自分「終わってません……」
流石にこれ以上閑話は入れられないので、また一週間後から隔日か三日に一話更新で次章に入ります。
遅れている理由は一人暮らし始めたのとシルフェイド学園物語にどハマりしたせいです。
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ピクシーの使用スキル属性『雷』→『風』
2020/6/28(日)
トラスが従魔を召喚したその晩。俺は宿屋にある一階の食事場の一角を占領して、紙を掲げた。
「いいか、トラス。これをよーく覚えるんだ。基本情報だから、まずはこれを完全に理解しろ。暗記する必要はない。理解すれば自然と覚えているからだ」
従魔における基礎的な属性早見表を渡して語りかけると、トラスは首を傾げながらも嫌そうな顔をした。
「最低限の知識なんだ。やっていれば覚えるかもしれないが、事前知識を持っておくのもいいだろう? バージョン一から二の間における星五までの属性なんだ。これでも簡単なんだよ」
「ん……あれ? スリープさん。何をやってるんですか?」
トラスへ勉強を教えていると、今日の仕事を終えた柊菜達が顔を見せた。樹少年は、つい昨日の夜にアレコレやった仲なので、どことなく気まずい。それでいて垣根が無くなったかのようだ。
樹少年が少し照れた様子で頭を掻き微笑んだ。胸の前で小さく手を振っている。付き合っている事を隠しているヒロインみたいなムーブすんな。
「トラスに対して従魔の属性を教えてるんだよ」
「……俺聞いた事ないんですけど」
「聞かれてないし」
「えっと、スリープさん。私達も教えてもらうことって出来ますか?」
「ん? 別にいいよ」
積極的にイズムパラフィリアについて知っていこうとするのなら是非もない。俺だってしっかり教える所存である。
最優先はトラスなので、しっかりとトラスを基準に教えるが。こいつにはまず概念から知る必要があったのだが、そこは既にクリアしている。むしろトラスがそこで疲れてしまったのだが。
「まず、イズムパラフィリアにはいくつかの要素がある。ゲームに関わってくるものもあるけど、そこら辺の前置きは全部放っておくよ。長くなるからね」
「そこ重要じゃないですかね?」
基礎編だからこれ。
「数あるデータの中でも、最初から重要だった要素がある。それが属性だね」
「あ、俺知ってます。ソシャゲの属性って火とか水とかで弱点属性付くとダメージ二倍、その逆はダメージが半減するってやつですよね」
樹少年の言葉に頷く。ソシャゲは大体そうだ。光と闇が互いに弱点で、それ以外はジャンケンみたいに回っているのがソシャゲの属性である。
「イズムパラフィリアは、インフレに敏感だったんだよね。だから、こういう時は基本的にダメージ減衰しか発生しないんだ」
デバフゲーとも言われた時代があるくらい、このゲームはデバフが多く、敵の弱体化手段が多かった。
だからこそ、最序盤で大事なのはタンクである。攻撃を受けて耐えられる性能の防御こそが重要視されていた。
次点でヒーラー。受けた攻撃を回復させるのが出来ればより長く戦闘出来たからだ。スマホゲーの癖に一回の戦闘時間が長かったのが最初期からの特徴である。
「基本的にはスキルか、従魔そのものが持つ耐性値で受けるダメージを減らすのだが、本当に最序盤。リリース直後にはそんな細かいデータは無かったし知られなかったんだ。そこで使われていたのが属性防御だ」
紙を一枚めくる。そこには、俺が書き表したバージョン1.0.0時代の属性表がある。
「『火』『水』『風』『土』『光』『闇』まあ、ソシャゲの基本属性だね。これが開始直後にいた従魔が持っていた属性だよ。同じ属性からの攻撃はダメージを減らすんだ。当時は半減してた」
だからこそ、基本的に攻撃役は敵と被らない属性を持たせ、タンクは同じ属性を持たせて戦わせるのが主流だった。
「樹少年のピクシーは土属性。リビングエッジはこの中に無い属性。柊菜のエンドロッカスは闇属性。他にもあるけどここにはないよ。チェリーミートは風と土属性だ」
トラスのアラバスターゴールドはここに無い属性である。機械、鉱物属性だ。リビングエッジも機械属性である。
ウィードはもちろん土属性である。最初期からの従魔はリミテッド以外単一属性だが、ウィード位になるとそういうのも少なくなっているものだ。だからこそリセマラで入手出来るキャラの最高峰が単一属性なのかもしれないが。
だからこそ、当時はチェリーミートが最強ヒロインとも言えるくらい人気だった。あいつ好感度イベント以外にも専用イベントあるからな。人気投票で専用ルームまで貰ってたし。石貰えるから欲しかったといえば欲しかったな。混合属性アタッカーかつタンクが少ない風属性持ちなのが良いんだ。受けるダメージが少なくて攻撃性能が高いとか本当に優秀だった。
「この世界じゃ不明だけど、イズムパラフィリアの最後では、属性防御は五パーセント減衰だったから、そこまで重要視はされてなかったよ」
まあ、俺のようなガチ勢でも無かったら属性防御を強く意識することは無かったと思われる。それこそ一撃のダメージが大きい敵でもなければ使われなかっただろう。
そして、バージョンが上がるにつれて属性も増えに増えまくるのだ。中にはそいつしか持っていない固有属性すらある。季節属性とかもある。ハロウィンとか。
ちなみに、シルクの属性は虫、家畜である。奴は昆虫大型アップデートで追加されたキャラなのだ。
「ちなみに、今挙げたのは従魔の持つ属性でも、防御に使われる属性だから属性防御と言われている。攻撃は、スキルで属性変えられるし、基本的に属性防御で減衰されない斬、突、打といったものが混ざるよ」
吸収攻撃でも地獄属性と付くが、これも属性防御には入らない。これは属性耐性で減らすものである。
「従魔が持つ大まかな耐性があるんだ。マスクデータなんだけど、これを属性耐性と呼ぶよ」
これは最初からめちゃくちゃ多いが、後から追加された数が少ないものである。そして一見すると分かりにくい。吸収攻撃に地獄属性と付けられているくらい分かりにくい。
「この世界の一般人が持つ属性耐性を基準にして、そこから強いか弱いかで判断されている。逆に言えば、どの攻撃でも人間には全部理論値で通用するよ」
乱数等はともかく、固定数値のダメージの攻撃とかがきっちり数値通りに通用する。
ついでに、この世界の人間が基準なので、実は地球の一般人に撃つとダメージ二倍で通るという結果が出ている。
「……とりあえず属性についてはこんな感じかな。基本的にダメージ減衰しか発生しないのがイズムパラフィリアの特徴だよ」
つまり、どんなに高い耐性を持っていても、必ず最低ダメージまでは通ってしまう。そこで必要になるのが、HP自動回復率か、回復魔法、地獄属性にダメージカットといった、回復能力か、ダメージそのものを数値分減らせる能力である。
タンクであるウィードは、属性耐性こそ優秀だが、ダメージカット系アビリティを覚えないし、自前で強力な自己回復を覚えないので、タンクとしては二流でしかないということである。
イズムパラフィリア史上最強のタンクは、最大HPと同じ数値を毎秒回復する。一撃で倒さなきゃいけない従魔であったりする。
「とりあえず理解は出来ました。シーちゃんは土属性の攻撃をするし、土属性の攻撃なら多少打たれ強いってことですね?」
「ピクシー自体が打たれ弱いから過信しないようにね。あと、通常攻撃で戦うなら正しいけど、魔法やスキル主体で戦う従魔はスキルにあった属性で攻撃するからね」
ちなみにDPSや瞬間火力を測りたいなら、畑仕事をするといい。あれも攻撃属性指定はあるけれど、それを無視して攻撃すればダメージ判定ができるから。
属性耐性も属性防御も野菜には無いのだ。ただし、特定属性じゃないと攻撃をした際にぶっ壊れるだけで。
まあ、属性耐性を意識した攻撃が重要になってくるのはヴエルノーズを出てからになるだろう。更にいえば、スキル屋と多くの従魔がいてようやく満足な属性耐性や属性防御を意識した戦闘が行えるのだ。
俺のシルクは風属性と魔法属性のスキルを使える。ウィードは衝撃属性と打撃属性の物理スキルである跳躍撃を持っている。
ピクシーは水属性の回復魔法と火属性の攻撃と、完凸レベルマになって覚える風属性の魔法スキルを覚える。
大体の敵には通用するので、これを意識する必要な無い。だが、樹少年は魔法使いタイプの従魔を手に入れているのだから、頭を使った戦い方をして欲しいものである。
近接物理ばっかりの柊菜など、やることすらできないというのに。
「とりあえず今日はここまでかな。トラスは今日も柊菜の所で寝なよ」
「あ、わかりました。……トラスちゃん。おいで」
柊菜がトラスを抱き上げて宿の二階へと進んでいく。それを見送っていた樹少年がこちらを見た。
「スリープさん。俺思うんですよ。今後この世界を生きていくのなら、いつか絶対に俺たちは地球人としての限界に辿り着くんじゃないかなって」
「ん? 急にどうしたよ」
「いや……。いつまでもヴエルノーズにいる訳にはいかないじゃないですか。新田さんはチェリーとエンドロッカスをステージ解放させたいらしいですし、スリープさんがゲーマーなら、多分そろそろここを離れるでしょう?」
一応疑問形ではあるが、樹少年の目は確信を持ってい発言していると理解させられた。
肩をすくめて答える。
「そりゃあね。樹少年や柊菜がこの後どうするのかは知らないけど、俺はここで今やれることはほとんど終わっているんだ。近いうちにここを離れるつもりだったよ」
「でしょうね。スリープさんが言うには、ソシャゲでRPGですし。ならストーリーの続きをするでしょう」
そこで樹少年は立ち上がった。腰に下げている剣をポンと叩く。
「俺は一番最初にこの世界で命の危険を味わった。だからこそ、自分で身を守る手段が欲しくて剣を持ったんです。だからこそ、スリープさんが思い付きそうな『自分を鍛える』という方法を一切取らない事が理解出来ました」
最初に俺も殴り飛ばされている。その時点で悟っていた。
「この世界の人間に比べて、地球人はあまりにも弱い。それは鍛えてどうにかなるという訳でも無さそうなんです。そりゃあ極めた技術があれば、そこらのチンピラには勝てるとは思います。だけど、従魔には勝てない。同じように鍛えた人間にも勝てない」
従魔相手には、剣じゃあ射程が足りないし、接近戦でも勝てない。力の出力が違うんですよ。と樹少年は続けた。
「多分、ゲームか何かでスリープさんは、知識があるんでしょう。例えば、俺たちが急激に強くなれるような方法とか、そういうのを」
「知ってるけど、やらないよ」
「…………そうじゃないんですけど。まあいいです」
そこで、樹少年は剣を抜いた。幅広で、先端が尖っていない。斬ることだけに特化した剣。樹少年が見つけた自分の道。
「俺は、それでも従魔と並びたい。ただ後ろで指示するだけじゃなく、最低でも、あの子たちが安心して俺たちに背を向けて戦えるだけの力が欲しいです。シーちゃんはスリープさんから見れば弱い従魔だ。いつか絶対に戦力じゃなくなる。そんな時に、彼女を守れる力が欲しいんです」
「ふーん。いいんじゃない?」
「多分、スリープさんが想定している進み方とは違う道を行くと思います。俺は、俺の力が欲しいです」
力を求めるのは非常にいい姿勢だ。俺は別にそれを否定しないし、むしろ賞賛したいほどだ。
「自分のやりたい道が定まったっぽいね。いいじゃん。凄いことだ。俺はその道を応援するよ。俺が知っている情報だったら教えるよ」
「あ、ありがとうございます。って、そうじゃなくて」
そう伝えると、樹少年の真剣な表情が崩れた。
そして大きく息をつくと、どっかりと椅子に座り直した。剣を鞘にしまいながら、天井を仰ぎぼやく。
「っかぁー!! 合わねぇ! 俺の言いたいこと全然伝えられてないし、そもそもこんなの俺のキャラじゃねぇよ!」
「ぶっちゃけ童貞卒業して定職について女の子迎え入れる事を宣言すると思ってた」
昨日の今日だからな。なんか余裕が出来て変な方向に思考が働いたんだろう。
「いやいやいや! いきなりそんな事を言うわけないじゃないっすか! 俺はただ、将来の事を考えたら、多分どっかで別れるんじゃないかなって思ってそれを伝えたかったんですよ。それまでは仲良くしていたいですし、その後もそれなりに仲良くしたいですし」
「毎度毎度思うけどさ、口説きたいなら俺じゃなくて柊菜にしなよ」
俺をヒロインにするな。身体を抱くように腕を組んで見せると、樹少年は頭を掻きむしった。
「俺だってそんな事したかないわ! あー、ダメだ。俺とスリープさんってこんな感じだもんなぁ」
そう言って彼はニヤッと笑う。立ち上がるや肩を組んできて、グイグイ引っ張ってきた。
「どうですか? 今夜もちょっと行きましょうよ」
「やだよ。俺もう寝たいし」
強引な樹少年を振り払って宿の二階へと上がっていく。
「明日も対して変わらない日常が来るんだ。樹少年もさっさと寝なよ。興奮して寝られないと、また未来を考えて不安になるだろうしね」
階下で頬を掻く樹少年をからかうと、素早く部屋に戻った。
こちら急遽入れた閑話なので、話のクオリティが低いです。ついでに作中だけで理解しろと言っても難しい所の補足で情報を開示します。
樹少年はスリープと柊菜の三人組で一番性格が遠いです。というのも、樹少年は基本的に他人を考えて行動する善人であるのです。性質的に勇者組に近いです。
対して柊菜とスリープは、実は二人とも似ており、行動理由は自分にあります。柊菜がチェリーを助けた時も、誘拐という事柄が嫌いで、それが嫌だったからめちゃくちゃにしたという理由が強いのです。例えチェリーが望んで誘拐されていても、邪魔をして助け出します。
対して樹少年は、チェリーが可哀想だからという理由でこれを助けるでしょう。望んで誘拐されていた場合、理由や状況を把握して、問題点の解決に奔走します。
スリープは基本的な主観の人なので言わずもがなでしょう。自分がやりたい通りに全部暴力で解決しようとすると思います。
柊菜とスリープは、基本的に自分がそうしたいから行動しますが、樹少年は、自分がそうしたいのもあるし、相手が助けを求めていそうならば手を差し伸べるために動きます。
今回はそんな樹少年の閑話でした。実を言うと初回案では樹少年と娼館へ行って何かしらの裏事情か大柄の女性に貞操を狙われて大暴れする予定でした。
が、いつの間にか出番の少ないノーソが飛び出してきて、樹少年の貞操は儚くも散らされました。まあ、いい人と出会えたので良しとします。
その後ですが、今回はゲーム的要素を考えて入れた説明会(そんなに重要でもない。基本的にウィードちゃんがゴリ押すので)と、樹少年のお悩み相談となりました。
樹少年は、割りと将来の事を考えては漠然とした不安に襲われて明るく振る舞う人間ですので、今回もそのような感じに動いております。伏線とかは多分ないです。これはあくまでも閑話で好感度イベントだから……。
イズムパラフィリアは基本的に好感度イベント0の時はそこまで仲良くないですが、それ以降は仲良くなってイチャイチャを見れるようになっています。
ウィードちゃんなら、好感度不足→イベント→血をあげるくらい懐く→いずれ赤ちゃんプレイへ……。となっています。
樹少年で言えば、好感度不足→誘拐イベント→風俗へ行こう! となっています。彼は現在出現している中で二番目に好感度の高いヒロイン枠です。一番はウィードじゃないかなぁ……。当分のエロ担当です。
樹少年の問題点は、彼を支えられる存在がいない所にあります。漠然とした不安を持つのも、ピクシーという守りたい女の子には頼れず、他に頼れる大人もいないのです。スリープに頼っても仕方ないでしょうし。
柊菜はその点恵まれています。同じ大きさの人間型の従魔を引き、その後喋れる同性同年齢帯付近の従魔を手に入れています。よって、相談事などけっこうしているし、上手く支え合ってやっています。バランスが一番いいんですよね。その分動かしにくいんですけど。
スリープは二人と違ってそこまで子供でもないし、かと言って彼らほど大きな体験もしないままに育った大人です。周囲には自分の好きなもので溢れており、そもそもの精神とかがゆるぎにくいのです。これが大人主人公の良さですよね。成長性が薄い。
とまあ、こんな状況ですので、樹少年はアレコレ悩み続けるし、苦労も苦悩もして今後もしばらく生きていきます。たまに風俗へ行って、悩んで、成長して。まるで主人公のようだぁ……。
大変長くなりましたが、今回の閑話は、使われないようなゲーム設定から樹少年の人間性の掘り下げという感じになっております。
次回から新章です。雰囲気的には犯罪者の街から移動するので、変わると思います。ダークファンタジー面が強く出てくる話になっているはずです。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。今後もイズムパラフィリアをよろしくお願いします。