イズムパラフィリア   作:雨天 蛍

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今回一部キャラに特殊タグによるフォントを利用していますが、特に読む必要は無いです。メタ成分だけ含まれています。
white river様の文字化け風フォントを使用しております。この場をお借りして感謝申し上げます。white river様ありがとうございました。

5/23(日)サブタイトルの修正
なお、今回の修正による詫び石の配布はありません。


67話 ステータス・インフレーション

 ゲームにおける重要なステータスといえば、何だろうか?

 攻撃? 防御? 精神? 幸運? 速度? そのどれもがゲームを構築する上で重要なステータスであると言えるだろう。そういう視点で言えば、全てが答えとなる。

 では、JRPGでよく用いられるターン制コマンド式のゲームであったら、何が重要だろうか。

 この場合、ターン毎に必ず互いに一度行動するので、速度の重要性は大きく下がる。一手の差において、そのレベルにまでコマンド式バトルでは速度差の価値は薄れてしまうのだ。

 必ずターン毎に一度動けるのならば、重要なのは攻撃力になる。ダメージレースにおいて攻撃を入れる回数が同じならば、より大量のダメージを与えられる方が有利に働くことになる。

 

 では、日本でも有名だが、あまり採用されている印象は無い(特許申請されているらしく、少ないのは当たり前だが)ATB式のバトルならば、何のステータスが重要だと言えるか。

 これに関しては速度が重要だと言える。単純に手数が増えるからだ。速度があればあるほど、一方的に攻撃も出来るし、取れる選択肢が増える。相手が一度行動する度に二度こちらが動ければ、攻撃と回復を同時に行うことも可能なのだ。逆に、あまり重要ではないのが防御になってくる。一撃で死なない限りは、速度差を付ければ回復で補えたり、勝てないなら逃げる事も可能なので。最低限の防御、後は速度と攻撃で押しきれる事も少なくない。

 逆に、速度差を活かした戦術として、毒などの状態異常や、カウンター攻撃がハマるなど、戦略の幅もスタイルで大きく変わるのが特徴だ。この手のゲームは、自行動の開始で毒ダメージが入るパターンが多く、カウンター等の行動は自分が次に動く時に解除される特徴がある。例外もあるが。

 

 日本ではSLG、シミュレーションゲームに分類されているストラテジーゲームならばどうだろうか。基本的に戦略とか戦術が重要になるので一概にこうとは言えないが、ターン制においては攻撃や速度よりも攻撃の射程距離が重要だと言える。剣士の攻撃はより強力であろうが、届かなければ意味はなく、一方的に攻撃できる弓の方が戦略上役に立つ場面が多い。RTSの場合より複雑になるので一つの要因に絞れないのだが、RTSベースに当てはまるmoba系ゲームになると、射程距離と攻撃速度が正義になってくる。プレイング次第だが。

 

 創作にもあげられやすいMMOといったジャンルになればどうだろうか。創作物になると極振りやら幸運やら隙間産業無双やら色々あるが、MMOにおいて一番重要なのはタンクだ。他が欠けてもいけないが、ゲームにおける重要な役目はタンクが握っている。防御こそ正義の世界がMMOだ。ダンジョンでの先行誘導、ヘイト管理、スイッチタイミングにギミック処理と、タンクにおける仕事と覚えるべき事の多さが圧倒的である。初見ですはタンクに許されない。ソロプレイが目立ちがちな創作とは別に、ゲームではタンクが一番といって良いほど大事な役職になる。

 

 タワーディフェンスならば、GIFで有名な一人のコラボ軍師がゲームをぶっ壊した事で有名だったりするが、連写と射程が強い。まあ、タワーディフェンスは普通ブロック役と後ろから殴るキャラの二つの要素で成り立つものなのだが、タワーディフェンスというゲームで射程が長いというのはバランスをぶっ壊す要素である。

 

 では、それらを幅広く取り扱うソシャゲについて。

 

 ソシャゲにおいて、ゲームの人権やぶっ壊れと言われるようなキャラクター。インフレを引き起こしゲームバランスを崩壊させる要因になりやすい役職、ステータスというのは何だろうか?

 攻撃、防御、速度、幸運、射程距離、HP、それら全てが一際高まれば、ソシャゲは一瞬にしてバランスが崩れてゲームのインフレは加速する。今までのキャラの所持しているスキルの強化倍率を僅かにでも超えれば基本的にインフレが進む上、それは、既存キャラを否定することと同義になる。特に、百パーセントの下位互換を産み出した瞬間、下位互換はほぼ完全に存在意義を失うことになる。

 その中でも、バフキャラは自身ではなく、他を強化するためインフレの元になりやすい。一応既存キャラの否定にはなりにくいものの、インフレの跳ね上がり具合が著しくなるので一長一短だ。

 運営によるサービス終了こそが終わりのソシャゲにおいて、既存ステータス以上に意識するべきなのが、バフキャラということになる。インフレはゲームが進む度に否応なしに発生するものであるが、既存キャラと以降のキャラすらも変えられる能力を所有するバフキャラの存在は、ゲームにおけるバランスを一気に崩せる力を持っている。

 なお、複数キャラを集めて使うソシャゲの場合、シナジーがあるパターンが多いため、単純にバフキャラに関して慎重になる以外にも、バフ倍率に影響する基礎ステータスもまた重要な役割を果たしている。

 

 バランスブレイカーが発生する可能性はゲームにおけるキャラ数が増えれば増えるほど高くなる。ソシャゲは基本的にキャラクターを次から次へと出していくために、いつかは、ほぼ確実にバランスブレイカーが登場する。ゲームの形を崩したり壊したりするために。戦術を広げるために、飽きを来ないようにさせるには、いつかはバランスブレイカーが導入されるのだ。

 既存のコンシューマーゲームとは違い、ラスボスが決まっておらず、終わりもまた存在しなければ、それは運命としか言いようがない。既存ゲームなら救済措置として入っているパターンもあるし、単純にバランスミスでもあるが、それ以上の意図はない。

 新規参入が予測されるコラボにて、バランスブレイカーを導入するパターンは基本的に多い。それこそが炎上に繋がりがちだが、限定ガチャを煽りコンプ欲を刺激し、かつ外部の参入が見込めるコラボなら、運営が壊れを入れてくる事は想定できる。

 

 そこまで気にするなら使わなければ良い。という言葉も出るだろう。

 

 水はひび割れを見つけるという格言もある通り、一度それを見てしまえば、意識せずにはいられないのだ。コンシューマーゲームなら、ぶっ壊れを基準にゲームバランスを作ったりはしない。しかし、ソシャゲは泳ぎ続けるゲームなので、基本的にバランスブレイカーを基準にして難易度が決まるのだ。

 コンシューマーゲームなら、無理やりにでも意識から外せばどうにかなるが、ソシャゲは無視できないものになる。

 インフレとどのように付き合っていくのかは、ソシャゲの永遠の命題といえるだろう。(一応解決方法は存在する。全部同じ性能にしてキャラ絵で売っていくスタイルだ)

 

 ちなみに、そういったバランスブレイカーの存在を『もうこいつだけでいいんじゃないかな』と言うこともある。

 

 イズムパラフィリアもまたインフレの歴史を歩んでいるため、最終的に登場する従魔は、単騎にてあらゆる存在を打ちのめすような、そんな力を秘めている。

 

 最初に起きた出来事は、柊菜の従魔によって作られていた空間が元に戻ったことだった。

 そして、次々と地に伏せていく従魔達。樹のシーちゃんに至っては耐えきれないと言わんばかりに自発的にリコールしていった。

 

「……なんだよ、これ」

 

 樹が、意識して付けていた語尾すらも忘れて呟く。

 そこにいたのは一人の美しい女性だった。胸が大きく、ゆったりとしたゆとりのある服装をしており、多少黒い闇を感じさせるような化粧らしき跡があるが、確かに万人が見て美しいと答えるような女性が立っていた。

 そして、同時に彼女からはシルキュリアの面影があった。

 その女性がゆっくりと口を開く。そこから奏でられる音は、少女を思わせるものであり、シルキュリアと同じだった。

 

──始まりはとある中学生の言葉だった。『人魂って、精子っぽくね?』

 

 しかし、使っている言語は全くの別だった。スリープが言っていたように、この世界のデフォルトの言語は日本語であるはず。

 音の羅列としか認識できない。法則性や言語として成り立っているかもわからない。そんな喋り口調だった。

 

 ただそこにあるだけの力を前に、世界が耐えきれずに軋みを上げ、泣き叫んでいる。

 空間が歪み、星々が儚く弾け、光すらも捩れ狂う。

 樹達は、それを見たときに、本能で理解した。これは存在してはならないものだと。ここにいてはいけないものだと。

 その感情に反するように、安心感すらも覚えていた。

 

そこから、生と死の概念を持ちながら、受胎の特性を与えられた従魔

 

 あらゆる法則《ルール》をぶち破り、ただ自らの道理を押し付ける。まるで一つの世界が、そこに顕現していた。

 

【冥母リリトゥライラ】あらゆる死者を管理し、新たな生を与える者。みんなに認知されていないんですけど、私が母親なんですよ?

 

 所作で少しだけ茶目っ気を出したとしても、言語を理解できず、ただ震えるしかない樹達には、何も響かなかった。ただ、ほんの僅かに従魔からの圧力が緩んだ隙を突いて動き出した。

 

無垢なる魂達よ、母の転生権《卵子》を目指して競争するのだー!

「に、逃げろ! 走れえぇぇ!」

 

 樹の叫び声を皮切りに、各々が一目散に駆け出そうとした。

 そこに割って入るものがある。砂の嵐を横倒しにしたような攻撃が女性を飲み込んだ。

 

「こちらへ、早くっ!」

 

 龍使いのギルドマスターが攻撃によって開いた穴から顔を出していた。先ほどの一撃は彼女の従魔【砂漠龍ダスト】のものであったようだ。

 既に龍種覚醒の動けない状態が終わっているらしい。それならば、戦った方が良いのでは、と樹は逡巡する。

 

「アレは私達の手におえるものではありません! そこのギルドマスターを連れて早く来てください!」

 

 ほぼ怒声のように声を張り上げて指示する。半ば思考を止めるようにして樹達はその命令を聞いた。

 サクメを連れて、ダストの背に乗ると同時に、ダストが翼を羽ばたかせ飛び上がる。高度を稼ぐように旋回しつつ上昇すれば、街の全容が伺えた。

 

「……なんだ、アレ。どういうことだ?」

「何も無くなっている? 空間そのものが、無い感じかな。……凄く、気持ち悪い」

 

 街を覆い尽くすようなエネルギーバブルは消え失せ、その代わりのように世界を光りも通さない闇が塗り潰すようにあった。

 

「……あなた方は、何を相手にしたのですか。アレは、この世界に居ていいものではありません」

「こっちとしても突然現れたんだけど。事情を知っていそうなのは、貴族の街で私達と敵対してきたギルドマスターがいるし、そっちに聞いてみたら?」

 

 樹達を責めるような口調のギルマスに、里香はサクメを指差す。

 

「……あんな物だなんて知らなかった。ただ、世界を変える事が出切る存在だって、言ってた」

「そんな言葉を信じたと?」

「……古い人間にはわからない。その姿になってから何年過ごした?」

 

 竜の少女(王国のギルドマスター)を煽るサクメ。

 

「──全ては私の目的の為ですよ」

 

 空気がギスギスしたものになってきたところに、声がかかる。

 バサリバサリと翼を羽ばたかせるカルミアに掴まり、ドグマが龍の背に降りた。

 

「目的って……あの、世界を救うっていう?」

「ええ、その通りです」

「あんな禍々しい存在でどうやって世界を救うんすか?」

 

 柊菜が明かしたドグマの目的に突っかかる樹。

 彼の視界の半分には、サクメの従魔同様に、もう一つの姿が写し出されていた。

 

「あれは、人間の下半身の集合体っすよ」

 

 一つの上半身に群がるようにくっついている下半身。不気味さを感じさせるその生物としてあまりにも成り立たない姿こそが、あの従魔の本質だと樹は感じていた。

 

「それはそうでしょう。アレは従魔の母と言える存在なのですから」

「あれが……従魔の?」

「ええ、【冥母リリトゥライラ】と呼ぶそうですよ」

「それで、その従魔を使って、どうやって世界を救うっていうんすか? 従魔の母だから頼み事でもするんすか?」

「そんな回りくどい事はしませんよ」

 

 ドグマは笑う。そこで樹はようやく彼の目を見た。そして気付く。

 焦点が合わず、光すら捉えていない。ドグマは既に正気を失っているも同然だということを。

 

 背後に立つカルミアが、樹に嗤いかける。ようやく気付いたのかと馬鹿にするように。

 

「死ぬ事で、我々は従魔へと至る事が出来る。ならば、従魔となり、新たな生を歩みましょう! どうせ我々人間は従魔には勝てないのですから、我が友が目指した道の通り、従魔へと至り、従魔による世界の平定をすべきなのです」

 

 ドグマは竜の少女へと指を突きつける。

 

「彼女と同じようになれば良いのですよ。世界の管理者はギルドマスター。従魔を使い、従魔により人の道を外れた存在なのですから。元から人間は世界の支配者ではないのです。奴隷たる身分から、同じ存在にまで上がる。ただそれだけが目的です」

 

 そこに、貴族の姿はなかった。ただ、嫉妬に塗れた世界の敗北者が立っていた。




冥母リリトゥライラ
死種星16の最強に連なる従魔だ!公式説明文では
ゆったりとした黒い衣服を見に纏い下半身が蛇、もしくは生物の下半身の集合体になっている女性。原初の母とも言われ、あらゆる生命を産み落としたとされている。全ての生命は死後彼女の元へ戻り、新たに産み落とされるのを待つ。
と書かれているぞ!(当時の設定。なお現状変更点は無し)
基礎能力値は同レアリティの中でも二番目に弱い従魔で、戦闘ではデバフと回復をメインにしたサポートを得意とするぞ!
ちなみに、一つアビリティを紹介すると、プレイヤーの持つ全従魔のロスト無効アビリティを持っているぞ! もちろん本人にも適用されるぞ!
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