不死身の体でヒーローになる   作:塩谷あれる

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今回時系列飛び飛びになりまうす…こうでもしないと中国編収集つかなくなるから許して…!


第二頁

五月三日

 

 日本は今ゴールデンウィークだろうか……俺はいつも通り蹴り殺され殴り殺され焼き殺されてますよ畜生……!

 

五月四日

 

 鱗はホントにもの覚えが良い。最近じゃ簡単な日本語に限定すりゃ俺と問題なく会話ができるようにすらなってきた。周老師にも上達したと認められてるし、負けられないなこりゃ。

 

五月五日

 

 ようやく老師の拳が目で追えるようになってきた。どうやら老師の個性は、掌から炎を吹き出させる、と言うものらしい。炎熱系の個性だろうとは思っていたけど、俺が焼き殺される原因はやっぱりこれのようだ。まぁ、分かったところで対策できないんですけどね!

 


 

六月十日

 

 親父が前に行った万里の長城やら個性の研究施設の取材(研究施設はともかく万里の長城は俺も行きたかった。誘えや親父)が済んだと言うことで、軽慶の『始まりの子』の取材に連行された。何故だ。まぁ近場だから良いけど。

 そんで行った場所ってのが、『始まりの子』の直系の子孫に当たる人物、政治家の金輝礼(ジン・フイリ)氏のお宅だ。政治家の家に突撃とか親父なにやってんの!?と流石に問い詰めたが、『アポは取った』とほざくので金氏に確認をとったら本当に許可は取ってたらしい。ヒヤヒヤさせんなや…。

 その後、『始まりの子』に関する文献や写真などを金氏に見せて貰った。『始まりの子』──本名金光舜(ジン・グァンシュン)は、個性を持つ人間として生まれた最初の人間として大いに注目を浴びていたが、それと同時に彼は極めて有能な政治家だったそうだ。個性が数多くの人々に広まってきた超常化社会最初期の中国を、いち早く安定させたのは正しく彼の功績だと金氏は語った。

 光舜の功績や、金家の歴史について一通り語った後に、彼はこう続けた。

 

「光舜が築き上げたこの超常社会の基盤、それを守り続け、子孫として受け継いでいくことこそが、我々金家の役目なのです」

 

 ご先祖さんをちゃんと敬って、その誇りを受け継いで国を護り続ける。軽い言葉になってしまうが凄い人だと俺は思った。だが親父は何となく気に入らないようで、帰りの車の中でずーっと難しい顔をしていた。香水の匂いが気に入らんとか、何か胡散臭いとか、笑顔が役者のそれだー、とか、まぁ色々ブツクサ言っていた。時間削って取材受けてくれた人にアンタなぁ……。いやまぁ確かに、やけに甘ったるい花みたいな匂いはしたけど、薄かったしそんな気になることかね?

 

六月十一日

 

 老師が強すぎる。親父相手ならある程度蹴りも拳も当てることができてたはずなんだけど、老師相手じゃ受け流すのが精一杯だ。しかも受け流してもすぐに次が来てるから結局二発目には殺されてる。もう焼死のカウンタ五十超えたぞ…!?

 

六月十二日

 

 何やら奇妙な薬が軽慶で横行しているらしく、そう言うのを渡そうとしてくる大人に気をつけるように、と学校で言われた。え、麻薬?中国でもそういうのあんの?

 

六月十三日

 

 まさか焼き殺されて誕生日を迎えるとは……あ、母さんの作ってくれたケーキ風杏仁豆腐はめっちゃおいしかったです。

 


 

七月十二日

 

 焼死のカウンタがとうとう百まで達してしまった……老師俺でバーベキューしすぎでしょ。つい最近撲殺もカウンタ300超えたし、うん、俺死に過ぎだね!

 

七月十三日

 

 麻薬事件の犯人は未だ捕まらないらしい。なんでも、個性を暴走させる薬だそうで、被害者が軽慶から拡大して中国各地で暴れ回っているようだ。ヒーローのお陰で大事には至ってないみたいだが、勘弁してほしいものだ。

 

七月十四日

 

 今日は鱗の誕生日、と言うことで鱗の家でパーティーをしてきた。品内家からはプレゼントに日本の緑茶の茶葉と母さん特製の和菓子をプレゼントした。日持ちしないから早めに食べてネ!親父からは中国語訳された日本の本──てか『人間失格』。親父ェ……。老師は指南書を送ってた。え?俺?何送ったら良いか分からんかったから日本から持ってきたマンガで、読み終わってて尚かつ完結してるのをワンシリーズプレゼントした。喜んでくれて何よりだ。

 

七月十五日

 

 『焼死』の獲得耐性を手に入れてから気づいたことだが、焼死は百回死んだ時点でもう完全な耐性になる──早い話、俺はもう炎や熱で死ぬことはないらしい。これ地味に強くないか?ヒーローとかだと結構欲しい力だよな。案外将来はヒーローになるのも良いかもしれない。

 

七月十六日

 

 『焼死』の獲得耐性、かなり強いかも知れない。まぁ老師には全然効かなくていつも通り蹴り殺されたけど。まじであの人人類最強じゃなかろうな……?

 

七月十七日

 

 帰りがけ、例の麻薬の中毒者に遭遇した。暴走個性とはいっても動きはフラッフラで酔っ払ってるみたいな感じだったし、対処は楽だった。老師に比べりゃ鈍いし遅い。しかし、気になったことが一つある。中毒者が全身から匂わせていた匂いと、一ヶ月前、親父の金家取材の時に感じたあの匂い、なーんか似てたんだよなぁ……甘ったるい、バニラとマンゴーの匂いが混ざったみたいな匂い……気のせい、か?




多分中国編あと、三、四話は続きます。

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