この世界にはたくさんの不思議がある。
例えば魔法があったり、人間じゃない種族がいたり。
そして極めつけは、迷宮があること。
聞いた話だと中にはお宝や役に立つ魔法のアイテムもあるらしい。
そんな迷宮を、いつか見てみたい。
そんなことを私は夢見てた。
「さあついたぞ、小娘」
私がいた隔離病棟からしばらく空を飛んで移動し、地面に着くとそこは辺り一面が森に覆われていた。
「こ、ここに迷宮があるんですか?」
「うむ。 僕に間違いは無いからねぇ」
「で、でも、特に迷宮があるようにも見えないんですけど……」
辺りを数歩進んだ瞬間、いきなり地面を踏む感覚が消え、私の体は落下していった。
「え、えっ? えぇぇぇぇぇえ!?」
それは人工的にほぼ垂直に掘られた洞窟で、私はなにもできずにただただ落ちていった。
すると途中から洞窟は大きく斜めになり、私の体は洞窟に擦れながらスピードを落としていく。
そして次の瞬間、地面に無造作に投げ出される。
「……いったた。 なんだったの、今の」
「おーい小娘、無事か?」
「悪魔さん。 ここは……」
「ここがお前の見たかった迷宮だぞ」
そこはとても暗く、空気が重く、足を動かすのも憚れるような重圧感があり、迷宮という言葉に恥じることのない場所だった。
「ちなみに、この迷宮はまだクリアされてないみたいだから、クリアするまで出ることはできないぞ?」
迷宮にはすでにクリアされてある迷宮と、まだクリアされてない迷宮がある。
クリアされてある迷宮はお宝や魔法のアイテムが少なく、クリアされてない迷宮には手付かずのままなのである。
「でも私普通の人間だし、それに迷宮を攻略する術さえないんですよ?」
「まあまあ、ただ死なれてもつまらないし、仕方ないから僕の力を貸してあげるよ」
そういうと悪魔さんは私の足元に魔方陣を出現させた。
次の瞬間紫色の光が私を包む。
「これは……?」
「くひひっ、小娘、お前は今この迷宮にいる間だけ、何度死のうと生き返るように魔法をかけた。 さあ、その力を使ってこの迷宮を攻略してみな? くひひ」
なにがあっても死なない?
それから私は、斬られて撃たれて刺されて挟まれて折られて潰されて殺されて殺されて殺されて殺されて殺されて。
それでも、生き返った。
「小娘、お前……、本当に人間か?」
「なにがですか?」
「大抵の人間は死ぬ度に絶望していくのだが、お前、死ぬことを楽しんでないか?」
百数回死んで生き返った辺りで、悪魔さんはそう私に言った。
「死ぬことは悔しいですよ? でも、次は行けるかもって思って、それでクリアできたとき、とっても嬉しいんですよ!」
「し、死ぬことを恐れない、だと……」
「次のステージ行きましょう! って、あれ? なんかこのステージの扉、厚くないですか?」
「ん? あぁ、もうボス戦だねぇ。 ま、今までのお前見てたらボスなんてあっというまに終わっちゃうんだろうけど」
「次、ボスなんですか!? 今度はどんな攻撃がくるんだろう? 弱点とかあるのかな?」
「ほんとにこの小娘、人間か……?」
「早く行きましょう!!」
―――
その迷宮で起きたこと、何度も死んだこと、その全てが曖昧で、気がついたら私は血のついた鈍器を片手に、広い空間に立っていた。
「あれ、もう終わっちゃった……?」
「迷宮クリアだな」
「え、私迷宮クリアできたんですか?」
「そこに宝箱が出てるだろ? 開けてみな」
言われるがまま、宝箱を開ける。
すると、柔らかい光が体を包んでいく。
獲得スキル:捕食者
「えっと、スキルを獲得したみたいです」
「どういうスキルだ?」
「『捕食者、喰らったものと同等の力を使うことができる』だ、そうです」
「なかなかに恐ろしいスキルだな……」
「ねぇ悪魔さん。 もっと、迷宮攻略したいです」
それから私は悪魔さんと迷宮攻略の旅に出ることにした。