった。
▼月1日
修行に身が入るようになった。不思議なもんで、目標ができた瞬間やる気も増す。それがどんなにマイナスな目標でも。とりあえず、親父に免許皆伝を貰うところからやってみよう。
▼月2日
ムーンフィッシュが俺、隣の席の奴に続いて三人目の子供を襲った。今度は殺されたらしい。やる気あんのか警察。ふざけてんのかヒーロー。
▼月3日
親父の蹴りを目で追えるようになってきた。が、受けを取るのはまだまだで、今日もしっかり殺された。もう俺は何回親父の蹴りでくたばったんだろうか。いつか絶対思いっきり蹴飛ばしてやる。
▼月4日
母さんに「学校が半日でもちゃんと一日分の勉強はしなさい」と言われ、そりゃそうだと思い一応一日一時間分の勉強はすることにした。俺過労で倒れやしないだろうな……多分大丈夫、だと思いたい。
▼月5日
一日に親父に殺される回数が減ってきた。少しずつではあるが、成長してきているかもしれない。
▼月6日
小学生のフリをするのに疲れた。もういっそのこと素のままで生活してみようか。てかあれ?何で小学生のフリしてなきゃ行けないんだっけ。ぶっちゃけ、小学生にも大人ぶる奴とかいるよな。小学一年生でもそんな感じのとか、多分いるよな。じゃあフリする必要なくね?
▼月7日
親父に蹴り殺されたり、殴り殺されたりして丁度五十回を超えた。んで、『撲殺』に対する耐性とやらも、何となくは分かるようになってきた。と言うか、五十回でようやっと効果が顕著になったと言うべきか。自分の個性のことが、改めて面白く感じられたかもしれない。
▼月8日
あのクソッタレにまた殺された。次は必ず仕留める。
▼月9日
『撲殺』の耐性を手にして良かったことは、親父の技をある程度受けるつもりで対処できるようになった事かも知れない。喰らう覚悟で攻めていけば、相手の隙を作りやすい。喰らってもその後からでも攻撃は当たるし、ってか寧ろ喰らったまま離さなきゃそっちのが当てやすいし。
アニメとかマンガで肉を切らせて骨を断つ戦法よくあるけど、現実でやるんだったら確かに、『不死身』持ちでもなけれりゃ実行なんざできねぇ。『不死身』なしでもそれを実行した昔の人ってスゲぇ。そりゃ英雄として名が残るわ。
▼月10日
日曜日だから、と言う理由でガッツリ半日修行通しだった。親父に「俺が仕事する時間と体力を考えろ」と怒られた。アンタ仕事してるようでしてないようなもんだろエセ小説作家。つい最近だぞアンタが仕事してるって俺知ったの。
▼月11日
親父って結構有名な作家だったんだ…
▼月12日
ここ数日の修行で、とうとう『撲殺』の殺害カウンタが百を超えた。何故かは知らんが、百回を超えると頭の中にアナウンスみたいなのが流れてきた。滅茶苦茶怖い。しかも変声機で弄ったみたいな変に高い声だから頭も痛い。けど、百回突破記念の『修得耐性』ってのはちょっといいと思ってしまった。レベルアップとか、ゲーム見たいで燃えるやん?
▼月13日
ついにヒーローと警察があのムーンフィッシュのクソッタレを拘束したらしい。遅せーよ。どんだけ被害が積み重なったと思ってんだ。とは言え、これでもう被害は収まるだろうし、いやー、よかったよかった。と言うべきか。うん。
▼月14日
隣の席の奴の見舞いに行った。治癒系のヒーローの力で何とか足は歩けはせずとも動かせる程度には治ったらしく、無くなった腕も急ピッチで義手を造っているそうだ。本人もまぁ、何とか話せるくらいには持ち直したみたいで、普通に話をすることはできた。顔とか体とか、傷痕が残りそうなのを本人は気にしてたけど、女子だしそりゃそうか。一刻も早く治ってくれることを祈る。
▼月15日
学校が通常営業に戻った。同時に親父の稽古も自然と終わった。もし続けたいなら勝手にやれ、と言われてるので、修行そのものは続けてるけどな。もしなんかあったときの護身術くらいにはなるだろうし。……いや、過剰防衛かも。まぁ、とりあえず街が平和になって良かった。
▼月16日
あのクソッタレが脱走したらしい。マジでやる気あんのか警察。
次回日記形式じゃないかもです。