イズムパラフィリア   作:雨天 蛍

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 大変勝手ながら、今回の話を書いて、今月分の更新を一時停止することに決めました。
 理由として、現在なろうの方にあげている作品をさっさと完結させたいのと、その作品にイズムパラフィリアが引っ張られていると感じたからです。今回の話も、もっと大事に書き上げたかったのですが、時間は足りず、描写にも悩んで無理やり書いた結果、満足する出来にはならなかったと判断しました。

 とりあえず今回分の更新だけは済ませて、時間の取れるタイミングで書き直すなり、次の話を書き溜めるつもりです。

 本作を楽しみにしてくれている方には大変申し訳ありません。

 次回更新は、現状五月一日に行うつもりであります。


38話 出会いイベント

 なんというか、俺の知り合いというか、旅の仲間は、みんなギャグ漫画から来たような人間だったりする。

 ネルコさんは普段から俺と関わる時はふざけ気味だし、なんならいつも不真面目にしている。検証だ考え事だと色々好き勝手動いては、どこかで爆発したり吹き飛んだりしているのだ。

 ウィードちゃん……今はウィード君だけど、彼に無茶ぶりしているイメージが強い。

 

 例えば。

 

「ウィードのスキル構成は現状長所を伸ばすより短所を埋めた方がいいから、魔法を覚えた方がいいんだ。上位魔法に範囲回復技があるから、それを覚えるんだ。跳躍撃と相性のいいヒールサークルを使え!」

「グルル……」

 

 という出来事があった。

 

 ウィードちゃんはいつもスリープさんの無茶ぶりを聞いて苦労している。もう少し労わってあげたらどうなんだろうか。

 旅に出てからは、ウィードちゃんがドラゴン姿になって、スリープさんがその姿で鱗洗いをしている姿を見たこともあるけどさ。

 あれも一つのコミュニケーションなんだろう。なんだかんだで二人は仲がいい。

 

 新田さんは常日頃からコミュニケーションを大切にしている。積極的に従魔と会話や相談をしており、その時々の行動方針すらも彼らと一緒に決めている。人生の相棒とでも言わんばかりに、新田さんは彼らを頼り、信頼している。

 それにしては、少し依存気味にも思えるのだが。最近は従魔とはまた立場の違うミルミルちゃんが仲間になったので、不安定な、危なっかしい感じはなくなりつつある。

 だけど、彼女は精神の支柱をどこか他人に預けているような気がする。こんな状況では、仕方がないのかもしれないけど、いつかどこかで完全に従魔に依存して動けなくなってしまいそうな様子だ。

 

 この二人に比べると、俺は自分の従魔とのコミュニケーションが、上手く取れていない。それは、単純な会話の量では無く、心を通わせた回数。

 一時期喧嘩したり、すれ違ったりもしたけど、そこから大きく距離が近付いたというわけじゃないんだ。あくまでも俺は、大事なシーちゃんを守りたくて、自分でも戦えるだけの力が欲しいのだ。

 シーちゃんは、それを、自分を信じてくれていないという風に受け止めている。

 

 未だにシーちゃんと俺の主張が、両者の納得のいく結果に着地したことが無い。

 

 保健室に来た。俺の従魔の手持ち的に、ここに誰かがいるとは思えなかったけど、出会いイベントと考えれば、こういう、うってつけの場所がいいと判断したのだ。

 

「失礼しまーす……」

「どうも……」

 

 なんかげっそりした男子がいた。病弱っぽそうな雰囲気の人だ。どことなくショタっぽい。

 

「あのくそどらごん……僕が近付く隙すら与えないとか独占欲強過ぎだろ……うっ!」

 

 ブツブツと毒を吐いている。体調も悪そうなのにご苦労なことだ。

 儚げな印象が、一転して強かになってしまった。長生きしそうな病弱キャラである。

 病院で出会った幼馴染系ってやつだな。当初は気持ちも弱かったけど、恋して強くなるタイプ。高校生くらいで、病気も治ってすっかり暴走系ヒロインになる感じのキャラ。

 

「あの……大丈夫っすか?」

「…………はい。ダイジョウブです」

 

 声をかけてみると、百面相を一瞬で見せて愛想笑いを浮かべた。大丈夫では無さそうだけど、これ以上相手にするのも悪いかも。

 知らない人に、弱った姿を見られるのは、好きじゃないから。

 

「おいっすー」

 

 ガラッと勢いよく保健室の扉が開かれる。ネルコさんだ。

 

「あっ……」

「……」

 

 ネルコさんと病弱系男子が向き合う。しばらく見つめあった後、ネルコさんがスッ……と腕を開いた。

 

「あるじさまぁ!」

「おお、いい子いい子」

 

 男前なのか母性があるのか分からないネルコさんの抱擁で、ここの出会いイベントは終了したっぽい。凄い雑だった。ウィード君やエンドロッカスちゃんとは大違いである。

 というか、あんな従魔見たことないんだけど。ネルコさんいつから隠してたんだろう。そもそも従魔だったのか。人間にしか見えなかった。

 

 抱き合った二人だが、俺がいるのが邪魔らしく、ネルコさんの見えないところで病弱系男子が凄い形相で睨んできた。このままここにいてもいいけど、可哀想なので撤退する。

 

「お邪魔しましたー……」

 

 俺のシーちゃんはどこにいるんだろう。こういう所で、俺のシーちゃんへの理解度の低さを見せつけられているようで、若干落ち込む。

 

 行くあても無く、適当に廊下を歩く。ふと、階段に目がいき、そこにいた人物が誰なのか気付いた。

 

「あれ? ……樹さんですか?」

「そういう君はチェリーちゃんだよね」

 

 そう。新田君の従魔であるチェリーミートちゃんである。

 狼系の獣少女であり、新田君をご主人様と慕う誘拐されていた女の子だ。

 今は男の子になっているけど。

 

 犬系男子というのは変わらないらしく、犬耳に尻尾、童顔な低身長イケメンになっていた。女子にからかわれたり、可愛がられたりするタイプの男子ってやつだ。

 

 知り合いを見つけたからか、チェリー君は安堵した様子で駆け寄ってきた。そういう仕草が、本当に犬っぽい。尻尾も現在進行形でブンブン振られている。

 

「うえええ、怖かったですー!」

「わかるー。怖かったっすよねぇ」

 

 少しだけ女の子っぽさを意識して返事を返す。運動系少女だって語尾に〜っす。と付けるのだから、俺もそんな感じのキャラを目指していこう。ノリのいい後輩系ってイメージ。

 

 チェリーちゃんは意外と距離感の近い女の子であり、俺や新田さんには結構スキンシップが激しいところがある。今もひとりぼっちだった恐怖からなのか、俺に抱きついてきた。

 

 結構力が強い。従魔だから当たり前だ。時にシーちゃんですら、俺を圧倒する膂力を発揮するのだから。

 

 惜しむとすれば、今は男女が逆だから、身体の感触を楽しめないことか。普段も新田さんの目が怖いので、そんなことしないけど。

 

 ぼんやりと、固くなった身体の感触を味わう。男の子ってこんな感じなんだ。男の子に抱きつかれている女の子って、こんな感じなんだ。

 ほんの少しだけ、ドキドキした。それは、異性を意識したとかではなく、この力で押し倒されたりしたら、抵抗できないだろうなっていう、恐怖。

 

 でも、こうやって抱きついたり身体を擦り付けてくるのはやめて欲しいようなやめて欲しくないような複雑な心境だ。元々チェリー君は女の子なのだ。普段はもふもふふわふわの体をしているんだ。

 今はイベント中だが、昨日までは旅の最中で、プライベートなど無かったのだ。時折感じた女の子の体っていうものが、俺の本能を刺激してたものである。

 

 我慢するのも大変なんだ。

 

「…………あのー?」

「すんすん……ふんふん」

 

 中々チェリー君が離れてくれない。鼻息が荒い気がする。もしかして、匂い嗅いでる?

 

「おーい」

「……はっ!? ななな、なんですか! いえ、すみませんでした!」

 

 おおっなんか童貞ぽい反応。女の子の身体に興奮したのだろうか。元から百合っぽい感じしてたよなぁこの子。新田君と普段から一緒に水浴びしてイチャイチャするからなぁ。そういう声は聞こえてくるのだ。

 今は男の子になって正常に戻った感じなのだろうか。

 

「そんなに怖かったんすか?」

「い、いいいいえ! 怖かったんですけどそうじゃないといいますか……」

 

 めちゃくちゃ狼狽えている。なんだこれ。可愛いな。

 視線が俺の身体を見てたり顔を見たり、なんか興味とかを隠しきれない感じ。

 

 少しだけ悪戯心が湧く。

 

「ふーん? なぁに? 私の身体になにかある?」

「へぇえ!? い、樹しゃん!?」

 

 意識して甘えるような声を出して、無防備に身体を見せる。服に何かついてないか探してみたり、スカートをひらひらめくったり。大事なのはチラリズム。そして、無邪気な様子だ。恥じらいもない女の子のチラリズムは、ぶっちゃけ萎える。そういうの、あんまり経験したことないけどさ。男子校出身だから。

 そうして、何度もパンツをチラ見せしたり、お腹を見せていたりしたら、すっかりチェリー君の視線が俺の身体から離れられなくなってしまった。面白さと楽しさが混ざってもう少しだけサービスしてあげてもいいかなって気分になる。

 この弄ぶ感覚。いいな。

 

「あっ……どこ見てんすかー!」

「す、すみませぇん!」

「まったくもう……。チェリー君は元は女の子だったんだし見すぎっすよ! そんなに気になるなら触ってみますか? 俺も女の子になって色々興味あるんすよね」

 

 そう言うと、チェリー君はゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「ほら……気にならないっすか? 元男だった俺の身体がどうなのか……」

 

 スカートをたくしあげる。顔がどんどんスカートに向かっていくチェリー君。

 なんという優越感だろうか。男の子を手玉に取る感覚。これは癖になりそうだ。男を喜ばしてるって感じがして気持ちがいい。

 

 ……あれ?

 

 スカートをパッと離す。残念そうに、スカートを見つけていたチェリー君が、ハッと我に返った。

 

「あ、あはは。……なんか変な空気になっちゃったっすね」

「あははははは……ごめんなさーい!!」

 

 大きな声で謝りながら、汗を大量にかいたチェリー君が逃げ出した。

 

 やばいぜTS学園。いつの間にか女の子の本能が刺激されていた。雌落ちするところだったぜ。童貞男子からかって女の子としての優越感味わうとか、どんな体験だよ。

 

 フルダイブVRゲームでネカマが増えた理由の一端を味わった気がした。

 

 

 

 

 童貞チェリー君をからかった後で、学校の裏庭に移動した。窓の外を見た時に、ふと目についたのだ。

 裏庭には、一本の大きな木が生えている。その下には花畑があった。

 シーちゃんは、正式名称を【花畑のピクシー】という。初咲の花から生まれた妖精とのことで、自然の化身にも近い存在なのだ。

 

 花畑があるのなら、シーちゃんはそこにいる。

 

 根拠の無い確信が胸を突き動かして、衝動的に裏庭へ来ていた。

 そこに居たのは、小さな小さな影。木の葉のように小さく、しかし、決して薄れない輝きを持っている。

 俺の相棒にして、最高の友達。

 

「シーちゃん……」

 

 声をかける。ふわりと影が天へ昇った。

 見上げて、太陽の眩しさに目が焼かれる。薄目に開いた瞬間、視界のほとんどを覆うほどに影が接近していた。

 

「ますたああああああ!!!」

「シーちゃん……シーちゃあああん!!」

 

 俺の顔面にヒシっと抱きつくシーちゃん。俺はそっと彼女を手のひらで包んだ。

 繋がりが途絶えただけで、これほどにまで心細いとは思わなかった。どれだけ彼女に依存しているか分かった。

 

 だけど、もう、離れられそうにない。

 

 この手を離したくない。

 

「シーちゃん……」

「マスター……」

 

 学ランに身を包んだシーちゃんを見つめる。

 …………学ラン姿である。シーちゃんはシー君だった。イケメンだ。ミニマムイケメン。女の子向け人形で登場する彼氏役みたいなナイスガイ。爽やかな白い歯がきらりと光る。

 ごめん。さっきのやっぱり無しで。

 今の俺は心だけは男の子なんだ。告白は女の子にしたい。初めて付き合うのも女の子がいい。

 

「マスター……僕が君を守るよ……」

 

 伝説のありそうな木の下で、シーちゃん改めシーくんが俺に告白をしてくる。

 好感度が高すぎる。出会ってすぐに告白されるとは。

 

 だけど、ああ。彼はやっぱりシーちゃんであって。

 これを断ったら、向こうの世界でどうなるのかが気になってしまって。

 

「……嬉しいです」

 

 断ることなんて無理だった。

 

 俺の初めての恋人は、イケメンで小さい妖精でした。

 ネルコさん。一ついいっすか。

 

 俺、このイベントはクソだなって強く思います。

 

 

 

 お昼。屋上で出会いイベントを済ませた俺達は、従魔を連れて顔合わせをしていた。

 

 ネルコさんは、ウィード君だけを連れて来ていた。

 新田君は、チェリー君とエンドロッカスちゃんにしっかり腕を組まれている。

 俺は、シーくんと手を繋ぎあってここに来た。

 

「は? 樹ちゃんなんで手繋いでんの?」

「そりゃあ……告白されたら断れないし」

 

 俺の姿を見て驚いた様子のネルコさんに返事をする。途端にネルコさんの表情が険しくなった。

 

「好感度稼ぐの早すぎるな……石を割ったのか? それよりも、予想外だ。この展開は不味すぎる……」

「ネルコさん?」

「あー……あー……。うーん……」

 

 随分頭を悩ませている。俯き気味のネルコさんの横顔に綺麗な黒髪が流れる。

 少しだけ見とれた瞬間にウィード君が割って入った。

 

「グルル……何見てんだ」

「あ、すいません……」

「こいつは俺のメスだ」

 

 そう言って尻尾をネルコさんに巻き付ける。腰を巻こうとしてはたき落とされて、しぶしぶ腕に巻いていた。

 

「スリ……ネルコさん。従魔との出会いは済みました。次は何をすればいいんですか? 何を倒せばいいんでしょうか」

 

 新田君がはっきりとネルコさんを問い詰める。新田君度胸あるよなぁ。俺はネルコさんが余裕そうだし、下手な先入観とか欲しくないから何も聞こうと思わないんだけど、新田君は全然違う。

 その探究心でネルコさんに色々聞き出そうとしている。最近はこの世界のこともよく理解してきており、何かを倒せば解決出来るという思考になってきているようだ。

 

「……この世界に関して、話せることは無い。樹少女も多分そのままでいい」

 

 ネルコさんにしては珍しい返事だった。基本的にネルコさんは聞かれたこと以外は話さない。ゲームの情報を一切落とさない。だけど、聞けば全部答えるのだ。

 それが、答えられない。どんな原因があるのかは分からないが、今まで一度も見たことの無い光景だった。

 

「そう、ですか……わかりました」

 

 新田君も、ネルコさんの様子を見て、とことん問い詰めるといった雰囲気を収めた。

 ネルコさんはそんなことを一切気にせずに、考えにふけっている。

 

「うん。大丈夫。大丈夫」

 

 それは、自分に言い聞かせているように見えた。

 

「まあ、問題無いはずだよ。とりあえず、俺が今朝言った通りの行動をしていれば、後はイベントが終わるから。大人しく過ごすように」

 

 それだけ伝えると、ネルコさんはウィード君を連れてどこかにいってました。

 

 結局、何かを話す気にもなれなかったので、自然と解散する流れになった。




 TSした女の子が男の子に助けられて雌落ちする話はいっぱい見てきましたが、TSした女の子が、男の子をからかって女の子に目覚める話はあまり見ませんよね。私はそういうのが好きなんだ。
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