ちなみに、なろうに魂を売ったチートハーレム小説を書きました投稿もしています(チートするとは言ってない)後々こっちにも本編を乗せようと思います。
あ、お待ちかねのTSイベントです。四章のみTSなので、そのようにタグ付けしておきます。
36話 樹パラフィリア
窓辺から眩しい光が差し込む。小鳥の鳴き声が空に響き、休眠の終わりを告げる機械音が鼓膜を揺らした。
「うう〜ん」
眩しさから布団を頭上まで手繰りよせ、音源を探して細い手が宙をさまよう。
数十秒の格闘を経て、機械は沈黙することになった。
「朝ぁ? まだ眠いんだけど……。修行しなきゃ……」
むくりと布団が起き上がる。勢いに任せてそのまま逆方向に倒れた。中にいた人物は久しぶりの柔らかい布に包まれて、深い眠りについていたようだ。まだ眠気が覚めないようで、頭を振ったり、周囲を見渡している。
「えっ……家? ……なんだこれ、夢?」
ようやく現状を理解してきたのか、跳ね上がるように立ち上がり、若干の貧血でふらつく。頭から血が下がっていく気持ち悪さにしばらくじっとしていると、部屋に置いてあった姿見が視界に入った。
最近は黒い部分が増えてきた金髪。プリン頭をそのままに、腰まで伸びたストレートの髪。ピンク色のチェック柄の寝巻きTシャツに身を包んだ少女がそこにいた。
胸は小ぶりだが、服が薄手なのか主張はそこそこである。身長も小さく、顔つきは化粧っ気がないものの、クラスでもトップクラスに位置するであろう美少女っぷりだ。
髪色からは遊んでいそうな印象を与えるが、顔立ちが少年のような子供っぽさを纏っており、全体で見ると活発系な少女である。
その姿が目に映ると、おもむろに主張する二つの双丘へと手を伸ばした。柔らかい! 本物の胸だ! 彼の記憶に新しい娼館での経験が、それを本物だと伝えている。
同時に、胸にピリリとする刺激がくる。下を向くと、僅かな膨らみに、自らの両手がかかっている。そして、視界の隅に映る傷んだ金髪。
おそるおそる顔をあげる。鏡に映る少女は、樹と同じように、ゆっくりと顔をあげた。その表情には「嘘であってくれ」と強い気持ちが浮かんでいた。
「お、お……」
耳に残るアニメ声。自分と違うのに、何故か自分の声だと理解した。
「女の子になってるぅぅぅ!!!」
この日、原田樹は可愛い可愛い女の子になったのだった。
俺の名前は原田樹。現役の男子高校生さ。ある日突然気付いたら異世界にいて、誘拐されたり召喚したりの大騒ぎ!
好みの女の子と、少し年上の怪しめな大人の人と一緒に摩訶不思議の冒険ファンタジー! 地球との時間差や出席日数が不安になってもう大変! 果てには朝目覚めたら現代に戻ってきたような状況で女の子になっちゃった!? これから私の生活、どうなるの〜!!
……笑えねぇ。
俺、原田樹はさっき言ったとおりの不思議体験をした男子高校生だ。決してこんな元気っ子みたいな女の子じゃない。両親は健在。将来は親に恩返しするのと、警察を目指している。剣道部のエース。うん。覚えている。
だが、鏡に映る金髪の少女は、明らかに俺だ。
金髪ロング。若干プリン頭。前髪無しのデコ出し真ん中分けでどこか男っぽさを残した美少女。
……俺可愛い。
最近は不可思議な事ばかり起きていたからか、こういった出来事でもあまり動揺しなくなってしまった。鏡の前で一回転。遅れて動く髪。自然とポーズをとっていた。脇をしめて拳を肩ほどの高さに、やや肘を前に出して胸を強調。にぱー。
……くっ! 可愛いっすねぇ〜。
TS小説では、自意識が女の子に寄るから自分の体でも女の子の体でも興奮しない描写があったが、俺はどうやら男のままらしい。
鏡の前で次々とポーズを決めていく。あざとい。だけど可愛い。若干恥ずかしいので赤くなっている顔がまた気持ちいい。
ゲームキャラを思い通りに動かしている気分だ。なにこれ楽しい。
「樹くん……好き」
試しにセリフを吐いてみる。陳腐だが、言われてみたい言葉だぜ!
「……ないな」
流石に自分が喋っているのが分かるので、興奮しない。声はいいのだが、どうにも感覚が邪魔をしてくる。
自分で女声を出しているような感じなのだ。
「っていうか、どこだ、ここ?」
違和感は拭えないが、そこをどうこう出来るわけが無いので、我慢する。理不尽耐性は、異世界生活でついた。
「俺、野宿してたはずだよな……」
まさかまた拉致されたのでは、と思うが、それなら女の子になっている理由が分からない。
「そ、そうだ! 召喚石とかは?」
体には、今まで俺が持っていたものは一切ない。だが、部屋を漁ればなにか見つかるかもしれない。
と、部屋を見渡すと、勉強机の上に、召喚石があった。
個数はちょうど俺が持っていた数と同じ。一回だけ召喚枠と従魔召喚が出来るだけの数があった。つまり、八個。残念ながら、シーちゃん達をロストさせない分の余裕が無いので、召喚は出来ない。
「って、呼べばいいのか『コール』!」
シーちゃんを呼ぼうとする。しかし、コールと叫んでも、うんともすんともいわない。
繋がりが切れている。胸の内にあった謎の感覚が、今はなくなっていることに気が付いた。
それだけで、急に不安が込み上げてくる。頼れる仲間を失った。足元が崩れていくような、そんな喪失感。
「ひっ……」
途端にこの場所が恐ろしく見えてきた。今は、新田さんもスリープさんも、誰もいない。綺麗だけど、他に物音を感じない部屋。誰か住んでるのか、それさえも分からない。
鏡にいるプリン頭の女の子が、今にも泣きそうな顔をしている。それを見て、俺は無理やり口角を上げた。
「笑わなくちゃ……」
女の子が泣きそうになってんなら、俺が不安にさせちゃ、ダメだろ。俺だけでも、笑わなきゃいけない。気持ちで負けてたら、俺は何にも勝てない。
鏡の少女も、引きつった笑みだが、笑っていた。大丈夫。怖くても問題ない。
気を奮い立たせていると、突然机から電子音が鳴った。それに驚いて飛び上がる。
二秒くらい滞空してた。ギャグみたいな飛び上がり方しちゃったぜ。
机の上では、腕輪に水晶がくっ付いたやつが、電子音を奏でている。ダンジョンに挑戦する時に、ミルミルちゃんから貰ったものだ。
手に取り、確認する。
『生、キτゑ? 色々聞、キナニレヽ⊇ー⊂ぁゑナニ″зぅレナー⊂″、ー⊂丶)ぁぇず制服レニ着替ぇτ学木交レニ来τ。八日寺まτ″レニ、走らず、言隹ー⊂も会言舌せず、、ζ、″⊃カゝっナニ丶)ιナょレヽょぅレニ来τ。亊小青レよξ⊇τ″言舌す。屋上τ″彳寺っτゑ』
……読めねぇ。読めねぇよ。
ギャル文字を使ったスリープさんからのメッセージに困惑する。読めるところだけあげると、制服に着替えて学校へ行くように指示されている。時間指定も八時までに走らないで来るようにと書かれている。会話? も禁止されているっぽい。件のスリープさんは、屋上で待っているそうだ。
なんか、不穏だ。
手がかりがあるのか、それともゲームでも同じことがあったのか、情報を得るために、俺は部屋から制服を探し出す。クローゼットに入っていた。
もちろん女子生徒のである。古きよきセーラー服だ。
「これを着るのか……」
どうにも主観視点だと、女装しているようで嫌だ。鏡を見ながら着替えることにした。
金髪プリンが服を脱いでいく。
女体経験値一の俺には、少々刺激が強かった。ぶっちゃけ、脱いでいく様子をガン見しながら着替えた。
「あんまり似合わねぇな」
セーラー服に不良っぽい外見はあまり合わない気がする。なんというか、ダサいような。好みじゃないような。
クローゼットを探すと、カーディガンを見つけた。女子が着ている。アレである。なんか袖がいっつも余ってるやつ。
袖を通せば暑いと思うので、腰に巻き付けた。それだけで、若干セーラー服の生真面目さが薄れて、この外見に合うような気がする。
「……よし!」
それっぽい格好のなったのを確認してスクールバッグを背負う。
「やっば! 後三十分しかない!」
周辺の地理が一切不明なので、学校の位置すら分からない。それなのにもう八時までに三十分しか時間の余裕がなかった。
走らず、慌てず、部屋を出る。シンと静まり返った廊下は、日が照らされている。ここは二階のようだ。
他の物音は聞こえない。
気配を殺して一回へ降りる。リビングへの扉が開いていたので、こっそり確認すると、誰もいなかった。
一人暮らしなのだろうか。
無事に玄関までたどり着き、ローファーを履く。他には、金髪プリン用の靴であろうものが一足だけ置いてあった。運動しやすそうな靴だった。
「…………いってきまーす」
小声で呟いて家を出る。
返事は、なかった。
無事に、学校へ付いた。というのも、俺が家から出てすぐに、目に入ったのがこの建物だったからだ。
「でけぇ……。なんでこんな大きいんだよ」
思わず見上げたまま言葉が溢れてしまうほどに大きい。五階建てで、ちょっとした巨人も通ってるんじゃないかといわんばかりの大きさだ。
圧倒的バリアフリー。いや、この場合はユニバーサルデザインだろうか?
って、俺も早く入っておこう。
学校にたどり着きはしたが、目的地まではついてない。事情が事情なので、とりあえず安置にだけはたどり着きたかった。
「いてっ!」
「キャア!」
と、足を進めた途端に、誰かにぶつかってしまう。ヤバい! 誰ともぶつかんなって言われたのに!
っていうか、さっきの女の子みたいな悲鳴、妙に野太かったな。まるで、男が出したような感じの響きだった。
「す、すいません……大丈夫っすか!」
「い、いえ……こちらも、急いでいたの……で……」
ん? 学生服の男子が俺を見て呆然としている。ってか、こいつがきゃあなんて声を出したのか。
どうかしたのかと首を傾げると、そいつはみるみるうちに顔を真っ赤にしていく。
お、もしかしてこいつ俺に一目惚れかー? やっぱ美少女だもんなこいつ。俺はどっちかというと清楚系が好きなんだけど、こういうのも悪くないしな。
「あ、あああああの! 見えてます!」
「へっ?」
随分うろたえた様子で、そいつは俺を指さした。その指先は下半身をさしており、追ってみると、見事にぺろーんとパンツを晒すプリーツスカートが。
あー、なんか恥ずかしいわ。思い違いをしてたっぽい。見るからに真面目そうな奴だったし、女の子に耐性とか無さそうだから勘違いしてたわ。
「あ、悪い」
「い、いえ……こちらこそすみませんでした」
手早くスカートを戻して立ち上がる。俺は今女の子なのだ。もう少し慎みを持たねばならんな。
っていうか、意識したらスカートとかめっちゃすーすーするな。一応剣道の袴で経験したことあるが、長さが違う分ちょっと心許ない。そして、アレは大抵の場合スカート状ではないが。
とはいえそこまで大きく変わらない。ロングスカートなら似てると思う。ロングスカート履いたことないけど。袴は股割れ部分がかなり下なので履き心地に違いはないのではなかろうか。
ちなみに、俺もスカートは短くしていない。さすがにそこまで勇気は無かったし、時間的余裕もなかった。膝下五センチくらいのスカートだぜ。
「あ、立てるか?」
「大丈夫です。自力で立てますから」
いつまでも地面に座ってる男子に手を出すと、そいつは受け取らずに立ち上がった。男女でこうまで違うのか。まあ、男同士の遠慮ない引っ張り合いをされると、今の体では引き倒されるかもしれないが。
「あ、悪い! 俺ちょっと行かなきゃいけない場所あるんでした! じゃあ!」
「あ、はい! お気をつけて!」
ぼーっとしている男子を構っている場合じゃなかったぜ。
手を振って素早く駆け出す。屋上まで間に合うだろうか。
「あ……スカート捲れ上がってる。あんなに無防備に走るから……」
後ろでなにか男子が呟いていたけど、無視して先を急いだ。
とりあえず屋上なんて上に登ればいいだろ! の精神で階段を駆け上がり必死に探した。流石に五階、いや屋上含めて六階分は駆け上がるのに疲れた。
息を切らして鉄扉を押し開ける。気圧差で吹き付ける風が服を通り抜ける。舞い上がった髪に、思わず目を閉じた。
「あー、走んなって言ったのに走ってるじゃん。下手するとマジでヤバいことになるんだから気をつけなー」
声がした。フェンスすらない手すりだけの屋上で、俺以上にギャルっぽい女の子がそこにいた。
少しだけ年上っぽい見た目。背もそれなりに高く、今の俺よりは大きい。頭一つ分くらい違う。髪は黒で、シャギーにした、一昔前にいた女子高生みたいな人だ。勝ち気そうなつり目、整った眉、踵を潰したローファー、白のルーズソックス。全体的になんか古い女子高生が手すりに軽く腰を乗せていた。
「え……スリープ、さん?」
「スリープじゃないし。今のあたしはネルコだから。社会氏寝子。チョーダサい名前だけどよろしくー」
語尾を伸ばしたアホっぽい口調。だけど、話が通じている時点で、この人がスリープさんだと信じるしかなかった。
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
「うっさ。もすこし予想とか出来なかったわけ? ヒントあったじゃん」
いや、ギャル文字だけでヒントにはならなねぇっす。
拝啓、地球の家族へ。
俺はある日突然女の子になったと思ったら、スリープさんまで女の子になっていました。完全に順応していて、今ではネルコさんというそうです。
異世界転移をして、色々ありましたが、俺はこれからどうやって生きていけばいいでしょうか。
一時期一つだけ男子二人ともTSした小説がランキングありましたよね。ああいうのいいと思います。もっと男同士で馬鹿やるTS少女の作品が見たかったなって。